※本記事は、株式会社小林洋行の有価証券報告書(第79期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 小林洋行ってどんな会社?
投資・金融サービス業を中心に、生活・環境やスポーツ施設、不動産など幅広い事業を展開する企業です。
■(1) 会社概要
1949年に設立され、1971年に商品取引員の許可を取得して金融事業を本格化しました。2000年に東京証券取引所市場第二部へ上場し、翌2001年に同市場第一部銘柄に指定されました。2011年には持株会社体制へ移行し、組織再編を推進しています。直近では2022年にフジトミ証券を完全子会社化しました。
同社グループは連結で143名、単体で3名の従業員を擁しています。筆頭株主は法人の東京洋行で、第2位は事業会社の日産証券グループ、第3位には金融機関であるりそな銀行が名を連ねています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 東京洋行 | 26.01% |
| 日産証券グループ | 5.85% |
| りそな銀行 | 5.02% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性7名、女性0名の計7名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は細金成光氏が務めており、社外取締役の比率は約42.9%となっています。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 細金成光 | 代表取締役社長 | 1991年同社入社。1998年国際・情報本部長、2003年金融事業本部長などを経て、2008年6月より現職。 |
| 渡辺宏 | 常務取締役 | 1984年同社入社。2008年経理部長、2015年執行役員業務部長などを経て、2024年7月より現職。 |
| 瀧澤克行 | 取締役経営企画室長 | 1982年同社入社。2008年執行役員CX事業本部長などを経て、2018年6月より現職。 |
| 細金英光 | 取締役 | 2003年フジトミ証券入社。2007年同社代表取締役社長などを経て、2022年6月より現職。 |
社外取締役は、加藤周二氏(元フューチャー・エコロジー社長)、西田章氏(西田法律事務所弁護士)、前田哲哉氏(元りそなカード社長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「投資・金融サービス業」「生活・環境事業」「スポーツ施設提供業」「不動産業」「インターネット広告業」の5つの報告セグメントで事業を展開しています。
■投資・金融サービス業
東京金融取引所に上場されている取引所為替証拠金取引や株価指数証拠金取引、各種商品先物取引について、顧客の委託を受けて売買を執行する受託業務や金地金販売等を提供しています。個人投資家などを主な顧客としています。
収益源は、顧客が行う金融商品取引や商品先物取引の執行に伴う受取手数料です。主に子会社のフジトミ証券がこれらの金融サービス事業を運営しています。
■生活・環境事業
生命保険や損害保険の募集業務をはじめ、広告用電設資材の卸売、および工場や商業施設などに向けたLED照明器具などの販売事業を展開しています。
収益源は、保険契約締結に伴う保険会社からの募集手数料や、電設資材・LED照明器具の顧客への販売代金です。保険募集はフジトミが、電設資材卸売やLED販売は三新電業社がそれぞれ運営しています。
■スポーツ施設提供業
ゴルフ場関連事業として、同社が保有しているゴルフ場施設の運営およびサービス提供を行っています。ゴルフプレーヤーや一般顧客を対象としています。
収益源は、ゴルフ場来場者からのプレー料金やレストランでの飲食代金などです。当該ゴルフ場施設の運営は、子会社の日本ゴルフ倶楽部が行っています。
■不動産業
ビジネスホテルやワンルームマンション等の不動産賃貸事業、および宅地建物取引業法に基づく不動産の売買事業を展開しています。一般消費者や旅行客などを顧客としています。
収益源は、保有物件からの継続的な不動産賃貸料収入と、販売用不動産の売却に伴う販売収入です。不動産賃貸業は小林洋行とフジトミ証券が、不動産売買事業はフジトミ証券が運営しています。
■インターネット広告業
インターネット広告市場におけるSEO対策、Webサイト制作、および各種コンサルティング業務などを提供しています。Webプロモーションを必要とする企業を顧客としています。
収益源は、顧客企業に提供するSEO対策やサイト制作、アフィリエイト広告運用代行などに対するコンサルティングおよびサービス提供の対価です。運営は小林洋行コミュニケーションズが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
過去5年間の業績推移を見ると、営業収益は継続的に増加傾向にあり、順調なトップラインの拡大が確認できます。利益面においては一時的に経常損失を計上した期もありましたが、その後の事業再編や収益基盤の強化が奏功し、直近では安定して黒字を確保しています。継続的な増収と黒字の定着により、収益性の回復と事業基盤の安定化が進んでいます。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 営業収益 | 36億円 | 41億円 | 45億円 | 47億円 | 50億円 |
| 経常利益 | -1億円 | 2億円 | 4億円 | 3億円 | 3億円 |
| 利益率(%) | -2.6% | 5.8% | 8.1% | 5.5% | 5.5% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | -1億円 | 2億円 | 4億円 | 2億円 | 3億円 |
■(2) 損益計算書
営業収益と営業総利益はともに前年を上回って推移しており、堅調な事業成長が伺えます。一方で、営業総利益率や営業利益率には大きな変動は見られず、安定した収益構造を維持しつつトップラインの拡大による利益成長を図っている状況が読み取れます。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業収益 | 47億円 | 50億円 |
| 営業総利益 | 32億円 | 34億円 |
| 売上総利益率(%) | 68.0% | 67.2% |
| 営業利益 | 2億円 | 2億円 |
| 営業利益率(%) | 3.9% | 3.6% |
営業費用のうち、人件費が20億円(構成比62%)、電算機費が2億円(同7%)を占めています。売上原価の内訳については詳細な記載がありません。
■(3) セグメント収益
主力の投資・金融サービス業は受取手数料の増加により増収となりましたが、営業費用の増加が響き減益となっています。一方、生活・環境事業や不動産業、インターネット広告業は増収増益を達成しており、多角化された事業ポートフォリオが全体業績の底上げに寄与しています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益(2026年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 投資・金融サービス業 | 20億円 | 22億円 | 2億円 | 2億円 | 9.8% |
| 生活・環境事業 | 10億円 | 11億円 | 0.3億円 | 0.6億円 | 5.2% |
| スポーツ施設提供業 | 5億円 | 5億円 | 0.4億円 | 0.3億円 | 6.7% |
| 不動産業 | 8億円 | 9億円 | 3億円 | 3億円 | 29.3% |
| インターネット広告業 | 3億円 | 4億円 | 0.3億円 | 0.3億円 | 7.7% |
| 連結(合計) | 47億円 | 50億円 | 2億円 | 2億円 | 3.6% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社のキャッシュ・フローは「営業CFがプラス、投資CFがマイナス、財務CFがマイナス」の健全型です。営業活動で得た安定した資金を基に事業投資を継続しつつ、借入金の返済や株主還元を自己資金で賄っており、堅実な財務基盤を有しています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 4億円 | 6億円 |
| 投資CF | -3億円 | -2億円 |
| 財務CF | -1億円 | -3億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は2.8%で、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は41.9%であり、いずれも市場平均を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は経営理念として「お客様第一を旨とします」「誠実な経営を歩みます」「豊かな社会の実現に寄与します」の3つを掲げています。公正・公平で誠実な経営を心がけるとともに、順法精神と倫理観を大切にし、価値ある商品やサービスを提供することですべてのステークホルダーとともに豊かな社会の実現に寄与することを目指しています。
■(2) 企業文化
同社は、人と人とのつながりを大切にし、常にお客様の視線に立った誠実な行動を重んじる企業文化を有しています。また、社会の責任ある一員としてコンプライアンスを徹底するとともに、従業員一人ひとりが働きがいを持ち、能力を十分に発揮して多様な職務経験を積むことができる社内環境づくりを推進しています。
■(3) 経営計画・目標
同社は、主力の投資・金融サービス業が商品市況や株式市況、為替相場などの変動に大きく影響を受けるという業種の特異性を考慮し、特定の客観的な数値指標を経営目標として設定していません。その上で、グループ全体の最優先事項として、安定的な収益源の確保と継続的な営業利益の拡大を掲げて事業運営を行っています。
■(4) 成長戦略と重点施策
同社は、将来性の見込めない事業からの早期撤退やM&Aを通じた機動的な事業再編を進め、安定した収益源の確保を目指しています。主力の投資・金融サービス業においては、「信頼性の強化・商品ラインアップ拡充・デジタル高度化」を軸に業務の自動化やデジタル人材の採用を推進し、組織基盤の強化と収益基盤の安定化を図っていきます。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
従業員が働きがいを持ち、能力を十分に発揮できる仕組みづくりと、リモートワークなど時間や場所にとらわれない働きやすい職場環境の整備を推進しています。主力の金融関連事業では、新入社員研修やコンプライアンス研修に加え、金融リテラシー向上のための資格取得奨励や階層別研修などを通じて、専門人材の育成を図っています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 44.8歳 | 22.0年 | 6,312,052円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社および連結子会社は公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 金融市場の変動による業績影響
同社の営業総利益の大部分は、金融商品取引や商品先物取引の手数料収入が占めています。これらの収益は国内外の金融市場の動向や経済情勢の影響を直接受けるため、相場の変動やボラティリティの低下が長期間続いた場合、グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 金融・商品先物取引における法的規制への対応
同社の主力事業は、金融商品取引法や商品先物取引法など関係法令の厳格な規制下にあります。自己資本規制比率などの財務健全性基準を維持する義務があり、適用法令に抵触して行政処分や業務停止命令を受けた場合、事業運営に重大な支障をきたす恐れがあります。
■(3) システム障害およびサイバーリスク
顧客からの売買注文受付や取引所への発注など、業務の大部分をコンピュータシステムに依存しています。回線障害やプログラムの不具合、不正アクセス、自然災害などにより大規模なシステム障害が発生した際や、個人情報が漏洩した場合には、信用失墜や業績の悪化を招くリスクがあります。



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