四国銀行 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

四国銀行 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

四国銀行は東京証券取引所プライム市場に上場し、高知県を中心に四国地区を基盤として預金や貸出、有価証券運用などの銀行業務を主力とする金融機関です。リース業務やコンサルティングなどの金融サービスも幅広く展開しています。直近の業績では、貸出金利息の増加や有価証券売却益等により、大幅な増収増益を達成しました。


※本記事は、株式会社四国銀行 の有価証券報告書(第212期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月18日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 四国銀行ってどんな会社?


同社は高知県を中心とする四国地区を主要な地盤とし、銀行業務をはじめ多様な金融サービスを提供する地方銀行です。

(1) 会社概要


四国銀行は1878年に第37国立銀行として創業し、1897年に高知銀行として営業を継続しました。1923年に土佐銀行と合併して現在の商号に変更しています。1974年には東京・大阪両証券取引所の市場第1部に上場を果たしました。近年では2024年に投資専門子会社を設立するなど、継続的に事業領域を拡大しています。

現在の従業員数は連結で1,319名、単体で1,239名となっています。同社の筆頭株主および第2位の株主には資産管理業務を行う信託銀行が名を連ねています。第3位の大株主には、金融ビジネスにおいても関係性のある事業会社の明治安田生命保険相互会社が名を連ねており、安定的な株主構成を維持しています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 8.99%
日本カストディ銀行(信託口) 4.77%
明治安田生命保険相互会社 4.33%

(2) 経営陣


同社の役員は男性9名、女性2名の計11名で構成され、女性役員比率は18.2%です。代表者は取締役頭取の小林達司氏が務めており、社外取締役の比率は36.4%となっています。

氏名 役職 主な経歴
小林 達司 取締役頭取代表取締役 1984年入行。執行役員総合企画部長、常務取締役等を経て2023年より現職。
山元 文明 取締役会長 1978年入行。総合管理部長、専務取締役、取締役頭取を経て2023年より現職。
橋谷 正人 専務取締役代表取締役 1983年入行。岡山支店長、執行役員営業統括部長、常務取締役を経て2025年より現職。
白石 功 常務取締役 1986年入行。審査部長、取締役審査部長、取締役総合企画部長を経て2023年より現職。
伊東 瑞文 常務取締役 1991年入行。中村支店長、取締役徳島営業本部長等を経て2025年より現職。
常光 憲 常務取締役 1991年入行。コンサルティング部長、取締役本店営業部長を経て2025年より現職。
西村 純子 取締役(監査等委員)常勤 1988年入行。2021年総合管理部長を経て2024年より現職。


社外取締役は、植田剛生(明治安田生命保険執行役専務)、稲田知江子(ひいらぎ法律事務所弁護士)、金本康(金本康税理士事務所税理士)、酒井俊和(病理学アソシエイツ法務部長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「銀行業」および「その他」事業を展開しています。

(1) 銀行業


高知県を中心とした四国地区を主要地盤とし、地域の中小企業や個人向けに預金、貸出、国内・外国為替などの金融サービスを提供しています。また、法人や個人のライフステージに応じた総資産コンサルティングや、有価証券投資などの市場運用業務も展開しています。

収益源は、預金による資金調達と貸出や有価証券運用による利鞘収入(資金利益)のほか、金融商品の販売やコンサルティングに伴う役務取引等手数料です。本事業の運営は主に四国銀行が行っており、銀行代理業務や信用保証業務などを子会社が担っています。

(2) その他事業


銀行業の枠組みを超えた多様なニーズに応えるため、リース業務をはじめ、コンピューター関連業務、さらにはファンドを通じた投資事業やコンサルティング業務などを展開しています。地域経済の調査研究なども行い、地域の顧客に対する総合的な支援体制を構築しています。

これらの事業では、リース取引に伴う手数料やシステム利用料、投資ファンドからの収益などを得ています。運営は、四銀総合リースや四銀コンピューターサービス、しぎんキャピタルパートナーズなどの各専門子会社がそれぞれ担っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績は、市場環境の変動を受けながらも経常収益は概ね拡大傾向にあります。特に直近の事業年度では、金利上昇を背景とした貸出金利息などの資金運用収益の増加や、有価証券の売却益が貢献し、大幅な増収増益を記録しました。当期利益も子会社の完全子会社化に伴う特別利益の計上により大きく伸長しています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 435億円 607億円 525億円 538億円 695億円
経常利益 109億円 79億円 93億円 103億円 140億円
利益率(%) 25.1% 13.0% 17.8% 19.1% 20.2%
当期利益(親会社所有者帰属) 79億円 55億円 73億円 68億円 174億円

(2) 損益計算書


直近2期間の収益構造を見ると、金利上昇による貸出金利息の増加などが牽引し、経常収益は大きく拡大しました。同時に預金利息等の調達コストも増加していますが、収益の伸びが上回っており、同社の利益体質の強さが表れています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 538億円 695億円


経常費用のうち、人件費等を含む営業経費が244億円(構成比44%)と最も大きく、次いで国債等の有価証券売却損などを含むその他業務費用が173億円(同31%)、預金利息等の資金調達費用が82億円(同15%)を占めています。

(4) キャッシュ・フローと財務指標


当期のキャッシュ・フローは営業CFがマイナス、投資CFがプラス、財務CFがマイナスとなる「事業検討型」の傾向を示しています。一般的には本業が低迷し事業の見直しが迫られる状況とされます。なお、同社は金融・証券関連事業を主力としているため、営業CFのマイナスは主に貸出金の増加(事業拡大)によるものであり、直ちに業績悪化を意味するものではありません。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 864億円 -271億円
投資CF -1,218億円 1,453億円
財務CF -20億円 -13億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は9.9%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は5.4%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「健全経営に徹し、金融を基盤とするサービスを通じて社会の発展に貢献する」という経営理念を掲げています。創業以来の「地域の皆さまに最も愛され、親しまれ、信頼される銀行」という標榜のもと、長年培ってきた信頼を損なわず、多様化する顧客のニーズに的確かつ迅速に応え、地域と社会の発展に寄与することを使命としています。

(2) 企業文化


同社は、従業員を「人財」と呼び、人を最も大切な経営資本と捉える企業文化を根付かせています。従業者の心身の健康とワークライフバランスを重視し、多様な働き方ができる環境の整備に注力しています。また、地域と社会の発展に貢献するという使命感が組織全体に浸透しており、顧客起点のコンサルティング活動を徹底する風土があります。

(3) 経営計画・目標


同社は「中期経営計画2026」を推進し、10年ビジョンである「地域と産業を牽引するベスト&リライアブル カンパニー」の実現を目指しています。本計画では「ビジョン実現に向けた変革の深化と更なる成長」をテーマとし、以下の具体的な財務目標を掲げています。

* コア業務純益:85億円以上
* ROE(株主資本ベース):5%以上
* OHR(コア業務粗利益ベース):70%以下

(4) 成長戦略と重点施策


同社は、持続可能な収益構造の構築に向けて4つの重点施策を掲げています。具体的には、自律的なキャリア形成を促す「人的資本の強化」、エリア営業態勢の再構築やデジタル活用による「組織の変革」、地場産業の支援や総資産コンサルティングを通じた「四銀スタイルの発揮」、そして地域戦略に応じた預貸金ビジネスや非金利収益の強化による「当行の企業価値の向上」を推し進めています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は「自律的なキャリア形成意識を持ち、ありたい姿の実現に向けて自ら学ぶ人財」「地域とお客さまの課題解決に向けて、適所適材で四銀スタイルを実践する人財」の育成を方針としています。研修制度の拡充や多様な価値観を受け入れる「DE&I」の推進、さらには戦略的な人員配置により、従業員が強みを発揮できる環境整備に取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 39.1歳 15.8年 6,983,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 11.8%
男性育児休業取得率 107.1%
男女賃金差異(全労働者) 49.0%
男女賃金差異(正規雇用) 58.1%
男女賃金差異(非正規雇用) 64.8%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、有給休暇取得日数(16.0日)、1人当たり月平均所定外労働時間(14時間53分)、障がい者雇用率(2.34%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 信用リスクと市場リスク


貸出先の財務状況悪化に伴う不良債権の増加や、金利・株価などの市場環境の変動によって保有資産の価値が下落するリスクです。同社は厳格な審査体制やリスク限度枠の設定、日次でのモニタリング等を通じて、リスクの適正な管理と損失拡大の防止に努めています。

(2) サイバーセキュリティと情報漏洩リスク


高度化・巧妙化するサイバー攻撃によってシステム障害が発生したり、保有する顧客情報が漏洩したりするリスクです。これに対し同社は、セキュリティ対策の強化や専門チーム(CSIRT)の整備を行い、インシデント発生時に迅速に対処できる態勢を構築しています。

(3) 地域経済の動向に影響を受けるリスク


高知県を中心とした四国地区を主な事業基盤としているため、同地域の人口減少や少子高齢化、地域経済の停滞が業績に影響を及ぼすリスクです。同社は地域産業の牽引や新規事業創出への関与を通じて地域活性化に貢献し、影響の低減を図っています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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