日産証券グループ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

日産証券グループ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証スタンダード市場に上場し、金融商品取引業および商品先物取引業を中核事業として展開しています。2025年3月期の連結業績は、営業収益74億円、経常利益8億円、親会社株主に帰属する当期純利益4億円となり、前期比で減収減益となりました。


※本記事は、日産証券グループ株式会社 の有価証券報告書(第20期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月19日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 日産証券グループってどんな会社?


金融商品取引や商品先物取引の受託および自己売買を行う「金融商品取引業等」を主力とする持株会社です。

(1) 会社概要


2005年に持株会社体制への移行に伴い岡藤ホールディングスとして設立され、株式をテクニカル上場しました。2020年に日産証券と経営統合を行い、商号を岡藤日産証券ホールディングスに変更しました。その後、2022年に現在の日産証券グループへ商号変更し、東京証券取引所スタンダード市場へ移行しています。2023年には本社を銀座へ移転しました。

2025年3月31日時点で、連結従業員数は274名、単体従業員数は8名です。筆頭株主は親会社のNSHDで、第2位は資産管理業務を行う信託銀行です。NSHDは同社代表取締役社長が代表を務める企業であり、同社株式の約6割を保有しています。

氏名 持株比率
NSHD 59.22%
日本カストディ銀行(信託口) 6.63%
日産証券グループ従業員持株会 1.83%

(2) 経営陣


同社の役員は男性6名、女性1名の計7名で構成され、女性役員比率は14.3%です。代表取締役社長は二家英彰氏です。社外取締役比率は57.1%です。

氏名 役職 主な経歴
二家英彰 代表取締役社長 国際証券(現三菱UFJモルガン・スタンレー証券)入社後、ユニコムグループホールディングス社長を経て、2012年より日産証券社長。2021年より現職。
近藤竜夫 常務取締役マネジメント本部長 日本ユニコム(現ユニコムグループホールディングス)入社。日産証券取締役コーポレート本部長などを経て、2023年より現職。
久保壽將 取締役財務部長 岡藤商事入社。同社財務部長、執行役員総合管理部長、日産証券グループ総合管理部長などを経て、2023年より現職。


社外取締役は、大門小百合(元ジャパンタイムズ執行役員)、小野里光博(元東京商品取引所執行役員)、門間大吉(元財務省国際局長)、林徹(元内閣法制局第一部長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「金融商品取引業等」および「その他」事業を展開しています。

(1) 金融商品取引業・商品先物取引業


中核子会社である日産証券を中心に、個人および法人顧客に対して資産運用サービスを提供しています。具体的には、株式・投資信託の売買、取引所株価指数証拠金取引(くりっく株365)、取引所為替証拠金取引(くりっく365)、先物・オプション等のデリバティブ取引、商品先物取引などを取り扱っています。また、貴金属販売事業として金地金の販売・買取や純金積立も行っています。

収益源は、顧客からの委託手数料やトレーディング損益などが中心です。これらの事業運営は主に株式会社日産証券が行っています。また、株式会社日産証券インベストメントが金融商品仲介業を行っています。

(2) その他事業


金融関連以外の周辺事業として、システムの運用保守や情報配信サービス、貸金業などを展開しています。グループ内のシステム基盤を支えるほか、法人顧客へのファイナンスサービスも提供しています。

収益源は、システム運用保守料や貸付金利息などです。運営は、システムの運用保守等を行うNSシステムズ株式会社、情報配信および貸金業を行う株式会社NS FinTech(旧日産証券ファイナンス)などが担っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


2021年3月期から2025年3月期までの業績を見ると、売上高(営業収益)は66億円から77億円の範囲で推移しており、直近の2025年3月期は74億円となりました。経常利益は変動があり、2022年3月期には低水準となりましたが、その後回復し、直近では8億円を確保しています。当期利益も黒字を維持しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上収益(または売上高) 77億円 72億円 66億円 77億円 74億円
税引前利益 / 経常利益 / 営業利益 7億円 0.1億円 4億円 11億円 8億円
利益率(%) 9.5% 0.1% 5.5% 14.6% 11.1%
当期利益(親会社所有者帰属) 16億円 5億円 3億円 6億円 4億円

(2) 損益計算書


直近2期間の損益状況を比較すると、営業収益は前期の77億円から74億円へ減少しました。これに伴い営業利益も9億円から7億円へと減少しています。純営業収益に対する営業利益率は11.7%から9.7%へ低下しました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 77億円 74億円
売上総利益 77億円 73億円
売上総利益率(%) 99.4% 99.2%
営業利益 9億円 7億円
営業利益率(%) 11.7% 9.7%


※証券業のため、売上高は「営業収益」、売上総利益は「純営業収益(営業収益-金融費用)」の数値を使用しています。

販売費及び一般管理費のうち、人件費が34億円(構成比51%)、取引関係費が16億円(同24%)を占めています。

(3) セグメント収益


同社は「金融商品取引業等」の単一セグメントですが、注記情報に基づき収益の内訳を確認すると、主力の金融商品取引および商品関連市場デリバティブ取引は安定的に推移していますが、現物売買取引などで変動が見られます。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期)
金融商品取引 37億円 34億円
商品関連市場デリバティブ取引 30億円 29億円
商品先物取引 2億円 3億円
現物売買取引 0.5億円 -10億円
その他 0.7億円 0.7億円
連結(合計) 77億円 74億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社は、営業活動によるキャッシュ・フローがマイナス、投資活動によるキャッシュ・フローがマイナス、財務活動によるキャッシュ・フローがプラスであることから、本業は赤字だが、将来成長のため借入で投資を継続している「勝負型(事業拡大に伴う資産増加)」の状態です。

なお、同社は金融・証券関連事業を主力としているため、営業CFのマイナスは主に差入保証金の増加(事業拡大)によるものであり、直ちに業績悪化を意味するものではありません。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 60億円 -40億円
投資CF -2億円 -1億円
財務CF -12億円 7億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は2.7%で市場平均を下回り、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も8.8%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


持株会社として限られた経営資源を効率的に投入し、「利益の最大化・株主価値の極大化」を図ることを経営目標としています。これを実現するため、「お客様との強固な信頼関係の構築」「健全な市場仲介機能の役割」「常に進化・成長する企業体」の3つを経営方針として掲げています。

(2) 企業文化


金融商品取引業者として「顧客本位の業務運営」を重視し、顧客との信頼関係構築を最優先する文化があります。また、「サステナビリティ経営」を推進し、持続可能な社会の実現と企業の成長の両立を目指しています。さらに、コンプライアンスや情報セキュリティを重視し、高い職業倫理観を持つことを求めています。

(3) 経営計画・目標


株主への利益還元を重視し、自己株式取得を含めた連結ベースでの「配当性向(総還元性向)60%以上」を目標としています。また、持株会社体制による経営の効率化と機動性の発揮、グループ会社間での経営資源の最適配分を通じて、事業基盤の強化を図っています。

(4) 成長戦略と重点施策


相場動向に左右されない企業体質を構築するため、顧客基盤の拡大、業務の集約と効率化、M&Aによる事業拡大を進めています。また、マルチチャネル・マルチプロダクト戦略やITを活用した法人ビジネスの展開により、金融サービスの付加価値向上に努めています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


経営資本の中核である人的資本の充実化を目指し、「ウェルビーイング経営」の観点から人材育成と環境整備を進めています。具体的には、金融プロフェッショナルの育成、多様な人材の確保、次世代リーダーの育成、DX人材の活用を重点課題としています。また、専門職(ジョブ型雇用)の導入や女性・外国籍・中途採用者の比率向上にも取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 46.6歳 4.4年 8,104,304円

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 1.6%
男性育児休業取得率 100.0%
男女賃金差異(全労働者) 56.9%
男女賃金差異(正規雇用) 58.1%
男女賃金差異(非正規雇用) 32.1%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、主要外務員資格等保有者割合(90.2%)、金融プロフェッショナル資格保有者割合(14.2%)、中途採用管理職比率(82.9%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 金融市場の変動リスク


同社グループの事業は、国内外の金融・商品市場の動向や経済情勢の影響を大きく受けます。戦争、テロ、自然災害などにより取引が停滞または減少した場合、収益に悪影響を及ぼす可能性があります。

(2) 自己売買業務に関するリスク


同社グループでは自己売買業務を行っており、社内規程に基づくリスク管理体制をとっていますが、急激な相場変動等により想定外のリスクが顕在化した場合、経営成績に影響を与える可能性があります。

(3) 法的規制およびシステムリスク


金融商品取引法や商品先物取引法などの法的規制を受けており、法令違反等により許認可の取消し等があった場合、事業運営に重大な影響を及ぼします。また、コンピュータシステムの不具合やサイバー攻撃、個人情報の漏洩などが発生した場合も、業績や社会的信用に影響を与える可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。