※本記事は、株式会社栃木銀行の有価証券報告書(第123期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月19日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 栃木銀行ってどんな会社?
栃木県を地盤として銀行業務を中心に多様な金融サービスを展開する地方銀行です。
■(1) 会社概要
1942年に3社の合併により栃木無尽として創立され、1952年に相互銀行法に基づき栃木相互銀行へと商号を変更しました。1982年に東京証券取引所市場第二部へ上場し、1984年には同市場第一部へ指定替されています。1989年に普通銀行へ転換して現在の栃木銀行に商号を変更しました。近年では、2017年に宇都宮証券(現・とちぎんTT証券)を連結子会社化するなど、金融サービスの拡充を進めています。
同社グループは、連結で1,501名、単体で1,283名の従業員を擁しています。筆頭株主ならびに第2位、第3位株主は、いずれも資産管理業務や決済業務等を行う信託銀行等が名を連ねています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 13.45% |
| 日本カストディ銀行(信託口) | 5.00% |
| STATE STREET BANK AND TRUST COMPANY 505001 | 4.05% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性12名、女性2名の計14名で構成され、女性役員比率は14.2%です。取締役頭取の仲田裕之氏が代表を務めており、取締役の半数を社外取締役が占めています。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 仲田裕之 | 取締役頭取(代表取締役) | 1988年同行入行。東越谷支店長、法人営業部企業支援室長、管理部長等を経て、2021年取締役経営企画部長、2023年常務取締役などを歴任。2024年より現職。 |
| 富川善守 | 専務取締役(代表取締役) | 1985年同行入行。せんげん台支店長、金融サービス部長、法人営業部長等を経て、2022年常務取締役などを歴任。2024年より現職。 |
| 荻原孝志 | 常務取締役 | 1990年同行入行。小山支店長、陽南支店長、監査部長、経営企画部長等を経て、2024年より現職。 |
| 大橋重信 | 常務取締役 | 1985年同行入行。野木支店長、栃木支店長、越谷支店長、宇都宮東支店長等を経て、2025年より現職。 |
| 須藤幸昌 | 取締役 | 1995年同行入行。日光支店長、大田原支店長、陽南支店長、越谷支店長等を経て、営業統括部埼玉エリア本部長を務め、2025年より現職。 |
社外取締役は、亀岡晶子(弁護士)、大谷恭久(元JTB国内旅行企画社長)、荒川政利(元栃木県教育委員会教育長)、吉澤一子(公認会計士)、竹澤秀樹(元日本銀行仙台支店長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「銀行業」「金融商品取引業」および「その他」事業を展開しています。
■銀行業
本店および支店を通じて、預金業務、貸出業務、有価証券投資業務、内国・外国為替業務、各種金融商品の窓口販売業務などを提供し、地域のお客さまの資金ニーズに応えています。
貸出金利息や有価証券利息配当金、各種手数料などを主な収益源としています。事業の運営は主に栃木銀行が行うほか、事務代行業務を担うとちぎんビジネスサービスやとちぎん集中事務センターなどの子会社がサポートしています。
■金融商品取引業
地域のお客さまの資産形成や資産運用を支援するため、有価証券の売買や証券仲介などの金融商品取引業務を提供しています。
有価証券の売買益や金融商品の取り扱いに伴う手数料などを主な収益源としています。事業の運営は、子会社であるとちぎんTT証券が行っています。
■その他
銀行業務や証券業務を補完する形で、各種機器のリース業務、住宅ローン等の信用保証業務、クレジットカード業務、再生可能エネルギー発電販売業務などを展開しています。
リース料や保証料、カード利用に伴う手数料、売電収入などを主な収益源としています。事業の運営は、とちぎんリーシング、とちぎんカード・サービス、クリーンエナジー・ソリューションズなどの子会社がそれぞれ行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5年間の業績推移を見ると、数期連続で経常利益は減少傾向にあり、一時的に有価証券の入れ替え等に伴う大幅な赤字を計上した期もありました。しかし、直近では貸出金の増加や運用利回りの改善効果が表れ、経常利益、当期利益ともに大幅な黒字回復を果たしています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上収益 | - | - | - | - | - |
| 経常利益 | 56億円 | 51億円 | 42億円 | -236億円 | 100億円 |
| 利益率(%) | - | - | - | - | - |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 31億円 | 22億円 | 18億円 | -225億円 | 80億円 |
■(2) 損益計算書
当期の損益状況を見ると、前期の大幅な税引前損失から一転して明確な黒字に回復しています。これは、貸出金利息などの資金運用収益が着実に増加したことに加え、前期に実施した有価証券ポートフォリオの改善に伴う有価証券売却損などの費用が大幅に減少したことが主な要因と考えられます。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | - | - |
| 売上総利益 | - | - |
| 売上総利益率(%) | - | - |
| 営業利益 | - | - |
| 営業利益率(%) | - | - |
■(3) セグメント収益
セグメント別の売上(経常収益)を見ると、主力である銀行業が貸出金利息の増加などにより前期比で順調に拡大し、全体の増収を牽引しています。また、金融商品取引業やその他事業も堅調に推移しており、全セグメントにおいて前年を上回る収益を確保しています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) |
|---|---|---|
| 銀行業 | 396億円 | 477億円 |
| 金融商品取引業 | 23億円 | 28億円 |
| その他 | 32億円 | 40億円 |
| 連結(合計) | 451億円 | 546億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
末期型(事業拡大に伴う資産増加)
なお、同社は金融・証券関連事業を主力としているため、営業CFのマイナスは主に貸出金の増加(事業拡大)によるものであり、直ちに業績悪化を意味するものではありません。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | -977億円 | -1712億円 |
| 投資CF | 2106億円 | -502億円 |
| 財務CF | -7億円 | -15億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は5.3%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も4.8%で市場平均を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
「豊かな地域社会づくりに貢献し、信頼される銀行を目指します」、「新たな時代に柔軟に対応できる強い体力のある銀行として発展します」、「明るい働きがいのある職場を作ります」を経営理念に掲げ、地域金融機関として地域社会の発展とともに歩むことを使命としています。
■(2) 企業文化
同社グループのパーパス(存在意義)として「困りごとを『ありがとう』に変えながら、“笑顔”と“幸せ”を守りつづける」を定めています。これを全組織、全役職員の判断・行動軸とし、強みである「親しみやすさ」を活かして地域や顧客と顔の見える関係を築く文化を重視しています。
■(3) 経営計画・目標
株主資本コストを8%〜10%と認識し、資本効率の向上に向けた具体的な数値目標を掲げています。第12次中期経営計画の最終年度までにROE7%以上を実現し、さらに次期中計の早い段階での8%以上達成を目指すことでPBRの向上を図ります。
* ROE(自己資本利益率):2030年3月期までに7%以上、次期中計で8%以上
■(4) 成長戦略と重点施策
「収益力の強化」「人的資本投資の強化」「資本効率の向上」を優先課題としています。事業性評価を起点とした課題把握や中小企業融資の拡大、創業・成長支援、積極的なエクイティ投資の推進による収益力強化を図ります。また、DXやAIによる業務改革で生産性を向上させ、対面営業の強化を進めて持続可能なビジネスモデルを構築します。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「人材育成方針」として、職員の自律的な成長を積極的に支援し、多様な人材が能力を発揮できる企業風土をつくることで、新たな価値を提供できる人材を育成します。また、「社内環境整備方針」により、人材育成、公正な評価、健康経営、人権尊重を通じて働きがいのある職場環境を整備する方針です。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与は東京証券取引所プライム市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 40.8歳 | 18.1年 | 6,762,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 5.2% |
| 男性育児休業取得率 | 100.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 52.6% |
| 男女賃金差異(正規雇用労働者) | 63.3% |
| 男女賃金差異(非正規雇用労働者) | 56.2% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、有給休暇取得率(54.1%)、定期健康診断受診率(100.0%)、正規雇用労働者の中途採用比率(19%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 貸出先の業績悪化に伴う信用リスク
国内外の経済情勢や、主要な営業地域である栃木県および埼玉県の経済状況が悪化した場合、貸出先の業況に悪影響を及ぼし、不良債権や与信関係費用が増加するおそれがあります。これにより、同社グループの業績および財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 金利や有価証券相場等の市場リスク
同社グループは市場性のある有価証券を保有しており、金利の変動や取引価格の大幅な下落が生じた場合、保有資産の価値が減少し評価損や減損処理による損失が発生する可能性があります。また、為替相場の変動による外貨建て投資の価値減少リスクも存在します。
■(3) サイバー攻撃等によるシステム障害リスク
業務遂行に不可欠なコンピュータシステムに対して、サイバー攻撃や不正アクセス、コンピュータウイルスの感染等が発生した場合、金融サービスの停止や顧客情報の流出につながるおそれがあります。これにより、損害補償の負担や社会的信用の低下を招く可能性があります。



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