※本記事は、株式会社琉球銀行 の有価証券報告書(第109期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月20日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 琉球銀行ってどんな会社?
沖縄県内の中小企業や個人に対し、預金・貸出等の銀行業務を中心に総合金融サービスを提供する地域金融グループです。
■(1) 会社概要
同社は1948年、米国軍政府布令により設立され、1972年の本土復帰に伴い株式会社へ改組し現在の商号となりました。1983年に東京証券取引所等へ上場を果たしています。その後、事業領域の拡大を進め、2014年には持分法適用関連会社であった琉球リースを連結子会社化し、2015年にはクレジットカード業務等を行うOCSを完全子会社化するなど、グループ体制を強化してきました。
現在のグループ従業員数は連結で1,794名、単体で1,401名です。大株主の構成を見ると、筆頭株主は資産管理業務を行う信託銀行で、第2位も同様に信託銀行です。第3位には投資事業有限責任組合が名を連ねています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 13.62% |
| 日本カストディ銀行(信託口) | 4.99% |
| QRファンド投資事業有限責任組合 | 3.08% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性11名、女性2名、計13名で構成され、女性役員比率は15.3%です。代表取締役会長は川上康氏、代表取締役頭取は島袋健氏、代表取締役専務は菊地毅氏です。社外取締役比率は23.1%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 川上 康 | 取締役会長代表取締役 | 1985年同行入行。営業統括部長、総合企画部長などを経て、2017年代表取締役頭取に就任。2024年4月より現職。 |
| 島袋 健 | 取締役頭取代表取締役 | 1987年同行入行。総務部長、総合企画部長などを経て、2023年代表取締役専務に就任。2024年4月より現職。 |
| 菊地 毅 | 専務取締役代表取締役 | 2007年同行入行。人事部長、総合企画部長などを経て、2023年常務取締役に就任。2024年4月より現職。 |
| 渡名喜 郁夫 | 常務取締役 | 1992年同行入行。監査部長、事務統括部長、総合企画部長などを経て、2024年6月より現職。 |
| 中川 通男 | 常務取締役 | 2007年同行入行。審査部長などを経て、2022年琉球リース代表取締役社長に就任。2024年6月より現職。 |
| 知花 健二 | 取締役(非常勤) | 1988年同行入行。法人営業部長、審査部長などを経て、2023年常務取締役に就任。2025年4月より現職。 |
社外取締役は、譜久山當則(元沖縄振興開発金融公庫理事長)、富原加奈子(元りゅうせき商事代表取締役)、花崎正晴(元日本政策投資銀行設備投資研究所長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「銀行業」「リース業」「クレジットカード業」「信用保証業」「IT事業」および「その他」事業を展開しています。
■銀行業
本店を含む営業店75カ店(うち出張所14)において、預金、貸出、内国為替、外国為替などの銀行業務を行っています。また、資金証券部門では有価証券投資業務や投資信託の窓口販売などを実施し、県内中小企業や個人の資金ニーズに対応するとともに、沖縄県経済の発展に寄与しています。
収益源は、貸出金利息、有価証券利息配当金、各種手数料などです。運営は主に同社が行っています。
■リース業
顧客に対し、リース業務等を提供しています。企業の設備投資ニーズに対応し、物件の賃貸借を通じて金融サービスを提供しています。
収益源は、顧客からのリース料収入などです。運営は主に琉球リースが行っています。
■クレジットカード業
クレジットカード業務および個別信用購入斡旋業務を行っています。キャッシュレス決済の普及推進や消費者の利便性向上に貢献しています。
収益源は、加盟店手数料や会員からの年会費、分割払い手数料などです。運営は主にりゅうぎんディーシーおよびOCSが行っています。
■信用保証業
住宅ローン等の保証業務を行っています。個人が銀行から融資を受ける際に、その債務を保証することで円滑な資金借入をサポートしています。
収益源は、保証料収入などです。運営は主にりゅうぎん保証が行っています。
■IT事業
システム設計・開発・ITインフラ業務を行っています。金融システムの安定稼働や企業のIT化支援などを担っています。
収益源は、システム開発や運用保守に対する対価などです。運営は主にリウコムが行っています。
■その他
産業、経済、金融に関する調査研究業務を行っています。
収益源は、調査研究受託などです。運営は主にりゅうぎん総合研究所が行っています。なお、りゅうぎんビジネスサービスは2024年7月に解散しました。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
当期は、貸出金利息および株式等売却益、リース業における経常収益の増加等により、経常収益が増加しました。一方、預金利息および営業経費の増加等により、経常費用も増加しました。この結果、経常利益は前期を下回りましたが、親会社株主に帰属する当期純利益は増加しました。過去5年間の業績を見ると、経常収益は増加傾向で推移しており、経常利益および当期純利益は変動しながらも堅調に推移しています。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 経常収益(億円) | 573 | 570 | 601 | 660 | 692 |
| 経常利益(億円) | 38 | 79 | 85 | 85 | 83 |
| 当期純利益(億円) | 26 | 56 | 59 | 57 | 58 |
■(2) 損益計算書
当期は、貸出金利息および株式等売却益、リース業における経常収益の増加等により、経常収益が増加しました。一方、預金利息および営業経費の増加等により、経常費用も増加しました。この結果、経常利益は前期を下回りましたが、親会社株主に帰属する当期純利益は増加しました。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 経常収益 | 660 | 692 |
| 経常費用 | 575 | 609 |
| 経常利益 | 85 | 83 |
| 当期純利益 | 57 | 58 |
■(3) 役務取引等収益の内訳
同行の非金利収益である役務取引等収益は、当期において前期比で増加しました。最も規模が大きいのは「預金・貸出業務」であり、次いで「為替業務」となっています。
| 区分 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 役務取引等収益 合計 | 104 | 111 |
| 預金・貸出業務 | 13 | 14 |
| 為替業務 | 9 | 10 |
| 代理業務 | 7 | 8 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社は、ALM戦略を強化し、資金利益増強に向けた取り組みを推進しています。
営業活動によるキャッシュ・フローは、貸出金の増加や預金等の減少などにより、支出となりました。
投資活動によるキャッシュ・フローは、有価証券の取得等により、前連結会計年度と比較して支出額が減少しました。
財務活動によるキャッシュ・フローは、配当等の支払いにより、支出となりました。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業活動によるキャッシュ・フロー | △37 | △152 |
| 投資活動によるキャッシュ・フロー | △218 | △17 |
| 財務活動によるキャッシュ・フロー | △2 | △2 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は、「地域から親しまれ、信頼され、地域社会の発展に寄与する銀行」という経営理念を掲げています。沖縄県における中核的金融機関として、金融システムの安定と県経済の発展に貢献することを使命としています。
■(2) 企業文化
同社は、「職業倫理と高度の専門性を身につけるよう努めるとともに、真にお客様にとって必要とされる商品、サービスを提供し、お客様の最善の利益を追求する」という価値観を重視しています。顧客本位の業務運営を目指し、地域に寄り添いながら信頼関係を構築する文化を持っています。
■(3) 経営計画・目標
同社は中期経営計画「Empower 2025」をスタートさせ、最終年度である2027年度の目標として以下の数値を掲げています。
* 親会社株主に帰属する当期純利益:90億円
* 単体コア業務純益:120億円
* 単体コアOHR:70.0%以下
* 連結ROE:5.5%以上
* 連結自己資本比率:10.0%程度
■(4) 成長戦略と重点施策
同社は「地域経済の好循環サイクルを実現し、地域とともに成長する金融グループ」を目指し、以下の戦略を推進します。
1. **預貸金・有価証券運用の強化**:新営業支援システムを活用した提案力向上とデジタルアプローチにより、メイン口座化を推進。また、市場リスク管理を高度化しつつ、安定収益確保を目指します。
2. **地域課題解決の先導**:ESG経営の実践を通じ、沖縄県の自然環境保護やカーボンニュートラルを牽引。また、コンサルティングやキャッシュレス事業拡大により観光産業発展に寄与します。
3. **グループ連携とアライアンスの強化**:2026年の新本店ビルオープンによるグループ集約効果を活かし、連携を強化。県外地銀とのアライアンスも活用し事業基盤を拡大します。
4. **人的資本投資の増強と最適化**:専門性向上への投資継続や複線型人事制度の導入により、主体的に考動する人材を育成します。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は「人こそすべてである」をモットーに、経営戦略に沿った人材ポートフォリオの構築を進めています。役職員一人ひとりの専門性を高めるため、人的資本への積極的な投資を継続し、自律的な学びと越境学習を支援する制度を充実させています。複線型人事制度や希望分野へのチャレンジ制度、外部派遣などを通じ、視野が広く主体的に考動する人材の輩出を目指しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 39.8歳 | 15.6年 | 6,215,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 24.8% |
| 男性育児休業取得率 | 96.2% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 62.9% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 68.8% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 71.5% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、有給休暇平均取得率(全職員)(70.3%)、従業員一人当たりの平均研修時間(13.7時間)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 信用リスク
沖縄県経済や特定の大口先・業種の動向により、取引先の財務状況が悪化した場合、不良債権や与信関連費用が増加する可能性があります。同社の貸出ポートフォリオは約6割が不動産関連であり、不動産市況の影響を受けやすい特性があります。また、担保価値の下落や不動産市場の流動性低下もリスク要因です。
■(2) 市場関連リスク
金利、有価証券価格、為替等の変動により保有資産の価値が変動し、損失を被る可能性があります。金利上昇による債券評価損や逆ザヤの発生、株価下落による減損、予期せぬ為替変動などが業績に悪影響を及ぼすおそれがあります。同社はVaRによるリスク量計測や限度額設定等により管理を行っています。
■(3) 自己資本比率に係るリスク
事業等に係る各種リスクが顕在化することで、自己資本比率が低下する可能性があります。同社グループは国内基準である4%以上を維持する必要がありますが、これを下回った場合、業務の縮小や停止命令などの行政処分を受ける可能性があります。現在、基準を上回っていますが、リスク・アセットコントロール等により水準維持に努めています。



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