丸三証券 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

丸三証券 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証プライム上場の証券会社です。投資・金融サービス業を中核に、対面営業を中心とした証券ビジネスを展開しています。直近の業績は、株式委託手数料の減少などにより経常減益となりましたが、投資信託の募集手数料や信託報酬が増加し、増収かつ最終増益(当期利益は増加)となりました。


※本記事は、丸三証券株式会社 の有価証券報告書(第105期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月18日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 丸三証券ってどんな会社?


独立系の証券会社として「自主独立」を貫き、対面営業によるきめ細かなサービスを提供する老舗企業です。

(1) 会社概要


1910年に丸三多田岩吉商店として創業し、1944年に丸三証券へ商号変更しました。1986年に東京・大阪証券取引所市場第二部に上場し、1988年には同第一部に指定されています。1997年にオンライントレードサービスを開始しましたが、2022年に当該事業を岡三証券へ承継し、対面営業に特化する体制を整えています。

連結従業員数は1,098名、単体従業員数は1,098名です。筆頭株主は信託業務を行う日本マスタートラスト信託銀行で、第2位は事業上の取引関係がある日本生命保険相互会社、第3位は環境保全活動を行う公益財団法人です。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行株式会社(信託口) 10.43%
日本生命保険相互会社 7.90%
公益財団法人長尾自然環境財団 7.17%

(2) 経営陣


同社の役員は男性10名、女性1名の計11名で構成され、女性役員比率は9.1%です。代表取締役社長は菊地稔氏が務めています。社外取締役比率は57.1%です。

氏名 役職 主な経歴
菊地 稔 代表取締役社長 1986年同社入社。人事部長、執行役員投資信託部長、常務執行役員などを経て、2017年代表取締役副社長に就任。2018年6月より現職。
服部 誠 代表取締役専務取締役 営業本部長 エクイティ本部長 営業企画部長 証券貯蓄部長 投資相談部長 1990年同社入社。エクイティ本部長、常務執行役員、専務執行役員などを歴任。2020年代表取締役専務取締役に就任し、2023年8月より現職。
建壁 德明 取締役 内部管理統括責任者 監理本部長 1988年日興證券(現SMBC日興証券)入社。同社法人業務部長などを経て、2017年同社入社。2018年取締役執行役員に就任。2024年2月より現職。


社外取締役は、今里栄作(元三菱UFJモルガン・スタンレー証券専務執行役員)、植原惠子(元大和証券ビジネスセンター専務取締役)、正田郁夫(元大和証券常務執行役員)、濵田豊作(元住友商事副社長執行役員)です。

2. 事業内容


同社グループは、「投資・金融サービス業」事業を展開しています。

投資・金融サービス業


同社グループは、有価証券の売買、引受け、募集・売出しの取扱いなどを中心とした金融商品取引業を行っています。個人顧客を中心とした対面営業により、株式、債券、投資信託などの金融商品や投資情報の提供を行っています。

収益は主に顧客からの委託手数料、投資信託の募集手数料および信託報酬、引受け・売出し等の手数料から構成されています。運営は主に丸三証券が行っていますが、連結子会社の丸三ファイナンスが不動産賃貸業等を担っています(同子会社は2025年4月に同社へ吸収合併されました)。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間のデータでは、売上や利益に変動が見られます。経常利益は市場環境の影響を受けやすく増減を繰り返していますが、当期は前期比でやや減少しました。一方、当期利益については特別利益の計上などにより増加傾向にあり、利益率は高い水準を維持しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上収益(または売上高) - - - - -
経常利益 41億円 36億円 9億円 42億円 40億円
利益率(%) - - - - -
当期利益(親会社所有者帰属) 41億円 28億円 8億円 30億円 45億円

(2) 損益計算書


直近2期間の比較では、トレーディング損益等は減少しましたが、投資信託関連の手数料収入が堅調に推移しました。販売費及び一般管理費は微増となりましたが、営業外収益や特別利益の計上もあり、最終的な利益水準は向上しています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 - -
売上総利益 - -
売上総利益率(%) - -
営業利益 37億円 35億円
営業利益率(%) - -


販売費及び一般管理費のうち、人件費が95億円(構成比62%)、事務費が16億円(同10%)を占めています。

(3) セグメント収益


※このセクションはデータがないため省略します。

(4) キャッシュ・フローと財務指標


**事業検討型(事業拡大に伴う資産増加)**
なお、同社は金融・証券関連事業を主力としているため、営業CFのマイナスは主に預り金の減少(事業拡大)によるものであり、直ちに業績悪化を意味するものではありません。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 76億円 -2億円
投資CF -7億円 5億円
財務CF -19億円 -51億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は7.5%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は66.6%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は創業以来、「自主独立」を貫き、どの系列にも属さない経営を行っています。また、「お客様本位」の考え方に基づき、顧客のニーズに合った情報やサービスの提供を通じて顧客満足度の向上に努めることを基本方針としています。

(2) 企業文化


「全員参加の経営」と「企業の発展と福祉の向上」を掲げ、社員一人ひとりが経営に参加し、共に考え行動することを目指しています。また、経営理念において「いついかなる場合にもお客様に対して奉仕する心を失うことのないよう誓う」と宣言し、顧客への奉仕の心と社会的責務の遂行を重視する文化があります。

(3) 経営計画・目標


2024年度から新たに策定した「中期経営計画」に取り組んでおり、2028年度までの数値目標を掲げています。売買手数料依存からの脱却と残高連動報酬ベースの収益構造確立を目指し、資本コストを上回るROEの達成を目標としています。

* 株式投資信託の預り資産純増額:3,000億円
* 日本株の個別銘柄の預り資産純増額:1,000億円
* ROE:8%以上(長期10%)
* 投資信託の信託報酬による販管費カバー率:55%

(4) 成長戦略と重点施策


中期経営計画に基づき、株式営業では有望銘柄の発掘力や提案力を強化し、推奨銘柄の残高増加を図っています。投資信託営業では、良質なファンドの長期保有を促進し、信託報酬による安定収益の拡大を目指しています。また、新たな注力分野として、ゴールベースアプローチによるファンドラップ事業の開始や、引受主幹事案件の獲得拡大にも取り組んでいます。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「全員参加の経営」の実現に向け、「若手の登用」「女性の活躍」「ミドルの躍動」「シニアの知見」を掲げ、多様な人材が活躍できる環境整備を進めています。女性活躍推進の一環として「投信債券歩合外務員」制度を活用し、柔軟な働き方と高い処遇の両立を図っています。また、資格取得支援や階層別研修、「丸三アカデミー」などを通じてプロフェッショナル人材の育成に注力しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均とほぼ同じ水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 36.0歳 12.8年 7,822,000円


※平均年間給与は、出向者、休職者、中途入社者及び契約社員を除く期末在籍者数を基に計算しております。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 1.8%
男性育児休業取得率 65.2%
男女賃金差異(全労働者) 65.0%
男女賃金差異(正規雇用) 59.9%
男女賃金差異(非正規雇用) 99.8%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、新卒採用の女性比率(47.1%)、有給休暇取得率(60.3%)、AFPの取得者数(764名)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 株式市場の変動から受ける影響


同社グループの営業収益のうち、株式委託手数料が一定の割合を占めています。そのため、株式市場の市況変動により業績が大きな影響を受ける可能性があります。これに対応するため、売買手数料依存から残高連動報酬ベースの収益構造への転換を進めています。

(2) システムリスク


インターネット取引システムや業務システムの障害発生により損失を被るリスクがあります。同社は外部ベンダーに委託する基幹システムのバックアップセンターを遠隔地に設置し、障害発生時でも業務を継続できる体制を整備することでリスク低減を図っています。

(3) 情報漏洩、サイバー攻撃に関するリスク


サイバー攻撃や人為的ミスにより顧客情報等の漏洩やシステム停止が発生した場合、社会的信用の失墜や損害賠償等により業績に影響を及ぼす可能性があります。情報セキュリティポリシーや社内規程の整備、技術的対策、外部委託先の管理、社員教育等を通じて対策を講じています。

(4) 法務・コンプライアンスに関するリスク


業務執行において法令違反等が発生した場合、罰則適用や損害賠償、社会的信用の失墜により業績に影響を与える可能性があります。コンプライアンス原則等の社内規程の整備、教育・啓発、顧問弁護士との連携等により、法令遵守体制の強化に努めています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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