※本記事は、株式会社大東銀行 の有価証券報告書(第120期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月18日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 大東銀行ってどんな会社?
福島県郡山市に本店を置き、地域に根ざした金融サービスを提供する地方銀行です。
■(1) 会社概要
同社は1942年8月に大東無尽として設立され、1951年10月に大東相互銀行へ商号変更しました。1989年2月には普通銀行へ転換し、現在の商号である大東銀行となりました。1996年9月に東京証券取引所市場第一部へ指定され、2022年4月の市場区分見直しに伴い、現在はスタンダード市場に移行しています。
連結従業員数は419名、単体では411名です。筆頭株主は事業会社のHSホールディングスで19.40%を保有しています。第2位は大東銀行行員持株会で4.38%、第3位は資産管理業務を行う株式会社日本カストディ銀行(信託口)で3.23%を保有しており、安定した株主構成となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| HSホールディングス | 19.40% |
| 大東銀行行員持株会 | 4.38% |
| 日本カストディ銀行(信託口) | 3.23% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性9名、女性1名、計10名で構成され、女性役員比率は10.0%です。代表者は取締役会長兼社長の鈴木孝雄氏です。社外取締役比率は40.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 鈴木孝雄 | 取締役会長兼社長代表取締役 | 1976年入行。支店長、常務、専務を経て2010年社長就任。2023年会長となり、2024年3月より現職。 |
| 岡安廣 | 専務取締役代表取締役 | 1974年入行。支店長、債権管理部長、審査部長等を歴任し、2013年常務就任。2022年6月より現職。 |
| 古川光雄 | 常務取締役 | 1984年入行。支店長、審査部長、本店営業部長等を歴任。2020年常務執行役員を経て、2024年7月より現職。 |
| 鈴木輔 | 取締役営業開発部長 | 1997年入行。経営部副部長、人事総務部長を経て2022年執行役員。2024年7月より現職。 |
| 大八木孝之 | 取締役審査部長 | 1984年入行。支店長、審査部長等を歴任し、大東リース社長も経験。2024年6月より現職。 |
| 渡辺宏和 | 取締役監査等委員 | 1983年入行。総務部長、東京支店長等を歴任。2015年執行役員を経て、2020年6月より現職。 |
社外取締役は、瓜生利典(エフコムホールディングス取締役副社長)、松本順丈(GPSSイノベーションキャピタル代表取締役)、金成孝典(元福島県商工労働部長)、菅波香織(いわき法律事務所弁護士)です。
2. 事業内容
同社グループは、「銀行業務」、「リース業務」および「その他」事業を展開しています。
■(1) 銀行業務
本店および支店において、預金、貸出、有価証券投資、内国為替、外国為替などの銀行本来の業務に加え、証券投資信託や保険商品の窓口販売業務を行っています。地域に根ざした営業を展開し、顧客へのサービス向上に取り組んでいます。
収益は、貸出金利息や有価証券利息配当金などの資金運用収益、および為替手数料や投資信託・保険商品の販売手数料などで構成されています。運営は主に同社が行っています。
■(2) リース業務
顧客に対してファイナンス・リース等の業務を提供しています。企業の設備投資ニーズに対応し、物件の賃貸借を通じて金融サービスを行っています。
収益は、リース契約に基づくリース料収入等です。運営は連結子会社の株式会社大東リースが行っています。
■(3) その他
銀行業務およびリース業務以外の金融関連サービスとして、クレジットカード業務および信用保証業務を展開しています。カード利用による決済サービスや、住宅ローン等を利用する顧客に対する信用保証を行っています。
収益は、クレジットカードの加盟店手数料や会員からの年会費、信用保証料などです。運営は連結子会社の株式会社大東クレジットサービスおよび株式会社大東リースが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
当期は経常収益が減少し、経常利益・当期純利益が増加となりました。経常収益は、資金運用収益の減少などが主な要因となりました。一方、経常費用は国債等債券売却損の減少などにより減少し、利益を押し上げました。過去5期を見ると、経常収益は概ね横ばいで推移しており、経常利益は増減を繰り返しながらも、当期は回復傾向にあります。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 経常収益(億円) | 1307 | 1289 | 1302 | 1358 | 1323 |
| 経常利益(億円) | 16 | 22 | 20 | 19 | 20 |
| 当期純利益(億円) | 10 | 12 | 13 | 13 | 13 |
■(2) 損益計算書
当期は経常収益が前期比で減少したものの、経常費用も同様に減少したことで、経常利益は増加しました。経常収益の減少は主に資金運用収益の減少によるものであり、経常費用の減少は国債等債券売却損の減少が寄与しました。当期純利益も前期を上回りました。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 経常収益 | 1358 | 1323 |
| 経常費用 | 1169 | 1122 |
| 経常利益 | 19 | 20 |
| 当期純利益 | 13 | 13 |
■(3) 役務取引等収益の内訳
同行の役務取引等収益合計は、当期は前期比で大幅に減少しました。主な内訳としては、預金・貸出業務が最も大きな割合を占めていますが、当期は前期から大きく減少しています。
| 区分 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 役務取引等収益 合計 | 26 | 3 |
| 預金・貸出業務 | 26 | 3 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
大東銀行は、営業活動によるキャッシュ・フローが借用金の減少や貸出金の増加などにより大幅に減少しました。投資活動によるキャッシュ・フローも、有価証券の取得による支出が売却・償還による収入を上回ったことなどから減少しています。財務活動によるキャッシュ・フローは、配当金の支払いなどにより減少しました。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業活動によるキャッシュ・フロー | △91 | △312 |
| 投資活動によるキャッシュ・フロー | 94 | △53 |
| 財務活動によるキャッシュ・フロー | △4 | △4 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「共創力と提案力で地域の豊かな未来を実現する」を経営理念として掲げています。地域金融機関として顧客との良きパートナーシップを築き、悩みに対する解決策を真剣に考え提案することで、共に新たな価値を創造し、地域の豊かな未来を実現することを目指しています。
■(2) 企業文化
経営理念の実現に向けて、「顧客保護」「競争戦略」「実質主義」の3つを基本方針(パーパス)として徹底しています。顧客の利益を考えたアドバイスの実践、リスクやコストの戦略的コントロールによる質的優位の追求、名実一体となった実質本位の行動を重視する文化があります。
■(3) 経営計画・目標
第6次中期経営計画(2023年4月~2026年3月)において、「企業価値の更なる向上により、持続可能な経営基盤を確立する」ことを目指し、以下の数値目標を掲げています。
* コア業務純益(除く投資信託解約損益):最終年度30億円以上
* 当期純利益(単体):毎期12億円
* ROE(当期純利益ベース):毎期3.5%以上
■(4) 成長戦略と重点施策
法人向けには、資金繰り支援に加え、事業承継・M&A支援、ICTコンサルティング、SDGs支援などを強化しています。個人向けには、資産形成支援として投資信託の充実や各種セミナーの開催、住宅ローンの商品性多様化を進めています。また、サステナビリティ経営を推進し、地域経済や環境保全への貢献を目指しています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
職員が働き甲斐を実感し、生産性を向上させることを基本方針としています。社内副業制度や全店一斉職場研修による能力向上、脱・年功制による若手職員の積極登用を推進しています。また、女性活躍促進や育児支援、ワークライフバランスの拡充など、多様な人材が活躍できる環境整備に継続的に取り組んでいます。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 40.6歳 | 17.8年 | 5,329,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 12.4% |
| 男性育児休業取得率 | 100.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 58.6% |
| 男女賃金差異(正規) | 62.8% |
| 男女賃金差異(非正規) | 57.3% |
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 信用リスク
地域経済の動向、不動産価格や株価の変動等により、貸出先の経営状況が悪化した場合、不良債権や貸倒償却引当費用が増加し、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。特に主要な営業基盤である福島県の経済動向が重要な要因となります。
■(2) 市場リスク
金利上昇による保有債券の含み損や、株価下落による保有株式の損失が発生するリスクがあります。また、資金の運用と調達における金利や期間のミスマッチにより、想定以上の金利変動が生じた場合、収益が低下する可能性があります。
■(3) オペレーショナル・リスク
役職員による事務ミスや不正、コンピュータシステムのダウンや誤作動、サイバー攻撃による情報漏洩などが発生した場合、信用低下や損害賠償等により、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。事務リスク、システムリスク、法務リスク等を統合的に管理しています。



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