※本記事は、株式会社愛媛銀行 の有価証券報告書(第121期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年06月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 愛媛銀行ってどんな会社?
愛媛県を地盤とする地方銀行で、地域密着型の銀行業務に加え、リースやコンサルティング等の金融サービスを展開しています。
■(1) 会社概要
同社は1915年に東豫無尽蓄積として創業し、県内無尽会社の合併を経て1943年に愛媛無尽を設立しました。1951年に相互銀行へ転換し愛媛相互銀行となり、1989年には普通銀行への転換に伴い現在の愛媛銀行へ商号を変更しました。2022年には東京証券取引所の市場区分見直しによりプライム市場へ移行しています。
連結従業員数は1,340人、単体では1,255人です。筆頭株主は資産管理業務を行う日本マスタートラスト信託銀行(信託口)で、第2位も同様に資産管理を行う日本カストディ銀行(信託口)です。第3位には愛媛銀行行員持株会が名を連ねており、従業員による持株保有が進んでいます。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 8.86% |
| 日本カストディ銀行 (信託口) | 3.80% |
| 愛媛銀行行員持株会 | 3.43% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性13名、女性2名の計15名で構成され、女性役員比率は13.3%です。代表者は頭取の西川 義教氏です。社外取締役比率は26.7%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 西 川 義 教 | 頭取代表取締役 | 1985年入行。大洲支店長、三島支店長、本店営業部副部長兼法人推進部長などを経て2012年取締役。2017年専務取締役。2018年6月より現職。 |
| 豊 田 将 光 | 専務取締役代表取締役 | 1985年入行。道後支店長、人事教育部長などを経て2016年取締役。事務システム部長等を歴任し、2023年6月より現職。 |
| 松 木 久 和 | 専務取締役 | 1984年入行。八幡浜支店長、今治支店長などを経て2017年取締役。本店営業部長等を歴任し、2024年6月より現職。 |
| 矢 野 紀 行 | 常務取締役 | 1986年入行。企画広報部長、総務部長を経て2018年取締役。常務執行役員経営管理部長兼総務部長などを経て2020年6月より現職。 |
| 秋 山 剛 克 | 常務取締役 | 1991年入行。本店営業部次長、宇和島支店長などを経て2019年執行役員。人事教育部長等を歴任し、2022年6月より現職。 |
| 仲 本 範 之 | 常務取締役 | 1987年入行。監査部グループ長、森松支店長などを経て2020年執行役員。ソリューション営業部長等を歴任し、2023年6月より現職。 |
| 秋 廣 伸 二 | 常務取締役 | 1988年入行。個人ローン部長、お客様サービス部長を経て2020年執行役員。デジタル戦略室長等を歴任し、2024年6月より現職。 |
社外取締役は、真鍋正臣(元日本銀行松山支店長)、近藤千登世(近藤物産代表取締役社長)、稲葉隆一(大一ガス代表取締役会長)、田所知佳(田所法律事務所所長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「銀行業」、「リース業」および「その他」事業を展開しています。
■(1) 銀行業
本店ほか支店98店、出張所12店において、預金業務、貸出業務、内国為替業務、外国為替業務等を行っています。地域金融機関として地域の顧客に親しまれ信頼されるグループの中核業務と位置づけています。
主に顧客からの貸出金利息や手数料等を収益源としています。また、連結子会社のひめぎんビジネスサービスが銀行業務に付随した業務を行っており、運営は愛媛銀行およびひめぎんビジネスサービスが行っています。
■(2) リース業
顧客に対して機械設備や情報通信機器などのリース業務を行っています。企業の設備投資ニーズに対応し、物件の賃貸借契約を通じてサービスを提供しています。
顧客からのリース料収入を主な収益源としています。運営は連結子会社のひめぎんリースが行っています。
■(3) その他
コンピュータ関連業務、クレジットカード業務、保証業務、シップファイナンスの高度化支援業務などを行っています。地域の多様なニーズに応えるため、金融周辺サービスを幅広く展開しています。
顧客からの手数料や年会費、保証料などを収益源としています。運営は主に、ひめぎんソフト、愛媛ジェーシービー、西瀬戸マリンパートナーズが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
当期は増収となりました。これは、主に貸倒引当金戻入益の増加などにより経常収益が増加したことが要因です。一方、経常利益は、国内市場金利の上昇を受けた資金調達費用の増加などにより、前期比でわずかに減少しました。当期純利益は、特別損失の減少などにより増加に転じました。過去5期を見ると、経常収益は増加傾向で推移しており、堅調な業績を維持しています。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 経常収益(億円) | 430 | 422 | 521 | 652 | 661 |
| 経常利益(億円) | 87 | 93 | 84 | 79 | 78 |
| 当期純利益(億円) | 54 | 58 | 54 | 51 | 57 |
■(2) 損益計算書
当期は、貸倒引当金戻入益の増加などにより経常収益が増加しました。一方、資金調達費用の増加などにより経常費用も増加したため、経常利益は前期比でわずかに減少しました。当期純利益は、特別損失の減少などにより増加しました。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 経常収益 | 652 | 661 |
| 経常費用 | 573 | 583 |
| 経常利益 | 79 | 78 |
| 当期純利益 | 51 | 57 |
■(3) 役務取引等収益の内訳
同行の役務取引等収益合計は、当期において前期比で増加しました。これは、預金・貸出業務における収益の増加が主な要因です。次いで、為替業務における収益も増加しました。
| 区分 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 役務取引等収益 合計 | 56 | 56 |
| 預金・貸出業務 | 35 | 36 |
| 為替業務 | 7 | 7 |
| 証券関連業務 | 1 | 1 |
| 代理業務 | 1 | 1 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
愛媛銀行は、健全な財務基盤を維持しています。当連結会計年度は、積極的な営業活動による預金の増加が寄与し、営業活動によるキャッシュ・フローは大幅に増加しました。投資活動においては、有価証券の売却・償還が取得を上回ったことで、プラスのキャッシュ・フローを生み出しました。財務活動では、配当金の支払い等により、わずかなマイナスのキャッシュ・フローとなりました。これらの結果、現金及び現金同等物は期末残高で増加しました。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業活動によるキャッシュ・フロー | △250 | 441 |
| 投資活動によるキャッシュ・フロー | 130 | 208 |
| 財務活動によるキャッシュ・フロー | △13 | △13 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は、「ふるさとの発展に役立つ銀行」、「たくましく発展する銀行」、「働きがいのある銀行」という経営理念を掲げています。受け継がれてきた「思いやり」、「相互扶助」の無尽の精神のもと、地域の産業と人々の暮らしを支え、地域顧客に信頼され発展に尽くしていくことを使命としています。
■(2) 企業文化
同社グループは、「お客さまに寄り添い 地域の発展に貢献する」ことを目指しています。新中期経営計画の基本方針に基づき、地場産業の育成や役務収益ビジネスの強化を通じて新たな企業価値を創造することに注力する姿勢を重視しています。また、人的資本経営やDX分野への戦略的投資も積極的に行う方針です。
■(3) 経営計画・目標
2024年4月より第18次中期経営計画「変革への挑戦3rd stage」をスタートさせました。成果を最大限発揮し、地域とともに持続可能な発展を目指します。
* 当期純利益(単体):60億円以上(2026年度)
* ROE(単体):4%程度(2026年度)
* OHR(単体):60%台(2026年度)
* 連結自己資本比率:8%以上(2026年度)
■(4) 成長戦略と重点施策
「金融プラス1」収益力の強化、強固な経営基盤の確立、サステナビリティ経営の実践を基本方針としています。法個人コンサルティングやグループ総合力による収益力強化、DXによる生産性向上、人的資本経営による地域価値創造を推進します。また、PBR改善やリスク管理の高度化にも取り組みます。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社グループは、社員一人ひとりが専門性を身に付け、「プロフェッショナル」として地域の課題解決支援ができる人材を育成する方針です。また、社員の安全と心身の健康を守り、地位・経験・性別に関わらず多様な人材が活躍できる職場環境を整えることで、能力を最大限発揮できる組織づくりを目指しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 39.2歳 | 16.0年 | 6,493,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 13.5% |
| 男性育児休業取得率 | 100.0% |
| 男女賃金差異(全) | 50.2% |
| 男女賃金差異(正規) | 58.7% |
| 男女賃金差異(非正規) | 50.7% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、主任における女性労働者の割合(48.3%)、女性平均勤続年数(12.7年)、中途採用者在籍者数(84名)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 信用リスク
貸出金等の資産について自己査定を行い貸倒引当金を計上していますが、主たる営業基盤である四国地区の経済情勢変動が貸出先の業況に悪影響を及ぼす可能性があります。債務者区分の悪化や担保価値の下落等により、不良債権や与信費用が増加する恐れがあります。
■(2) 市場リスク
各種債券や株式等の有価証券を保有しており、市場金利の変動による債券ポートフォリオ価値の下落や、株価変動による減損・評価損が発生する可能性があります。VaR計測やストレステスト等でリスク管理を行っていますが、市場環境の変動により損失を被るリスクがあります。
■(3) 気候変動に関するリスク
地球規模の気候変動問題に関連し、水害等の自然災害発生により取引先の担保物件が毀損する場合や、気候変動対策規制により取引先の事業が影響を受ける場合があります。これらにより、同社の信用コスト増加や業績への悪影響が生じる可能性があります。



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