※本記事は、株式会社あかつき本社の有価証券報告書(第76期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月17日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. あかつき本社ってどんな会社?
証券関連事業と不動産関連事業を二本柱として展開し、グループ全体の経営を統括する持株会社です。
■(1) 会社概要
あかつき本社は1950年に商品仲買人として設立されました。2003年に大阪証券取引所市場第二部へ上場を果たし、2004年に黒川木徳証券(現あかつき証券)を子会社化して証券関連事業を強化しました。さらに2017年には不動産会社等を子会社化し、現在につながる不動産関連事業の基盤を確立しています。
現在の従業員数は連結で443名、単体で11名体制となっています。大株主の構成を見ると、筆頭株主は資産管理業務を行う信託銀行であり、第2位は外国法人の金融機関、第3位には同社代表取締役社長である島根秀明氏が名を連ねています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本カストディ銀行(信託E口) | 10.12% |
| GOLDMAN SACHS INTERNATIONAL | 10.04% |
| 島根 秀明 | 6.24% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性11名、女性0名の計11名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長執行役員は島根秀明氏が務めています。社外取締役は5名で構成されています。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 島根 秀明 | 代表取締役社長執行役員 | 野村證券やソフトバンク等を経て、2011年に同社取締役に就任。マイプレイス等の代表取締役などを歴任し、2023年より現職。 |
| 北野 道弘 | 取締役常務執行役員 | 2000年に同社へ入社。グループ各社の取締役や同社社長室長等を経て、2025年より現職。 |
| 工藤 英人 | 取締役執行役員 | 東洋信託銀行、ソフトバンク等を経て、イー・トレードやあかつき証券の代表取締役社長などに就任。2022年より現職。 |
| 三澤 章 | 取締役執行役員 | 長谷川工務店、ジョーンズラングラサール等を経て、マイプレイスなどの代表取締役社長に就任。2023年より現職。 |
| 大内 裕人 | 取締役執行役員 | 大和証券、ソフトバンク等を経て、EWアセットマネジメントなどの代表取締役に就任。2024年より現職。 |
| 横田 和史 | 取締役(監査等委員) | 千曲建設等を経て1999年に同社入社。あかつき証券取締役等を歴任し、2015年に同社監査役に就任。2024年より現職。 |
社外取締役は、小林祐介(アエリア代表取締役)、石井光太郎(CDIヒューマンキャピタル代表取締役)、定塚淳一(元野村ファシリティーズ代表取締役社長)、安東恭一(霞が関法律会計事務所パートナー)、田名網一嘉(アエリア取締役)です。
2. 事業内容
同社グループは、「証券関連事業」および「不動産関連事業」を展開しています。
■証券関連事業
有価証券の売買等の委託媒介、引受け、募集の取り扱いなど、証券取引を中心とした各種金融サービスを提供しています。主に対面サポートを重視する個人投資家や富裕層などを対象としています。
顧客からの委託手数料やトレーディング収益を主な収益源としています。運営は主に子会社のあかつき証券およびジャパンウェルスアドバイザーズが担当し、金融機関とのアライアンスやIFA(独立系ファイナンシャルアドバイザー)ビジネスの拡大を進めています。
■不動産関連事業
中古不動産の再生・リノベーション事業や、高齢者向け住宅事業に関するアセットマネジメント業、トランクルームの運営等のサービスを提供しています。
中古マンション等の販売代金、賃貸収入、アセットマネジメントに関わる各種手数料等を収益源としています。運営は主に子会社のマイプレイス、バウテックグループ、EWアセットマネジメントなどが担当しています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績は、証券関連事業と不動産関連事業の双方が堅調に推移し、継続的な増収を達成しています。利益面でも一時的な落ち込みはあったものの、直近では利益率が大きく改善し、大幅な増益を記録しています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 353億円 | 393億円 | 471億円 | 569億円 | 687億円 |
| 経常利益 | 12億円 | 15億円 | 38億円 | 39億円 | 63億円 |
| 利益率(%) | 3.5% | 3.7% | 8.1% | 6.8% | 9.1% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 10億円 | 8億円 | 25億円 | 26億円 | 41億円 |
■(2) 損益計算書
売上高と各段階利益はともに前期を上回って推移しています。増収効果に加えて利益率の改善も見られ、本業の稼ぐ力が着実に高まっていることがうかがえます。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 569億円 | 687億円 |
| 売上総利益 | 224億円 | 252億円 |
| 売上総利益率(%) | 39.4% | 36.7% |
| 営業利益 | 42億円 | 63億円 |
| 営業利益率(%) | 7.4% | 9.2% |
販売費及び一般管理費のうち、取引関係費が82億円(構成比43%)、人件費が57億円(同30%)を占めています。売上原価は全額が不動産事業売上原価であり、売上原価合計の100%を構成しています。
■(3) セグメント収益
証券関連事業は預り資産の拡大により受入手数料等が増加し、増収増益となりました。不動産関連事業も中古マンションの販売が好調に推移したことに加え、高齢者施設の売却なども寄与し、大幅な増収増益を達成しています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益(2026年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 証券関連事業 | 158億円 | 165億円 | 21億円 | 24億円 | 14.5% |
| 不動産関連事業 | 411億円 | 523億円 | 29億円 | 47億円 | 9.0% |
| 調整額 | - | - | -9億円 | -9億円 | - |
| 連結(合計) | 569億円 | 687億円 | 42億円 | 63億円 | 9.2% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
キャッシュ・フローは事業検討型のパターンを示しており、本業が低迷し事業の見直しが迫られる状況と考えられます。
なお、同社は証券関連事業を主力としているため、営業CFのマイナスは主に預託金の増加(事業拡大)によるものであり、直ちに業績悪化を意味するものではありません。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | -33億円 | -43億円 |
| 投資CF | -3億円 | 0.3億円 |
| 財務CF | -0.2億円 | -5億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は20.8%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は20.2%で市場平均を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は、社会的な公器として株主や顧客、従業員などのステイクホルダーに対する責任や義務を重視しています。社会が求めるサステナビリティを確保することが、自社グループの持続可能性を高め、ひいては中長期的な利益と企業価値の向上に資するという考えを経営の基本方針に据えています。
■(2) 企業文化
同社は、変化の激しい市場環境に柔軟に対応し、迅速に新たな事業を創造できる組織の構築を目指しています。そのため、性別や年齢に関わらず多様な背景や経験を持つ人材を積極的に受け入れ、個々の特性と能力を最大限に発揮できる職場環境を重視して組織の適応力を高めています。
■(3) 経営計画・目標
同社は、事業モデルに鑑み、株主への還元を含めたグループの成長を示す指標として「1株当たりの株主資本の成長率」を複数年単位で中長期的に拡大することを目指しています。また、具体的な数値目標として以下の水準を設定しています。
・連結純資産配当率(DOE):年間4%水準の維持
・自己資本利益率(ROE):4%
■(4) 成長戦略と重点施策
証券関連事業では、AIやフィンテックを活用した新たなサービスを導入しつつ、強みである対面サポート力を高めて預り資産の拡大を目指します。不動産関連事業では、中古マンションの仕入れ強化とリノベーションの設計施工能力の拡大を進め、高齢者施設開発等でも中長期的な視点から安定した投資を実行します。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
従業員の能力開発のため、内部のトレーナーや外部の専門家による研修プログラム、資格取得制度を活用し、部門間の異動を通じて柔軟性と適応力を向上させています。また、多様な人材の採用を推進するとともに、年次有給休暇や育児・介護休業の取得を容易にして仕事と家庭の両立をサポートしています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 45.7歳 | 4.7年 | 9,937,933円 |
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 7.4% |
| 男性育児休業取得率 | - |
| 男女賃金差異(全労働者) | 71.0% |
| 男女賃金差異(正規雇用労働者) | 81.9% |
| 男女賃金差異(パート・有期労働者) | 35.9% |
※同社および連結子会社は公表義務の対象ではないため、男性育児休業取得率については有報に記載がありません。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 証券関連事業における競争と規制
金融商品取引業は、異業種やフィンテックベンチャーの参入により競争環境が激化しています。競争優位性が維持できない場合や、国内外の取引所におけるシステム障害による取引の中断、さらには法令諸規則の違反により行政処分を受けた場合には、信用力の低下を通じて同社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 不動産関連事業の市況変動と在庫
不動産関連事業は、金利動向や相場動向などの経済情勢に大きく影響を受けます。中古マンション事業では仕入れから売却までの期間が長期になることがあり、その間に市場価格が下落した場合には在庫の評価損や売却損が発生します。また、建築資材や労務費の高騰が生じた際にも、収益性が悪化するリスクがあります。
■(3) 資金調達環境の悪化
同社グループは、金融機関からの借り入れや社債の発行などにより事業展開に必要な資金を調達しています。国内外の景気悪化や金融市場の混乱等により資金調達市場が縮小した場合、通常より高い金利での調達を余儀なくされることや、必要な資金を確保できず資金繰りが困難になり、業務運営に支障をきたすリスクがあります。



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