日産証券グループ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

日産証券グループ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所スタンダード市場に上場する日産証券グループは、金融商品取引や商品先物取引などの投資・金融サービスを中核事業として展開しています。直近の業績では、金融商品取引や商品関連取引の受入手数料が増加したことなどを背景に、大幅な増収増益を達成しており、堅調な成長トレンドを示しています。


※本記事は、日産証券グループ株式会社の有価証券報告書(第21期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月12日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 日産証券グループってどんな会社?


日産証券グループは、国内外の金融マーケットにおいて金融商品や商品先物などの取引サービスを提供する持株会社です。

(1) 会社概要


同社は2005年4月に持株会社体制への移行に伴い岡藤ホールディングスとして設立され、同時に株式を上場しました。2020年10月に日産証券と経営統合し、2022年7月に現在の日産証券グループへと商号を変更しました。直近では2024年に金融商品仲介業を営む企業の株式を取得したほか、2026年に自己売買業務を行うNS Tradeを設立するなど、グループ基盤の拡充を進めています。

同社グループの従業員数は連結で254名、単体で7名です。筆頭株主は同社代表の二家氏が代表を務めるNSHDで、第2位は信託業務を行う日本カストディ銀行となっています。

氏名 持株比率
NSHD 39.55%
日本カストディ銀行(信託口) 6.55%
INSECTorz 6.08%

(2) 経営陣


同社の役員は男性6名、女性1名の計7名で構成され、女性役員比率は14.3%です。代表取締役社長は二家英彰氏が務め、社外取締役比率は57.1%となっています。

氏名 役職 主な経歴
二家英彰 代表取締役社長 国際証券(現三菱UFJモルガン・スタンレー証券)入社。日産証券代表取締役社長等を経て2021年より現職。
近藤竜夫 常務取締役マネジメント本部長 日本ユニコム(現ユニコムグループホールディングス)入社。日産証券コーポレート本部長等を経て2023年より現職。
久保壽將 取締役財務部長 岡藤商事入社。同社財務部長等を経て同社総合管理部長を歴任。2023年より現職。


社外取締役は、大門小百合(元ジャパンタイムズ報道部長)、小野里光博(元東京商品取引所執行役員)、門間大吉(元財務省国際局長)、林徹(元内閣法制局第一部長)です。

2. 事業内容


同社グループは「金融商品取引業等」の単一セグメントとして事業を展開しています。

金融商品・商品先物取引事業


個人および国内外の法人顧客に対し、株式・投資信託の売買、取引所株価指数・為替証拠金取引(くりっく株365・くりっく365)、デリバティブ取引、商品先物取引などの市場仲介サービスを提供しています。また、金地金等の販売・買取などの貴金属販売事業も行っています。

顧客からの株式売買や先物取引にかかる委託手数料、および自己売買によるトレーディング損益が主な収益源です。事業の運営は、主力事業を担う日産証券や、金融商品仲介業を行う日産証券インベストメントなどが中心となって行っています。

その他の金融・投資関連事業


法人顧客に向けたマージンファイナンス(貸金業)や情報配信サービスを提供するほか、ファンド事業などの投資サービスも展開しています。これらのサービスを通じて、多様化する顧客の資産運用ニーズに対応しています。

貸金業による金利収益や、情報配信サービスの手数料などが収益源となります。マージンファイナンスや情報配信サービスはNS FinTechが担い、ファンド事業はNSファンディングが運営しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5年間の業績を見ると、営業収益は増減を伴いながらも拡大傾向にあり、特に直近の期では大幅な増収を達成しています。利益面でも、経常利益および当期利益がともに過去最高水準を記録しており、収益力の改善が顕著に表れています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
営業収益 72億円 66億円 77億円 74億円 86億円
経常利益 0.1億円 4億円 11億円 8億円 17億円
利益率(%) 0.1% 5.4% 14.6% 11.1% 19.5%
当期利益(親会社所有者帰属) -8億円 3億円 6億円 4億円 10億円

(2) 損益計算書


営業収益は前期から拡大し、増収を達成しています。営業利益は前期の約2倍に増加しており、営業利益率も大幅に改善しました。コストコントロールが機能し、本業での収益性が大きく向上していることがうかがえます。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業収益 74億円 86億円
純営業収益 73億円 85億円
純営業収益率(%) 98.6% 98.8%
営業利益 7億円 15億円
営業利益率(%) 9.5% 17.4%


販売費及び一般管理費のうち、人件費が36億円(構成比51%)、取引関係費が18億円(同25%)を占めています。

(3) キャッシュ・フローと財務指標


営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業である「健全型」の傾向を示しています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF -40億円 57億円
投資CF -1億円 -11億円
財務CF 7億円 -25億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は7.7%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は4.6%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


持株会社として限られた経営資源をグループ傘下の各企業へ効率的に投入することで、利益の最大化・株主価値の極大化を図ることを経営目標として掲げています。また、お客様との強固な信頼関係を構築し、健全な市場仲介機能の役割を果たすことで、市場・社会の発展に貢献することを目指しています。

(2) 企業文化


「時代・環境変化に即し、常に進化・成長する企業体を目指す」という経営方針の下、変化の激しい金融マーケットにおいて、迅速かつ柔軟に対応する組織文化を重視しています。顧客本位の業務運営を徹底し、投資・金融サービス企業として高い職業倫理観の確立と普及を図っています。

(3) 経営計画・目標


株主への利益還元にあたっては、株主価値の最大化と資本効率の向上を意識し、バランスの取れた配当と財務体質強化を総合的に勘案しています。機動的な資本政策の遂行を目指し、以下の目標を掲げています。

* 自己株式取得を含めた連結ベースでの配当性向(総還元性向)60%以上

(4) 成長戦略と重点施策


サステナビリティ経営の遂行と経営基盤・事業基盤の拡充を成長戦略に掲げています。顧客本位の業務運営を深化させるため、金融サービスの付加価値向上やDX(デジタルトランスフォーメーション)人材の活用を進める方針です。また、M&Aや業務の集約・効率化を通じて、相場動向に左右されない企業体質の構築を目指しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「ウェルビーイング経営」の観点から、従業員の心身の健康やエンゲージメント向上を目指す社内環境整備を進めています。真の金融プロフェッショナルの育成や次世代リーダーの計画的な育成に注力するとともに、多様な価値観を生かせるよう、専門職によるジョブ型雇用の導入やDX人材の活用を図っています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 44.7歳 2.9年 7,058,861円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 1.7%
男性育児休業取得率 100.0%
全総合職男女間賃金格差 57.9%
非管理職男女間賃金格差 87.0%
非正規雇用労働者の男女間賃金格差 -


※非正規雇用社員の男女別賃金格差については、対象人数がごく僅かなため数値化されていません。

また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、中途採用管理職比率(80.3%)、主要外務員資格等保有者割合(90.7%)、コンプライアンス研修を受けた従業員割合(100.0%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 金融・商品市場の変動

同社グループの事業は、国内外の金融・商品市場の動向や経済情勢の影響を大きく受けます。戦争やテロ、自然災害などによる取引の停滞や減少が長引いた場合、経営予測を超えて収益に悪影響を及ぼす可能性があります。

(2) 自己売買業務に伴うリスク

同社グループでは自己売買業務を行っており、社内規程に基づき日々のモニタリングによるリスク管理体制を構築しています。しかし、急激な相場変動等により想定外のリスクが顕在化した場合、経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

(3) 法的規制の変更や許認可の取消

同社グループは金融商品取引法や商品先物取引法などの法的規制の下で事業を行っています。法令や諸規則を遵守していますが、将来何らかの理由により事業に必要な許認可や登録が取り消された場合、事業運営に重大な影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。