水戸証券 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

水戸証券 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

水戸証券は東京証券取引所プライム市場に上場し、有価証券の売買や引受け、投資信託等の金融商品取引業を展開しています。直近の業績は、営業収益が161億円(前期比15.0%増)、経常利益が36億円(同54.5%増)と大幅な増収増益を達成し、ストック収益を軸とした安定収益基盤の拡大を進めています。


※本記事は、水戸証券株式会社の有価証券報告書(第81期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月18日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 水戸証券ってどんな会社?


有価証券の売買や投資信託の販売を中心に金融サービスを提供する証券会社です。

(1) 会社概要


1921年に小岸商会として創業し、1942年に小林証券へ改称後、1944年に水戸証券に商号変更しました。1985年に総合証券となり、1989年に東証二部上場、2001年に東証一部に指定されました。2004年に有価証券店頭デリバティブ取引業務の認可を受け、2008年には投資運用業として登録されました。

現在、単体で753名の従業員が在籍しています。筆頭株主は信託業務を行う日本マスタートラスト信託銀行で、第2位はシステム開発やコンサルティングを手掛ける野村総合研究所、第3位は創業家関連の小林協栄となっています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 10.05%
野村総合研究所 9.16%
小林協栄 5.40%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性2名の計10名で構成され、女性役員比率は20.0%です。代表取締役社長は小林克徳氏が務めています。社外取締役比率は40.0%です。

氏名 役職 主な経歴
小林克徳 代表取締役社長 2005年同社入社。経営企画部長、執行役員を経て、2018年6月より現職。
須田恭通 常務取締役 1986年同社入社。足利支店長、投資情報部長、執行役員を経て、2023年6月より現職。
浦辺紀行 常務取締役 1993年日本興業銀行入行。みずほ銀行の執行理事などを歴任し、2025年6月より現職。
毛塚徹也 取締役 1990年同社入社。カスタマーセンター長、経営企画部長、執行役員を経て、2024年6月より現職。
菅原昭仁 取締役 1991年同社入社。横浜支店長、水戸支店副支店長、執行役員を経て、2024年6月より現職。
井口英樹 取締役(監査等委員) 1985年太平洋証券入社。2001年同社入社。コンプライアンス統括室長などを経て、2022年6月より現職。


社外取締役は、小祝寿彦(元丸三証券代表取締役会長)、森本学(元金融庁総務企画局長)、大西美世恵(会田税務会計事務所税理士)、浦部明子(虎ノ門南法律事務所弁護士)です。

2. 事業内容


同社グループは、投資・金融サービス業の単一セグメントで事業を展開しています。

(1) 有価証券の売買・取次業務


個人および法人顧客向けに、国内外の株式や債券などの金融商品の売買および売買の取次ぎサービスを提供しています。主力の対面営業に加え、インターネットを活用したカスタマーセンターによるネット取引なども展開しています。

顧客から受け取る委託手数料や、有価証券の売買で生じるトレーディング収益が主な収益源です。運営は水戸証券が主体となって行っており、関東一円の営業基盤を活かした地域密着型のポートフォリオ営業を推進しています。

(2) 投資信託・ファンドラップ業務


顧客のライフプランに応じた資産形成を支援するため、投資信託や水戸ファンドラップを中心としたポートフォリオの提案・管理を行っています。市場環境の変化に柔軟に対応し、多様なニーズに応じた資産運用のアドバイスを提供しています。

投資信託の代行手数料やファンドラップの運用に係る固定報酬・成功報酬が主な収益源であり、安定したストック収益として同社の経営基盤を支えています。本業務も水戸証券が運営しており、顧客との長期的な信頼関係の構築を図っています。

(3) 引受・募集等の取扱業務


有価証券の発行者である企業等から新たに発行される株式や債券を引受け、投資家に向けて募集や売出しの取扱いを行うサービスを提供しています。企業の資金調達ニーズと投資家の運用ニーズを結びつける役割を果たしています。

有価証券の引受けや特定投資家向け売付け勧誘等の取扱いに伴って発生する各種手数料が主な収益源です。同社が主体となり、企業金融における専門的なサポートと円滑な市場供給を行っています。

3. 業績・財務状況


同社の業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


営業収益は市況の変動を受けつつも直近では増加傾向にあり、経常利益も大幅な増益となっています。ポートフォリオ営業の推進やファンドラップを中心としたストック収益の拡大により、収益性の向上と安定的な収益基盤の構築が進んでいます。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
営業収益 137億円 112億円 146億円 140億円 161億円
経常利益 20億円 2億円 28億円 23億円 36億円
利益率(%) 14.3% 1.7% 19.3% 16.6% 22.4%
当期純利益 14億円 8億円 23億円 24億円 31億円

(2) 損益計算書


直近2期間では、市場環境の好転にともなって営業収益が増加し、増収増益となっています。ストック収益の伸びが寄与したことで、特に営業利益が大きく増加し、収益性の向上が鮮明に表れています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業収益 140億円 161億円
純営業収益 139億円 160億円
売上総利益率(%) 99.6% 99.5%
営業利益 19億円 31億円
営業利益率(%) 13.3% 19.6%


販売費及び一般管理費のうち、人件費が73億円(構成比57%)、事務費が19億円(同15%)、不動産関係費が16億円(同13%)を占めています。売上原価に相当する金融費用は1億円であり、純営業収益の算出において控除されています。

(3) セグメント収益


同社は投資・金融サービス業の単一セグメントであるため、事業全体の売上(営業収益)を記載します。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
投資・金融サービス業 140億円 161億円
連結(合計) 140億円 161億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業CFと投資有価証券の売却等による投資CFのプラスを、配当金の支払いや自己株式の取得といった株主還元などの財務CFに充てる改善型のキャッシュ・フロー状況です。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF -5億円 39億円
投資CF 10億円 1億円
財務CF -37億円 -30億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は7.5%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は58.5%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


経営理念として「水戸証券は、顧客・株主・社員にBESTをつくす企業でありたい」を掲げています。また、パーパス(当社の存在意義)として「金融サービスを通じて価値を創造し、お客さまと地域社会の豊かな未来の実現に貢献する」と定め、ステークホルダーから信頼され選ばれる金融サービス会社として発展することを目指しています。

(2) 企業文化


同社は、経営ビジョンにおいて「お客さまの資産形成をサポートしライフプランの実現に貢献する」「地域社会の発展に貢献する」「社員が誇りを持って働き自己実現できる」「ビジネス構造の変革に挑戦し続ける」という4つの姿を追求しています。対面を重視したサービス提供や地域社会との共生を通じて付加価値を生み出す姿勢が根付いています。

(3) 経営計画・目標


第七次中期経営計画(2026年3月期〜2030年3月期)において、「人と組織の力で、お客さまからの信頼を深め、持続的に成長する企業へ」をテーマに掲げ、以下の数値目標を設定しています。

・ROE:8.0%以上
・ストック収益による販管費カバー率:50.0%以上
・株式投資信託と水戸ファンドラップの合計残高:7,500億円以上

(4) 成長戦略と重点施策


お客さま一人ひとりのライフプランに応じた金融サービス(ふやす・まもる・つなぐ)の提供と、主体的な人材育成・自律的な組織運営による経営基盤強化を図っています。投資信託やファンドラップを軸としたストック収入の拡大により安定収益基盤を構築し、預り資産の増大を通じて持続的な成長と資本収益性の向上を目指します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「人と組織の力で、持続的に成長する企業へ」をテーマに、高度な専門知識を持ち自ら行動できる人材の育成に取り組んでいます。職位ごとの研修マスタープランを通じた育成や、独自の認定資格取得支援を実施。また、ダイバーシティ推進課を設置し、長時間労働の抑制や法定を上回る育児・介護制度など、多様な人材が活躍できる環境を整備しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均とほぼ同じ水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 41.9歳 16.9年 7,511,244円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金、従業員株式給付制度(J-ESOP)に係る給付を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 19.7%
男性育児休業取得率 50.0%
男女の賃金の差異(全労働者) 68.8%
男女の賃金の差異(正規雇用労働者) 71.4%
男女の賃金の差異(パート・有期労働者) 61.7%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、健康診断受診率(100%)、上級資格保有者数(72名)、中途入社における管理者比率(19.6%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 人材の確保及び育成に係るリスク


同社は人材を最重要の経営資源と位置付けていますが、専門人材の不足や育成の遅れ、人材獲得競争の激化により人材の確保が進まない場合、事業目的の達成や持続的な成長に支障をきたす可能性があります。給与水準の引き上げや高度専門人材の中途採用を通じて対応を進めています。

(2) 収益変動リスク


主要な収益源である受入手数料やトレーディング損益は、株式・為替市況の変動に大きく影響を受けます。国内外の政治・経済情勢の悪化等で市場が低迷した場合、業績が大幅に変動する可能性があります。ポートフォリオの提案やストック収益基盤の拡大により安定化を図っています。

(3) 情報セキュリティに係るリスク


顧客情報の管理に万全を期していますが、不正アクセスや過失により情報が外部に漏洩した場合、賠償金の発生や社会的信用の失墜を招く可能性があります。SOCサービスによる24時間体制の監視や、社内の個人情報管理台帳を用いた点検体制の整備を通じてリスク低減に努めています。

(4) システムリスク


業務上使用するシステムに品質不良や外部からの不正アクセス、災害等による障害が発生した場合、取引の縮小や中断を余儀なくされる可能性があります。緊急時の業務執行体制や、大規模災害時に備えたDRサイト(遠隔地バックアップシステム)の準備により対応しています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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