※本記事は、株式会社ほくほくフィナンシャルグループ の有価証券報告書(第22期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月17日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. ほくほくフィナンシャルグループってどんな会社?
北陸銀行と北海道銀行を傘下に持つ広域地域金融グループで、銀行業務を中心に証券やリース等の金融サービスも展開しています。
■(1) 会社概要
2003年9月、北陸銀行単独での株式移転によりほくぎんフィナンシャルグループとして設立されました。翌2004年9月には北海道銀行と経営統合し、現在の商号へ変更しました。その後、2017年1月にほくほくTT証券を子会社化し、2024年5月にはほくほくコンサルティングを設立するなど、グループ機能を拡充しています。
連結従業員数は4,581人、単体では213人です。筆頭株主は資産管理業務を行う信託銀行で、次いで同じく資産管理を行う銀行、第3位は生命保険会社の明治安田生命保険となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 8.97% |
| 日本カストディ銀行(信託口) | 4.40% |
| 明治安田生命保険 | 2.04% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性12名、女性1名の計13名で構成され、女性役員比率は7.7%です。代表取締役社長は中澤宏氏が務めています。なお、取締役13名のうち5名が社外取締役であり、その比率は38.5%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 中澤 宏 | 取締役社長(代表取締役) | 1986年4月北陸銀行入行。同行総合企画部長、取締役常務執行役員などを経て、2022年6月より北陸銀行代表取締役頭取および同社代表取締役社長。 |
| 兼間 祐二 | 取締役副社長(代表取締役) | 1987年4月北海道銀行入行。同行経営企画部長、取締役常務執行役員などを経て、2021年6月より北海道銀行代表取締役頭取および同社代表取締役副社長。 |
| 小林 正彦 | 取締役 | 1987年4月北陸銀行入行。同行総合企画部長、取締役常務執行役員などを経て、2023年6月より北陸銀行取締役専務執行役員および同社取締役。 |
| 髙田 芳政 | 取締役 | 1989年4月北海道銀行入行。同行個人営業部長、取締役常務執行役員などを経て、2024年6月より北海道銀行代表取締役副頭取執行役員および同社取締役。 |
| 坂本 嘉和 | 取締役 | 1987年4月北陸銀行入行。同行執行役員融資部長、取締役執行役員などを経て、2022年6月より北陸銀行取締役常務執行役員および同社取締役。 |
| 西野 太郎 | 取締役 | 1987年4月北海道銀行入行。同行総合事務部長、常務執行役員リスク管理部門長などを経て、2024年6月より北海道銀行取締役常務執行役員および同社取締役。 |
| 大塚 直久 | 取締役 | 1990年4月北陸銀行入行。同行統合リスク管理部長、執行役員を経て、2024年6月より北陸銀行取締役執行役員、北海道銀行執行役員および同社取締役。 |
| 北川 博邦 | 取締役(監査等委員) | 1987年4月北陸銀行入行。同行総合企画部副部長、融資第一部副部長、総合企画部部長などを経て、2019年6月より同社取締役(監査等委員)。 |
社外取締役は、眞鍋雅昭(ほくやく・竹山ホールディングス代表取締役会長)、舟本馨(元警察庁刑事局長)、小川万里絵(元日本銀行文書局企画役)、横井裕(元在中国特命全権大使)、牧野真也(明治安田損害保険代表取締役会長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「北陸銀行」「北海道銀行」および「その他」事業を展開しています。
■(1) 北陸銀行
北陸三県(富山・石川・福井)を主要地盤とし、北海道や三大都市圏にも店舗網を持つ広域地方銀行として、預金、貸出、内国・外国為替、証券投資等の銀行業務全般を提供しています。個人および法人顧客に対し、資金調達や資産運用などの金融サービスを行っています。
収益は、貸出金利息や有価証券利息配当金等の資金運用収益、および振込手数料や投資信託販売手数料等の役務取引等収益が主な源泉です。運営は主に北陸銀行が行っています。
■(2) 北海道銀行
北海道全域を主要な営業基盤とし、東北(仙台)や東京等にも拠点を有する地方銀行として、銀行業務全般を提供しています。地域に密着した金融仲介機能を発揮し、個人・法人顧客の多様なニーズに応える金融商品やサービスを展開しています。
収益は、貸出金利息などの資金利益や、各種手数料収入が中心となります。運営は主に北海道銀行が行っています。
■(3) その他
銀行業務以外の金融関連サービスとして、証券業務、リース業務、クレジットカード業務、ベンチャーキャピタル、ソフトウェア開発、サービサー業務などを展開しています。グループ各社が連携し、顧客に対してワンストップで多様なソリューションを提供しています。
収益は、証券委託手数料、リース料、クレジットカード年会費・取扱手数料などが挙げられます。運営は、ほくほくTT証券、北銀リース、北陸カード、道銀カード、ほくほくコンサルティングなどのグループ会社が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、経常収益は増加傾向にあり、特に直近の2025年3月期は2,000億円を超えました。経常利益も2024年3月期から大きく伸長し、2025年3月期は500億円台に達しています。当期純利益も順調に増加しており、収益性が向上していることがうかがえます。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 経常収益 | 1,760億円 | 1,778億円 | 1,879億円 | 1,901億円 | 2,102億円 |
| 経常利益 | 322億円 | 303億円 | 264億円 | 233億円 | 516億円 |
| 利益率(%) | 18.3% | 17.0% | 14.0% | 12.2% | 24.6% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 213億円 | 205億円 | 214億円 | 230億円 | 391億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間を比較すると、経常収益は資金運用収益の増加等により増収となりました。経常費用は、資金調達費用が増加したものの、その他業務費用の減少などにより全体として減少しました。これらにより経常利益は大幅に増加し、収益構造が改善しています。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 経常収益 | 1,901億円 | 2,102億円 |
| 経常利益 | 233億円 | 516億円 |
| 経常利益率(%) | 12.2% | 24.6% |
経常費用のうち、営業経費が861億円(構成比54.3%)を占めており、その主な内訳は給料・手当等の人件費や物件費です。また、資金調達費用が253億円(同15.9%)、その他業務費用が205億円(同12.9%)となっています。
■(3) セグメント収益
北陸銀行セグメントは、資金運用収益の増加等により増収増益となりました。北海道銀行セグメントも同様に増収増益を達成しています。両行ともに貸出金利息や有価証券利息配当金の増加が寄与しました。その他セグメントは、経常収益、セグメント利益ともに減少しました。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) | 利益(2024年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 北陸銀行 | 998億円 | 1,097億円 | 183億円 | 242億円 | 22.0% |
| 北海道銀行 | 727億円 | 773億円 | 85億円 | 119億円 | 15.5% |
| その他 | 239億円 | 221億円 | 38億円 | 24億円 | 10.7% |
| 調整額 | -63億円 | 11億円 | -75億円 | 6億円 | 54.1% |
| 連結(合計) | 1,901億円 | 2,102億円 | 230億円 | 391億円 | 18.6% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業CFはマイナス、投資CFもマイナス、財務CFもマイナスの「末期型(事業拡大に伴う資産増加)」です。
なお、同社は金融・証券関連事業を主力としているため、営業CFのマイナスは主に貸出金の増加(事業拡大)によるものであり、直ちに業績悪化を意味するものではありません。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 824億円 | -7,677億円 |
| 投資CF | 1,314億円 | -5,737億円 |
| 財務CF | -151億円 | -179億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は6.1%で市場平均(9.4%)を下回り、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は4.0%で市場平均(24.2%)を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、広域地域金融グループとして、地域とお客さまの繁栄に貢献することを長期的な目指す姿としています。地域・お客さまの課題解決と企業価値向上を共に実現し、潤いと活気あふれる地域、活力ある地域産業に支えられた豊かな地域、SX/GX先進地域の実現を目指しています。
■(2) 企業文化
経営統合から20年を機に、グループの一体感を高めるためのインナーブランディング「ほくほくFGムーブメント20」を始動しました。多様な人材が活躍し、活力あふれる企業文化の定着を目指しており、人的資本経営の実践を通じて、挑戦と成長を促し、能力を最大限引き出す環境整備に取り組んでいます。
■(3) 経営計画・目標
2025年4月から第6次中期経営計画『NEXT STAGE』をスタートさせました。「地域・お客さまの課題解決と当社の企業価値向上を共に実現する期間」と位置づけ、2028年3月期に向けた数値目標を設定しています。
* ROE:8%台
* 親会社株主に帰属する当期純利益:550億円
* 連結自己資本比率:10%台
* OHR(2行合算・コア業務粗利益ベース):50%台
■(4) 成長戦略と重点施策
第6次中期経営計画では、「金融・非金融の融合による課題解決力の深化」、「持続的な成長を支える経営基盤の強化」、「多様な人材が活躍し活力あふれる企業文化の定着」の3つを戦略のエンジンとしています。事業性貸出を中心としたマーケット戦略やサステナビリティ戦略、地域活性化戦略を推進するとともに、リテール分野での顧客利便性向上やワンストップソリューションの提供に取り組みます。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「地域・取引先をつなぎ 価値創造の原動力となる ひとづくり」を人的資本経営の取組方針としています。多様な人材が活躍し、自律的なキャリア形成ができるよう、採用強化や人材育成、DE&I(ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン)の推進に取り組んでいます。また、挑戦する風土の醸成やウェルビーイングの実現に向けた環境整備も進めています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 45.0歳 | 21.0年 | 9,647,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 24.4% |
| 男性育児休業取得率 | 97.9% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 39.8% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 53.4% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 37.3% |
※数値は連結子会社である北陸銀行のものです。
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、キャリア採用者数(116名)、女性管理職比率(25.2%)、ソリューション人材(コア・ミドル)数(2,121名)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) ビジネス戦略が奏功しないリスク
収益力強化のためのビジネス戦略を実施していますが、競争激化や市場環境の変化、デジタル化への対応遅れ、人材不足などの要因により、当初想定した成果が得られない可能性があります。また、持株会社として子会社からの配当収入に依存しているため、子会社の業績悪化により配当支払能力に影響が及ぶ可能性があります。
■(2) 自己資本比率規制に関するリスク
銀行持株会社として連結自己資本比率の国内基準(4%)を維持する必要があります。貸出先の信用力悪化や有価証券価値の低下等により自己資本比率が低下し、基準を下回った場合、業務停止等の命令を受ける可能性があります。統合リスク管理の枠組みでコントロールしていますが、予期せぬ経済情勢の変化等が影響する可能性があります。
■(3) 信用リスク
主要な営業基盤である北陸・北海道地域の経済状況悪化や、特定の業種への貸出集中、担保価値の下落等により、不良債権や与信費用が増加する可能性があります。厳正な審査や自己査定による管理を行っていますが、想定を超える環境変化が財務に悪影響を及ぼすおそれがあります。
■(4) 市場リスク
金利、株価、為替等の変動により、保有する有価証券の価値が下落し、評価損や減損が発生する可能性があります。特に金利上昇局面では債券価格の下落リスクがあります。VaR等を用いたリスク管理を行っていますが、市場の急激な変動により業績や自己資本比率に影響を与える可能性があります。
■(5) 流動性リスク
市場環境の変化や自社の格付低下等により、必要な資金調達が困難になったり、調達コストが高騰したりする可能性があります。資金繰りリスク管理指標を用いたモニタリングや流動性準備資産の確保等を行っていますが、想定外の事象により資金繰りに支障をきたすおそれがあります。



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