※本記事は、日本アジア投資株式会社 の有価証券報告書(第44期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 日本アジア投資ってどんな会社?
プライベートエクイティ投資と再生可能エネルギー等のプロジェクト投資を主軸とする独立系投資会社です。
■(1) 会社概要
1981年に日本アセアン投資として設立され、東南アジア諸国連合(ASEAN)における投資業務を開始しました。1991年に現社名である日本アジア投資へ商号を変更しています。2008年には東京証券取引所市場第一部へ上場し、2022年の市場区分見直しに伴いスタンダード市場へ移行しました。
2025年3月31日現在、連結従業員数は36名、単体では21名です。筆頭株主は投資事業組合であるガバナンス・パートナーズASIA投資事業有限責任組合です。第2位は香港を拠点とする投資グループのFirst Eastern Asia Holdings Limited、第3位も投資事業組合となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| ガバナンス・パートナーズASIA投資事業有限責任組合 | 19.81% |
| First Eastern Asia Holdings Limited | 8.87% |
| 投資事業有限責任組合ガバナンス・パートナーズ経営者ファンド | 7.78% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性6名、女性1名の計7名で構成され、女性役員比率は14.3%です。代表取締役社長執行役員CEO兼CIOは丸山俊氏が務めています。社外取締役比率は28.6%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 丸山 俊 | 代表取締役社長執行役員CEO兼CIO | 元ガバナンス・パートナーズ代表取締役。日本郵政キャピタルマネージング・ディレクター等を経て2024年より現職。 |
| 橋 徳人 | 取締役専務執行役員特命業務担当(FA業務担当) | パレス・キャピタル取締役社長、アジアンマーケット企画代表取締役等を経て2025年より現職。 |
| 岸本 謙司 | 取締役常務執行役員CFO | 経営企画管理部副部長、ジャイク事務サービス代表取締役等を経て2025年より現職。 |
| 河内 和洋 | 取締役執行役員特命業務担当(アライアンス担当) | 協和発酵キリン(現 協和キリン)、ジーエヌアイグループ執行役CBDO等を経て2025年より現職。 |
| 大森 和徳 | 取締役(監査等委員)監査等委員長 | 日本興亜損害保険(現 損害保険ジャパン)金融担当部長、学生情報センター専務執行役員等を経て2015年より現職。 |
社外取締役は、片桐春美(公認会計士)、工藤研(弁護士)です。
2. 事業内容
同社グループは、「投資事業」および「その他」事業を展開しています。
**投資事業**
投資開発事業、投資運用事業、ファンド・プラットフォーム事業を展開しています。投資開発事業では、再生可能エネルギーや物流施設、ヘルスケア施設(障がい者グループホーム)などの実物資産へ投資を行い、運営または売却により収益を得ます。投資運用事業では、国内外の未上場・上場企業への投資を行い、キャピタルゲインの獲得を目指します。ファンド・プラットフォーム事業では、ファンド運営のミドル・バック業務サービスを提供します。
収益は、投資先企業の株式やプロジェクト投資資産の売却益、ファンド運営に伴う管理報酬や成功報酬、投資先からの配当・利息収入等から構成されます。運営は主に同社が行っていますが、ファンド・プラットフォーム事業については、連結子会社のジャイク事務サービスがファンド・アドミニストレーターとして業務を提供しています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高(営業収益)は変動がありつつも、2025年3月期には30億円台へ回復しています。損益面では赤字が続いていましたが、2025年3月期には経常利益、当期純利益ともに黒字転換を果たしました。自己資本比率は改善傾向にあり、財務基盤の立て直しが進んでいます。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上収益(または売上高) | 37億円 | 32億円 | 39億円 | 24億円 | 31億円 |
| 経常利益 | -4.0億円 | -4.1億円 | -1.3億円 | -13億円 | 1.4億円 |
| 利益率(%) | -10.8% | -12.9% | -3.3% | -53.3% | 4.6% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 0.3億円 | 0.2億円 | -3.0億円 | -17億円 | 4.0億円 |
■(2) 損益計算書
2024年3月期から2025年3月期にかけて、売上高は増加し、売上総利益率は大幅に改善しました。コスト削減も進み、営業損益は黒字に転換しています。プロジェクト売却が好調だったことや、前年に計上された評価損等の減少が寄与しています。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 24億円 | 31億円 |
| 売上総利益 | 1.7億円 | 12億円 |
| 売上総利益率(%) | 6.8% | 39.0% |
| 営業利益 | -12億円 | 1.1億円 |
| 営業利益率(%) | -47.1% | 3.4% |
販売費及び一般管理費のうち、その他が6.0億円(構成比54%)、給料及び手当が2.6億円(同23%)を占めています。売上原価においては、組合持分損失等が8.9億円(構成比47%)、営業投資有価証券売却原価が8.4億円(同44%)となっています。
■(3) セグメント収益
同社は「投資事業」の単一セグメントであるため、事業セグメントごとの詳細な分析は割愛しますが、全体としてプロジェクト売却益やインカムゲインの増加が増収増益に寄与しています。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) |
|---|---|---|
| 投資事業 | 24億円 | 31億円 |
| 連結(合計) | 24億円 | 31億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
日本アジア投資のキャッシュ・フローの状況についてご説明します。
同社は、営業活動を通じて安定的に資金を生み出すことを目指しています。投資活動では、事業成長に向けた投資を行っています。財務活動では、資金調達や返済を通じて財務基盤の強化を図っています。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 5.0億円 | 14億円 |
| 投資CF | -0.0億円 | 0.2億円 |
| 財務CF | -8.0億円 | 2.0億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「日本とアジアをつなぐ投資会社として少子高齢化が進む社会に安心・安全で質と生産性の高い未来を創ります」を経営理念として掲げています。この理念のもと、全てのステークホルダーへの利益還元を果たすことを目指して事業活動を行っています。
■(2) 企業文化
同社は、社内の多様性確保を推進し、性別や国籍等による差別を排除する方針を掲げています。投資事業の成功には有能な人材が不可欠であり、競争力の源泉であるとの認識のもと、人事評価制度や労働環境の充実・改善に取り組んでいます。また、投資活動においては、異なる経験・技能・属性を反映した多様な視点や価値観を強みとしています。
■(3) 経営計画・目標
2025年3月期から2027年3月期までの中期経営計画において、運用資産規模(AUM)増加額と受託資産規模(AUA)残高を重要な成果指標(KPI)として定めています。また、安定収益の拡大による黒字化定着と、資本コストを意識した経営を目指しています。
* 投資開発事業AUM増加額:2027年3月期 150億円
* 投資運用事業AUM増加額:2027年3月期 300億円
* ファンド・プラットフォーム事業AUA残高:2027年3月期 4,000億円
* 安定収益:2027年3月期 8億円
* ROE:2027年3月期 12.7%
■(4) 成長戦略と重点施策
PBR1倍割れの改善に向け、安定収益の拡大、収益性の改善、財務レバレッジの改善に取り組んでいます。具体的には、外部資金を活用した投資の徹底により自己資金負担を減らし、ファンドや投資資産からのフィー収入を増加させます。また、長期滞留資産の早期回収と資産入替による回転率向上、リファイナンスによる財務基盤強化を進めています。
* 投資開発事業:プライベート・リアルアセット(再エネ、物流、ヘルスケア等)への投資拡大
* 投資運用事業:伝統的資産およびオルタナティブ資産への投資を通じた金融商品提供
* ファンド・プラットフォーム事業:ミドル・バック業務サービスの提供拡大
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は、人材育成において個人の資質、適性、能力を重視し、目標管理制度を通じて適切な配置や評価を行っています。業績連動型賞与や自己啓発支援制度を導入し、モチベーション向上を促進しています。また、多様性を確保するため、女性、外国人、中途採用者を積極的に受け入れ、育児特別有給休暇やテレワーク等の制度により、柔軟な働き方を支援しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均598万円を大きく上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 47.0歳 | 13.7年 | 8,045,961円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社および連結子会社は公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 株式市場に係るリスク
同社グループはプライベートエクイティ投資を行っており、投資回収時に株式市場の動向の影響を受けます。株式市場が低迷した場合、投資先企業の新規上場による株価形成が想定通りにいかない、あるいは上場自体が困難になる可能性があります。また、保有する上場株式の株価下落により、売却益の減少や評価損の発生が生じ、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(2) カントリーリスク
アジア諸国など海外での事業活動においては、現地の経済情勢、政治的要因、法制度の変更、テロや伝染病などの社会的混乱により、投資先やグループ会社の事業に支障が出る可能性があります。現地の情報収集やネットワーク強化に努めていますが、予期せぬ事態が発生した場合、投資回収の遅延や損失につながるリスクがあります。
■(3) 法的規制によるリスク
同社グループは、日本および海外においてファンド運営や投資事業を行う上で、会社法、金融商品取引法、租税法などの法的規制を受けます。これらの規制に抵触した場合や、規制強化に対応するためのコスト増が発生した場合、業務遂行に支障をきたす可能性があります。また、法令違反等による社会的信用の低下が事業活動に悪影響を与える恐れがあります。
■(4) 競合・参入の状況に係るリスク
投資業界には金融機関や事業会社などの参入があり、競争が激化しています。競合他社が高い投資リターンや低価格サービスを提供することで、同社グループの競争力が相対的に低下する可能性があります。これにより、有望な投資案件の獲得やファンド資金の調達が困難になり、収益機会の逸失や業績悪化につながるリスクがあります。



上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。