日本アジア投資 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

日本アジア投資 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

日本アジア投資は、東京証券取引所スタンダード市場に上場し、投資開発、投資運用、ファンド・プラットフォームを柱とした投資事業を展開しています。直近の業績では、投資戦略の転換等により上場株式の売却が好調だったものの、インフレや金利上昇の影響等を受け、経常損益および当期純損益ともに赤字となっています。


※本記事は、日本アジア投資株式会社の有価証券報告書(第45期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月29日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 日本アジア投資ってどんな会社?


同社は、投資開発、投資運用、ファンド・プラットフォームを中核とした投資事業を展開する企業です。

(1) 会社概要


1981年に日本アセアン投資として設立され、1991年に現在の社名に変更しました。2008年に東証一部に上場し、2022年の市場再編でスタンダード市場へ移行しています。2026年にはKICホールディングス等を子会社化し、投資事業の領域を投資開発・投資運用・ファンドプラットフォームへ再定義しました。

従業員数は連結で47名、単体で22名です。筆頭株主は事業会社のジーエヌアイグループで、第2位は投資ファンドの投資事業有限責任組合ガバナンス・パートナーズ経営者ファンドとなっています。

氏名 持株比率
ジーエヌアイグループ 16.10%
投資事業有限責任組合ガバナンス・パートナーズ経営者ファンド 14.45%
First Eastern Asia Holdings Limited 9.00%

(2) 経営陣


同社の役員は男性4名、女性1名の計5名で構成され、女性役員比率は20.0%です。代表取締役社長執行役員CEOは丸山俊氏が務めています。社外取締役比率は40.0%です。

氏名 役職 主な経歴
丸山俊 代表取締役社長執行役員 CEO 元BNPパリバ証券日本株チーフストラテジスト。ガバナンス・パートナーズ代表取締役を経て、2024年より現職。
岸本謙司 取締役常務執行役員 CFO 元大和銀行(現りそな銀行)。2005年同社入社。管理グループ管掌等を経て、2024年より現職。
橋徳人 取締役(監査等委員)監査等委員長 元東京銀行(現三菱UFJ銀行)。パレス・キャピタル取締役社長等を経て、2025年より現職。


社外取締役は、澁谷功(元バークレイズ証券ディレクター)、丸山千名美(奏リーガル司法書士事務所・行政書士事務所開設)です。

2. 事業内容


同社グループは、「投資事業」を展開しています。

(1) 投資開発事業


ファンドの組成や融資を通じて調達した資金を用い、特別目的会社(SPC)に対して投資を行う事業です。主にエネルギー(再エネ発電所、蓄電所)、インフラ(物流施設、データセンター)、ヘルスケア(障がい者グループホーム)など、インフレや景気動向の影響を受けにくいプライベートな実物資産を投資対象としています。

収益は、設備を運営して得られる安定的なフィー収入や、設備の売却によるキャリー(成功報酬)などで構成されています。運営は日本アジア投資や日亜投資諮詢(上海)有限公司、KICホールディングス等の同社グループ各社が主体となって行っています。

(2) 投資運用事業


企業が発行する有価証券や債権を対象としたファンドを組成し、運用を行う事業です。国内外の機関投資家や富裕層向けに、伝統的運用資産である上場株式を対象としたバイアウト投資のほか、非伝統的運用資産である未上場企業へのベンチャー投資など、金融商品・資産運用サービスを提供しています。

収益源は、ファンドの運用から得られる管理報酬や成功報酬、株式売却益などです。運営は日本アジア投資のほか、JAIC・キャピタル・パートナーズやJaicオルタナティブインベストメンツ等が担っています。

(3) ファンド・プラットフォーム事業


VCファンドやバイアウトファンド等を運営する企業に対して、ファンド組成・募集・運用に必要となるミドル・バック業務のソリューションを提供する事業です。同社グループが長年蓄積してきたファンド・アドミニストレーターとしての実績と知見を活用しています。

主な収益源は、ファンド運営会社から受け取る事務受託報酬などです。本事業の運営は、日本アジア投資をはじめ、ジャイク事務サービスやJAICアセットマネジメントなどが主に行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の利益推移を見ると、投資先企業の業績変動や株式市場の動向、プロジェクト投資における資産売却のタイミング等の影響を受け、経常利益・当期利益ともに大幅な増減を繰り返しています。直近ではインフレや金利上昇によりプロジェクト資産の売却が遅れ、再び赤字を計上する結果となりました。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
経常利益 -4.1億円 -1.3億円 -13.0億円 1.4億円 -5.8億円
当期利益(親会社所有者帰属) 0.2億円 -1.7億円 -13.8億円 4.0億円 -0.5億円

(2) 損益計算書


同社は売上高の算定基準を持たない事業構造のため、営業利益の推移を比較します。前期は上場株式・未上場株式等の売却益により黒字を確保しましたが、当期は未上場株式の売却延期等により営業赤字に転じています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業利益 1.1億円 -4.1億円


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が1.8億円(構成比16.0%)、租税公課が1.2億円(同10.8%)を占めています。

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社のキャッシュ・フローは、営業活動・投資活動・財務活動のいずれもマイナスとなっており、本業・投資・財務いずれもマイナスで資金繰りが危機的な「末期型」のパターンを示しています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 14.3億円 -1.3億円
投資CF 0.2億円 -4.1億円
財務CF 1.8億円 -0.7億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は-0.6%で市場平均を下回り、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も35.9%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は、「日本とアジアをつなぐ投資会社として少子高齢化が進む社会に安心・安全で質と生産性の高い未来を創ります」を経営理念として掲げています。社会や環境問題を巡る課題に対し、リスクマネーの供給や新たなソリューションを生み出すことで、すべてのステークホルダーへの利益還元を果たすことを使命としています。

(2) 企業文化


投資活動を通じてサステナビリティに関する課題解決に貢献する文化を重視しています。また、投資事業を成功させる上で有能な人材が競争力の源泉であるとの認識に立ち、性別や国籍等による差別を排除した社内の多様性確保や、能力を最大限に活用するための人事評価制度・労働環境の改善に積極的に取り組んでいます。

(3) 経営計画・目標


2025年3月期から3年間の中期経営計画では、黒字化の定着と安定収益の拡大を目指しています。運用資産規模(AUM)や受託資産規模(AUA)の拡大を重要目標指標(KPI)に定めており、2027年3月期には投資開発AUM150億円増、投資運用AUM300億円増、ファンドプラットフォームAUA4,000億円を目指しています。

(4) 成長戦略と重点施策


ファンドの組成や融資などの外部資金を徹底して活用し、フィー収入を拡大させることで自己資金負担を軽減し財務基盤を強化する戦略を推進しています。また、インフレヘッジ特性を持つ物流施設などのプライベートな実物資産への投資を強化するほか、長期滞留資産を早期回収して資産回転率を向上させるなど、収益性の改善を図ります。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


多様な市場ニーズに応える金融商品やソリューションを提供するため、高度な金融・会計・法務等の知識を持つ専門人材の確保・定着を人材戦略の柱としています。個人の資質や能力を共有する目標管理制度に基づく適材適所の配置や、資格手当等を含む成果反映型の報酬体系により、人的資本の最大活用を図っています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 47.3歳 13.7年 8,105,005円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社および連結子会社は公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。

また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性比率(24.1%)、外国籍社員比率(6.9%)、中途採用者比率(89.7%)、有給休暇取得率(62.3%)、テレワーク利用率(61.8%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 株式市場に係るリスク


未上場株式および上場株式等への投資を行うため、投資資金を回収する局面において株式市場の変動による影響を受けます。株式市場が低迷している場合や新規上場市場が活況でない場合、想定した株価や出来高で売却できないリスクがあり、保有期間中の株価下落によって営業投資有価証券評価損が発生する可能性があります。

(2) 企業への投資に係るリスク


投資先である未上場企業は成長過程にあり収益・財務基盤が不安定な場合があるため、業績不振や倒産が生じた際は投資損失引当金繰入額などが発生します。また、上場企業への投資においても、事業進捗が見込み通りに推移しない場合や上場維持基準に抵触した場合、投資採算が大幅に悪化するリスクを内包しています。

(3) 金利・物価の動向に係るリスク


金融機関からの借入金には変動金利が含まれており、金利上昇は支払利息の増加を招きます。また、再生可能エネルギー等のプロジェクト投資では設備開発を伴うため、資材価格や人件費の高騰といった物価上昇は資金調達コストと開発費用の増大に繋がり、プロジェクトの採算性を低下させる可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。