水戸証券 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

水戸証券 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

水戸証券は東京証券取引所プライム市場に上場し、関東を中心に対面営業を主体とした金融商品取引業を展開しています。直近の業績は株式市場の調整等により営業収益は減少、経常利益も減益となりましたが、投資有価証券売却益の計上等により最終的な当期利益は増益を確保し、堅実な事業基盤と財務体質を維持しています。


※本記事は、水戸証券株式会社の有価証券報告書(第80期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 水戸証券ってどんな会社?


関東一円を地盤とし、対面でのきめ細かなコンサルティング営業を強みとする独立系証券会社です。

(1) 会社概要


水戸証券は1921年に小岸商会として創業した老舗証券会社です。1944年に丸水証券と合併して現在の社名に変更しました。1989年に東京証券取引所市場第二部へ株式を上場し、2001年には同市場第一部への指定替えを果たしました。その後も投資運用業や投資助言・代理業の登録を行うなど、金融サービス業として事業を拡大しています。

現在の従業員数は単体で740名です。同社の筆頭株主は資産管理業務を行う日本マスタートラスト信託銀行(信託口)で、第2位は情報通信サービスを提供する野村総合研究所、第3位は小林協栄となっています。地域に根ざした対面営業の強みを活かし、多様な顧客ニーズに応えています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 11.00%
野村総合研究所 8.87%
小林協栄 5.23%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性2名の計10名で構成され、女性役員比率は20.0%です。代表取締役社長は小林克徳氏が務めています。社外取締役は4名選任されています。

氏名 役職 主な経歴
小林克徳 代表取締役社長 2005年同社入社。経営企画部長、執行役員を経て、2018年より現職。
魚津亨 代表取締役副社長 1983年日本興業銀行入行。みずほコーポレート銀行執行役員等を経て、2013年同社入社。2018年より現職。
須田恭通 常務取締役 1986年同社入社。足利支店長、投資情報部長、執行役員等を経て、2023年より現職。
毛塚徹也 取締役 1990年同社入社。カスタマーセンター長、商品企画部長、経営企画部長等を経て、2024年より現職。
菅原昭仁 取締役 1991年同社入社。横浜支店長、水戸支店副支店長、執行役員等を経て、2024年より現職。
井口英樹 取締役(監査等委員) 1985年太平洋証券入社。2001年同社入社。コンプライアンス統括室長等を経て、2022年より現職。


社外取締役は、瀬川章(元藤田観光社長)、小祝寿彦(元丸三証券社長)、大西美世恵(会田税務会計事務所税理士)、浦部明子(LM虎ノ門南法律事務所弁護士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「投資・金融サービス業」の単一セグメントで事業を展開しています。

投資・金融サービス業


同社は有価証券の売買、売買の取次ぎ、引受け・売出し、募集の取扱いなど幅広い金融サービスを提供しています。主に関東圏を中心とした店舗ネットワークを通じ、個人および法人の顧客に対して、株式、債券、投資信託、ファンドラップなどの資産形成を直接サポートしています。

収益モデルは、顧客の取引に伴う株式委託手数料や投資信託の販売手数料のほか、投資信託の代行手数料やファンドラップ報酬といった残高連動型のストック収益が柱となっています。事業の運営は水戸証券が単体で行っており、顧客一人ひとりのライフプランに応じたポートフォリオ提案を通じて、安定した収益基盤の拡大を進めています。

3. 業績・財務状況


同社の業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


過去5年間の業績は、金融市場の動向による変動が見られます。2023年3月期は市場環境の悪化で一時的に減収減益となりましたが、翌期には回復しました。直近の2025年3月期は株式市場の調整等で営業収益が減少したものの、投資有価証券の売却等により最終的な当期利益は過去最高水準となる堅調な推移を示しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
営業収益 154億円 137億円 112億円 146億円 140億円
経常利益 32億円 20億円 2億円 28億円 23億円
利益率(%) 20.8% 14.6% 1.8% 19.2% 16.4%
当期利益(親会社所有者帰属) 19億円 14億円 8億円 23億円 24億円

(2) 損益計算書


直近2期間の収益構造を見ると、営業収益は前期の146億円から当期は140億円へ減少しました。これに伴い純営業収益(売上総利益相当)も減少し、営業利益は19億円にとどまりました。ただし、投資信託の代行手数料などのストック収益は着実に増加しており、収益基盤の安定化が進展しています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業収益 146億円 140億円
純営業収益 145億円 139億円
純営業収益率(%) 99.6% 99.6%
営業利益 24億円 19億円
営業利益率(%) 16.4% 13.3%


販売費及び一般管理費のうち、人件費が68億円(構成比57%)、事務費が18億円(同15%)を占めています。

(3) セグメント収益


同社は投資・金融サービス業の単一セグメントであるため、事業部門別の業績開示はありません。当期の全体売上(営業収益)は、株式委託手数料などのフロー収益が減少した影響により、前期比で減収となりました。

(4) キャッシュ・フローと財務指標


なお、同社は金融・証券関連事業を主力としているため、営業CFのマイナスは主に預り金及び受入保証金の減少によるものであり、直ちに業績悪化を意味するものではありません。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 69億円 -5億円
投資CF 10億円 10億円
財務CF -20億円 -37億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は5.8%でプライム市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は63.2%で同市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は経営理念として「水戸証券は、顧客・株主・社員にBESTをつくす企業でありたい」を掲げています。また、「金融サービスを通じて価値を創造し、お客さまと地域社会の豊かな未来の実現に貢献する」という経営ビジョンのもと、多様化・高度化する顧客のライフプランやニーズに最適な金融サービスを提供することを使命としています。

(2) 企業文化


同社は地域社会との共生を重んじる文化を持っており、北関東を中心とした関東一円を営業基盤として、対面を重視した金融サービスの提供に注力しています。また、SDGsへの継続的な取り組みや、小中学生に向けた金融教育の実施など、地域貢献活動を通じて地域社会と自社の共通の価値を創造する姿勢を大切にしています。

(3) 経営計画・目標


2026年3月期から2030年3月期までの5年間を対象とした「第七次中期経営計画」において、以下の数値目標(KPI)を掲げて事業を推進しています。

* ROE:8.0%以上
* ストック収益による販管費カバー率:50.0%以上
* 株式投資信託+水戸ファンドラップの合計残高:7,500億円以上

(4) 成長戦略と重点施策


「人と組織の力で、お客さまからの信頼を深め、持続的に成長する企業へ」というテーマのもと、人的資本の強化と自律的な組織運営の推進による経営基盤の一層の強化を図ります。具体的には、投資信託とファンドラップを軸としたストック収入の拡大により安定収益基盤の構築に取り組み、顧客の「ふやす・まもる・つなぐ」ニーズに的確に応える戦略を進めています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は社員を大切な財産(人財)と位置づけ、専門知識を有し顧客に期待以上の価値を提供できる人材の育成に注力しています。職位ごとの研修マスタープランによる継続的な教育や、上級資格の取得支援を通じて自己実現を後押しするとともに、多様な人材が活躍できるよう残業の抑制策や独自の育児介護制度などを導入し、柔軟な働き方の実現を目指しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 42.3歳 17.4年 6,778,162円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 19.2%
男性育児休業取得率 13.3%
男女賃金差異(全労働者) 69.7%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 72.1%
男女賃金差異(パート・有期労働者) 64.1%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、管理職のメンタルヘルス・マネジメント検定資格取得率(97.4%)、中途入社における管理者比率(21.2%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 人材の確保及び育成に係るリスク


同社は人材を最重要の経営資源と位置づけていますが、人材の確保や育成が進まない場合には、質の高い金融サービスの提供が困難となり、事業目的の達成や持続的な成長に支障をきたす可能性があります。これに対し、教育・評価制度の整備や給与水準の引き上げ、高度専門人材の中途採用などで対応しています。

(2) 株式・為替市況による収益変動リスク


同社の主要な収益源である受入手数料やトレーディング損益は、株式市況や為替市況の変動による影響を大きく受けます。政治・経済情勢の悪化等により市場が低迷した場合、業績が大幅に変動する可能性があります。ポートフォリオを考慮した提案やストック収益の拡大により、この影響の軽減を図っています。

(3) 情報セキュリティ及びシステムリスク


業務上使用するコンピュータシステムにおいて、外部からの不正アクセスや災害などにより障害が発生した場合、取引の縮小や中断を余儀なくされるリスクがあります。また、顧客情報の漏洩が発生した場合には社会的信用の失墜を招くため、24時間体制での監視やバックアップシステムの整備、厳重な情報管理体制を構築しています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。