※本記事は、丸三証券株式会社の有価証券報告書(第106期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月16日提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準はJapan GAAPです。
1. 丸三証券ってどんな会社?
投資・金融サービス業を主体とし、独立系証券会社として顧客の資産形成を支援しています。
■(1) 会社概要
1910年に丸三多田岩吉商店として営業を開始し、1944年に丸三証券に商号変更しました。1986年に東京・大阪両証券取引所市場第二部に上場し、1988年に同市場第一部へ指定されました。1997年にオンライントレードサービスを開始し、デジタル化にも対応しています。
従業員数は単体で1,130名です。筆頭株主は日本生命保険相互会社(常任代理人 日本マスタートラスト信託銀行)で、第2位は日本マスタートラスト信託銀行(信託口)、第3位は長尾自然環境財団です。独立系証券会社として特定の系列に属さず、独自の事業を展開しています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本生命保険相互会社(常任代理人 日本マスタートラスト 信託銀行) | 7.89% |
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 7.83% |
| 公益財団法人長尾自然環境財団 | 7.16% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性9名、女性2名の計11名で構成され、女性役員比率は18.2%です。代表取締役社長は菊地稔氏が務めています。取締役の社外取締役比率は57.1%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 菊地稔 | 代表取締役社長 | 1986年同社入社。人事部長、投資信託部長、常務執行役員などを経て、2017年代表取締役副社長に就任。2018年より現職。 |
| 服部誠 | 代表取締役専務取締役営業本部長エクイティ本部長金融コンサルタント一部長金融コンサルタント二部長金融コンサルタント三部長コンサルタントサポート部長 | 1990年同社入社。各支店長やエクイティ部長などを経て、2020年代表取締役専務取締役に就任。2025年より現職。 |
| 青木真嗣 | 取締役内部管理統括責任者監理本部長 | 1999年同社入社。北九州支店長、営業本部長、名古屋支店長などを経て、2025年より現職。 |
社外取締役は、植原惠子(元大和証券ビジネスセンター専務取締役)、濵田豊作(元住友商事副社長執行役員)、齋藤和弘(元サントリー食品インターナショナル代表取締役社長)、尾関春子(元コカ・コーライーストジャパン常務執行役員法務本部長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「投資・金融サービス業」の単一セグメントで事業を展開しています。
■(1) 株式・債券部門
同社は、有価証券を中核商品とした金融サービスを提供しており、個人および法人顧客を対象に株式や債券の売買、取次ぎ、引受けなどを行っています。有望銘柄の発掘や分かりやすい提案力を強みとし、新規上場企業の株式引受けなどにも取り組んでいます。
収益は、顧客の株式・債券売買の取次ぎによる委託手数料や、引受け・募集の取扱手数料から得ています。事業の運営は丸三証券が行っています。
■(2) 投資信託・ファンドラップ部門
顧客のライフプランや投資目的に合わせた資産形成を支援するため、国内外の株式や債券に投資する投資信託の販売を行っています。また、ゴールベース資産管理を用いた独自のファンドラップサービスも提供し、中長期的な資産形成をサポートしています。
収益は、投資信託の販売時に得られる募集手数料や、保有残高に連動して継続的に得られる信託報酬などから得ています。事業の運営は丸三証券が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の単体業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5年間の業績推移を見ると、経常利益は市場環境の変動を受け増減を繰り返していますが、2024年3月期以降は回復傾向にあります。2026年3月期は株式委託手数料や投資信託の信託報酬の増加が寄与し、経常利益は59億円、当期利益は50億円と大幅な増益を達成し、安定した成長を見せています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 経常利益 | 36億円 | 9億円 | 42億円 | 40億円 | 59億円 |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 28億円 | 8億円 | 30億円 | 45億円 | 50億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間の損益構成を比較すると、営業利益は36億円から54億円へと拡大しており、収益力が大幅に向上しています。これは、残高連動報酬の拡大など手数料収入の増加が、費用増加を上回ったことによるものです。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業利益 | 36億円 | 54億円 |
■(3) キャッシュ・フローと財務指標
直近の2025年3月期のキャッシュ・フローは、本業が低迷し事業の見直しが迫られる「事業検討型」となっています。なお、同社は金融・証券関連事業を主力としているため、営業CFのマイナスは主に顧客分別金信託等の増加(事業拡大)によるものであり、直ちに業績悪化を意味するものではありません。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 76億円 | -2億円 |
| 投資CF | -7億円 | 5億円 |
| 財務CF | -19億円 | -51億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は7.5%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は66.6%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は、創業以来「顧客本位」を経営理念に掲げ、顧客のニーズにあった情報や商品の提供により信頼関係を築いてきました。2026年3月には新たな経営理念として「お客様本位の金融サービスで、確かな信頼を育み、ともに想いを実現する」を制定しました。顧客の人生設計に寄り添い、中長期的な資産形成と豊かな未来を支援する存在を目指しています。
■(2) 企業文化
同社は、経営理念を実現するための行動指針として「自主独立の精神」「奉仕の心」「全員参加の経営」の3つを掲げています。独立系証券会社としていずれの系列にも属さず、すべてのステークホルダーの利益を尊重しながら、経営の効率化と健全化による企業価値の向上と社会への貢献を追求する文化を醸成しています。
■(3) 経営計画・目標
2024年度からスタートした「中期経営計画」において、2028年度までに以下の数値目標の達成を目指しています。
・株式投資信託の預り資産純増額:3,000億円
・推奨する日本株の個別銘柄の預り資産純増額:1,000億円
・ROE:8%以上
・投資信託の信託報酬による販管費カバー率:55%
■(4) 成長戦略と重点施策
顧客本位の業務運営を推進し、売買手数料依存から残高連動報酬をベースにした収益構造の確立を目指しています。株式営業では有望銘柄の発掘と提案力を強化し、投資信託営業では良質なファンドの長期保有を促進します。また、ゴールベース資産管理による「丸三ファンドラップサービス」の展開や、引受主幹事案件の獲得拡大にも注力し、資本コストを上回る成長を図ります。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は、社員一人ひとりが経営理念に共感し、専門性と高い倫理観を備えたプロフェッショナル人材へと成長することを目指しています。階層別研修や「丸三アカデミー」を通じた人材育成を行うとともに、「MST(Marusan Small Teams)活動」により社員が主体的に課題解決に取り組む学ぶ文化を醸成しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均とほぼ同じ水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 35.5歳 | 12.2年 | 7,729,000円 |
※平均年間給与は、出向者、休職者、中途入社者及び契約社員を除く期末在籍者数を基に計算しております。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 3.0% |
| 男性育児休業取得率 | 78.2% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 69.0% |
| 男女賃金差異(正規雇用労働者) | 61.7% |
| 男女賃金差異(パート・有期労働者) | 101.0% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、新卒採用の女性比率(45.5%)、有給休暇取得率(68.9%)、エンゲージメントスコア(62.4)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 株式市場の変動から受ける影響
同社の営業収益のうち株式委託手数料が占める割合は大きく、株式市場の相場変動や取引高の減少により、業績に重大な影響が及ぶリスクがあります。このため、売買手数料依存から残高連動報酬ベースの収益構造への転換を進めています。
■(2) システムリスク
インターネット取引システムや基幹システムの障害が発生した場合、顧客へのサービス提供が滞り、社会的信用の失墜や損害賠償を被るリスクがあります。同社はバックアップセンターを地域的に離れた場所に設け、業務を継続できる体制を整備しています。
■(3) 情報漏洩、サイバー攻撃に関するリスク
人為的ミスや外部からのサイバー攻撃により、顧客の個人情報や会社の機密情報が漏洩した場合、あるいはシステムが利用不能になった場合、経営成績に影響を及ぼす可能性があります。情報セキュリティポリシーの整備や社内教育の徹底により対策を図っています。
■(4) 法務・コンプライアンスに関するリスク
業務執行において法令違反や契約違反が発生した場合、行政処分や損害賠償請求、社会的信用の失墜につながるリスクがあります。コンプライアンス原則等の社内規程を整備し、社内教育や顧問弁護士との連携により適正な業務運営に努めています。



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