アイザワ証券グループ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

アイザワ証券グループ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証プライム上場の証券会社グループです。証券事業、投資事業、運用事業を展開しています。2025年3月期は、受入手数料や営業投資有価証券売上高の増加等により、連結営業収益は前期比8.5%増、経常利益は32.4%増、親会社株主に帰属する当期純利益は6.6%増と増収増益でした。


※本記事は、アイザワ証券グループ株式会社 の有価証券報告書(第105期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. アイザワ証券グループってどんな会社?


創業100年を超える歴史を持ち、対面営業を強みとする証券事業を中心に、投資・運用事業も展開しています。

(1) 会社概要


1918年に創業者が証券業務を開始し、1933年に前身となる会社を設立しました。2006年にジャスダック証券取引所へ上場し、2015年に東証一部へ市場変更しました。2021年10月には会社分割により持株会社体制へ移行し、現商号に変更しました。2022年の市場区分見直しにより、現在は東証プライム市場に上場しています。

2025年3月31日現在の連結従業員数は723名(単体56名)です。筆頭株主は創業家が代表を務める不動産会社の藍澤不動産で、第2位は資産管理業務を行う信託銀行です。第3位には代表取締役社長の藍澤卓弥氏が入っており、創業家が主要株主として名を連ねています。

氏名 持株比率
藍澤不動産 15.81%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 8.80%
藍澤卓弥 4.47%

(2) 経営陣


同社の役員は男性9名、女性2名の計11名で構成され、女性役員比率は18.2%です。代表取締役社長 社長執行役員は藍澤卓弥氏です。社外取締役比率は36.4%です。

氏名 役職 主な経歴
藍澤 卓弥 代表取締役社長社長執行役員 1997年野村総合研究所入社。2005年同社入社。管理本部長等を経て2018年代表取締役社長。2021年よりアイザワ証券代表取締役社長を兼務し、2024年4月より現職。
大石 敦 取締役専務執行役員 1990年同社入社。投資銀行部長、企画部長、アイザワ・インベストメンツ代表取締役社長等を経て、2021年10月アイザワ証券取締役専務執行役員。2024年4月より現職。
真柴 一裕 取締役常務執行役員 1990年内藤証券入社。2001年同社入社。経理部長、管理本部長、CFO、アイザワ証券取締役常務執行役員等を歴任。2024年4月より現職。
大道 浩二 取締役 執行役員 1993年住友信託銀行入社。東京スター銀行執行役などを経て2024年同社入社。アイザワ証券取締役執行役員管理本部長を兼務し、2024年6月より現職。
芝田 康弘 取締役 1986年日本興業銀行入行。みずほ証券常務執行役員、みずほフィナンシャルグループ執行役等を歴任。2023年同社取締役会長を経て、2025年4月より現職。
白木 信一郎 取締役 1993年三和銀行入行。マネックス・オルタナティブ・インベストメンツ社長等を歴任。2021年あいざわアセットマネジメント代表取締役社長に就任(現職)。2022年6月より現職。
新島 直以 取締役(監査等委員) 1989年同社入社。企画第一部長、管理本部副本部長、コンプライアンス本部長等を歴任。2023年6月より現職。


社外取締役は、德岡國見(元あおぞら銀行代表取締役副社長)、増井喜一郎(元日本証券業協会副会長)、花房幸範(アカウンティングワークス代表取締役)、清家麻紀(三井住友信託銀行内部監査部主管)です。

2. 事業内容


同社グループは、「証券事業」、「投資事業」、「運用事業」を展開しています。

証券事業


資産運用・資産形成の伴走者として、個人顧客を中心に金融商品取引サービスを提供しています。対面営業によるコンサルティングに加え、地域金融機関や保険代理店等と連携したプラットフォームビジネスも展開しています。特に、顧客のライフプラン実現に向けたゴールベースアプローチによるストック商品(投資信託やラップ商品)の提案に注力しています。

収益は、顧客からの株式等の売買委託手数料、投資信託の信託報酬やラップ報酬等の管理・運用に係る手数料等が主な源泉です。運営は主に連結子会社のアイザワ証券株式会社が行っており、ベトナム証券事業はJapan Securities Co., Ltd.が担っています。

投資事業


国内外の上場有価証券への中長期投資や、成長が見込まれる未公開企業(ベンチャー企業)への投資を行っています。また、国内外の各種ファンド(プライベートデット、不動産開発型など)への投資に加え、国内不動産への直接投資による賃貸事業も展開しています。

収益は、保有有価証券の売却益、配当金、ファンドからの分配金、および保有不動産からの賃貸収入等が主な源泉です。運営は主に連結子会社のアイザワ・インベストメンツ株式会社が行っており、投資事業組合を通じたベンチャーキャピタル業務も実施しています。

運用事業


プライベートエクイティやヘッジファンドを中心としたオルタナティブ資産の運用を行っています。特に、プライベートエクイティのセカンダリー投資(既存の投資持分の買い取り)分野に強みを持ち、国内外の投資家向けにサービスを提供しています。

収益は、投資家から受け取る運用報酬や成功報酬等が主な源泉です。運営は主に連結子会社のあいざわアセットマネジメント株式会社が行っており、グループ内のファンド(Ariake Secondary Fund等)のインベストメントマネージャーも務めています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


第103期には市場環境の影響等により経常損失及び当期純損失を計上しましたが、第104期以降は回復傾向にあります。第105期(当期)は、営業収益が200億円を超え、経常利益、当期純利益ともに前期を上回る増収増益となりました。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上収益(または売上高) 164億円 161億円 128億円 190億円 206億円
税引前利益 / 経常利益 / 営業利益 15億円 14億円 -19億円 19億円 26億円
利益率(%) 9.4% 8.9% -15.0% 10.2% 12.5%
当期利益(親会社所有者帰属) 45億円 29億円 -24億円 30億円 32億円

(2) 損益計算書


前期と比較すると、売上高(営業収益)が増加し、利益率も改善しています。営業収益の増加が、販売費・一般管理費の増加を吸収し、営業利益および経常利益の押し上げに寄与しました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 190億円 206億円
売上総利益 182億円 200億円
売上総利益率(%) 95.8% 97.3%
営業利益 12億円 19億円
営業利益率(%) 6.1% 9.2%


販売費及び一般管理費のうち、人件費が91億円(構成比50%)、取引関係費が39億円(同21%)を占めています。

(3) セグメント収益


当期は、投資事業が営業投資有価証券売上高の増加等により大幅な増収増益となり、全体の利益成長を牽引しました。一方、証券事業は外国株国内店頭取引の減少等により減益となりました。運用事業は運用報酬の増加により増収となりましたが、損失を計上しています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
証券事業 179億円 179億円 15億円 3億円 1.4%
運用事業 3億円 4億円 -2億円 -1億円 -27.4%
投資事業 8億円 24億円 -2億円 15億円 63.9%
調整額 -1億円 -1億円 1億円 2億円 -
連結(合計) 190億円 206億円 12億円 19億円 9.2%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

アイザワ証券グループは、トレーディング業務におけるリスク管理を重視し、財務状況に合わせたリスクコントロールを徹底しています。

営業活動によるキャッシュ・フローは、主に顧客預り金や信用取引関連の増減により、資金の支出となりました。投資活動では、投資有価証券の取得・売却を通じて資金を獲得しました。財務活動では、自己株式の取得や短期社債の発行により、資金の支出が見られました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 84億円 -58億円
投資CF 15億円 12億円
財務CF -15億円 -49億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、パーパス(存在意義)として「より多くの人に より豊かな生活を」を掲げています。また、ビジョン(あるべき姿)として「資産運用・資産形成を通じて お客さまとそのご家族の人生の伴走者となる」ことを目指し、長期的な信頼関係の構築を重視しています。

(2) 企業文化


大切にする価値観(バリュー)として、行動力・成長・変革を表す「チャレンジ」、信頼・思いやり・安心を表す「リレーションシップ」、誠実・責任・使命感を表す「プロフェッショナリズム」、調和・敬意・結束を表す「チームワーク」の4つを定めています。これらを「アイザワ宣言」としてステークホルダーに約束しています。

(3) 経営計画・目標


2028年3月期を最終年度とする中期経営計画において、以下の計数目標を掲げています。
* ROE(自己資本利益率):8%以上
* ストック商品預り資産:8,000億円以上
* 総預り資産:2兆5,000億円以上
* 実質ストック収益 実質販管費カバー率:40%以上

(4) 成長戦略と重点施策


証券事業では、ゴールベースアプローチ型営業と地域密着を徹底し、ストック商品(投資信託・ラップ商品)の提案に注力することで、安定的な収益構造への変革を目指します。また、投資事業ではポートフォリオ運用による収益最大化を図り、運用事業ではプライベートアセットの運用資産残高増加に注力することで、グループ全体の収益性向上を図ります。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


持続的な成長と中長期的な企業価値向上のため、自発的に行動し変化に対応できる人材の育成に注力しています。CDP(キャリア・デベロップメント・プログラム)を中心とした育成や、女性キャリアステップアップ研修等の多様な人材育成施策を推進しています。また、育児・介護休業の取得促進やエリア限定制度の導入など、働きがいを高める環境整備を行い、エンゲージメント向上に取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 45.9歳 15.1年 8,162,187円


※平均年間給与は、賞与及び基準外賃金を含んでおります。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 4.5%
男性育児休業取得率 -%
男女賃金差異(全労働者) 70.1%
男女賃金差異(正規雇用) 69.2%
男女賃金差異(非正規雇用) 53.2%


※男性育児休業取得率については、当期間における取得対象者がいないため算出されていません。

また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性管理職比率(13.8%)、エンゲージメントスコア(72.1%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 法令遵守に関するリスク


金融商品取引業は、金融商品取引法等の厳格な規制下にあります。役職員による法令違反や不正行為が発生した場合、監督官庁からの処分や社会的信用の低下を招き、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。同社はコンプライアンス体制の整備を最重要課題とし、内部管理体制の強化や教育・研修に努めていますが、違反リスクを完全に排除することは困難です。

(2) 主要な事業の前提に係るリスク


同社グループの主要事業である金融商品取引業は、金融庁の登録を受けて行われています。法令違反等により登録の取消しや業務停止命令を受けた場合、主要な事業活動に支障をきたし、経営成績及び財政状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。現時点で取消事由に該当する事実はないと認識していますが、将来的なリスクとして留意が必要です。

(3) 市場の縮小に伴うリスク


株式・債券相場の下落や低迷により市場参加者が減少し、売買高等が縮小した場合、受入手数料が減少する可能性があります。また、発行市場における計画の延期や中止も収益減につながります。こうした市場環境の悪化は、同社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。