#栃木銀行転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態
※本記事は、株式会社栃木銀行の有価証券報告書(第122期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 栃木銀行ってどんな会社?
栃木県を地盤とする地方銀行です。銀行業務を中心に、証券、リース、カード業務などの総合金融サービスを提供しています。
■(1) 会社概要
1942年12月に3社合併により栃木無尽として創立され、1952年7月に相互銀行法の免許を受け株式会社栃木相互銀行へ商号変更しました。1984年9月に東京証券取引所市場第一部へ上場を果たし、1989年2月に普通銀行へ転換して現在の株式会社栃木銀行となりました。2017年には宇都宮証券を連結子会社化しています。
連結従業員数は1,513人、単体では1,282人です。筆頭株主は資産管理業務を行う信託銀行で、第2位も同様に信託銀行、第3位には行員持株会が名を連ねています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 11.99% |
| 日本カストディ銀行 (信託口) | 4.82% |
| 栃木銀行行員持株会 | 4.19% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性14名、女性2名の計16名で構成され、女性役員比率は12.5%です。代表取締役頭取は仲田裕之氏です。社外取締役比率は31.3%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 黒本 淳之介 | 取締役会長(代表取締役) | 1981年4月同行入行。人事部長、経営企画部長を経て2014年常務、2015年専務、2016年頭取に就任。2024年6月より現職。 |
| 仲田 裕 之 | 取締役頭取(代表取締役) | 1988年4月同行入行。法人営業部企業支援室長、経営企画部長などを歴任。2023年常務を経て2024年6月より現職。 |
| 猪俣 佳 史 | 取締役副頭取 | 1983年4月同行入行。法人営業部長、経営企画部長、専務取締役などを経て2022年6月より現職。 |
| 富川 善 守 | 専務取締役 | 1985年4月同行入行。金融サービス部長、法人営業部長、常務取締役などを経て2024年6月より現職。 |
| 荻原 孝 志 | 常務取締役 | 1990年4月同行入行。監査部長、経営企画部長などを歴任。2024年6月より現職。 |
| 砂山 直 久 | 取締役コンプライアンス 統括部長 | 1987年4月同行入行。事務システム部長、営業統括部長を経て2024年6月より現職。 |
| 大橋 重 信 | 取締役宇都宮東支店長 | 1985年4月同行入行。栃木支店長、越谷支店長などを経て2023年6月より現職。 |
社外取締役は、亀岡晶子(弁護士)、関根淳(元日本銀行松本支店長)、大谷恭久(元JTB常務執行役員)、荒川政利(元栃木県教育委員会教育長)、吉澤一子(公認会計士)です。
2. 事業内容
同社グループは、「銀行業」「金融商品取引業」および「その他」事業を展開しています。
■(1) 銀行業
預金業務、貸出業務、内国・外国為替業務、有価証券投資業務など、銀行としての中心的業務を行っています。また、証券投資信託や保険商品の窓口販売なども手掛けています。
資金の運用収益や役務取引等収益が主な収益源です。運営は同社および、銀行事務代行業務を行う株式会社とちぎんビジネスサービス等が担っています。
■(2) 金融商品取引業
有価証券の売買や、その媒介、取次、代理業務、募集の取扱いなどを行っています。顧客の資産形成ニーズに対応した商品提供を行っています。
有価証券の売買等に伴う手数料などが主な収益源です。運営は連結子会社であるとちぎんTT証券株式会社が行っています。
■(3) その他
各種機器等のリース業務、住宅ローン等の信用保証業務、クレジットカード業務、再生可能エネルギー発電・販売およびコンサルティング業務などを行っています。
リース料、信用保証料、カード年会費、売電収入などが収益源です。運営は株式会社とちぎんリーシング、株式会社とちぎんカード・サービス、株式会社クリーンエナジー・ソリューションズ等が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
当期は、経常収益が微減となったものの、経常費用が大幅に増加したことにより、経常利益および当期純利益が大きくマイナスとなりました。これは、主に有価証券の売却を前倒しで行ったことによる影響が大きいです。過去数期においては、経常収益は増加傾向で推移していましたが、当期は経常費用の大幅な増加により、利益面で厳しい結果となりました。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 経常収益(億円) | 402 | 416 | 452 | 453 | 451 |
| 経常利益(億円) | 45 | 56 | 51 | 42 | △236 |
| 当期純利益(億円) | 21 | 36 | 27 | 21 | △223 |
■(2) 損益計算書
当期の経常収益は、前期比で微減となりました。一方、経常費用は、国債等債券売却損の計上や預金利息の増加などにより、前期比で大幅に増加しました。この結果、経常利益は前期から大きく減少し、マイナスとなりました。当期純利益も同様に、前期から大幅な減少となりました。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 経常収益 | 453 | 451 |
| 経常費用 | 410 | 687 |
| 経常利益 | 42 | △236 |
| 当期純利益 | 21 | △223 |
■(3) 役務取引等収益の内訳
当期の役務取引等収益合計は、前期比で増加しました。このうち、最も規模が大きいのは「預金・貸出業務」であり、前期から増加しています。次いで規模が大きいのは「為替業務」で、こちらも前期から増加しました。
| 区分 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 役務取引等収益 合計 | 99 | 104 |
| 預金・貸出業務 | 22 | 23 |
| 為替業務 | 14 | 15 |
| 証券関連業務 | 1 | 1 |
| 代理業務 | 8 | 7 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
栃木銀行は、顧客からの預金を主な原資として、個人・中小企業向け貸出を中心に積極的な資金供給を行っています。営業活動によるキャッシュ・フローは、貸出金の増加などにより減少しました。一方、有価証券の売却などを進めた結果、投資活動によるキャッシュ・フローは大幅に増加しました。配当金の支払いなどを行った財務活動によるキャッシュ・フローは、わずかに減少しました。これらの結果、現金及び現金同等物の期末残高は増加し、十分な流動性を確保しています。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業活動によるキャッシュ・フロー | 145 | △977 |
| 投資活動によるキャッシュ・フロー | △5 | 2,106 |
| 財務活動によるキャッシュ・フロー | △6 | △7 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
「豊かな地域社会づくりに貢献し、信頼される銀行を目指します」「新たな時代に柔軟に対応できる強い体力のある銀行として発展します」「明るい働きがいのある職場を作ります」を経営理念に掲げ、地域金融機関として地域の発展とともに歩むことを使命としています。
■(2) 企業文化
「困りごとを『ありがとう』に変えながら、“笑顔”と“幸せ”を守りつづける」をパーパス(存在意義)として制定しています。また、「『リレーション』と『ソリューション』で、地域の未来を共創する企業グループ」を長期ビジョンに掲げ、地域や顧客と顔の見える関係を築くことを重視しています。
■(3) 経営計画・目標
第11次中期経営計画において、「新たな価値提供の実現」をテーマに掲げています。最終年度となる2026年3月期の経営目標として、以下の数値を設定しています。
* 当期純利益:55億円以上
* コア業務純益(投信解約損益除く):85億円以上
* 自己資本比率(連結):9%台後半
* ROE(連結、株主資本ベース):3.0%以上
■(4) 成長戦略と重点施策
「収益力強化」「体制強化」「人的資本投資の強化」を3つの基本戦略とし、人材、DX、システム、店舗等へ積極的に成長投資を行います。「徹底した地域への信用創造」と「既存の金融の枠組みを超えた新しい事業領域への挑戦」を図り、対話を重視した訪問型営業の強化や、コンサルティング機能の発揮に注力します。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「人材育成」「公正な評価」「健康経営」「人権尊重」を通じて、働きやすく働きがいのある職場環境を整備する方針です。自律的な成長を支援するとともに、多様な人材が能力を発揮できる企業風土をつくり、新たな価値を提供できる人材の育成に注力しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 40.8歳 | 18.0年 | 6,391,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 16.4% |
| 男性育児休業取得率 | 93.8% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 50.3% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 61.7% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 53.1% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、有給休暇取得率(53.8%)、ワークエンゲージメント(3.20)、正規雇用労働者の中途採用比率(19%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 信用リスク
営業基盤である栃木県ならびに埼玉県の経済情勢が悪化した場合、貸出先の業況悪化による債務者区分の下方遷移や担保価値の下落が生じ、不良債権及び与信関係費用が増加することで、同社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 市場リスク
金利、為替、株価等の変動により、保有する有価証券等の価値が下落するリスクがあります。特に、大幅な価格下落による評価損の発生や減損処理、金利上昇による債券ポートフォリオの価値減少などが、業績や自己資本比率に影響を与える可能性があります。
■(3) 気候変動に関わるリスク
異常気象による自然災害で担保物件が毀損する物理的リスクや、脱炭素社会への移行に伴う規制強化等で融資先の経営が悪化する移行リスクがあります。これらにより与信関係費用が増加する可能性があるほか、同社の取り組みが不十分とみなされた場合の企業価値低下リスクもあります。



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