山口フィナンシャルグループ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

山口フィナンシャルグループ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

山口フィナンシャルグループは東京証券取引所プライム市場に上場し、山口銀行、もみじ銀行、北九州銀行を中核として、証券やクレジットカード、コンサルティング等の総合金融サービスを展開しています。直近の業績では資金調達費用の増加等から経常減益となった一方、有価証券運用等の影響で最終的な当期純利益は増益を確保しました。


※本記事は、株式会社山口フィナンシャルグループの有価証券報告書(第20期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月18日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 山口フィナンシャルグループってどんな会社?


山口県、広島県、福岡県を地盤とする3つの銀行を中核に、証券やクレジットカード等の総合金融サービスを提供しています。

(1) 会社概要


同社は2006年、山口銀行ともみじホールディングスの共同株式移転により設立され、上場しました。2011年には北九州銀行が営業を開始しています。近年はコンサルティングや地域共創事業を強化しており、2025年には子会社4社を統合してYMFGグロースパートナーズを始動させるなど事業領域を拡大しています。

従業員数は連結3,459名、単体529名です。筆頭株主は信託業務を行う日本マスタートラスト信託銀行(信託口)で、第2位も同じく信託業務を行う日本カストディ銀行(信託口)となっています。第3位には事業会社である明治安田生命保険が名を連ねています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 11.91%
日本カストディ銀行(信託口) 3.66%
明治安田生命保険(常任代理人 日本カストディ銀行) 2.77%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性3名の計11名で構成され、女性役員比率は27.2%です。代表取締役社長CEOは椋梨敬介氏が務めています。社外取締役比率は54.5%(11名中6名)です。

氏名 役職 主な経歴
椋梨 敬介 代表取締役社長CEO 1995年山口銀行入行。北九州銀行赤坂門支店長等を経て2019年執行役員。2020年代表取締役社長グループCOOを経て、2021年より現職。
曽我 德將 取締役 1987年山口銀行入行。東京支店長等を経て2019年同社常務執行役員。もみじ銀行専務取締役等を経て、2022年より同社取締役、および山口銀行取締役頭取に就任し現職。
平中 啓文 取締役 1991年山口銀行入行。山口銀行部長等を経て2017年同社執行役員。2024年もみじ銀行取締役頭取に就任し、同年より同社取締役。
嘉藤 晃玉 取締役 1984年山口銀行入行。北九州銀行専務等を経て2019年北九州銀行取締役頭取。2016年より同社取締役、2026年より北九州銀行取締役会長。


社外取締役は、山本謙(元宇部興産社長・グループCEO)、小城武彦(元丸善社長)、齋藤美帆(元シンガポール政府投資公社)、岡田直子(ネットワークコミュニケーションズ代表取締役)、永沢裕美子(永沢ビル代表取締役)、敷地健康(弁護士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「銀行業」および「その他」の事業を展開しています。

(1) 銀行業


同社グループの中核として、総合的な金融サービスを提供しています。主に地域の中小企業や個人顧客を対象に、資金調達、資産運用、事業承継など多様化する課題の解決をサポートしています。

収益は、顧客への貸出金利息や手数料、および有価証券運用による収益などが柱です。事業の運営は、各地域に根ざした営業基盤を持つ山口銀行、もみじ銀行、北九州銀行がそれぞれ担っています。

(2) その他


銀行業以外の領域において、地域経済の活性化や顧客の成長支援を目指す多様なサービスを提供しています。具体的には、証券業務、クレジットカード業務、リース業務、コンサルティング業務などを展開しています。

収益は、証券取引に伴う手数料、クレジットカードの決済手数料、リース料やコンサルティング報酬などから得ています。運営は、ワイエム証券、やまぎんカード、ワイエムリース、YMFGグロースパートナーズなどのグループ各社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、経常利益は2022年3月期の赤字から回復し、2025年3月期にかけて順調に拡大しました。2026年3月期は経常減益となったものの、有価証券の売却益などにより当期利益は大幅な増益を達成しており、全体として収益力の改善傾向が続いています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
経常利益 -76億円 257億円 373億円 524億円 450億円
当期利益(親会社所有者帰属) -9億円 22億円 37億円 166億円 243億円

(2) 損益計算書


同社の営業利益は、直近の期間において着実な成長を示しています。資金調達費用の増加等の影響を受けたものの、貸出金利息や有価証券利息配当金の増加が寄与し、本業の収益力を示す営業利益の拡大につながりました。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業利益 174億円 217億円


販売費及び一般管理費のうち、給料・手当が54億円(構成比55%)、社会保険料が7億円(同7%)を占めています。

(3) セグメント収益


同社は銀行業の単一セグメントですが、サービスごとの収益構成を見ると、貸出業務と有価証券投資業務が主力となっています。直近の期間では、貸出業務が順調に伸びたことに加え、有価証券投資業務の収益が大きく拡大し、全体の増収を牽引しました。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
貸出業務 1,134億円 1,231億円
有価証券投資業務 466億円 746億円
役務取引等業務 287億円 276億円
その他 247億円 366億円
連結(合計) 2,134億円 2,619億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


なお、同社は金融・証券関連事業を主力としているため、営業CFのマイナスは主に貸出金の増加(事業拡大)によるものであり、直ちに業績悪化を意味するものではありません。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 6,151億円 -2,451億円
投資CF -1,466億円 929億円
財務CF 36億円 -464億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は5.1%で市場平均を下回り、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も5.1%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「地域の豊かな未来を共創する」という使命・存在意義(パーパス)を掲げています。また、このパーパスを追求する中でのあるべき姿として、「地域に選ばれ、地域の信頼に応える、地域価値向上企業グループ」というビジョンを設定し、事業活動を展開しています。

(2) 企業文化


パーパスを中心とした事業活動に取り組む上での基本的な姿勢として、「健全なる積極進取」という経営方針を掲げています。経営の透明かつ公正さを保ちつつ、迅速・果断な意思決定を行うことで、持続的な成長と中長期的な企業価値の向上を図る文化を重視しています。

(3) 経営計画・目標


「YMFG中期経営計画(2025年度〜2029年度)」において、資本コストを上回る収益性の達成を目指しています。最終年度となる2029年度に向け、具体的な財務目標を設定し、資本の効率性向上とコスト構造の見直しに取り組んでいます。

* 親会社株主に帰属する当期純利益:600億円
* ROE(純資産ベース):8.0%程度
* RORA:1.0%以上
* OHR:50%程度

(4) 成長戦略と重点施策


地域企業の事業成長と課題解決に伴走する「同舟共命型ビジネスモデル」の確立を重点施策としています。融資だけでなくエクイティや各種ソリューションを複合的に提供する「地域課題解決のプラットフォーマー」への進化を目指すほか、DX投資やシステム統合によるグループ経営の一体化・効率化を推進しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「働きがい」と「働きやすさ」を追求し、経営戦略の実現に向けた人材ポートフォリオの構築を目指しています。「働きがい」の面では社員のキャリア自律度の向上を促す教育体系の整備を進め、「働きやすさ」の面ではウェルビーイング向上に向けて多様な人材の活躍を推進する人事制度の改定や健康経営に取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 45.1歳 19.3年 8,371,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 10.3%
男性育児休業取得率 100.0%
男女賃金差異(全労働者) 51.1%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 56.0%
男女賃金差異(有期労働者) 53.1%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、多様性人財管理職比率(17.8%)、制度休暇取得率(98.3%)、プレゼンティーイズム数値(81.0%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 信用リスクの高まりによる与信関係費用の増加


国内外の景気悪化や自然災害等の発生により取引先の経営状況が悪化した場合、不良債権の増加や貸倒引当金の積み増しが必要となり、同社グループの経営成績や財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

(2) 金利や有価証券価格の変動による市場リスク


資金運用と調達の間にミスマッチが生じている状況で予期せぬ金利変動が起きた場合や、保有する市場性有価証券の価格が大幅に下落して評価損等が発生した場合、業績に悪影響を与えるリスクがあります。

(3) システム障害やサイバー攻撃によるオペレーショナル・リスク


コンピュータシステムの停止や誤作動、サイバー空間を経由した不正侵入や情報漏洩が発生した場合、業務停止に伴う損害賠償負担や社会的信用の失墜を招き、経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

(4) 金融業界における競争激化のリスク


金融制度の規制緩和や地域金融機関の再編、他業態からの金融分野への参入により競争環境が激化しています。営業基盤において他社に対して競争優位性を確保できない場合、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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