※本記事は、株式会社高知銀行 の有価証券報告書(第145期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 高知銀行ってどんな会社?
地域密着型の銀行業務を中心に、リース、カード業務などを展開する高知県の地域金融機関です。
■(1) 会社概要
1930年1月に高知無尽として設立され、1951年に高知相互銀行へ商号変更しました。1989年に普通銀行へ転換して現在の高知銀行となり、2006年に東京証券取引所市場第二部へ上場しました。2013年には市場第一部へ指定され、2022年の市場区分見直しを経てスタンダード市場へ移行しています。2022年には地域商社こうちを設立しました。
同社グループ(連結)の従業員数は721名、単体では688名です。大株主構成は、筆頭株主が同社の取引先である技研ホールディングス(12.38%)で、次いで従業員持株会である高知銀行持株会(4.28%)、資産管理業務を行う株式会社日本カストディ銀行(信託口)(2.96%)と続きます。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 技研ホールディングス | 12.38% |
| 高知銀行持株会 | 4.28% |
| 日本カストディ銀行(信託口) | 2.96% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性10名、女性2名、計12名で構成され、女性役員比率は16.7%です。代表者は取締役頭取の海治勝彦氏です。社外取締役比率は33.3%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 海治勝彦 | 取締役頭取代表取締役営業本部長 | 1984年入行。経営統括部グループ長、東京支店長、コンプライアンス統括部長等を歴任。2017年常務取締役を経て、2021年6月より取締役頭取。2024年4月より現職。 |
| 森下勝彦 | 取締役会長代表取締役 | 1977年入行。経営統括部長、専務取締役等を経て、2012年に取締役頭取に就任。2021年6月より現職。 |
| 河合祐子 | 取締役副頭取代表取締役 | 1987年ケミカル銀行入行。日本銀行高知支店長、欧州統括役、Japan Digital Design代表取締役CEO、三菱UFJ銀行経営企画部部長等を経て、2023年7月より現職。 |
| 田村忍 | 常務取締役 | 1983年入行。徳島支店長、融資統括部長、地域連携ビジネスサポート部長等を歴任。2019年常務取締役営業本部長を経て、2024年4月より現職。 |
| 吉村卓浩 | 常務取締役 | 1988年入行。経営統括部長、事務システム部長、営業本部長等を歴任。2022年常務取締役営業本部長を経て、2024年4月より現職。 |
| 深見英治 | 常務取締役 | 1988年入行。人事部長、営業企画部長、本店営業部長等を歴任。2023年常務取締役本店営業部長を経て、2024年4月より現職。 |
社外取締役は、北川展子(弁護士)、井奥和男(元高知県公営企業局長)、近谷逸郎(弁護士)です。
2. 事業内容
同社グループは、「銀行業」「リース業」「クレジットカード業」の3つの報告セグメントで事業を展開しています。
■(1) 銀行業
本店および支店等において、預金業務、貸出業務、為替業務等を行っています。また、連結子会社において店舗警備や現金整理、物品販売等の銀行業務に付随する業務や、投資業務を行っています。地域に密着した営業活動を展開するグループの中心事業です。
主な収益源は、貸出金利息などの資金運用収益や、各種手数料収入です。運営は同社および連結子会社の高銀ビジネス、こうぎん地域協働投資事業有限責任組合が行っています。
■(2) リース業
地域の事業者等に対して、各種機械設備や情報関連機器などのリース業務を行っています。顧客の設備投資ニーズに対応した金融サービスを提供しています。
顧客からのリース料収入が主な収益源です。運営は連結子会社のオーシャンリースが行っています。
■(3) クレジットカード業
クレジットカード業務および信用保証業務を行っています。キャッシュレス決済の普及に対応し、地域顧客の利便性向上に資するサービスを提供しています。
加盟店手数料や会員からの年会費、信用保証料などが主な収益源です。運営は連結子会社の高知カードが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
当期は、国債等債券売却益の増加等により経常収益が増加したものの、国債等債券償還損の増加等により経常費用も増加したため、経常利益は前期比で減少となりました。過去からの趨勢としては、経常収益は概ね横ばいで推移する一方、経常利益は変動が見られます。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 経常収益(億円) | 229 | 221 | 231 | 230 | 235 |
| 経常利益(億円) | 16 | 23 | 26 | 20 | 12 |
| 当期純利益(億円) | 9 | 16 | 16 | 13 | 9 |
■(2) 損益計算書
当期は、国債等債券売却益の増加等により経常収益が増加しましたが、国債等債券償還損の増加等により経常費用も増加したため、経常利益は前期比で減少しました。当期純利益も同様に減少しています。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 経常収益 | 230 | 235 |
| 経常費用 | 210 | 223 |
| 経常利益 | 20 | 12 |
| 当期純利益 | 13 | 9 |
■(3) 役務取引等収益の内訳
当期の役務取引等収益合計は12億円となり、前期比で増加しました。中でも預金・貸出業務が最も大きく、次いで為替業務が続きました。
| 区分 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 役務取引等収益 合計 | 12 | 12 |
| 預金・貸出業務 | 11 | 12 |
| 為替業務 | 0 | 0 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
高知銀行は、営業活動によるキャッシュ・フローが譲渡性預金の増加等により増加しました。投資活動によるキャッシュ・フローは、有価証券の運用等により増加しています。財務活動によるキャッシュ・フローは、自己株式の取得等により増加しました。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「熱意」「調和」「誠実」を経営理念として掲げています。「地域の皆さまとともに歩み、地域とともに発展する銀行」を目指し、長期的な視点による「地域のために地域と協働する活動」を通じて、地域社会や産業の持続的発展に貢献することを方針としています。
■(2) 企業文化
同社は、サステナビリティ基本方針に基づき、コンサルティング機能の発揮による地域課題の解決、環境問題への対応、人権尊重などを重視しています。また、法令遵守や社会的規範の遵守を徹底する「行動憲章」や「コンプライアンスポリシー」を定め、高い職業倫理観を持った自律的な行動を役職員に求めています。
■(3) 経営計画・目標
2024年4月から3年間の中期経営計画『地域とこうぎんの「みらい」 第Ⅰ期:展望の共有』を推進しています。「地域の価値向上に貢献する金融インフラ」を目指す姿として掲げ、ステークホルダーからの期待に応えるべく経営スタイルの変革を進めています。
■(4) 成長戦略と重点施策
「地域の『わくわく』が集まる新世代ターミナル」の実現に向け、ソリューション提供による商流課題の解決や、資産運用センターでのオーダーメイド型提案を強化します。また、顧客体験の再設計とDX戦略として、店舗網の見直しやスマホアプリ機能の拡大、ATM網の再構築を進めるほか、人的資本経営に基づく人事制度改革により専門スキルを持つ人材の育成に取り組みます。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「人財は重要な経営資源であり、育成していくべき財産である」という人的資本経営の考え方に基づき、行員一人ひとりが成長を実感できる評価制度への見直しを進めています。専門スキルを持つ人材に対応できるよう組織をフラット化し、多様な人材の採用・登用とともに、e-ラーニングの充実や資格取得支援などによる人材育成に注力しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均とほぼ同じ水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 40.7歳 | 17.1年 | 5,891,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 27.9% |
| 男性育児休業取得率 | 100.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 66.5% |
| 男女賃金差異(正規) | 70.5% |
| 男女賃金差異(非正規) | 81.7% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性総合職比率(11.6%)、有給休暇取得率(76.8%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 信用リスクについて
貸出先の経営状況や高知県の景気動向によって不良債権が増加する可能性があります。貸倒引当金は過去の実績等に基づき計上していますが、実際の貸倒れが見積りと乖離する場合や経済環境の悪化により追加計上が必要となるリスクがあります。また、主要基盤である高知県経済の悪化が業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 市場リスクについて
保有する有価証券は金利上昇や市場の変動、発行体の信用状況の変化によって価格が低下する可能性があります。大幅な価格下落が継続した場合には減損または評価損が発生し、経営成績や財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。また、資金運用と調達のミスマッチがある状況で予期せぬ金利変動が生じた場合の影響もリスクとして認識されています。
■(3) システムリスクについて
コンピュータシステムの安全稼働やセキュリティ対策を講じていますが、システム障害や外部からの不正アクセス、情報漏洩等が発生した場合、業務に制限が生じたり、信用の低下や損害賠償等により経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(4) 災害により損失を被るリスクについて
南海トラフ地震や台風などの自然災害が発生した場合、店舗の損壊等の直接的な被害に加え、取引先の被災による信用リスクの上昇などを通じて、経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。これに対し、業務継続計画(BCP)の策定や店舗の耐震化等の対策を講じています。



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