アサックス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

アサックス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証スタンダード上場の独立系ノンバンクです。不動産担保ローン専業として、個人・法人向けに融資を行っています。第56期は、積極的な営業展開により貸付金残高が増加し、金利収入や手数料収入が伸長しました。これに伴い、売上高にあたる営業収益および各利益段階で増収増益を達成しています。


※本記事は、株式会社アサックス の有価証券報告書(第56期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. アサックスってどんな会社?


同社は、首都圏を中心に不動産担保ローン事業を展開する独立系ノンバンクです。独自のノウハウによる迅速な融資実行と債権の健全性を強みとしています。

(1) 会社概要


同社は1969年、長野県にて株式会社朝日企業として設立されました。1995年に商号を現在のアサックスに変更し、首都圏での支店展開を本格化させました。2007年に東証二部へ上場し、翌2008年には東証一部へ指定替えを果たしました。その後、2022年の市場区分見直しに伴い、現在はスタンダード市場に上場しています。2023年には米国に現地法人を設立するなど、海外展開も視野に入れています。

現在の従業員数は単体で57名と少数精鋭の体制です。筆頭株主は同社代表取締役社長が代表を務める資産管理会社の株式会社フレキシブルで、第2位は創業者の草間庸文氏となっており、経営陣による持株比率が高いオーナー系企業の特徴を持っています。第3位には通信サービス大手の事業会社が名を連ねています。

氏名 持株比率
フレキシブル 34.55%
草間 庸文 28.50%
光通信 7.51%

(2) 経営陣


同社の役員は男性7名、女性0名、計7名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長兼審査部長には草間雄介氏が就任しています。社外取締役比率は42.9%です。

氏名 役職 主な経歴
草間 雄介 代表取締役社長兼審査部長 オリックス、フレキシブル取締役を経て2013年同社入社。取締役審査部長等を経て2020年より現職。ASAX America, Inc. Presidentも兼務。
草間 庸文 代表取締役会長 安田生命保険を経て1974年同社取締役。山和住宅代表取締役等を歴任後、1994年同社代表取締役社長に就任。2020年より現職。
池尻 周平 取締役営業統括部長 2002年同社入社。銀座支店長、本社営業課長、本社営業部長等を歴任。2016年取締役就任。2024年より現職。
小林 一成 取締役管理部門担当 2003年同社入社。銀座支店長、総務統括部長、本社営業部長、新宿支店長等を歴任。2024年より現職。


社外取締役は、成田隆一(不動産鑑定会社社長)、松﨑孝夫(元日本長期信用銀行常務執行役員)、林康司(林総合法律事務所代表弁護士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「不動産担保ローン事業」の単一セグメントで事業を展開しています。

不動産担保ローン事業


同社は、不動産を担保とする事業資金等の融資を行っています。主力の不動産担保ローンに加え、金融機関が行う不動産担保融資に対する信用保証事業、収益不動産の賃貸・管理を行う不動産賃貸事業、債権回収目的で取得した不動産の販売事業も行っています。

収益は主に、顧客からの貸付金利息、融資実行時の事務手数料、期限前返済に伴う解約違約金、および賃貸不動産からの賃料収入等から構成されています。運営は主にアサックスが行い、一部の不動産事業等は米国子会社等が担っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績は、売上収益・利益ともに堅調な右肩上がりで推移しています。特に第56期は売上収益が75.2億円に達し、経常利益率も40%台後半から50%を超える高水準を維持しています。安定した収益基盤を背景に、当期純利益も増益基調が続いています。

項目 2025年3月期 2024年3月期 2023年3月期 2022年3月期 2021年3月期
売上収益 75.2億円 67.5億円 61.8億円 56.5億円 58.4億円
経常利益 51.7億円 50.6億円 43.0億円 38.7億円 41.2億円
利益率(%) 68.8% 74.9% 69.5% 68.4% 70.5%
当期利益(親会社所有者帰属) 33.9億円 32.9億円 28.0億円 25.4億円 26.8億円

(2) 損益計算書


直近2期間の損益構成を比較すると、売上収益の増加に伴い、営業利益が順調に拡大しています。売上原価率が極めて低く、高い利益率を確保している点が特徴的です。販管費などのコストを適切にコントロールしながら事業規模を拡大させています。

項目 2025年3月期 2024年3月期
売上高 75.2億円 67.5億円
売上総利益 74.3億円 66.5億円
売上総利益率(%) 98.8% 98.4%
営業利益 52.1億円 47.5億円
営業利益率(%) 69.3% 70.3%


その他の営業費用(販売費及び一般管理費に相当)のうち、その他経費が4.9億円(構成比30.7%)、給料及び手当が3.8億円(同23.4%)、広告宣伝費が2.6億円(同16.4%)を占めています。

(3) セグメント収益


不動産担保ローン事業は、積極的な顧客開拓と融資実行により、営業貸付金残高が増加しました。これに伴い貸付金利息や手数料収入が伸長し、増収増益となりました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
不動産担保ローン事業 67.5億円 75.2億円 47.5億円 52.1億円 69.3%
連結(合計) 67.5億円 75.2億円 47.5億円 52.1億円 69.3%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


なお、同社は金融・証券関連事業を主力としているため、営業CFのマイナスは主に営業貸付金の増加(事業拡大)によるものであり、直ちに業績悪化を意味するものではありません。

項目 2025年3月期 2024年3月期
営業CF -37.4億円 -36.4億円
投資CF -17.1億円 -21.3億円
財務CF 51.8億円 48.8億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は7.1%で市場平均(スタンダード市場7.2%)とほぼ同じ水準である一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は41.5%で市場平均(スタンダード非製造業平均48.5%)を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は、創業以来の経営理念として「お客様第一主義」を掲げています。常に公正・中立の立場に立ち、質の高いサービスの提供を通じて豊かな社会づくりに貢献することを目指しています。また、好況時・不況時に関わらず貸倒れを抑えたローコスト経営を堅持し、着実な成長を続けることを基本方針としています。

(2) 企業文化


同社は「信頼経営」を根幹に据え、株主、顧客、取引先、従業員、地域社会等のステークホルダーとの信頼関係構築を重視しています。社員の行動原理・原則として「アサックス企業行動憲章」を制定し、法令遵守はもとより、高い倫理観に基づいた自主的な行動を促しています。また、財務の健全性を維持しつつ、積極的な営業展開を行う風土があります。

(3) 経営計画・目標


同社は、不動産市況の影響を受けやすい事業特性を踏まえ、中長期にわたる安定成長を目指しています。具体的な数値目標として以下を掲げ、継続的な改善を進めています。

* 女性従業員比率:2030年3月期末までに35%程度
* 女性管理職比率:2030年3月期末までに10%程度

(4) 成長戦略と重点施策


同社は、不動産担保ローン事業を核としつつ、信用保証事業や不動産賃貸事業による収益基盤の多様化を推進しています。今後は、インターネット広告等の活用による企業ブランド力の強化、市場からの直接調達を含む資金調達の多様化、および階層別研修を通じた人材育成に注力し、企業体質の強化を図る方針です。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は、社員を重要な財産と位置づけ、企業理念を理解しロイヤルティの高い人材の育成を重視しています。多様な視点を持つ人材確保のため、性別や国籍を問わない採用を推進するとともに、階層別研修やOJT、外部研修支援を通じて専門性と倫理観を高める育成体制を構築しています。また、公平な評価制度や柔軟な働き方の支援により、人材の定着を図っています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 35.3歳 11.8年 8,642,252円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 -
男性育児休業取得率 -
男女賃金差異(全労働者) -
男女賃金差異(正規雇用) -
男女賃金差異(非正規) -


同社は公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。

また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性従業員比率(36.8%)、女性管理職比率(4.0%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 不動産市況の変化


同社の不動産担保ローン事業は不動産市況の影響を強く受けます。地価の下落による担保価値の目減りや、顧客の返済能力低下が生じた場合、貸倒リスクが高まる可能性があります。同社は厳格な与信判断や担保評価のメンテナンスに努めていますが、市況悪化時には財政状態や経営成績に影響が及ぶ可能性があります。

(2) 顧客情報の管理


同社は多数の個人情報を取り扱っており、個人情報保護法等の規制を受けています。社内規程の整備やシステムセキュリティの強化、社員教育を徹底していますが、万が一情報の漏洩や不正利用が発生した場合、社会的信用の失墜や損害賠償請求等により、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(3) システムおよび事務リスク


業務遂行においてコンピュータシステムや通信ネットワークに依存しており、自然災害やサイバー攻撃によるシステム障害が発生した場合、業務に支障をきたす恐れがあります。また、役職員による事務ミスや不正が発生した場合も同様に、損失の発生や信用の低下を招き、経営成績に影響を与える可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。