三菱UFJフィナンシャル・グループ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

三菱UFJフィナンシャル・グループ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証プライム、名証プレミア、NY証券取引所に上場する国内最大級の総合金融グループです。銀行、信託、証券、カード、貸金、資産運用等の事業をグローバルに展開しています。2025年3月期の連結業績は、資金利益や手数料収入の増加等により経常収益、経常利益ともに増収増益となり、当期純利益は過去最高益を更新しました。


※本記事は、株式会社三菱UFJフィナンシャル・グループの有価証券報告書(第20期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 三菱UFJフィナンシャル・グループってどんな会社?


三菱UFJフィナンシャル・グループは、銀行、信託、証券、カード等を擁する世界有数の総合金融グループです。

(1) 会社概要


2001年に東京三菱銀行、三菱信託銀行、日本信託銀行の経営統合により設立されました。2005年にUFJホールディングスと合併し現社名へ変更、2006年には銀行子会社が合併し三菱東京UFJ銀行(現三菱UFJ銀行)が発足しました。2024年には三菱UFJアセットマネジメントを完全子会社化するなど、グループ再編を進めています。

連結従業員数は156,253人、単体では3,463人です。筆頭株主は資産管理業務を行う日本マスタートラスト信託銀行(信託口)で、第2位は株式会社日本カストディ銀行(信託口)、第3位は米国預託証券の預託銀行となっています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行株式会社(信託口) 16.71%
株式会社日本カストディ銀行(信託口) 5.85%
THE BANK OF NEW YORK MELLON AS DEPOSITARY BANK FOR DR HOLDERS 2.54%

(2) 経営陣


同社の役員は男性27名、女性4名の計31名で構成され、女性役員比率は12.9%です。代表執行役社長グループCEOは亀澤宏規氏です。取締役16名のうち9名が社外取締役であり、社外取締役比率は56.3%です。

氏名 役職 主な経歴
亀澤 宏規 取締役 代表執行役社長グループCEO 1986年三菱銀行入行。三菱UFJ銀行副頭取、Global Open Network代表取締役CEO等を経て、2020年4月より現職。
三毛 兼承 取締役 執行役会長 1979年三菱銀行入行。三菱東京UFJ銀行頭取、同社社長等を経て、2021年4月より現職。
十川 潤 代表執行役専務 グループCFO 1990年三菱信託銀行入社。三菱UFJ信託銀行取締役専務執行役員、三菱UFJ銀行専務執行役員等を経て、2024年4月より現職。
宮下 裕 代表執行役専務 法人・ウェルスマネジメント事業本部長 1990年三和銀行入行。三菱UFJ銀行取締役常務執行役員等を経て、2024年4月より現職。
大澤 正和 代表執行役専務 コーポレートバンキング事業本部長 1991年三菱銀行入行。三菱UFJ銀行常務執行役員等を経て、2025年4月より現職。
髙瀬 英明 代表執行役専務 グループCSO兼CSuO 1991年三菱銀行入行。MUFGバンク(ヨーロッパ)頭取、三菱UFJ銀行取締役常務執行役員等を経て、2023年4月より現職。
長島 巌 取締役 1985年三菱信託銀行入社。三菱UFJ信託銀行社長、同社会長(現職)等を経て、2022年4月より現職。
半沢 淳一 取締役 1988年三菱銀行入行。三菱UFJ銀行常務執行役員を経て、2021年4月より同行頭取(現職)。2022年4月より現職。
小林 真 取締役 1985年三菱銀行入行。三菱UFJ証券ホールディングス社長兼グローバルCEO(現職)、三菱UFJモルガン・スタンレー証券社長(現職)を経て、2022年6月より現職。
宮永 憲一 取締役 1982年東洋信託銀行入社。三菱UFJ信託銀行取締役副社長執行役員等を経て、2021年6月より現職。
新家 良一 取締役 1988年三和銀行入行。三菱UFJ銀行専務執行役員等を経て、2023年6月より現職。


社外取締役は、藤井眞理子(元駐ラトビア特命全権大使)、本田桂子(元多数国間投資保証機関長官CEO)、加藤薰(元NTTドコモ社長)、桑原聡子(外苑法律事務所パートナー)、野本弘文(東急会長)、マリ・エルカ・パンゲストゥ(元世界銀行専務理事)、清水博(日本生命保険会長)、デイビッド・スナイダー(元Simpson Thacher & Bartlett LLPパートナー)、辻幸一(元EYジャパン会長兼CEO)です。

2. 事業内容


同社グループは、「リテール・デジタル」「法人・ウェルスマネジメント」「コーポレートバンキング」「グローバルコマーシャルバンキング」「受託財産」「グローバルCIB」「市場」および「その他」事業を展開しています。

リテール・デジタル事業本部


個人および法人顧客に対し、リアル店舗、リモート、デジタルチャネルを通じて金融サービスを提供しています。国内の個人顧客基盤を活かし、預金、決済、資産運用、ローンなどのサービスを展開しています。

収益は、顧客からの金利収入や手数料収入等から構成されます。運営は主に株式会社三菱UFJ銀行、三菱UFJ信託銀行株式会社、三菱UFJ証券ホールディングス株式会社、三菱UFJニコス株式会社、アコム株式会社などが行っています。

法人・ウェルスマネジメント事業本部


法人およびウェルスマネジメント顧客に対し、金融サービスを提供しています。事業承継や資産運用などのニーズに対応したソリューションを展開しています。

収益は、貸出金利息や各種手数料収入等から構成されます。運営は主に株式会社三菱UFJ銀行、三菱UFJ信託銀行株式会社、三菱UFJ証券ホールディングス株式会社などが行っています。

コーポレートバンキング事業本部


国内外の日系大企業に対し、貸出、決済、為替、証券代行、M&Aアドバイザリーなどの金融サービスを提供しています。グループ総合力を活かしたソリューション提案を行っています。

収益は、貸出金利息、決済手数料、投資銀行業務に係る手数料等から構成されます。運営は主に株式会社三菱UFJ銀行、三菱UFJ信託銀行株式会社、三菱UFJ証券ホールディングス株式会社などが行っています。

グローバルコマーシャルバンキング事業本部


海外の出資先商業銀行等を通じて、現地の中堅・中小企業や個人顧客に対し金融サービスを提供しています。タイのアユタヤ銀行やインドネシアのダナモン銀行などが中核となっています。

収益は、貸出金利息や各種手数料収入等から構成されます。運営は主にBank of Ayudhya Public Company Limited、PT Bank Danamon Indonesia, Tbk.などが行っています。

受託財産事業本部


国内外の投資家、運用会社、事業会社等に対し、資産運用、資産管理、年金サービスを提供しています。高度な専門性を活かし、インベストメントチェーン全体での付加価値提供を目指しています。

収益は、信託報酬、資産運用報酬、資産管理手数料等から構成されます。運営は主に三菱UFJ信託銀行株式会社、三菱UFJアセットマネジメント株式会社などが行っています。

グローバルCIB事業本部


非日系の大企業に対し、貸出、債券・株式引受、M&Aアドバイザリーなどの金融サービスを提供しています。欧米を中心としたグローバルネットワークを活用し、CIB(コーポレート・インベストメント・バンキング)ビジネスを展開しています。

収益は、貸出金利息、手数料収入等から構成されます。運営は主に株式会社三菱UFJ銀行、三菱UFJ証券ホールディングス株式会社などが行っています。

市場事業本部


顧客に対する為替・資金・証券サービスの提供、市場取引およびグループ全体の流動性・資金繰り管理業務を行っています。セールス&トレーディング業務とトレジャリー業務が柱です。

収益は、トレーディング収益や有価証券の利息配当金、売却益等から構成されます。運営は主に株式会社三菱UFJ銀行、三菱UFJ信託銀行株式会社、三菱UFJ証券ホールディングス株式会社などが行っています。

その他


上記事業本部に属さない管理業務等を行っています。システム開発やコーポレートセンター機能などが含まれます。

収益は、グループ会社からの受入手数料等が含まれます。運営は同社および各グループ会社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移

当期は増収増益となりました。これは、主に資金運用収益の増加が経常収益を押し上げた一方、資金調達費用や営業経費の増加が経常費用を押し上げたことによるものです。過去5年間では、経常収益は増加傾向にあり、経常利益および当期純利益も概ね増加傾向を示しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
経常収益(億円) 60,253 60,759 92,810 118,904 136,300
経常利益(億円) 10,536 15,376 10,207 21,280 26,695
当期純利益(億円) 7,770 11,308 11,165 14,908 18,629

(2) 損益計算書

当期は、経常収益が前期比で増加した一方で、経常費用も増加しました。経常収益の増加は、主に資金運用収益の増加によるものです。経常費用については、資金調達費用や営業経費の増加が影響しました。この結果、経常利益は前期を上回りました。当期純利益も前期比で増加しました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
経常収益 118,904 136,300
経常費用 97,624 109,605
経常利益 21,280 26,695
当期純利益 14,908 18,629

(3) 役務取引等収益の内訳

同行の非金利収益である役務取引等収益は、当期において前期比で増加しました。その中でも、預金・貸出業務が最も大きな割合を占めており、次いで為替業務が続きます。

区分 2024年3月期 2025年3月期
役務取引等収益 合計 20,472 23,601
預金・貸出業務 4,399 5,039
為替業務 1,682 1,794
証券関連業務 1,630 2,088
信託報酬 139 144

(4) キャッシュ・フローと財務指標

銀行業では貸出金の増加に伴い営業キャッシュ・フローがマイナスになることが通例であり、直ちに業績悪化を意味するものではありません。当期は、コールマネー等の増加により、営業活動によるキャッシュ・フローはプラスとなりました。投資活動によるキャッシュ・フローは、有価証券の取得による支出の増加などによりマイナスとなりました。財務活動によるキャッシュ・フローは、劣後特約付社債の償還による支出の増加などによりマイナスとなりました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業活動によるキャッシュ・フロー △98,449 64
投資活動によるキャッシュ・フロー 39,864 △18,695
財務活動によるキャッシュ・フロー 83 △86,112

収益効率の向上と安定した財務基盤を両立しています。当期のROEは9.3%となり、前期の8.1%から改善しました。純資産額は、2021年3月期以降、おおむね増加傾向で推移しており、安定した財務基盤を維持しています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「世界が進むチカラになる。」をパーパス(存在意義)として定めています。全てのステークホルダーの課題解決や持続的成長に貢献し、新しい時代において社会をリードする存在となることを目指しています。また、「世界に選ばれる、信頼のグローバル金融グループ」を中長期的なビジョンとして掲げています。

(2) 企業文化


同社は、グループ共通の価値観として「MUFG Way」を制定し、その中で「信頼・信用」「プロフェッショナリズムとチームワーク」「挑戦とスピード」をバリューズ(行動指針)として掲げています。これらは、日々の判断や行動の基準となるものであり、変化の激しい時代においても誠実に行動し、チームの力を最大限発揮して挑戦を続ける企業風土の醸成を目指しています。

(3) 経営計画・目標


同社は、2024年度からの中期経営計画において、収益力向上やROEの改善を目指しています。財務目標としては、中長期的にROE12%程度を目標として設定しています。2026年度については、親会社株主純利益で2兆円以上、ROEで10%以上を想定しています。

* 中長期ROE:12%程度
* 2026年度親会社株主純利益:2兆円以上
* 2026年度ROE:10%以上

(4) 成長戦略と重点施策


今中期経営計画では、「成長戦略の進化」「社会課題の解決」「企業変革の加速」を3本柱としています。成長戦略においては、国内リテール顧客基盤の強化、法人・ウェルスマネジメント連携による承継ビジネス強化、グローバルCIB・市場一体ビジネスモデルの進化など7つの主要戦略を推進します。また、カルチャー改革や人的資本の拡充、AI・データ基盤の強化など4つの企業変革の加速に取り組みます。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は「人的資本重視の経営」を掲げ、社員一人ひとりが活き活きと活躍できる環境づくりを推進しています。「MUFG人事プリンシプル」に基づき、知識や専門性だけでなく見識や倫理観を高める教育機会を提供し、自律的なキャリア形成を支援しています。また、健康経営やDEI(ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン)の浸透を通じ、多様なプロフェッショナル人材の育成とウェルビーイングの向上に取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 40.1歳 13.1年 10,933,000円


※平均年間給与は、賞与および基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 29.2%
男性育児休業取得率 98.8%
男女賃金差異(全労働者) 51.7%
男女賃金差異(正規雇用) 52.8%
男女賃金差異(非正規雇用) 58.3%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、エンゲージメントスコア(76%)、女性マネジメント比率(24.0%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 資本余力低下/リスクアセット増加


グローバルな金利上昇による債券評価損の拡大等が発生した場合、資本運営に影響を及ぼす可能性があります。自己資本比率等の規制水準を下回った場合、金融庁等から業務停止を含む命令を受ける可能性があり、事業運営に支障をきたすおそれがあります。

(2) 外貨流動性リスク


市況の悪化等により、外貨流動性が枯渇したり、調達コストが大幅に増加したりするリスクがあります。資金調達が困難になった場合、外貨建ての資産運用や顧客への貸出等の業務に制約が生じ、財政状態や経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(3) 与信費用増加


グローバルベースでの実体経済の急速な失速や、与信が集中している特定業種の信用悪化等により、不良債権や与信関係費用が増加するリスクがあります。特に不動産業種向けの与信割合が高く、市況変動の影響を受けやすい状況にあります。これらが顕在化した場合、財政状態および経営成績に悪影響が生じる可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。