あかつき本社 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

あかつき本社 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

あかつき本社は、東京証券取引所 スタンダード市場に上場する持株会社です。証券関連事業と不動産関連事業を主要な収益の柱として展開しています。2025年3月期の業績は、証券部門での預り資産拡大や不動産部門での販売増加により、増収増益を達成しました。


※本記事は、あかつき本社の有価証券報告書(第75期、自 2024年4月1日 至 2025年3月1日、2025年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。


1. あかつき本社ってどんな会社?


証券事業と不動産事業の二軸で展開する持株会社です。M&Aを通じて事業領域を拡大しています。

(1) 会社概要


1950年に商品先物取引を行う木谷商事として設立されました。2004年に黒川木徳証券(現あかつき証券)を子会社化し、証券事業へ参入しました。その後、2012年の日本證券新聞社の子会社化(後に譲渡)などを経て事業の多角化を進め、2016年に現社名へ変更しました。2017年にはマイプレイス等を子会社化し、不動産事業を本格化させています。

同社グループの従業員数は連結で380名、単体で12名です。筆頭株主は資産管理業務を行う信託銀行で、第2位は同社代表取締役社長の資産管理会社です。第3位には海外機関投資家の常任代理人が名を連ねており、国内外の投資家や経営陣が主要株主となっています。

氏名 持株比率
日本カストディ銀行(信託E口) 9.53%
島根 秀明 6.28%
BNY GCM CLIENT ACCOUNT JPRD AC ISG(FE-AC) 4.53%

(2) 経営陣


同社の役員は男性11名、女性0名の計11名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長執行役員は島根秀明氏が務めています。社外取締役比率は45.5%です。

氏名 役職 主な経歴
島根 秀明 代表取締役社長執行役員 野村證券、ソフトバンクを経てSBIホールディングス等で要職を歴任。2012年よりあかつき本社代表取締役社長。グループ各社の代表も兼務し、2023年より現職。
北野 道弘 取締役常務執行役員 2000年あかつき本社入社。EWアセットマネジメント取締役などを経て、社長室長兼総務部長として管理部門を統括。2025年3月より現職。
工藤 英人 取締役執行役員 東洋信託銀行、ソフトバンクを経てイー・トレード取締役等を歴任。あかつき証券代表取締役社長を務めつつ、2022年より現職。
三澤 章 取締役執行役員 長谷工コーポレーション出身。マイプレイス(旧トータルエステート)の代表取締役社長等を歴任し、不動産事業を牽引。2023年より現職。
大内 裕人 取締役執行役員 大和証券、ソフトバンク等を経て、SBI債権回収サービス取締役などを歴任。EWアセットマネジメント代表取締役を務め、2024年より現職。


社外取締役は、小林祐介(アエリア代表取締役社長)、石井光太郎(元コーポレイトディレクション代表取締役)、定塚淳一(元野村ファシリティーズ代表取締役社長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「証券関連事業」および「不動産関連事業」を展開しています。

証券関連事業


対面営業やインターネットを通じた証券取引サービス、およびIFA(金融商品仲介業者)ビジネスを提供しています。個人富裕層や法人顧客を主な対象とし、株式・債券・投資信託などの金融商品を取り扱っています。また、AIやフィンテックを活用した投資情報の提供も行っています。

主な収益源は、顧客からの委託手数料やトレーディング損益、金融収益です。金融機関とのアライアンスを通じた販売チャネルの拡大も進めています。運営は主にあかつき証券が行っており、その子会社であるジャパンウェルスアドバイザーズなどがIFAビジネス等を展開しています。

不動産関連事業


中古マンションのリノベーション再販事業を中心に、高齢者向け住宅の開発・アセットマネジメント事業やトランクルーム運営などを行っています。首都圏および近畿圏を主要エリアとし、中古マンションの仕入からリノベーション、販売までを手掛けています。

収益は、不動産の販売代金や賃貸収入、アセットマネジメント業務に係る報酬から得ています。運営は、リノベーション再販を行うマイプレイス、設計・施工を担うバウテックグループ、高齢者施設開発を行うEWアセットマネジメントなどが各領域を担当しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績は、売上収益が391億円から565億円へと拡大傾向にあります。特に直近2期は売上が大きく伸びており、事業規模の拡大が見て取れます。利益面でも、経常利益は一時的な減少があったものの、直近では39億円前後と高い水準で推移しており、当期利益も26億円規模を維持しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上収益 391億円 353億円 393億円 467億円 565億円
経常利益 22億円 12億円 15億円 38億円 39億円
利益率(%) 5.7% 3.5% 3.7% 8.2% 6.9%
当期利益(親会社所有者帰属) 14億円 10億円 8億円 25億円 26億円

(2) 損益計算書


売上高は前期比で約100億円増加し、565億円となりました。売上総利益も増加していますが、売上総利益率はやや低下しています。営業利益は増益を確保しており、事業拡大に伴うコスト増を吸収して利益を伸ばしている状況です。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 467億円 565億円
売上総利益 199億円 220億円
売上総利益率(%) 42.7% 38.9%
営業利益 34億円 37億円
営業利益率(%) 7.3% 6.6%


販売費及び一般管理費のうち、取引関係費が86億円(構成比47%)、人件費が50億円(同28%)を占めています。売上原価においては、不動産事業売上原価が345億円(構成比100%)となっており、不動産事業の原価が全体のコスト構造に大きく影響しています。

(3) セグメント収益


証券関連事業は増収となり、利益は前期並みを維持しました。IFAビジネスの拡大や手数料収益が寄与しています。不動産関連事業は大幅な増収増益となりました。中古マンションの販売戸数増加が主な要因です。両セグメントともに黒字を確保しており、特に不動産事業の成長が全体の業績を牽引しています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
証券関連事業 143億円 154億円 17億円 17億円 11.0%
不動産関連事業 324億円 411億円 25億円 29億円 7.1%
連結(合計) 467億円 565億円 34億円 37億円 6.6%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

あかつき本社は、流動性の高い資産取得は負債性資金、流動性の低い資産取得は資本性資金で調達する方針です。

営業活動によるキャッシュ・フローは、販売用不動産や立替金・預り金の増減、税金等の支払いが主な支出要因となりました。投資活動によるキャッシュ・フローは、有形固定資産や投資有価証券の取得、貸付による支出があった一方、投資有価証券の売却・償還や貸付金の回収による収入もありました。財務活動によるキャッシュ・フローは、短期借入金の純減や長期借入金の返済による支出があったものの、社債や長期借入れによる収入がこれを上回りました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 8億円 -33億円
投資CF -8億円 -3億円
財務CF 108億円 -0億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は持株会社として、グループ全体の投資戦略の立案や資源配分の意思決定を行っています。証券関連事業においては「継続的なお客様の投資利益の追求」および「中長期的な顧客資産の拡大」を重要課題とし、不動産関連事業においては真に社会に貢献できる投資を行うことを方針としています。

(2) 企業文化


変化の激しい市場環境に対応し、迅速に事業創造できる組織力を重視しています。そのために、性別や年齢に関わらず多様な背景や経験を持つ人材を採用し、個々の特性と能力を最大限に活かせる職場環境を整備することを重視しています。また、従業員の健康促進を将来の成長への投資と位置付けています。

(3) 経営計画・目標


同社は、1株当たりの株主資本(配当金や自己株式取得などの株主還元を含む)の成長率を、株主への還元を含めたグループの成長を示す最適指標と考えています。事業モデルに鑑み、この指標を複数年単位で中長期的に拡大することを目指しています。具体的な数値目標として、2012年3月期以降の平均成長率約12.3%の実績を挙げています。

(4) 成長戦略と重点施策


証券事業ではIFAビジネスの拡大や地域金融機関との提携強化、AI・フィンテックの活用によるサービス向上を推進しています。不動産事業では、中古マンションのリノベーション事業において首都圏に加え近畿エリアへの拡大を進めるとともに、賃貸中物件の取得など仕入を強化しています。

* IFAビジネスの継続的な取引獲得とIT基盤の活用
* 中古マンションのリノベーション事業のエリア拡大(近畿圏)
* 高齢者向け施設の開発投資と資産残高の積み上げ
* トランクルーム事業の新規出店と稼働率向上

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


経済性と社会性の双方を重視した経営の実現に向け、人材育成と職場環境の整備に注力しています。内部トレーナーや外部専門家による研修、資格取得支援を活用し、部門間の異動を通じて組織全体の柔軟性を高めています。また、高度な計数管理・企画能力を持った人材の育成と確保を成長に不可欠な要素と位置付けています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 42.8歳 3.0年 8,723,459円

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 6.6%
男性育児休業取得率 -
男女賃金差異(全労働者) 68.6%
男女賃金差異(正規雇用) 76.6%
男女賃金差異(非正規雇用) -


※男性育児休業取得率は、有価証券報告書に記載がありません。男女賃金差異(非正規雇用)については、パート・有期労働者が全て女性社員である等の理由により記載がありません。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 持株会社固有のリスク


同社は純粋持株会社であり、収入の大部分を子会社からの受取配当金に依存しています。子会社が十分な利益を上げられず配当を行えない状況が続いた場合、同社の分配可能額が減少し、株主への配当支払いに支障をきたす可能性があります。

(2) 証券関連事業の競争と市場変動


金融商品取引業は異業種やフィンテック企業の参入により競争が激化しており、優位性を維持できない場合、業績に悪影響が及ぶ可能性があります。また、自己売買業務において保有する金融資産は市場価格変動リスクに晒されており、相場の急変により損失が発生する恐れがあります。

(3) 不動産事業の市況と在庫リスク


不動産事業は金利動向や経済情勢の影響を強く受けます。特に中古マンション事業では、仕入から販売までの期間に市場価格が下落した場合、棚卸資産の評価損や売却損が発生し、業績が悪化する可能性があります。また、首都圏等での競合激化による仕入・販売価格への影響もリスク要因です。

(4) システム・リスクと事務リスク


業務遂行においてシステム障害やサイバー攻撃によるデータ改竄等が発生した場合、社会的信用の失墜や損害賠償請求により業績に影響が及ぶ可能性があります。また、役職員による事務処理の過誤や法令違反、顧客情報の流出なども、信用の低下や業績悪化につながるリスクとして認識されています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。