富山第一銀行 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

富山第一銀行 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証プライム上場の地域金融機関。富山県を地盤に銀行業務を中心にリース業務等の金融サービスを展開しています。直近の決算では、貸出金利息や有価証券利息配当金等の資金利益が増加し、経常収益は前期比で増加しました。利益面でも、株式等関係損益の増加や与信費用の減少により、経常利益、純利益ともに大幅な増益となりました。


※本記事は、株式会社富山第一銀行 の有価証券報告書(第114期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 富山第一銀行ってどんな会社?


富山県を主要地盤とする地域金融機関です。銀行業務を中心に、リースやクレジットカード等の金融サービスを提供しています。

(1) 会社概要


1944年に富山合同無尽として設立され、1951年に相互銀行へ商号変更しました。1989年に普通銀行へ転換し、現在の行名となりました。2016年に東証一部へ上場し、2022年の市場区分見直しに伴いプライム市場へ移行しています。2024年には富山ファースト・リースなど連結子会社3社を完全子会社化し、グループ連携を強化しています。

連結従業員数は612名、単体では592名です。筆頭株主は資産管理業務を行う信託銀行で、第2位は資本提携関係にある北陸銀行、第3位は同じく近隣の地銀である福井銀行です。その他、職員持株会や保険会社、地元メディア企業などが大株主に名を連ねており、安定した株主構成となっています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 12.01%
北陸銀行 3.04%
福井銀行 2.80%

(2) 経営陣


同社の役員は男性14名、女性1名の計15名で構成され、女性役員比率は6.6%です。代表取締役頭取は野村充氏です。社外取締役比率は36.4%です。

氏名 役職 主な経歴
野村 充 代表取締役頭取 1987年日本銀行入行。業務局長、総務人事局長等を歴任。2019年同行入行、常勤顧問、取締役副頭取を経て、2021年4月より現職。
桑原 幹也 代表取締役常務法人事業部兼リテール部担当 1982年同行入行。融資統括部長、取締役法人事業部長等を歴任。2023年6月より現職。
長谷 聡 取締役事務統括システム部長 1984年同行入行。事務部長、総合企画部デジタルイノベーション室長等を歴任。2023年1月より現職。
前田 央 取締役人事企画部長 1985年同行入行。経営管理部長、高岡支店長等を歴任。2024年6月より現職。
本多 力 取締役総合企画部長 1985年同行入行。市場金融部長、取締役コーポレート部長等を歴任。2023年1月より現職。
島倉 勇人 取締役経営管理部長 1986年同行入行。金融商品サービス部長、人事企画部長等を歴任。2023年1月より現職。
高島 寧 取締役市場金融部長 1985年同行入行。本店営業部副部長、経営管理部長等を歴任。2023年6月より現職。


社外取締役は、金岡克己(テイカ製薬代表取締役社長)、谷垣岳人(弁護士)、西田友佳(公認会計士)、柳原良太(元日本銀行監事)です。

2. 事業内容


同社グループは、「銀行業」「リース業」および「その他」事業を展開しています。

(1) 銀行業


本店および支店65店において、預金、貸出、内国為替、外国為替、商品有価証券売買等の業務を行っています。顧客へのサービス向上に積極的に取り組む、同社グループの中心的な事業です。

主な収益源は、貸出金の利息収入や各種手数料収入です。運営は主に富山第一銀行が行っており、連結子会社の富山ファースト・ビジネスも銀行事務代行業務を展開しています。

(2) リース業


法人顧客などを対象に、各種機械設備や情報関連機器などのリース業務を行っています。企業の設備投資ニーズに対応した金融サービスを提供しています。

収益は顧客からのリース料収入等です。運営は連結子会社の富山ファースト・リースが行っています。

(3) その他


クレジットカード業務、信用保証業務、金銭の貸付業務、投資事業組合の運営・管理等を行っています。

収益はクレジット会員からの手数料や信用保証料などです。運営は、富山ファースト・ディーシー、富山ファイナンス、ファーストバンク・キャピタルパートナーズが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移

当期は増収増益となりました。経常収益は、株式売却益の計上等により大幅な増収を達成しました。一方、経常費用は、人件費やシステム投資等の増加により、前期とほぼ同水準となりました。この結果、経常利益および親会社株主に帰属する当期純利益は、いずれも過去最高益を更新しました。過去数年間の業績推移を見ると、当期において収益および利益が大きく伸長しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
経常収益(億円) 295 284 353 387 485
経常利益(億円) 35 52 63 92 190
当期純利益(億円) 23 35 42 53 134

(2) 損益計算書

当期は、株式売却益の計上等により経常収益が大幅に増加しました。経常費用は、人件費やシステム投資等の増加により、前期とほぼ同水準となりました。この結果、経常利益は大幅に増加し、当期純利益も大きく伸長しました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
経常収益 387 485
経常費用 295 296
経常利益 92 190
当期純利益 53 134

(3) 役務取引等収益の内訳

当期は、役務取引等収益合計が前期比で増加しました。その中でも、預金・貸出業務が最も大きな割合を占め、次いで為替業務が続きました。

区分 2024年3月期 2025年3月期
役務取引等収益 合計 25 26
預金・貸出業務 10 11
為替業務 5 5
代理業務 4 2

(4) キャッシュ・フローと財務指標

富山第一銀行は、預金の増加を主因に営業活動によるキャッシュ・フローを創出しています。有価証券の売却や償還による収入が、投資活動によるキャッシュ・フローを大きく押し上げました。財務活動では、配当金の支払い等によりキャッシュ・フローはマイナスとなりましたが、全体として現金及び現金同等物は増加しています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業活動によるキャッシュ・フロー 82 34
投資活動によるキャッシュ・フロー △125 112
財務活動によるキャッシュ・フロー △20 △26

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


富山県を主要な地盤とする地域金融機関として、「限りなくクリア(透明)、サウンド(健全)、フェア(公平)」を経営理念に掲げています。金融サービスの提供を通じて、顧客、株主、地域の皆さまから愛され、市場から評価される銀行を目指しています。

(2) 企業文化


「健全経営・効率経営」に積極的に取り組み、顧客へのサービス向上や地域社会の発展に貢献する文化があります。「お客さまファースト」を徹底し、地域の成長の一翼を担い、共に価値を創造する銀行グループへ成長することを目指しています。また、変化する環境に臨機応変に対応する姿勢を重視しています。

(3) 経営計画・目標


2023年6月に長期ビジョン「ファーストバンク VISION10」を公表し、1st STAGE(2023年4月~2028年3月)の計数目標を設定しています。2025年3月期時点で以下の実績となり、目標はほぼ達成済みです。

* 当期純利益:139億円(目標60億円程度)
* 株主資本ベースROE:12.19%(目標6%)
* コアOHR:55.92%(目標60%未満)
* 自己資本比率:11.71%(目標10%)

(4) 成長戦略と重点施策


「お客さまファースト」を徹底し、事業者の経営課題解決に向けたコンサルティングや、個人顧客への資産形成サポートを強化します。また、完全子会社化したグループ会社との連携によるシナジー発揮や、DX、脱炭素への対応を進めます。

* 事業者支援:資金繰り支援に加え、経営計画策定や人材紹介などコンサルティング機能を強化。
* 個人支援:対面・非対面のベストミックスによる利便性向上と資産形成サポートの実践。
* ガバナンス:PBR改善に向けた収益力向上と株主還元の実施、グループガバナンスの強化。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「ファーストバンク VISION10」の実現に向け、職員が能力を最大限発揮できる人材ポートフォリオの最適化を進めています。「キャリアバリュー」「ソーシャルバリュー」など4つのバリューを基に、人的資本への投資や多様な人材の活躍推進に取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 40.4歳 17.4年 6,780,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 12.0%
男性育児休業取得率 106.3%
男女賃金差異(全労働者) 58.4%
男女賃金差異(正規雇用) 66.9%
男女賃金差異(非正規雇用) 64.7%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、公的専門資格保有行員数比率(45.7%)、ITパスポート保有者数(116名)、人材育成投資額(70.2千円)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 特定地域への依存に関するリスク


同社グループは富山県を主要な営業基盤としており、地域別与信額においても富山県内向けが大きな割合を占めています。そのため、富山県内の経済状態が悪化した場合には、信用リスクが増加し、同社グループの業績や財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

(2) 金利変動に関するリスク


主要業務である貸出や有価証券による資金運用と、預金等による資金調達において、金利または期間のミスマッチが存在しています。予期せぬ金利変動等が発生した場合には、同社グループの業績や財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

(3) 情報漏洩に関するリスク


多数の顧客の個人情報や内部情報を保有しています。外部からの不正アクセスや人為的ミス等により情報が漏洩した場合、社会的信用の失墜や損害賠償責任等により、同社グループの業務運営や業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(4) コンプライアンス・法務に関するリスク


銀行法をはじめとする各種法令諸規則の適用を受けており、コンプライアンスの徹底に努めています。しかし、法令等遵守状況が不十分であった場合や訴訟等が提起された場合、行政処分や社会的信用の低下を招き、同社グループの業務運営や業績に重大な影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。