※本記事は、株式会社山口フィナンシャルグループ の有価証券報告書(第19期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月20日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 山口フィナンシャルグループってどんな会社?
山口県、広島県、北九州市を主要基盤とする総合金融グループです。銀行業務を中核に地域密着型のサービスを提供しています。
■(1) 会社概要
2006年に山口銀行ともみじホールディングスの経営統合により設立され、東証一部(現プライム)に上場しました。2011年には北九州銀行を開業し、3行体制を確立。その後、2019年に人材紹介を行うYMキャリアを設立、2023年にはワイエムリースを完全子会社化するなどグループ機能を拡大しています。2024年にはドリームインキュベータを持分法適用関連会社化し、コンサルティング機能を強化しています。
連結従業員数は3,745名(単体531名)です。筆頭株主は資産管理業務を行う日本マスタートラスト信託銀行(信託口)で、第2位は日本カストディ銀行(信託口)、第3位は明治安田生命保険となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行株式会社(信託口) | 12.24% |
| 株式会社日本カストディ銀行(信託口) | 3.94% |
| 明治安田生命保険相互会社 | 2.70% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性8名、女性3名の計11名で構成され、女性役員比率は27.3%です。代表取締役社長CEOは椋梨敬介氏です。社外取締役比率は54.5%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 椋梨 敬介 | 代表取締役社長CEO | 1995年山口銀行入行。北九州銀行支店長、山口銀行事業性評価部長等を歴任。2020年山口フィナンシャルグループ社長グループCOOを経て、2021年より現職。 |
| 曽我 德將 | 取締役 | 1987年山口銀行入行。同行東京支店長、山口フィナンシャルグループ執行役員、ワイエムコンサルティング社長等を歴任。2022年より山口銀行頭取および山口フィナンシャルグループ取締役。 |
| 平中 啓文 | 取締役 | 1991年山口銀行入行。北九州銀行支店長、山口フィナンシャルグループ執行役員等を歴任。2024年よりもみじ銀行頭取および山口フィナンシャルグループ取締役。 |
| 嘉藤 晃玉 | 取締役 | 1984年山口銀行入行。北九州銀行経営管理部長、専務等を歴任。2019年より北九州銀行頭取。2022年より山口フィナンシャルグループ取締役。 |
社外取締役は、末松弥奈子(ジャパンタイムズ会長兼社長)、山本謙(UBE取締役)、三上智子(日本マイクロソフト執行役員)、小城武彦(日本共創プラットフォーム取締役)、永沢裕美子(永沢ビル代表取締役)、敷地健康(弁護士法人北浜法律事務所代表社員)です。
2. 事業内容
同社グループは、「銀行業」および「その他」事業を展開しています。
■(1) 銀行業
山口銀行、もみじ銀行、北九州銀行の3行において、預金業務、貸出業務、内国為替業務、外国為替業務を行っています。また、商品有価証券売買業務や有価証券投資業務なども行っており、同社グループの中核事業と位置付けられています。本店のほか支店網を通じて、地域顧客への金融サービスを提供しています。
収益は主に、顧客からの貸出金利息、有価証券の利息配当金、および各種手数料収入から構成されています。運営は、株式会社山口銀行、株式会社もみじ銀行、株式会社北九州銀行の各事業会社が行っています。
■(2) その他
銀行業務以外に、証券業務、クレジットカード業務、リース業務、コンサルティング業務などの多角的な金融・非金融サービスを提供しています。地域商社や人材紹介、ベンチャーキャピタル業務なども含み、地域の課題解決に向けた幅広い事業を展開しています。
収益は、証券取引の手数料、クレジットカードの年会費・取扱手数料、リース料、コンサルティングフィーなどから構成されています。運営は、ワイエム証券株式会社、ワイエムリース株式会社、ワイエムコンサルティング株式会社などのグループ各社が担当しています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
当期は増収増益となりました。経常収益は、貸出金利息や有価証券利息配当金の増加等を主因として、前期比で増加しました。一方、経常費用は、資金調達費用や国債等債券売却損の増加等を主因として、前期比で増加しました。その結果、経常利益、親会社株主に帰属する当期純利益ともに増加し、過去最高益を更新しました。過去数期においては、一時的なマイナスを挟みつつも、全体としては収益が回復・伸長する傾向が見られます。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 経常収益(億円) | 18,326 | 14,702 | 15,732 | 18,475 | 21,344 |
| 経常利益(億円) | 3,697 | △76 | 2,570 | 3,728 | 5,244 |
| 当期純利益(億円) | 2,496 | △1,300 | 1,789 | 2,522 | 3,535 |
■(2) キャッシュ・フローと財務指標
当期は、貸出金利息や有価証券利息配当金の増加等を主因として経常収益が増加しました。経常費用は、資金調達費用や国債等債券売却損の増加等を主因として増加しましたが、収益の伸びが費用を上回ったため、経常利益は前期比で大幅に増加しました。当期純利益も同様に増加しました。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 経常収益 | 18,475 | 21,344 |
| 経常費用 | 14,747 | 16,100 |
| 経常利益 | 3,728 | 5,244 |
| 当期純利益 | 2,522 | 3,535 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「使命・存在意義(パーパス)」として「地域の豊かな未来を共創する」を掲げています。また、このパーパスを追求する中であるべき姿として「将来のあるべき姿(ビジョン)」を「地域に選ばれ、地域の信頼に応える、地域価値向上企業グループ」と定めています。
■(2) 企業文化
同社は、パーパスを中心とした事業活動に取り組む上での基本的な姿勢(経営方針)として「健全なる積極進取」を掲げています。経営の透明・公正かつ迅速・果断な意思決定を行うことで、持続的な成長と中長期的な企業価値の向上を図る文化を重視しています。
■(3) 経営計画・目標
2025年度から2029年度までの「YMFG中期経営計画」を策定しています。バックキャスティングで策定されたこの計画では、最終年度である2029年度に向けた数値目標を設定しています。
* 親会社株主に帰属する当期純利益:600億円
* ROE(純資産ベース):8.0%程度
* ROE(株主資本ベース):8.5%程度
* RORA(親会社株主に帰属する当期純利益ベース):1.0%以上
* OHR:50%程度
■(4) 成長戦略と重点施策
「地域課題解決のプラットフォーマー」への進化に向けた「同舟共命型ビジネスモデル」の確立を目指します。具体的には、地域企業とリスクを共有し総合サポートを行うビジネスモデルの確立、RORAマネジメントによる金融ビジネスの高度化、DX投資やシステム統合によるマルチバンク・シングルプラットフォームの深化を3つのエンジンとして推進します。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
経営戦略と連動した「人財マネジメント戦略」を策定し、社員の「働きがい」と「働きやすさ」を追求しています。「働きがい」においては「社員のキャリア自律度向上」を掲げ、自己啓発の推奨や自律的なキャリア形成を支援。「働きやすさ」においては「社員のウェルビーイング向上」を目指し、DE&Iの浸透や健康経営を促進しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 44.9歳 | 19.1年 | 7,871,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 8.2% |
| 男性育児休業取得率 | 103.8% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 49.9% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 54.5% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 52.4% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性管理職候補比率(12.8%)、女性係長職比率(43.3%)、女性社員比率(46.3%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 信用リスクと地域経済の影響
山口県、広島県及び北九州市を主たる営業基盤としているため、同地域の経済状況の影響を強く受ける傾向にあります。国内外の景気悪化や地元経済の低迷、不動産価格の変動等により、取引先の経営状況が悪化した場合、不良債権や与信関係費用が増加し、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 市場リスクと金利変動
銀行業を主たる業務としており、市場金利の動向が収益に影響を与えます。資金運用と調達のミスマッチがある状況で予期せぬ金利変動が生じた場合や、保有する有価証券の価格が大幅に下落した場合には、評価損や減損が発生し、経営成績および財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(3) オペレーショナル・リスク
事務ミスや不正、システム障害、サイバー攻撃、情報漏洩、自然災害など、業務運営上の様々な事象により損失を被るリスクがあります。特にシステム障害やサイバーセキュリティ事案が発生した場合、業務停止や損害賠償、社会的信用の失墜につながり、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。



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