※本記事は、株式会社島根銀行 の有価証券報告書(第175期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
島根銀行転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態
1. 島根銀行ってどんな会社?
山陰地方(島根県・鳥取県)を主要な営業基盤とする地方銀行です。SBIグループとの資本業務提携を通じ、金融商品やサービスの拡充、デジタル化を推進しています。
■(1) 会社概要
同社は1915年に松江相互貯金として設立され、1951年に松江相互銀行へ商号変更しました。1989年に普通銀行へ転換し、現在の島根銀行となりました。2019年にはSBIホールディングス等と資本業務提携契約を締結し、経営基盤の強化を図っています。直近では2025年4月に投資専門子会社としてしまぎん地域事業投資を設立しました。
連結従業員数は319名、単体従業員数は312名です。筆頭株主はSBIグループの持株会社であるSBI地銀ホールディングス(27.40%)で、次いで資産管理業務を行う中国総合信用(8.57%)、資産管理信託銀行である日本カストディ銀行(7.11%)が続きます。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| SBI地銀ホールディングス | 27.40% |
| 中国総合信用 | 8.57% |
| 日本カストディ銀行(信託口) | 7.11% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性9名、女性1名の計10名で構成され、女性役員比率は10.0%です。代表取締役会長には鈴木良夫氏、代表取締役頭取には長岡一彦氏が就任しています。社外取締役比率は50.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 鈴木 良夫 | 取締役会長代表取締役 | 1976年同行入行。本店営業部長、取締役出雲支店長、常務取締役、松江リース社長を経て、2017年代表取締役頭取。2024年6月より現職。 |
| 長岡 一彦 | 取締役頭取代表取締役 | 1991年同行入行。リスク管理室長、総合企画グループ部長、取締役常務執行役員企画本部長兼管理本部長などを歴任し、2024年6月より現職。 |
| 野津 一人 | 取締役常務執行役員営業本部長 | 1990年同行入行。江津支店長、安来支店長、業務企画グループ部長、営業推進グループ部長、取締役執行役員本店営業部長を経て、2024年6月より現職。 |
社外取締役は、名越昇(元島根県信用保証協会専務理事)、森田俊平(SBI地銀ホールディングス取締役)、浅枝芳隆(公認会計士)です。
2. 事業内容
同社グループは、「銀行業」「リース業」の報告セグメントおよび「その他」事業を展開しています。
■(1) 銀行業
島根県および鳥取県において、預金業務、貸出業務、有価証券投資業務、内国為替業務などを展開しています。地域の中小企業や個人顧客に対し、資金調達や資産運用などの金融サービスを提供し、地域経済の発展に寄与しています。
収益は、主に貸出金利息、有価証券利息配当金、および各種手数料収入から構成されています。運営は主に島根銀行が行っています。
■(2) リース業
事業向けの金融サービスの一環として、機械設備や車両などのリース業務を展開しています。地域の事業者の設備投資ニーズに対応し、多様なファイナンス手段を提供しています。
収益は、顧客からのリース料収入が主な源泉です。運営は連結子会社である松江リースが行っています。
■(3) その他
銀行業およびリース業以外の事業として、クレジットカード業務や投資業務を展開しています。個人リテール戦略の一環としてのカード事業や、まちづくり事業への投資を行っています。
収益は、クレジットカードの年会費や取扱手数料、投資事業からの収益などです。運営は持分法適用関連会社のしまぎんユーシーカードや、しまぎんまちづくりファンド有限責任事業組合などが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
当期は増収増益となりました。経常収益は、貸出金利息及び有価証券利息配当金の増加などにより、前期比で増加しました。一方、経常費用は、与信関連費用の減少があったものの、国債等債券売却損、預金利息、役務取引等費用及び営業経費の増加などにより、前期比で増加しました。過去5期を見ると、経常収益は概ね増加傾向にあり、経常利益も回復・伸長しています。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 経常収益(億円) | 82 | 82 | 81 | 92 | 103 |
| 経常利益(億円) | 4 | 3 | 4 | 5 | 9 |
| 当期純利益(億円) | 4 | 3 | 4 | 4 | 6 |
■(2) 損益計算書
当期の経常収益は前期比で増加しました。これは、貸出金利息及び有価証券利息配当金の増加が主な要因です。一方、経常費用も増加しましたが、これは国債等債券売却損、預金利息、役務取引等費用及び営業経費の増加によるものです。結果として、経常利益は前期比で増加し、当期純利益も伸長しました。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 経常収益 | 92 | 103 |
| 経常費用 | 87 | 95 |
| 経常利益 | 5 | 9 |
| 当期純利益 | 4 | 6 |
■(3) 役務取引等収益の内訳
当期の役務取引等収益合計は前期比で微減となりました。主な内訳としては、為替業務が前期比で増加し、証券関連業務も増加しました。
| 区分 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 役務取引等収益 合計 | 13 | 13 |
| 為替業務 | 1 | 1 |
| 証券関連業務 | 1 | 1 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
島根銀行は、営業活動により多額の資金を獲得しており、これは主に預金や借入金の増加が貸出金の増加を上回ったことによるものです。投資活動では、有価証券の取得が売却や償還を上回ったため、資金を使用しました。財務活動では、配当金の支払いなどが主な資金の使用要因となりました。これらの活動の結果、当連結会計年度末の現金及び現金同等物は増加しました。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業活動によるキャッシュ・フロー | 65 | 185 |
| 投資活動によるキャッシュ・フロー | △1 | △54 |
| 財務活動によるキャッシュ・フロー | △0 | △0 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は、「地域社会の発展に貢献し、信頼され、愛される銀行となる」「常に魅力あるサービスを提供し、お客さまのニーズに積極的に応える」「創造力豊かで、活力にみちた、明るい人間集団をつくる」という3つの経営理念を掲げ、地域社会への貢献と顧客満足の追求を目指しています。
■(2) 企業文化
中期経営計画において「ふるさと山陰活性化プロジェクト」を掲げ、顧客との「Face To Face」の質的向上を重視しています。顧客の課題や夢を共有・支援し、地域やお客さまとの強固な信頼関係を築くことで、ローカルエンゲージメント(地域との関わり・連携)を深める企業文化を醸成しています。
■(3) 経営計画・目標
2025年4月から2028年3月までの中期経営計画では、「リージョナルバンクしまぎん」として地域に必要とされる銀行を目指し、以下の数値目標を掲げています。
* コア業務純益:22億円
* 当期純利益:6億円
* 自己資本比率:7.5%程度
■(4) 成長戦略と重点施策
「財務の健全化」と「お客さまとの共通価値の創造」を軸に、SBIグループとの連携を活かしたデジタルシフトと、対面営業の質的向上を融合させた「次世代Face To Face」を推進します。また、ALM・リスク管理の高度化によりリスクアセットをコントロールしつつ、本業の収益力を強化し、有価証券ポートフォリオの再構築を進めることで収益性の向上を図ります。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「従業員一人ひとりが自らの存在意義を実感し、高い満足度を得ることができる職場環境を整備する」ことを基本方針としています。必要なスキルを可視化し、研修等を通じてプロフェッショナル人材を育成するとともに、処遇改善やコミュニケーション活性化、柔軟な働き方の実践により、エンゲージメントの向上を図っています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 38.2歳 | 15.4年 | 4,672,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 23.4% |
| 男性育児休業取得率 | 100.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 65.8% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 68.8% |
| 男女賃金差異(非正規) | 81.6% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、男女の平均勤続年数の差(5.0年)、女性職員の出産後の継続勤務率(75.0%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 信用リスク
地域経済の変動や取引先の経営状況悪化等により、不良債権が発生し、貸倒引当金の積み増しが必要となる可能性があります。特に主要営業基盤である島根・鳥取両県の中小企業や個人向け貸出の割合が高いため、地域経済動向の影響を受けやすい構造にあります。
■(2) 市場リスク
貸出金利や債券利回り、預金金利は市場金利の変動の影響を受けます。また、保有する有価証券については、金利上昇や株価下落、為替変動等により評価損や減損損失が発生し、経営成績や財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(3) 地域金融機関との競争激化
営業基盤である山陰両県には多数の金融機関が存在しており、他行との競争が激化しています。顧客ニーズへの対応やサービスの差別化において優位性を確保できない場合、収益の減少やシェアの低下を招き、業績に影響を与える可能性があります。



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