富山第一銀行 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

 富山第一銀行 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

富山第一銀行は東京証券取引所プライム市場に上場し、富山県を地盤とする地域金融機関として銀行業務を中心にリース業務等の金融サービスを提供しています。直近の業績トレンドでは、貸出金利息や有価証券利息配当金などの資金利益の増加により、前年度を上回る増収かつ過去最高益となる増益を達成し、好調に推移しています。


※本記事は、富山第一銀行の有価証券報告書(第115期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月19日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 富山第一銀行ってどんな会社?


富山県を地盤とする地域金融機関として、銀行業務を中心に金融サービスを展開しています。

(1) 会社概要


1944年に富山合同無尽として設立され、1951年に富山相互銀行へと商号を変更しました。1989年には普通銀行への転換に伴い、現在の富山第一銀行へと商号を改めました。2016年に東京証券取引所市場第一部へ上場し、2024年にはグループ会社である富山ファースト・リース等を完全子会社化し、グループ体制を強固にしています。

現在、同社グループの従業員数は連結で623名、単体で607名体制となっています。筆頭株主は資産管理業務を行う信託銀行で、第2位および第3位には金融サービスの拡大等に向けた協力関係にある地方銀行が名を連ねています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 10.31%
北陸銀行 3.08%
福井銀行 2.84%

(2) 経営陣


同社の役員は男性14名、女性1名の計15名で構成され、女性役員比率は6.6%です。代表取締役頭取は野村充氏が務めており、取締役における社外取締役比率は36.4%となっています。

氏名 役職 主な経歴
野村充 代表取締役頭取 1987年に日本銀行へ入行し、福島支店長や業務局長、総務人事局長などの要職を歴任。2019年に同行を退職後、富山第一銀行へ常勤顧問として入行。同年取締役に就任し、副頭取を経て2021年より現職。
桑原幹也 代表取締役専務営業統括 1982年に富山第一銀行へ入行。ニューセンター支店長や市場金融部長を歴任し、2016年に執行役員融資統括部長に就任。取締役、常務取締役法人事業部長等を経て、2025年より現職。
本多力 常務取締役人事企画部長 1985年に富山第一銀行へ入行。砺波支店長や市場金融部長などを歴任し、2020年に執行役員市場金融部長に就任。取締役コーポレート部長等を経て、2025年より現職。
高島寧 取締役市場金融部長 1985年に富山第一銀行へ入行。高山支店長や黒部支店長、ニューセンター支店長などを経て、2020年に経営管理部長に就任。2021年に執行役員市場金融部長となり、2023年より現職。
本井衛 取締役経営管理部長 1989年に富山第一銀行へ入行。泉支店長や氷見支店長、富山南センター支店長などを歴任。2022年に執行役員高岡支店長兼清水支店長に就任し、執行役員経営管理部副部長を経て2025年より現職。
伊井斉 取締役営業支援統括 1991年に富山第一銀行へ入行。堤町支店長やコーポレート部副部長、法人事業部長兼リテール部長などを歴任。2024年に執行役員法人事業部長兼リテール部長となり、2026年より現職。
森山一昌 取締役コーポレート部長兼東京支店長兼東京事務所長 1992年に富山第一銀行へ入行。呉羽支店長や婦中支店長、ニューセンター支店長などを歴任し、2023年にコーポレート部長兼東京支店長兼東京事務所長に就任。執行役員を経て2025年より現職。


社外取締役は、金岡克己(元インテック社長・指名委員長)、谷垣岳人(石井法律事務所弁護士)、西田友佳(西田公認会計士事務所代表)、柳原良太(元日本銀行発券局長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「銀行業」および「リース業」、ならびに「その他」事業を展開しています。

銀行業


富山第一銀行の各店舗において、預金業務、貸出業務、内国為替業務、外国為替業務、商品有価証券売買業務などを行っています。地域の中小企業や個人顧客向けに、多種多様な経営課題に対するファイナンスや各ビジネスステージに応じたコンサルティング、資産形成のサポートなど包括的な金融サービスを提供しています。

貸出金利息や有価証券の利息配当金による資金利益のほか、各種手数料などの役務取引等収益を主な収益源としています。この事業は主に富山第一銀行が展開しているほか、銀行事務代行業務を富山ファースト・ビジネスが運営しています。

リース業


地域企業の設備投資を支援するためのリース業務を提供しています。顧客が希望する機械設備や車両などを同社グループが代わって購入し、長期間にわたって賃貸することで、企業の初期投資負担を軽減し、資金繰りの改善や事業拡大をサポートしています。

顧客からのリース料の受け取りを主な収益源とし、リース料受取時に経常収益と経常費用を計上するモデルで安定した利益を確保しています。このリース事業は、グループ会社である富山ファースト・リースが運営しています。

その他


クレジットカードの発行や信用保証の提供、金銭の貸付、ならびに投資事業組合の運営と管理など、銀行・リース業以外の周辺金融事業を幅広く手掛けています。グループの総合力を活かして顧客の多様な金融ニーズに柔軟に対応しています。

クレジットカードの利用手数料や信用保証料、金銭貸付による利息収入などを収益源としています。事業の運営は、富山ファースト・ディーシー、富山ファイナンス、およびファーストバンク・キャピタルパートナーズの各社が担っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績は、売上高にあたる経常収益、経常利益ともに力強い右肩上がりの成長を続けています。特に直近2期間においては、資金利益や有価証券利息配当金の増加により利益率が大幅に向上しており、直近では利益率が39.5%に達するなど収益力の高さが際立っています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
経常収益 284億円 353億円 387億円 485億円 531億円
経常利益 52億円 63億円 92億円 190億円 210億円
利益率(%) 18.5% 17.9% 23.8% 39.1% 39.5%
当期利益(親会社所有者帰属) 34億円 41億円 52億円 140億円 148億円

(2) 損益計算書


金融機関である同社グループは一般的な事業会社とは損益構造が異なり、売上高や営業利益に該当する指標が設定されていません。しかし、税金等調整前当期純利益は前期から堅調に増加しており、継続的な増益基調を維持しています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 - -
売上総利益 - -
売上総利益率(%) - -
営業利益 - -
営業利益率(%) - -

(3) セグメント収益


セグメント別の経常収益を見ると、主力である銀行業が全体の大部分を占めつつ、全セグメントにおいて前年度から増収を達成しています。金利のある世界への進展に伴う預金・貸出金利息の増加や、積極的な事業支援活動が各事業の成長を牽引しています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
銀行業 419億円 454億円
リース業 57億円 60億円
その他 9億円 17億円
連結(合計) 485億円 531億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


なお、同社は金融・証券関連事業を主力としているため、営業CFのマイナスは主に貸出金の増加(事業拡大)によるものであり、直ちに業績悪化を意味するものではありません。(※本期の営業CFはプラスのため、特段の懸念はありません)企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は8.6%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は11.7%で市場平均を下回っています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 34億円 177億円
投資CF 112億円 -134億円
財務CF -26億円 -40億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


経営理念に「限りなくクリア(透明)、サウンド(健全)、フェア(公平)」を掲げています。行是である「われらのねがい(幸福・躍進・奉仕)」のもと、金融サービスの提供を通じて顧客、株主、地域社会から愛され、市場から評価される銀行を目指すとともに、「健全経営・効率経営」を推進して地域の発展に貢献することを社会的使命としています。

(2) 企業文化


経営理念に基づき全社が一体となって質の高い金融サービスを提供するという価値観を重んじています。「お客さまファーストの徹底」を行動の軸とし、複雑化する多様なニーズに対して積極的かつ迅速に対応する姿勢を重視しています。また、ダイナミックな業務範囲の拡大やグループ全体のシナジー効果の発揮、グループガバナンスの強化を図り、企業集団としての価値向上を実現する文化を持っています。

(3) 経営計画・目標


長期の経営計画「ファーストバンク VISION10」をアップデートし、2026年度からの7年間を「2nd STAGE」と位置づけています。同社グループの営業力強化を目指して連結での目標に切り替え、利益成長を重視した中短期の具体的なKPIを掲げて経営を推進しています。

* 連結当期純利益:160億円以上
* 連結株主資本ベースROE:7%程度
* 連結コアOHR:55%未満
* 連結自己資本比率:10%台半ば

(4) 成長戦略と重点施策


「金利のある世界」への進展や地域人口減少などの構造的変化に対応するため、「成長投資への取り組み」「コンサルティング機能の増強」「地域経済への更なる貢献」の3本柱を戦略としています。持続可能な経営の実現に向けた伴走支援やDX支援、リアル・デジタルチャネルのベストミックスによる利便性向上、AI利活用等を通じた業務効率化による営業力強化を重点施策として進めています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「人財ポートフォリオの最適化」と「職員のエンゲージメント向上」を人財戦略の主要テーマに掲げています。ウェルビーイングの土台となる身心の健康や適正な職場環境の整備を進めた上で、全職員が自ら考え挑戦できる人材を育成し、顧客ファーストを実践する原動力とすることで、企業価値の向上につなげる方針です。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 39.8歳 16.6年 6,863,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 12.3%
男性育児休業取得率 100.0%
男女賃金差異(全労働者) 61.1%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 69.9%
男女賃金差異(パート・有期労働者) 60.0%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、行員の賃上げ率(5.8%)、年間賃金に占める賞与支給割合(27.7%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 富山県内市場への高い依存リスク


同社グループは富山県を主要な営業基盤としており、貸出金などの与信額においても県内向けが大きな割合を占めています。そのため、県内の経済状況が悪化した場合や、地域特有の産業構造に急激な変化が生じた際には、不良債権などの信用リスクが増加し、業績や財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

(2) 金利変動に伴う市場リスク


貸出や有価証券による資金運用と、預金などによる資金調達において、金利または期間のミスマッチが存在しています。そのため、「金利のある世界」への進展に伴う予期せぬ金利変動や市場環境の急変が発生した場合には、運用利回りと調達コストのバランスが崩れ、収益性が悪化するリスクを抱えています。

(3) サイバー攻撃・金融犯罪への対応リスク


多数の個人および法人の顧客情報を保有しているため、外部からのサイバー攻撃や内部要因による情報漏洩が発生した際、社会的信用の失墜や損害賠償を招く恐れがあります。また、金融犯罪の高度化・大規模化へのセキュリティ対策コストの増加や、被害が発生した場合の補償負担が業績に影響を与える可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。