※本記事は、琉球銀行の有価証券報告書(第110期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月17日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 琉球銀行ってどんな会社?
銀行業を中心に、リースやクレジットカードなど多様な金融サービスを展開する沖縄県の中核的金融機関です。
■(1) 会社概要
1948年5月に設立。1972年の本土復帰に伴い商法上の株式会社へ改組し、現在の社名へ改称しました。1983年に東京証券取引所市場第二部および福岡証券取引所に上場、1985年には東証第一部に指定されています。近年は、2014年の琉球リース、2015年のOCSの連結子会社化など事業領域を拡大しています。
同社グループの従業員数は連結で1,802名、単体で1,407名です。筆頭株主は日本マスタートラスト信託銀行(信託口)で、第2位は日本カストディ銀行(信託口)、第3位はQRファンド投資事業有限責任組合となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 12.92% |
| 日本カストディ銀行(信託口) | 5.40% |
| QRファンド投資事業有限責任組合 | 3.11% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性11名、女性2名の計13名で構成され、女性役員比率は15.3%です。代表者は取締役頭取の島袋健氏が務めており、社外取締役比率は23.1%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 川上康 | 取締役会長 代表取締役 | 1985年入行。コザ支店長、営業統括部長、取締役営業統括部長、総合企画部長などを経て、2017年に代表取締役頭取。2024年より現職。 |
| 島袋健 | 取締役頭取 代表取締役 | 1987年入行。証券国際部市場金融課長、総務部長、総合企画部長、常務執行役員、代表取締役専務などを経て、2024年より現職。 |
| 菊地毅 | 専務取締役 代表取締役 | 2007年入行。泊支店長、人事部長、総合企画部長、常務執行役員などを経て、2024年より現職。 |
| 渡名喜郁夫 | 常務取締役 | 1992年入行。石川支店長、監査部長、事務統括部長、総合企画部長、常務執行役員などを経て、2024年より現職。 |
| 中川通男 | 常務取締役 | 2007年入行。審査部長、琉球リース代表取締役社長、琉球銀行常務執行役員などを経て、2024年より現職。 |
| 山入端裕哉 | 常務取締役 | 1991年入行。本店営業部長、営業推進部長、総合企画部長、常務執行役員などを経て、2025年より現職。 |
社外取締役は、譜久山當則(元沖縄振興開発金融公庫理事長)、富原加奈子(元りゅうせき商事代表取締役)、花崎正晴(埼玉学園大学経済経営学部学部長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「銀行業」「リース業」「クレジットカード業」「信用保証業」「IT事業」および「その他」事業を展開しています。
■銀行業
沖縄県の中核的金融機関として、本店を含む75カ店の営業店ネットワークを通じ、預金、貸出、内国為替、外国為替などの銀行業務を提供しています。地域の中小企業や個人の資金ニーズに対して安定的な資金供給を行っています。
収益は、貸出金利息や有価証券利息配当金、為替手数料などから得ており、運営は同社が担当しています。個人分野では給与振込や積立預金、法人分野では事業性融資やコンサルティングを通じて収益基盤の拡充を図っています。
■リース業
リース業務等の金融サービスを提供し、地域企業の設備投資ニーズや資金調達を支援しています。
顧客から受け取るリース料などを主な収益源としています。運営は連結子会社の琉球リースが行っています。
■クレジットカード業
クレジットカードの発行および個別信用購入斡旋などの決済サービスを提供し、地域のキャッシュレス化を推進しています。
加盟店からの決済手数料や会員からの年会費などを主な収益としています。運営は、りゅうぎんディーシーおよびOCSが行っています。
■信用保証業
住宅ローンなどの個人向け融資に対する信用保証業務を提供しています。顧客がローンを利用する際の保証人としての役割を担います。
提携金融機関から受け取る信用保証料を主な収益源としています。運営は、りゅうぎん保証が行っています。
■IT事業
システム設計、開発、ITインフラの構築などのIT関連業務を提供しています。
システムの開発・保守等のサービス提供に伴う受託費用などを主な収益源としています。運営は、リウコムが行っています。
■その他
報告セグメントに含まれない事業として、産業、経済、金融に関する調査研究業務などを提供しています。
調査研究の受託費用などを主な収益源としており、運営はりゅうぎん総合研究所が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の連結業績を見ると、経常利益は80億円前後で安定的に推移していましたが、直近の期では131億円へと大幅に増加しました。当期利益についても同様の傾向を示しており、収益力の向上が見られます。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上収益(または売上高) | - | - | - | - | - |
| 経常利益 | 79億円 | 85億円 | 85億円 | 83億円 | 131億円 |
| 利益率(%) | - | - | - | - | - |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 52億円 | 52億円 | 46億円 | 50億円 | 84億円 |
■(2) 損益計算書
経常利益は大幅な増益となっています。金利環境の変化を捉えた有価証券運用の強化や貸出金利回りの改善が寄与したと考えられます。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | - | - |
| 売上総利益 | - | - |
| 売上総利益率(%) | - | - |
| 営業利益 | - | - |
| 営業利益率(%) | - | - |
■(3) セグメント収益
セグメント別の収益状況を見ると、主力の銀行業が貸出金利息の増加等により大幅な増収を達成しています。リース業やクレジットカード業も堅調に推移し、グループ全体の収益拡大に貢献しています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) |
|---|---|---|
| 銀行業 | 441億円 | 542億円 |
| リース業 | 185億円 | 195億円 |
| クレジットカード業 | 31億円 | 32億円 |
| 信用保証業 | 5億円 | 4億円 |
| IT事業 | 30億円 | 30億円 |
| その他 | - | 0.1億円 |
| 連結(合計) | 692億円 | 803億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社のキャッシュ・フローは、営業CFがプラス、投資CFおよび財務CFがマイナスとなっており、本業で創出した資金で投資と借入金の返済を賄う「健全型」の状況です。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | -1,516億円 | 217億円 |
| 投資CF | -167億円 | -293億円 |
| 財務CF | -22億円 | -26億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は6.4%で、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は4.7%です。銀行業という業種の特性上、レバレッジが高くなるため、いずれも市場平均を下回る水準となっています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は、「地域から親しまれ、信頼され、地域社会の発展に寄与する銀行」という経営理念を掲げています。沖縄県を地盤とする中核的金融機関として、地域社会との密接な関わりを重視し、持続可能な事業活動を通じて地元経済の発展に貢献することを目指しています。
■(2) 企業文化
同社は、変わらぬ価値観として「職業倫理と高度の専門性を身につけるよう努めるとともに、真にお客様にとって必要とされる商品、サービスを提供し、お客様の最善の利益を追求する」という顧客本位の業務運営を重視しています。ESGや人的資本への投資を基盤とし、多様な価値観を持つ職員が活躍できる環境づくりに注力しています。
■(3) 経営計画・目標
同社は中期経営計画「Empower 2025」の最終年度である2027年度に向けて、以下の財務指標および基本戦略指標を目標として掲げています。
* 親会社株主に帰属する当期純利益:110億円
* 単体コア業務純益:150億円
* 単体コアOHR:65.0%以下
* 連結ROE:7.0%以上
* 連結自己資本比率:10.0%程度
■(4) 成長戦略と重点施策
同社は「地域経済の好循環サイクルを実現し、地域とともに成長する金融グループ」の実現に向け、生成AIやデータ活用の徹底による業務効率化を図り、創出した余力を営業店支援や新規事業領域に重点配分する戦略を掲げています。預貸金・有価証券運用の強化、ESGの観点を踏まえた地域課題解決の先導、グループ連携とアライアンスの強化、および人的資本投資の増強と最適化を重点施策として推し進めています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は、人的資本を持続的成長を支える最重要基盤と位置づけ、人材ポートフォリオに基づく戦略的な人材育成と配置を推進しています。専門領域やキャリア段階に応じた育成体系を整備し、外部研修やOJTを通じて専門人材を育成するとともに、自律的な学びを支援しています。また、多様な働き方を実現する環境整備や健康経営にも積極的に取り組んでいます。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 39.4歳 | 15.2年 | 6,395,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 管理職に占める女性労働者の割合 | 32.5% |
| 男性労働者の育児休業取得率 | 109.7% |
| 労働者の男女の賃金の差異(全労働者) | 65.8% |
| 労働者の男女の賃金の差異(正規雇用労働者) | 71.5% |
| 労働者の男女の賃金の差異(非正規雇用労働者) | 73.5% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、3年以内の離職率(16.9%)、有給休暇平均取得率(69.5%)、定期健康診断受診率(100%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 信用リスク
同社は沖縄県を主要な営業地盤としているため、同県内の人口動態や産業構造、経済状況の変化に影響を受けやすい特徴があります。特に貸出ポートフォリオの約6割を住宅ローンや不動産業向け融資が占めているため、不動産市況や観光客数の動向が悪化した場合、与信関連費用が増加し業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 市場関連リスク
同社は国債や地方債、株式、投資信託などの有価証券を保有しており、金利、為替、有価証券価格などの変動リスクに晒されています。金融政策の変更に伴う大幅な金利上昇や急激な相場変動が生じた場合、保有資産に評価損が発生し、グループの財務状況や経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(3) オペレーショナル・リスク
業務の多様化や取引量の増加に伴う事務リスクや、サイバー攻撃、不正アクセスによるシステム障害のリスクが存在します。また、マネー・ローンダリングおよびテロ資金供与対策など高度化する規制要件への対応が不十分な場合、行政処分や信用失墜を招き、事業運営に重大な支障をきたす可能性があります。



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