※本記事は、アイザワ証券グループ株式会社の有価証券報告書(第106期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. アイザワ証券グループってどんな会社?
証券事業を中心に投資事業や運用事業を展開し、資産運用・資産形成の伴走者を目指す総合金融グループです。
■(1) 会社概要
1918年に創業し、1933年に藍澤商店として設立されました。1948年に藍澤證券へ商号変更し、2006年にジャスダック上場、2015年には東証第一部へ市場変更しました。2021年に証券事業と投資事業を分割して持株会社体制へ移行し、現在のアイザワ証券グループに商号変更しています。
現在の従業員数は連結で707名、単体で55名です。筆頭株主は事業会社の藍澤不動産で、第2位は資産管理業務を行う信託銀行、第3位は代表取締役社長の藍澤卓弥氏となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 藍澤不動産 | 15.79% |
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 5.20% |
| 藍澤卓弥 | 4.49% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性10名、女性2名の計12名で構成され、女性役員比率は16.6%です。代表取締役社長 社長執行役員は藍澤卓弥氏が務めており、社外取締役の比率は41.7%となっています。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 藍澤卓弥 | 代表取締役社長 社長執行役員 | 1997年野村総合研究所入社。2005年同社入社。2012年取締役、2016年代表取締役専務、2018年代表取締役社長などを経て、2024年4月より現職。 |
| 大石敦 | 取締役専務執行役員 | 1990年同社入社。投資銀行第一部長、企画部長などを歴任。2014年取締役、2017年常務取締役を経て、2021年より取締役専務執行役員。2024年4月より現職。 |
| 真柴一裕 | 取締役常務執行役員 | 1990年内藤証券入社。2001年同社入社。経理部長、管理本部長などを歴任。2018年取締役、2021年より取締役常務執行役員。2024年4月より現職。 |
| 大道浩二 | 取締役 執行役員 | 1993年住友信託銀行入社。2004年東京スター銀行入行、人事部長などを歴任。2024年同社執行役員を経て、同年6月より現職。 |
| 馬場雄一 | 取締役 執行役員 | 2000年同社入社。経営企画部長、財務部長などを歴任。2023年同社執行役員を経て、2025年6月より現職。 |
| 芝田康弘 | 取締役 | 1986年日本興業銀行入行。みずほ証券常務執行役員、みずほフィナンシャルグループ執行役等を経て、2023年同社取締役会長に就任。2025年4月より現職。 |
| 新島直以 | 取締役(監査等委員) | 1989年同社入社。総務人事部長、管理本部長、コンプライアンス本部長などを歴任。2017年同社取締役を経て、2023年6月より現職。 |
社外取締役は、増井喜一郎(元大蔵省近畿財務局長)、武藤雅俊(元みずほ第一フィナンシャルテクノロジー社長)、住釜智子(元チューリッヒ保険会社JapanCHRO)、花房幸範(アカウンティングワークス代表取締役)、平尾嘉昭(新生綜合法律事務所弁護士)です。
2. 事業内容
同社グループは、「証券事業」「運用事業」「投資事業」の報告セグメントで事業を展開しています。
■(1) 証券事業
顧客のライフプラン実現を目指す資産運用・資産形成の伴走者として、投資信託やラップ商品などのストック商品を提案しています。また、IFA業者や預金金融機関と連携したプラットフォームビジネスにより、資産形成層の顧客基盤を拡大しています。
収益源は、株式などの委託手数料や投資信託等の販売手数料、運用残高に応じた信託報酬などの受入手数料です。運営は主にアイザワ証券が担当しています。
■(2) 運用事業
プライベートエクイティのセカンダリー投資を中心とするオルタナティブ資産の運用を行っています。非公開市場で取引されるプライベートアセットは上場資産より高い投資リターンが期待でき、同グループでは運用資産残高の増加に注力しています。
収益源は、投資家から預かった資産の運用・管理に伴う運用報酬などです。運営は主にあいざわアセットマネジメントが担当しています。
■(3) 投資事業
国内外の成長企業や上場有価証券への投資、ベンチャー企業への投資と上場支援を行っています。また、ベンチャーキャピタルファンド等への出資に加え、首都圏のレジデンスを中心とした国内不動産への直接投資も手掛けています。
収益源は、投資有価証券の売却損益やファンドからの分配金、保有不動産からの賃料収入などです。運営は主にアイザワインベストメンツが担当しています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
過去5年間の業績推移を見ると、売上高にあたる営業収益は相場環境の変動を受けつつも、直近ではストック商品の預り資産増加などにより増加傾向にあります。一方、経常利益は投資先の評価損や減損損失の影響により変動が大きく、直近では大幅な減益となっています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 161億円 | 128億円 | 190億円 | 206億円 | 210億円 |
| 経常利益 | 14億円 | -19億円 | 19億円 | 26億円 | 7億円 |
| 利益率(%) | 8.9% | -15.0% | 10.2% | 12.5% | 3.2% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 23億円 | 0.0億円 | 1億円 | 18億円 | 4億円 |
■(2) 損益計算書
営業収益はストック商品の伸長により増加したものの、投資事業における非上場資産の評価損計上などにより営業利益は大幅に減少しています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 206億円 | 210億円 |
| 売上総利益 | 200億円 | 199億円 |
| 売上総利益率(%) | 97.2% | 94.9% |
| 営業利益 | 19億円 | 0.3億円 |
| 営業利益率(%) | 9.2% | 0.1% |
販売費及び一般管理費のうち、人件費が95億円(構成比48%)、取引関係費が49億円(同25%)を占めています。
■(3) セグメント収益
証券事業は株式委託手数料や信託報酬の増加により大幅な増益となりましたが、運用事業は事業再構築等に伴う費用増加で赤字が拡大し、投資事業もファンド評価損等により赤字に転落しました。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益(2026年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 証券事業 | 179億円 | 201億円 | 3億円 | 11億円 | 5.2% |
| 運用事業 | 4億円 | 2億円 | -1億円 | -4億円 | -187.6% |
| 投資事業 | 24億円 | 8億円 | 15億円 | -7億円 | -86.8% |
| 連結(合計) | 206億円 | 210億円 | 19億円 | 0.3億円 | 0.1% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社のキャッシュ・フローは営業・投資・財務のすべてがプラスとなる「再建・転換型」の傾向を示しており、営業活動による資金獲得に加え、資産売却や資金調達を合わせて事業転換等に向けた投資を行っている状況がうかがえます。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | -58億円 | 45億円 |
| 投資CF | 12億円 | 35億円 |
| 財務CF | -49億円 | 12億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は6.0%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は38.2%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社はパーパス(存在意義)として「より多くの人に より豊かな生活を」、ビジョンとして「資産運用・資産形成を通じて お客さまとそのご家族の人生の伴走者となる」を掲げています。ステークホルダーに対するコミットメントである「アイザワ宣言」を通じて、持続可能な地域社会と地域経済の発展に寄与することを目指しています。
■(2) 企業文化
同社は大切にする価値観(バリュー)として「チャレンジ(行動力・成長・変革)」「リレーションシップ(信頼・思いやり・安心)」「プロフェッショナリズム(誠実・責任・使命感)」「チームワーク(調和・敬意・結束)」の4つを定めています。これらを全役職員が常に心に刻み行動することで、顧客との長期的な信頼関係の構築を図っています。
■(3) 経営計画・目標
同社は2028年3月期を最終年度とする中期経営計画を策定し、安定的にROE目標を達成できる事業・収益構造への抜本的な変革を目指しています。具体的な計数目標は以下の通りです。
* ROE(自己資本利益率):8%以上
* ストック商品預り資産:8,000億円以上
* 総預り資産:2兆5,000億円以上
* 実質ストック収益 実質販管費カバー率:40%以上
■(4) 成長戦略と重点施策
お客さまとそのご家族の伴走者としてのビジネスモデルを確立するため、ゴールベースアプローチ型営業と地域密着を徹底しています。また、IFAや地域金融機関との連携によるプラットフォームビジネスの拡大を図っています。投資事業では国内外の成長企業やプライベートアセット等への運用を強化し、収益の極大化と安定化を推進しています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は人事ビジョンとして「社員一人ひとりがやりがいを持って、活き活きと働ける会社を創る」を掲げ、人的資本への投資を重点課題としています。キャリア・デベロップメント・プログラム(CDP)を中心とした自律的な能力開発を支援するとともに、育児・介護休業の取得促進や着脱式のエリア限定制度など、働きやすさと働きがいを両立する環境整備を進めています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均とほぼ同じ水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 44.2歳 | 13.8年 | 7,477,272円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 7.7% |
| 男性育児休業取得率 | - |
| 男女賃金差異(全労働者) | 70.2% |
| 男女賃金差異(正規雇用労働者) | 69.2% |
| 男女賃金差異(パート・有期労働者) | 58.7% |
※男性労働者の育児休業取得率は、当期間における取得対象者がいないため算出されていません。
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、エンゲージメントスコア(75.8%)、アイザワ証券の女性管理職比率(15.1%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 市場環境の変動に伴うリスク
株式や債券相場の下落・低迷による市場参加者の減少や売買高の縮小、あるいは自己勘定のトレーディングにおける市場価格の変動が、同社グループの受入手数料や経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 金融商品取引業界における競合リスク
株式売買委託手数料の自由化やオンライン取引特化型証券の台頭、銀行の金融商品仲介業参入などにより業界の競争環境は厳しさを増しています。競争力を低下させた場合、業績や財政状態に影響が生じる可能性があります。
■(3) 法的規制・法令遵守に関するリスク
金融商品取引業の登録を受けて事業を行っており、法令違反等による処分や業務停止リスクがあります。また、コンプライアンス体制を整備しているものの、役職員の違法行為や情報漏えいを完全に排除できる保証はなく、社会的な信用低下や損害賠償を求められるリスクがあります。



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