福井銀行 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

福井銀行 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

福井銀行は東京証券取引所プライム市場に上場し、銀行業務を中心にリースやクレジットカードなどの総合金融サービス業を展開しています。直近の業績は、貸出金利息の増加や株式等売却益の増加などを背景に、経常収益および経常利益ともに前期を上回る増収増益を達成し、順調な成長基盤を維持しています。


※本記事は、株式会社福井銀行の有価証券報告書(第206期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 福井銀行ってどんな会社?


福井銀行は、福井県を基盤に銀行業務を中心とした総合金融サービスを提供し、地域の課題解決と持続的な発展に貢献しています。

(1) 会社概要


同社は1899年に設立され、近代的経営へ移行を図る繊維業界へ資金を供給し、地元産業の育成発展を支えてきました。1973年に東京証券取引所および大阪証券取引所の市場第一部に指定されました。近年では、2021年に福邦銀行を連結子会社化し、2026年5月には同社を吸収合併して新たなスタートを切っています。

現在の従業員数は連結で1,732名、単体で1,235名体制です。筆頭株主は資産管理業務を行う信託銀行であり、第2位は生命保険会社、第3位も資産管理業務を行う信託銀行となっています。地域金融機関として強固な経営基盤を構築しています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 8.21%
明治安田生命保険相互会社 4.13%
日本カストディ銀行(信託口) 3.39%

(2) 経営陣


同社の役員は男性15名、女性2名の計17名で構成され、女性役員比率は11.7%です。代表者は取締役会長兼代表執行役の林正博氏、および取締役兼代表執行役頭取の長谷川英一氏が務めています。取締役11名のうち4名を社外取締役が占めています。

氏名 役職 主な経歴
林正博 取締役会長兼代表執行役 1981年福井銀行入行。2014年取締役兼代表執行役専務、2015年取締役兼代表執行役頭取を経て、2022年より現職。
長谷川英一 取締役兼代表執行役頭取 1988年福井銀行入行。2020年取締役兼代表執行役常務、2021年取締役兼代表執行役専務を経て、2022年より現職。
岡田伸 取締役兼常務執行役 1990年福井銀行入行。2021年執行役ALM副本部長市場金融グループマネージャーなどを経て、2023年より現職。
吉田啓介 取締役兼常務執行役 1991年福井銀行入行。2021年執行役本店エリア統括店長兼本店営業部長などを経て、2024年より現職。
荒木健一 取締役兼常務執行役 1992年福井銀行入行。2022年執行役企画副本部長経営企画グループマネージャーなどを経て、2024年より現職。
小林義史 取締役兼常務執行役 1992年福井銀行入行。2022年執行役兼福邦銀行取締役などを経て、2026年より現職。
藤原正嗣 取締役 1991年福井銀行入行。2022年執行役ALM副本部長リスク統括グループマネージャーなどを経て、2025年より現職。


社外取締役は、田川博己氏(WTTCアンバサダー・指名委員長)、梅田景子氏(九頭竜法律事務所勤務・監査委員長)、岡﨑英一氏(放送大学福井学習センター所長)、瀧波史織氏(マウンテン・パシフィック・インベストメント・アドバイザーズシニアアドバイザー・報酬委員長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「総合金融サービス業」の単一セグメントで事業を展開しています。

(1) 銀行業務


預金業務、貸出業務、内国・外国為替業務などの販売業務を行い、地域の金融パートナーとして多様な商品やサービスを提供しています。個人から法人まで幅広い顧客を対象としています。

収益源は貸出金利息や各種手数料などです。運営は主に福井銀行が行っており、福邦銀行と合併し地域に密着したサービス基盤をさらに強化しています。

(2) その他金融サービス業務


コンサルティング、信用保証、リース、クレジットカード業務などを通じて、顧客の多様なニーズに応える付加価値の高いソリューションを提供しています。

収益源はリース料や保証料、コンサルティング手数料などです。福井キャピタル&コンサルティング、福井信用保証サービス、福銀リースなどの子会社が各専門分野を運営しています。

(3) 非金融・周辺業務


コンピュータ関連業務、労働者派遣、有料職業紹介、旅行業務、地域資源の販売、スマートフォンアプリの企画運営など、金融の枠を超えたサービスを提供しています。

収益源はシステム利用料、人材紹介手数料、商品販売代金などです。福井ネット、福井キャリアマネジメント、ふくいヒトモノデザインなどの子会社がそれぞれの事業を運営しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5年間の業績推移を見ると、経常利益および当期利益は一貫して拡大傾向にあり、順調な成長を遂げています。特に直近では大幅な増益を記録しており、収益基盤の強化や経営統合によるシナジー効果が利益に大きく貢献していることがうかがえます。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上収益(または売上高) - - - - -
経常利益 -8億円 8億円 56億円 87億円 134億円
利益率(%) - - - - -
当期利益(親会社所有者帰属) 5億円 30億円 30億円 68億円 105億円

(2) 損益計算書


損益の状況を分析すると、税引前利益から最終的な当期利益に至るまで、着実な増益基盤が構築されています。貸出金利息の増加をはじめとする資金運用収益の伸びや、有価証券関連の収益増が全体の利益水準を押し上げていることが確認できます。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 - -
売上総利益 - -
売上総利益率(%) - -

(4) キャッシュ・フローと財務指標


なお、同社は金融・証券関連事業を主力としているため、営業CFのマイナスは主に貸出金および借用金の増加等によるものであり、直ちに業績悪化を意味するものではありません。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 1,121億円 -506億円
投資CF -1,334億円 -191億円
財務CF -24億円 -16億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は5.9%で市場平均を下回り、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も3.5%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「地域産業の育成・発展と地域に暮らす人々の豊かな生活の実現」を企業理念として掲げています。社会に対するコミットメントとして、職員・顧客・株主の3者の満足度をバランスよく高める「トライアングル・バランスの実現」を経営理念に置き、地域密着の金融サービスを提供しています。また、新たなスローガンとして「感動の瞬間(とき)を、ともに。」を制定しています。

(2) 企業文化


役職員が日々の活動において大切にする価値観として、『「誠実」×「情熱」×「責任」×「協働」』という行動理念を掲げています。また、求める人財像として「謙虚・自責・意欲・執念・主体・挑戦」を定め、これらの価値観に基づく行動を人事評価でも重視しています。地域やお客さまのチャレンジに伴走し、共に成長していく風土が形成されています。

(3) 経営計画・目標


長期ビジョン「Vision 2032」の実現に向け、2026年4月から「中期経営計画Ⅱ」をスタートさせています。「地域の課題解決業」として進化し、人財の力で地域のポテンシャルを顕在化して「感動体験」を提供する3年間と位置づけています。

* 連結当期純利益:100億円以上
* 連結コアOHR:60.0%以下
* 連結ROE:6.0%以上
* 連結自己資本比率:9.0%以上

(4) 成長戦略と重点施策


重要課題を解決し持続的な成長を実現するため、「県内マーケットの深掘り」「事業領域の拡大」「県外マーケットとの連携」という3つの成長戦略を実行します。さらに、これらを実行する「人財の力」を最大化すべく、「ウェルビーイング」「DEI」「リスキリング」「DX/AI」「パートナーシップ」の5つの成長ドライバーを強化し、経営基盤の拡充を図ります。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


職員を最大の経営資源と位置づけ、一人ひとりの成長とウェルビーイングの向上を起点とした「地域価値循環モデル」の実現を目指しています。自律的なキャリア形成を促すため、階層別・業務別研修や外部トレーニー制度、e-ラーニングの拡充などの教育環境を整備しています。さらに、コンサルティングやDX/AIといった戦略分野への人員再配置を進めるとともに、多様な採用チャネルを通じて専門人材の確保に注力しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 41.6歳 16.0年 6,041,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
管理職に占める女性労働者の割合 18.2%
男性労働者の育児休業取得率 141.7%
労働者の男女の賃金の差異(全労働者) 56.2%
労働者の男女の賃金の差異(正規雇用労働者) 61.1%
労働者の男女の賃金の差異(パート・有期労働者) 72.6%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、アブセンティーズム(3.0日)、プレゼンティーズム(78.2%)、ウェルビーイング比率(60.9%)、人的資本投資額(2.1億円)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 地域経済・社会環境の変化による影響


同社は福井県を主要な営業基盤としているため、同地域の人口減少や少子高齢化の進展、地域産業や経済の停滞といった環境変化が、収益基盤や営業地盤に直接的な影響を及ぼす可能性があります。また、地政学リスクの長期化に伴う資源高や景気減速が取引先企業の業績悪化につながり、与信関係費用が増加するリスクを認識しています。

(2) 経営統合に伴うリスク


福邦銀行との合併による新体制への移行において、想定された経営統合効果を十分に発揮できない可能性があります。また、他金融機関や異業種参入等による競争激化が進む中で、地域への提供価値を向上しきれなかった場合、収益基盤の縮小や競争力低下につながるリスクが存在します。

(3) デジタル・システムに関するリスク


金融サービスのデジタル化対応が遅れた場合、顧客の利便性が損なわれ競争力の低下に直結する可能性があります。さらに、外部からのサイバー攻撃や不正侵入、大規模なシステム障害などが発生した場合、重要業務の停止や顧客情報の漏えいが生じ、社会的信用の失墜や損害賠償による業績悪化を招くリスクを想定しています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。