※本記事は、株式会社ほくほくフィナンシャルグループ の有価証券報告書(第23期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月16日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. ほくほくフィナンシャルグループってどんな会社?
同社グループは、北陸銀行と北海道銀行を中核とする広域地域金融グループです。
■(1) 会社概要
2003年に北陸銀行の単独株式移転により設立され東京証券取引所に上場しました。2004年に北海道銀行との株式交換を経て現在のほくほくフィナンシャルグループへ商号変更しています。近年は2017年のほくほくTT証券開業や、2024年のほくほくコンサルティング設立など金融サービス機能の拡充を進めています。
同社グループの従業員数は連結で4,618名、単体で251名です。株主構成は、筆頭株主が日本マスタートラスト信託銀行(信託口)で12.58%、第2位が日本カストディ銀行(信託口)で3.8%と、資産管理業務を行う信託銀行が上位を占めています。第3位には外国法人が名を連ねています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 12.58% |
| 日本カストディ銀行(信託口) | 3.80% |
| STATE STREET BANK AND TRUST COMPANY 505001 | 3.34% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性9名、女性2名の計11名で構成され、女性役員比率は18.2%です。代表取締役社長は中澤宏氏が務めています。社外取締役比率は45.5%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 中澤宏 | 取締役社長(代表取締役) | 1986年北陸銀行入行。同行本店営業部長、常務執行役員などを歴任。2019年同社取締役、2021年同社取締役営業戦略部担当に就任。2022年より北陸銀行代表取締役頭取および同社代表取締役社長。 |
| 兼間祐二 | 取締役副社長(代表取締役) | 1987年北海道銀行入行。同行経営企画部長、常務執行役員などを歴任。2017年同社取締役、2021年北海道銀行代表取締役頭取および同社代表取締役副社長に就任。2025年より現職。 |
| 小林正彦 | 取締役 | 1987年北陸銀行入行。同行総合企画部長、常務執行役員などを経て、2019年同社取締役企画・総務グループ担当に就任。2025年より北陸銀行専務執行役員および同社取締役営業戦略部担当。 |
| 会田朋生 | 取締役 | 1990年北海道銀行入行。同行本店法人営業部本店長などを経て、2024年取締役常務執行役員に就任。2025年より北陸銀行取締役執行役員および同社取締役経営企画部副担当など。 |
| 大塚直久 | 取締役 | 1990年北陸銀行入行。同行新宿支店長、統合リスク管理部長などを経て、2022年同社リスク統括部長に就任。2024年より北陸銀行取締役執行役員、北海道銀行執行役員および同社取締役リスク統括部担当。 |
| 松原幸洋 | 取締役(監査等委員) | 1992年北陸銀行入行。同行渋谷支店長などを経て、2024年同行人事部長兼経営企画部部長および北海道銀行人事部部長に就任。2025年より同社取締役(監査等委員)。 |
社外取締役は、舟本馨(元警察庁刑事局長)、小川万里絵(元日本銀行富山事務所長)、横井裕(元特命全権大使中華人民共和国駐箚)、牧野真也(明治安田損害保険代表取締役会長)、奥村浩子(馬場・澤田法律事務所弁護士)です。
2. 事業内容
同社グループは、「北陸銀行」「北海道銀行」および「その他」事業を展開しています。
■(1) 北陸銀行
北陸三県を中心に、地域に密着した預金、貸出、為替などの総合的な銀行業務を提供しています。地域企業の成長支援や課題解決に向けたコンサルティング、個人の資産形成や住宅ローンなどの金融サービスを展開し、地域の持続的な発展を支えています。
主に企業や個人への貸出金利息や、振込・決済等の役務取引に関する手数料などを収益源としています。当該事業の運営は北陸銀行が行っています。
■(2) 北海道銀行
北海道全域を主要な営業基盤とし、多様な資金ニーズに応える銀行業務を提供しています。次世代半導体等の成長産業への設備投資支援や、広域ネットワークを活かした地域活性化、個人のライフステージに応じた金融商品の提供などを行っています。
主な収益源は、事業性貸出や個人ローンから得られる資金運用収益、および投資信託の販売や決済業務等のサービス提供に伴う各種手数料です。運営は北海道銀行が行っています。
■(3) その他事業
中核となる銀行業務を補完・強化するため、広範な顧客ニーズに対応する多様な金融および非金融サービスを提供しています。具体的には、証券業務、経営コンサルティング、リース、クレジットカード、ベンチャーキャピタル、サービサー業務などを含みます。
証券の委託手数料やコンサルティング報酬、リース料、クレジットカードの加盟店手数料などを収益としています。ほくほくTT証券、ほくほくコンサルティング、北銀リース、道銀カードなどのグループ各社が運営を行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、経常収益は安定的な拡大を続けており、特に直近2期間で大きく増収となっています。貸出金の堅調な増加や有価証券利息配当金の増加などの資金運用収益の拡大が牽引し、経常利益も大幅な増益傾向にあります。利益率も直近では20%台後半まで向上し、収益性の改善が顕著に表れています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 経常収益 | 1,778億円 | 1,879億円 | 1,901億円 | 2,102億円 | 2,775億円 |
| 経常利益 | 303億円 | 264億円 | 233億円 | 516億円 | 808億円 |
| 経常利益率(%) | 17.0% | 14.0% | 12.2% | 24.6% | 29.1% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 71億円 | 63億円 | 103億円 | 105億円 | 192億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間の収益構造を見ると、主力の資金運用収益の拡大により経常収益が大幅に増加しています。貸出金残高の積み上げや利回りの改善が寄与し、トップラインが押し上げられました。これに伴い、営業利益も前期の106億円から当期は193億円へと大きく伸長し、営業利益率も向上するなど、堅調な本業の成長が確認できます。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 経常収益 | 2,102億円 | 2,775億円 |
| 営業利益 | 106億円 | 193億円 |
| 営業利益率(%) | 5.0% | 6.9% |
販売費及び一般管理費のうち、事務協力費が2.7億円(構成比31%)、役員報酬が1.8億円(同21%)を占めています。
■(3) セグメント収益
各セグメントの経常収益を見ると、全領域で増収を達成しています。中核となる北陸銀行は、資金運用収益の好調を背景に前期比で約4割の増収となり、グループ全体の成長を牽引しています。北海道銀行も貸出や役務取引の増加により順調に収益を拡大させており、その他の事業セグメントも堅調に推移しています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) |
|---|---|---|
| 北陸銀行 | 1,097億円 | 1,535億円 |
| 北海道銀行 | 773億円 | 996億円 |
| その他 | 221億円 | 245億円 |
| 調整額 | 11億円 | -0.2億円 |
| 連結(合計) | 2,102億円 | 2,775億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業CFと投資CFがともにプラスとなり、得られた資金で借入等の返済(財務CFマイナス)を進める「改善型」のキャッシュ・フロー状況です。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | -7,677億円 | 855億円 |
| 投資CF | -5,737億円 | 3,119億円 |
| 財務CF | -179億円 | -407億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は8.7%で市場平均を下回り、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も4.3%で市場平均を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
「グループの理念体系」として「地域を超えて、輝く未来を創る。」というパーパスを掲げています。北陸三県および北海道を主要営業エリアとしつつ、三大都市圏にも広がるネットワークを活用し、地域社会の発展と活性化に貢献することを通じて、企業価値の向上に努めることを基本方針としています。
■(2) 企業文化
第6次中期経営計画「NEXT STAGE」において、「多様な人材が活躍し活力あふれる企業文化の定着」を戦略のエンジンのひとつに位置付けています。一人ひとりの多様な価値観が認められ、誰もが能力を最大限に発揮できる全員活躍の推進や、自ら手を挙げて挑戦できる組織風土の醸成に取り組んでいます。
■(3) 経営計画・目標
2025年4月からスタートした第6次中期経営計画「NEXT STAGE」(2025~2027年度)では、最終年度となる2028年3月期の目標とする経営指標を掲げています。収益性や健全性を示す以下の数値目標の達成を通じて、地域のお客さまの繁栄への貢献と企業価値の持続的成長を目指しています。
* ROE:8.5%
* 親会社株主に帰属する当期純利益:650億円
* 連結自己資本比率:10%台
* OHR(2行合算・コア業務粗利益ベース):40%台後半
■(4) 成長戦略と重点施策
中期経営計画の達成に向け、3つの「戦略のエンジン」を軸に施策を推進しています。金融・非金融の融合による課題解決力の深化を図るため、事業性貸出を中心としたマーケット戦略やサステナビリティ戦略を展開します。また、リテールマーケット戦略を通じて顧客利便性の向上やワンストップソリューションを提供し、持続的な成長を支える経営基盤の強化に取り組んでいます。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
人的資本経営の3つの柱として「自律的人材の継続的創出」「多様な人材の活躍」「能力を最大限引き出す環境の整備」を掲げています。課題解決力の向上に向けてフロント人員や本部戦略分野への配置を強化するほか、ソリューション人材やプロフェッショナル人材を計画的に育成する方針です。また、健康経営の促進により働きやすい環境整備を進めています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 46.2歳 | 20.9年 | 9,901,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 26.4% |
| 男性育児休業取得率 | 157.1% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 41.5% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 53.7% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 41.8% |
また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、キャリア採用者数(74名)、ソリューション人材数(2,261名)、有給休暇取得率(81.2%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) ビジネス戦略の成否に関するリスク
同社グループは収益力強化のために様々なビジネス戦略を実施していますが、貸出における利鞘の確保、競争状況や市場環境の変化、デジタル化の急速な進展への対応遅れなどにより、当初想定していた成果を生まない可能性があります。また、業務の多様化・高度化に必要な人材を十分に確保できないリスクもあります。
■(2) 自己資本比率規制に関するリスク
同社および銀行子会社は、一定の自己資本比率を国内基準以上に維持するよう求められています。貸出先の信用力悪化に伴う不良債権処理費用の増加、有価証券ポートフォリオの価値低下、自己資本比率の基準・算定方法の変更などにより、要求水準を下回った場合には業務の停止等の行政処分を受ける可能性があります。
■(3) 信用リスクおよび市場リスク
地域経済の悪化による貸倒れの増加や担保価値の下落、特定の業界や地方公共団体への与信集中などが信用リスクとして挙げられます。また、金利、株価、為替等の変動によって保有する有価証券の価値が大幅に下落した場合には、減損や評価損が発生し、業績の悪化や自己資本比率の低下を招くリスクがあります。



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