日本証券金融 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

日本証券金融 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証プライム上場。証券金融業の中核として、貸借取引業務を中心に信託銀行業や不動産賃貸業を展開しています。2025年3月期の業績は、貸借取引融資やセキュリティ・ファイナンス業務が堅調に推移し、連結経常利益は125億円(前期比13.4%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は104億円(同29.2%増)の増収増益でした。


※本記事は、日本証券金融株式会社 の有価証券報告書(第115期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 日本証券金融ってどんな会社?


証券・金融市場のインフラ機能を担う専門機関として、貸借取引業務を核に多様な金融サービスを提供しています。

(1) 会社概要


1927年に東株代行として設立され、1949年に証券金融業務を開始、1950年に東京証券取引所へ上場しました。1956年に証券金融会社の免許を取得し、1998年には日証金信託銀行を設立して信託業務へ参入しました。2013年には大阪証券金融と合併し、全国的な業務基盤を強化しています。

2025年3月31日現在、連結従業員数は276名(単体216名)です。筆頭株主は投資ファンドのTHE SFP VALUE REALIZATION MASTER FUND LTD.で、第2位は資産管理業務を行う信託銀行です。第3位には外国銀行のカストディアン口座が入っており、機関投資家や外国法人が上位を占めています。

氏名 持株比率
THE SFP VALUE REALIZATION MASTER FUND LTD. 16.35%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 11.14%
THE CHASE MANHATTAN BANK, N.A. LONDON SPECIAL OMNIBUS SECS LENDING ACCOUNT 5.80%

(2) 経営陣


同社の役員は男性10名、女性1名の計11名で構成され、女性役員比率は9.0%です。代表執行役社長は櫛田 誠希氏が務めています。社外取締役比率は66.7%です。

氏名 役職 主な経歴
櫛田 誠希 取締役 代表執行役社長 日本銀行理事、アフラック生命保険シニア・アドバイザー等を経て、2019年6月より現職。
福島 賢二 取締役 1982年同社入社。常務取締役、執行役専務、日証金信託銀行取締役副社長等を経て、2024年6月より現職。


社外取締役は、小幡 尚孝(元三菱UFJリース取締役社長)、杉野 翔子(藤林法律事務所パートナー弁護士)、二子石 謙輔(元セブン銀行代表取締役社長)、山川 隆義(ビジネスプロデューサー合同会社代表社員)です。

2. 事業内容


同社グループは、「証券金融業」「信託銀行業」「不動産賃貸業」および「その他」事業を展開しています。

(1) 証券金融業


貸借取引、一般貸付、債券貸借および貸株業務などを通じて、金融商品取引業者や機関投資家等に対し、金銭または有価証券を貸付けています。証券・金融市場のインフラとして資金や証券の流動性を供給する役割を担っています。

収益は主に貸付金利息や有価証券貸付料などで構成されています。運営は主に日本証券金融が行っており、貸借取引については内閣総理大臣の免許を受けています。

(2) 信託銀行業


顧客分別金信託や有価証券信託等の信託業務、および預金・貸出等の銀行業務を行っています。特に証券会社等の顧客分別金管理にかかる信託サービスに強みを持ちます。

収益は信託報酬や貸付金利息などが主な源泉です。運営は連結子会社の日証金信託銀行が行っています。

(3) 不動産賃貸業


同社グループが所有する不動産の賃貸および管理を行っています。東京都中央区や千代田区などに保有するビル等の賃貸が中心です。

収益はテナントからの賃貸料収入です。運営は連結子会社の日本ビルディングが行っています。

(4) その他


上記セグメントに含まれない事業として、情報処理サービス業などを行っています。

収益は情報処理サービス料やソフトウェア開発・販売による対価です。運営は持分法適用関連会社の日本電子計算およびジェイエスフィットが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上収益(営業収益)はここ数年で増加傾向にあり、特に2023年3月期以降の伸びが顕著です。経常利益も安定的に推移しており、2025年3月期には125億円に達しました。当期純利益も増益基調を維持しており、利益率も高い水準で安定しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
営業収益 309億円 301億円 425億円 503億円 595億円
経常利益 56億円 72億円 76億円 110億円 125億円
利益率(%) 18.0% 23.8% 17.9% 21.9% 21.0%
当期利益(親会社所有者帰属) 40億円 52億円 60億円 80億円 104億円

(2) 損益計算書


営業収益は前期比で増加し、営業総利益も増加しました。営業利益率は前期の20.3%から19.0%へとわずかに低下しましたが、依然として高い収益性を維持しています。全体として事業規模の拡大とともに利益も順調に積み上がっている状況です。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 503億円 595億円
売上総利益 176億円 187億円
売上総利益率(%) 35.1% 31.5%
営業利益 102億円 113億円
営業利益率(%) 20.3% 19.0%


一般管理費のうち、その他が33億円(構成比44%)、報酬給与等が31億円(同42%)を占めています。また営業費用(売上原価相当)では、支払利息が171億円(構成比42%)、売現先利息が101億円(同25%)を占めています。

(3) セグメント収益


証券金融業は、貸借取引融資や株券レポ取引等のセキュリティ・ファイナンス業務が堅調で増収増益となりました。信託銀行業も管理型信託サービスが好調で大幅な増収増益を達成しています。不動産賃貸業は概ね横ばいで推移しました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
証券金融業 463億円 530億円 101億円 106億円 20.0%
信託銀行業 31億円 57億円 19億円 18億円 31.0%
不動産賃貸業 8億円 8億円 7億円 7億円 87.6%
連結(合計) 503億円 595億円 110億円 125億円 21.0%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

日本証券金融は、株主資本の増加により、親会社株主に帰属する当期純利益を計上しました。
営業活動によるキャッシュ・フローは、貸付有価証券代り金の減少により、前年度から流出超に転じました。
投資活動によるキャッシュ・フローは、投資有価証券の売却・償還および有形固定資産の売却収入により、引き続き流入超となりました。
財務活動によるキャッシュ・フローは、配当金支払いおよび自己株式取得による支出により、流出超となりました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 3834億円 -5351億円
投資CF 46億円 17億円
財務CF -66億円 -90億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は、証券・金融市場のインフラ機能を支える証券金融会社として、高い財務の健全性維持と、持続的成長および中長期的な企業価値の向上を実現する、機動性・柔軟性に富んだ特色あるユニークな企業を目指すことを将来像として掲げています。また、コーポレートメッセージとして「Be unique. Be a pioneer. 唯一をつくる、開拓者であれ。」を制定しています。

(2) 企業文化


証券・金融市場のインフラを支える公共的役割を強く意識し、堅固なガバナンス体制のもとでコンプライアンスや経営リスクの管理を徹底することで、揺るぎない社会的信頼を確立することを重視しています。同時に、機動的かつ柔軟な対応や、社員エンゲージメントの向上を通じて、企業活力と組織変革力を高める風土の醸成に取り組んでいます。

(3) 経営計画・目標


第7次中期経営計画(2023年度〜2025年度)において、以下の経営目標を掲げています。また、長期的展望としてROE 8%の水準を意識し、PBR 1倍超の定着を目指しています。

* ROE:安定的に5%を上回る水準を維持するとともに、さらなる向上を目指す。
* 連結経常利益:安定的に100億円超を維持するとともに、さらなる向上を目指す。

(4) 成長戦略と重点施策


証券市場のインフラとしての貸借取引業務の強化に加え、セキュリティ・ファイナンス業務の拡充・強化、グループ連結経営の推進、有価証券運用による安定的な収益確保を戦略として掲げています。また、DXの活用による効率的な業務運営体制の構築や、新規業務開発にも取り組んでいます。

* ROE 8%の水準を意識しながら着実な向上に取り組む。
* PBR 1倍超の市場評価の定着を目指す。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


人的資本ポリシーに基づき、多様性の確保と専門性、主体性の強化を軸に、人材育成の強化と人材ポートフォリオの再構築に取り組んでいます。社員が業務を通じて成長できる機会の提供と支援環境の整備を行うとともに、働きやすい職場環境づくりを推進し、エンゲージメントの向上を図ることで、企業活力と組織変革力を高めることを目指しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 44.0歳 20.3年 9,898,047円


※平均年間給与は、基本的な賃金および賞与の平均です。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
管理職に占める女性労働者の割合 4.3%
男性労働者の育児休業取得率 -
労働者の男女の賃金の差異(全労働者) -
労働者の男女の賃金の差異(正規雇用労働者) -
労働者の男女の賃金の差異(非正規雇用労働者) -


※同社および連結子会社は公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。

また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、新卒採用者に占める女性比率(66.7%)、経験者採用者数(22名)、平均テレワーク率(42.6%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 各種法令等に関するリスク


主要業務である貸借取引業務は金融商品取引法に基づき内閣総理大臣の免許を受けて運営しています。免許取消や業務停止等の処分を受けた場合、経営成績に重大な影響を及ぼす可能性があります。また、証券金融会社は運営可能な業務範囲が制限されており、新規業務等の承認が得られない場合、事業機会を逸失するリスクがあります。

(2) 制度信用取引の動向に関するリスク


貸借取引業務の重要性は高く、株式市況の動向等により制度信用取引残高・貸借取引残高が減少した場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。また、個人投資家の運用スタイルの多様化により一般信用取引の利用が増える中、地道な普及活動を行っていますが、株式市場の取引高縮小等は業績への影響要因となります。

(3) 資金および有価証券調達に関するリスク


コールマネーやコマーシャル・ペーパー等による短期かつ低利の資金調達を行っています。金融市場の混乱や短期金利の急騰、財務状況の悪化、格付の低下等により、調達コストの上昇や取引制限が生じた場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。

(4) オペレーショナルリスク


貸借取引業務等の運営に必要なシステムやネットワークの安定稼働に努めていますが、不測の要因による重大なシステム障害や、サイバー攻撃による業務継続への支障が生じた場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。また、人為的ミスや不正行為等による情報漏洩リスクも存在します。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。