#記事タイトル:abc転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態
※本記事は、abc株式会社 の有価証券報告書(第25期、自 2025年4月1日 至 2025年8月31日、2025年11月27日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. abcってどんな会社?
金融サービスを主軸に、サイバーセキュリティやゲーム、空間プロデュースなど多角的に事業を展開する企業です。
■(1) 会社概要
同社は2002年に設立され、ファイナンシャル・アドバイザリー事業を開始しました。2006年にジャスダック証券取引所へ上場し、2011年には不動産担保ローン事業を開始して金融事業を拡大しました。その後、2023年にクレーンゲームジャパンを子会社化するなど多角化を進め、2025年に現社名へ変更し、決算期も変更しています。
2025年8月末時点の連結従業員数は79名、単体では31名です。主要株主には、筆頭株主である楽天証券をはじめ、事業会社のGCMホールディングス、野村證券などが名を連ねており、証券会社や事業会社が上位を占める構成となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 楽天証券 | 1.94% |
| GCMホールディングス | 1.72% |
| 野村證券 | 1.45% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性11名、女性0名の計11名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は松田元氏が務めています。社外取締役比率は18.2%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 松田 元 | 代表取締役社長 | 2006年アズ代表取締役就任。オウケイウェイヴ代表取締役などを経て、2025年4月より現職。 |
| 片田 朋希 | 専務取締役 | 2007年インヴァスト証券入社。同社代表取締役、子会社代表取締役などを歴任し、2025年4月より現職。 |
| 施 北斗 | 取締役 | 2003年中國福佳金屬技術有限公司入社。同社代表取締役会長などを経て、2025年4月より現職。 |
| 山田 哲嗣 | 取締役 | 2010年リーガル・エステート代表取締役就任。環境フレンドリーホールディングス代表取締役などを経て、2024年6月より現職。 |
| 木村 雄幸 | 取締役 | 2019年Coin Master代表取締役社長就任。同社執行役員を経て、2025年6月より現職。 |
| 比留間 研太 | 取締役 | 2014年アットファクトリーズCTO就任。同社執行役員を経て、2025年6月より現職。 |
社外取締役は、何書勉(NeoX代表取締役)、杉浦元(オウケイウェイヴ代表取締役社長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「金融サービス事業」、「サイバーセキュリティ事業」、「空間プロデュース事業」、「ゲーム事業」、「ヘルスケア事業」を展開しています。
**(1) 金融サービス事業**
上場企業への資金調達支援やM&A仲介などのファイナンシャル・アドバイザリー、企業投融資および不動産担保融資、不動産売買・仲介・賃貸を行っています。
手数料、貸付金利息、不動産売却益や賃貸料などが主な収益源です。運営は主にabc(親会社)およびabc CAPITALが行っています。
**(2) サイバーセキュリティ事業**
海外製サイバーセキュリティソリューションの販売、コンサルティング、システム構築・導入・運用支援を政府・官公庁・民間企業向けに提供しています。
製品販売代金やコンサルティング料、構築・運用支援料が収益となります。運営はネクスト・セキュリティなどが行っています。
**(3) 空間プロデュース事業**
店舗空間のプロデュースを行い、飲食店舗(ナイトクラブ等)および宿泊施設(ホステル等)の運営を行っています。
飲食代金、施設利用料、宿泊料などが収益源です。運営は株式会社CAMELOT、アトリエブックアンドベッド、Total Foodsなどが行っています。
**(4) ゲーム事業**
オンラインクレーンゲーム「クレマス」の運営、ゲーム開発、eスポーツ大会の開催・運営を行っています。
オンラインクレーンゲームのプレイ料金や、イベント運営収益などが主な収益となります。運営はクレーンゲームジャパンが行っています。
**(5) ヘルスケア事業**
主に医薬部外品の開発、卸売り、販売などの営業活動を行っており、薬用育毛ローション「M-1シリーズ」などを提供しています。
商品の販売代金が収益源となります。運営は主に株式会社エムワンが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
決算期の変更により当期は5ヶ月間の変則決算となっています。前期までは経常損失が続いていましたが、当期は黒字に転換しました。売上高は期間が短いため単純比較はできませんが、利益面では改善が見られます。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年8月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 27億円 | 12億円 | 24億円 | 33億円 | 11億円 |
| 経常利益 | -13億円 | -7億円 | -21億円 | -34億円 | 8億円 |
| 利益率(%) | -50.8% | -60.3% | -87.9% | -102.7% | 70.4% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | -17億円 | -11億円 | -23億円 | -44億円 | 5億円 |
■(2) 損益計算書
前期は営業損失を計上していましたが、当期も5ヶ月間で営業損失となっています。ただし、当期は暗号資産売却益などの営業外収益が大きく寄与し、経常利益および当期純利益は黒字を確保しました。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年8月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 33億円 | 11億円 |
| 売上総利益 | 17億円 | 7億円 |
| 売上総利益率(%) | 51.1% | 65.1% |
| 営業利益 | -26億円 | -9億円 |
| 営業利益率(%) | -79.0% | -83.1% |
販売費及び一般管理費のうち、貸倒引当金繰入額が3億円(構成比18%)、支払報酬が3億円(同19%)を占めています。
■(3) セグメント収益
当期は決算期変更による5ヶ月決算のため前期との単純比較は困難ですが、サイバーセキュリティ事業とヘルスケア事業がセグメント黒字を確保しています。一方、主力の一つである金融サービス事業は損失を計上しました。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年8月期) | 利益(2024年3月期) | 利益(2025年8月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 金融サービス事業 | 8億円 | 2億円 | -24億円 | -9億円 | -440.0% |
| サイバーセキュリティ事業 | 6億円 | 4億円 | 0.5億円 | 0.6億円 | 14.6% |
| 空間プロデュース事業 | 11億円 | 3億円 | -0.9億円 | -0.4億円 | -13.9% |
| ゲーム事業 | 5億円 | 2億円 | -2億円 | -0.7億円 | -41.7% |
| ヘルスケア事業 | - | 0.9億円 | - | 0.2億円 | 19.9% |
| 連結(合計) | 33億円 | 11億円 | -26億円 | -9億円 | -83.1% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
* **勝負型**(営業CF-、投資CF-、財務CF+)
本業は赤字ですが、将来成長のため借入で投資を継続している状態です。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年8月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | -24億円 | -2億円 |
| 投資CF | -34億円 | -1億円 |
| 財務CF | 59億円 | 7億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は15.2%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は47.4%で市場平均を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「多様性を通貨にする」を経営理念として掲げています。単に事業規模の拡大を目指すのではなく、常に顧客にとって最良の金融サービスを提供することで、従来の金融システムの枠組みに捉われない新しい価値観の創造を目指しています。
■(2) 企業文化
同社は、「善いことをした人が得をする世界」の実現を目指す価値観を持っています。多様な事業を展開する中で、顧客への最良のサービス提供を重視し、既存の枠組みにとらわれない柔軟な発想と行動を大切にする文化があります。
■(3) 経営計画・目標
今後一層の経営基盤の強化を進めるため、まずは財務基盤等の安定化を最優先課題としています。着実な利益成長を追求し、事業の選択と集中を経営戦略の柱としながら、親会社株主に帰属する当期純利益の伸長を目指しています。
■(4) 成長戦略と重点施策
金融サービス、サイバーセキュリティ、空間プロデュース、ゲーム、ヘルスケアの5事業の調和のとれた拡大を目指します。特に金融サービスでは資金調達支援や投資による収益還元化サイクルを実現し、サイバーセキュリティでは大型案件の受注やコンサルティング強化を図ります。また、Web3エンタメ経済圏の構築など、新領域への取り組みも進めていきます。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
持続的成長と企業価値向上のため、人的資本を特に重視しています。360度評価を採用し、多角的な視点から適切な評価を行うとともに、能力や適性に基づいた処遇を基本としています。性別・国籍等を問わず働きやすい職場作りを行い、多様な人材を受け入れる体制を確保する方針です。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均とほぼ同じ水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年8月期 | 37.4歳 | 2.5年 | 5,784,000円 |
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 33.3% |
| 男性育児休業取得率 | - |
| 男女賃金差異(全) | - |
| 男女賃金差異(正規) | - |
| 男女賃金差異(非正規) | - |
※同社および連結子会社は女性活躍推進法及び育児介護休業法の規定による公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 継続企業の前提に重要な疑義を生じさせる事象
当期は経常利益等が黒字化しましたが、営業損失は継続しており資金繰りの懸念があります。これに対応するため、既存事業の収益化や財務体質の改善、資金調達に努めていますが、現時点では継続企業の前提に関する重要な不確実性が認められます。
■(2) 経済情勢の動向
同社グループが業務対象とする不動産への需要は景気動向に左右されます。国内外の経済情勢が悪化した場合には、事業への影響や所有資産価値の低下を招き、業績や財務状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(3) 金利の変動
金利が急激に上昇した場合、資金調達コストの増加や不動産への投資期待利回りの上昇、住宅購入顧客の購買意欲減退などが想定されます。これにより、事業への悪影響や所有資産価値の低下につながる可能性があります。



上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。