福井銀行 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

福井銀行 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証プライム上場の福井県を地盤とする地方銀行。銀行業務を中心に、リース、カード等の総合金融サービスを展開しています。2025年3月期は、貸出金利息や有価証券利息配当金の増加、役務取引等収益の伸長等により、連結経常収益は増収、経常利益および親会社株主に帰属する当期純利益ともに増益となりました。


※本記事は、株式会社福井銀行 の有価証券報告書(第205期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月19日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 福井銀行ってどんな会社?


福井県を主要な営業基盤とする地方銀行です。地域産業の育成・発展と住民の生活向上を目指し、銀行業務を中心に総合的な金融サービスを提供しています。

(1) 会社概要


1899年12月に設立され、1972年10月に東京・大阪証券取引所市場第二部に上場(翌年第一部指定)しました。2021年10月には株式会社福邦銀行を連結子会社化し、2022年4月に東証プライム市場へ移行しました。2024年10月には株式交換により福邦銀行を完全子会社化し、経営統合を進めています。

連結従業員数は1,741人(単体1,226人)です。大株主構成は、筆頭株主が資産管理業務を行う信託銀行、第2位および第3位は生命保険会社となっており、機関投資家や事業会社が上位を占めています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 8.04%
明治安田生命保険相互会社 4.14%
住友生命保険相互会社 3.19%

(2) 経営陣


同社の役員は男性14名、女性1名の計15名で構成され、女性役員比率は6.6%です。代表執行役頭取は長谷川 英一氏です。社外取締役比率は33.3%です。

氏名 役職 主な経歴
長谷川 英 一 取締役代表執行役頭取 1988年福井銀行入行。法人営業グループマネージャー、富山・敦賀・本店エリア統括店長などを歴任。企画本部長を経て、2022年6月より現職。
林     正 博 取締役代表執行役 1981年福井銀行入行。監査グループマネージャー、取締役兼代表執行役専務などを経て、2015年取締役兼代表執行役頭取に就任。2022年6月より現職。
岡田   伸 取締役常務執行役 1990年福井銀行入行。監査グループマネージャー、市場金融グループマネージャーなどを経て、2022年6月取締役兼常務執行役ALM本部長市場金融グループマネージャー。2023年6月より現職。
吉田 啓 介 取締役常務執行役 1991年福井銀行入行。融資グループ融資チームリーダー、敦賀エリア統括店長、本店エリア統括店長などを歴任。2023年6月取締役兼常務執行役営業支援本部長。2024年6月より現職。
荒 木 健 一 取締役常務執行役 1992年福井銀行入行。経営企画グループブランド戦略室長、高志エリア統括店長、経営企画グループマネージャーなどを歴任。2023年執行役企画本部長。2024年6月より現職。
吉田 正 武 取締役 1989年福井銀行入行。高浜・敦賀・本店エリア統括店長などを歴任。2021年6月より現職。


社外取締役は、南保 勝(元公立大学法人福井県立大学地域経済研究所長)、田川 博己(元株式会社ジェイティービー代表取締役会長)、梅田 景子(九頭竜法律事務所勤務)です。

2. 事業内容


同社グループは、「総合金融サービス業」の単一セグメントで事業を展開しています。

(1) 総合金融サービス(銀行業務)


同社の本店、支店、出張所および連結子会社の福邦銀行において、預金業務、貸出業務、内国為替業務、外国為替業務等を行っています。地域の金融パートナーとして、預金や融資、決済サービスなどを通じて、顧客である地域住民や企業の多様なニーズに応える商品・サービスを提供しています。

収益は、主に貸出金利息、有価証券利息配当金、および各種手数料(役務取引等収益)から構成されます。運営は、同社および連結子会社の株式会社福邦銀行が担っています。

(2) 総合金融サービス(関連業務)


銀行業務を補完・拡充するため、コンサルティング、保証、リース、クレジットカード、コンピュータ関連業務などを行っています。また、人材派遣・紹介、旅行業務、地域産品販売、アプリ運営、投資事業組合財産の運営・管理など、地域活性化に資する多様なサービスも展開しています。

収益は、コンサルティング手数料、保証料、リース料、カード手数料、業務受託手数料などから得ています。運営は、株式会社福井キャピタル&コンサルティング、福井信用保証サービス株式会社、株式会社福銀リース、株式会社福井カード、福井ネット株式会社などの連結子会社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移

当期は増収増益となりました。これは、地域の課題解決業として顧客の真の課題に寄り添い、グループ一体となった支援の結果、利回り改善を図りつつ貸出金利息及び役務取引等収益を増加させたことや、過年度に償却した債権の回収による取立益を計上したことが主な要因です。一方、経常費用は、市場変動を考慮した有価証券ポートフォリオ再構築に向けた国債等債券売却損の計上及び預金利息の増加を主因に増加しました。過去からの趨勢としては、経常収益は堅調に増加しており、経常利益も直近2期で大きく回復・伸長しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
経常収益(億円) 419 458 549 554 644
経常利益(億円) 42 △1 8 56 87
当期純利益(億円) 26 44 18 37 72

(2) 損益計算書

当期は、経常収益が前期比で増加し、経常利益も大幅に増加しました。これは、主に貸出金利息及び役務取引等収益の増加が収益を押し上げたことによります。一方、経常費用は、国債等債券売却損の計上及び預金利息の増加を主因に増加しました。当期純利益も、経常利益の増加に伴い大きく伸長しました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
経常収益 554 644
経常費用 498 557
経常利益 56 87
当期純利益 37 72

(3) 役務取引等収益の内訳

同行の役務取引等収益合計は、当期において前期比で増加しました。これは、非金利収益の強化に向けた取り組みが進展したことを示唆しています。中でも「預金・貸出業務」が最も大きな割合を占めており、同行の基盤となる収益源となっています。次いで「証券関連業務」が大きな割合を占めており、多様な金融サービス提供の一端を担っています。

区分 2024年3月期 2025年3月期
役務取引等収益 合計 115 115
預金・貸出業務 79 79
為替業務 1 1
証券関連業務 23 23
代理業務 11 11


※利益情報は開示がないため記載していません。

(4) キャッシュ・フローと財務指標

福井銀行のキャッシュ・フローは、営業活動による収入が、債券貸借取引受入担保金の増加による収入が貸出金の増加による支出等を上回ったことを主因としています。投資活動では、有価証券の取得による支出が売却・償還による収入を上回りました。財務活動では、配当金の支払い、子会社株式や自己株式の取得による支出がありました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業活動によるキャッシュ・フロー 30 1121
投資活動によるキャッシュ・フロー △2413 △1334
財務活動によるキャッシュ・フロー △10 △24

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は、「地域産業の育成・発展と地域に暮らす人々の豊かな生活の実現」を企業理念として掲げています。その実現に向けて、「職員の満足(働きがい)」「お客さま(地域)のご満足」「株主の方々(投資家のみなさま)のご満足」をバランスよく高める「トライアングル・バランスの実現」を経営理念としています。

(2) 企業文化


役職員が日々の活動において大切にする価値観として、行動理念『「誠実」×「情熱」×「行動」』を掲げています。この理念を心の拠り所とし、地域社会に対する経営のコミットメントを果たしながら、顧客満足度の高い商品・サービスの提供に取り組む文化を持っています。

(3) 経営計画・目標


2032年3月期までの長期経営計画「Fプロジェクト Vision 2032」を掲げ、「地域価値循環モデル」の実現を目指しています。2026年3月期までを期間とする「中期経営計画Ⅰ」では、以下の目標等を設定しています。

* 連結当期純利益:40億円以上
* 連結自己資本比率:7.0%以上
* 連結ROE:3.0%以上
* 中小企業向け貸出残高:8,000億円

(4) 成長戦略と重点施策


福邦銀行との合併を経て、地域の課題解決業として進化し、「地域価値循環モデル」の実現を目指しています。「中期経営計画Ⅰ」の延長期間である2025年度は、顧客の事業成長や資産形成に向けた伴走支援の実践、ソリューション・ネットワークの構築による活力ある地域の実現、職員のウェルビーイングの実現に取り組んでいきます。

* 法人顧客:対話機会の増加と課題解決力の活用による金融基盤の拡大
* 個人顧客:人とデジタルの利便性を両立したチャネル提供、資産運用・承継のコンサルティング
* 地域活性化:行政等と連携した面的支援、交流人口増加やDX推進、脱炭素化への取り組み

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「銀行及びグループ会社は職員が仕事を通じて成長するステージであり、当行グループの成長は、職員の成長によって決まる」という考えのもと、人的資本経営を推進しています。人事ポリシーとして「厳しさと温かさ」を掲げ、心理的安全性を確保しつつ、高い目標へのチャレンジを促す環境づくりを行っています。また、能動的に学び、自らキャリア形成ができる人材の育成を目指しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 41.7歳 16.1年 5,459,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 17.0%
男性育児休業取得率 89.3%
男女賃金差異(全労働者) 55.0%
男女賃金差異(正規雇用) 60.1%
男女賃金差異(非正規) 71.0%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、人的投資額(105百万円)、定着率(97.3%)、職員満足度(ウェルビーイング調査結果)(57.0%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 経営統合に関するリスク


福井銀行と福邦銀行の経営統合において、サービス・商品開発の遅れや効果的な人員・営業拠点配置の遅延等により、期待した統合効果が十分に発揮できない可能性があります。また、業務やシステムの統一化に伴い、想定外の追加費用が発生するリスクもあります。

(2) 信用リスク


景気動向や融資先の経営状況、不動産価格の変動等により、不良債権や与信関係費用が増加し、業績や自己資本に悪影響を及ぼす可能性があります。また、貸出先の状況変化や担保価値の下落により、貸倒引当金の積増しが必要となるリスクがあります。

(3) 市場リスク


金利、株価、為替等の変動により、保有する金融商品の価値が変動し、損失が生じる可能性があります。特に、金利上昇による国債等の価値下落や株価下落による保有株式の損失、円高進行による為替差損などが業績に影響を与える可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。