※本記事は、東洋証券の有価証券報告書(第104期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 東洋証券ってどんな会社?
同社は有価証券の売買や引受けなどの金融商品取引業を中心に、投資・金融サービスを提供する企業です。
■(1) 会社概要
1934年に廣島証券商事として設立され、1971年に現在の東洋証券へ商号を変更しました。1987年には香港に現地法人を設立してアジア展開を進め、2022年の市場区分見直しによりプライム市場へ移行しました。直近の2026年には企業を買収して子会社化するなど、事業の多角化も進めています。
同社グループの従業員数は連結で632名、単体で620名となっています。筆頭株主はシステム開発などを手掛ける野村総合研究所で、第2位は保険事業を展開する住友生命保険、第3位は資産管理業務を行う信託銀行です。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 野村総合研究所 | 9.77% |
| 住友生命保険 | 7.76% |
| 日本マスタートラスト信託銀行 | 6.62% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性11名、女性1名の計12名で構成され、女性役員比率は8.3%です。代表取締役社長は小川憲洋氏が務めています。社外取締役比率は33.3%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 小川憲洋 | 取締役社長兼社長執行役員(代表取締役)監査部担当 | 1992年同社入社。浜田支店長、今治支店長、広島支店長などを歴任。業務推進部長や執行役員を経て、2024年6月より現職。 |
| 圓城寺貢 | 取締役兼常務執行役員経営企画部管掌兼内部管理本部長 | 1986年日興証券に入社。三菱UFJ証券などで財務企画部長や執行役員を歴任し、2022年に同社取締役。2025年10月より現職。 |
| 松本誠 | 取締役兼上席執行役員法人本部長 | 1983年同社入社。事務統括部長や執行役員、人事研修部担当を経て2023年6月に取締役に就任。2026年4月より現職。 |
| 平田聡 | 取締役兼上席執行役員商品統括部兼人事研修部兼業務統括部担当 | 1987年同社入社。浜松支店長や執行役員を経て、2023年に上席執行役員。商品統括部担当などを歴任し、2026年4月より現職。 |
社外取締役は、佐藤義雄(元住友生命保険社長)、吉原和仁(元UBPインベストメンツ社長)、白井真(元財務省関東財務局証券検査官)、石田惠美(矢野公認会計士事務所パートナー)です。
2. 事業内容
同社グループは、「投資・金融サービス業」の単一セグメントで事業を展開しています。
国内金融商品取引市場を中核として営業拠点を設け、個人や法人の顧客に対して有価証券の売買やその受託、投資信託の販売など幅広い金融・投資サービスを提供しています。また、中国株や米国株などの外国株を顧客の資産形成の選択肢として提案するコンサルティング業務にも注力しています。
主な収益源は、顧客からの有価証券の委託手数料や、投資信託の販売手数料、および投信委託会社からの代行手数料(信託報酬)などです。これらの事業運営は、主に同社および連結子会社の東洋証券亜洲が担っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5年間の業績推移を見ると、一時的に経常損失および当期損失を計上した時期があったものの、その後は急速な回復を見せています。直近の期では大幅な増益を達成しており、国内外の金融市場の動向を的確に捉えた収益力の強化が着実に進んでいることが伺えます。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 経常利益 | 6億円 | -17億円 | 14億円 | 10億円 | 33億円 |
| 当期利益 | 10億円 | -28億円 | 15億円 | 27億円 | 39億円 |
■(2) 損益計算書
営業利益は前期と比較して大幅に増加しており、積極的な事業活動と市場環境の好転を背景に収益基盤の強化が進んでいることがわかります。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業利益 | 7億円 | 28億円 |
販売費及び一般管理費のうち、人件費が52億円(構成比50%)、事務費が20億円(同20%)、不動産関係費が13億円(同12%)を占めています。
■(3) キャッシュ・フローと財務指標
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は12.9%で市場平均を上回り、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も42.5%で市場平均を上回っています。キャッシュ・フローは、本業が低迷し事業の見直しが迫られる状況(事業検討型)となっています。なお、同社は金融・証券関連事業を主力としているため、営業CFのマイナスは主に信用取引資産の増加(事業拡大)によるものであり、直ちに業績悪化を意味するものではありません。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 9億円 | -5億円 |
| 投資CF | 23億円 | 23億円 |
| 財務CF | -55億円 | -21億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
「信頼」、「付加価値」、「得意分野」を経営理念とし、社員一人ひとりが地域社会の活性化に取り組み、貢献することを目指しています。金融商品取引業者としての社会的責任を常に意識し、質の高いサービスの提供等により個人の資産形成を支えることで社会に貢献し、持続可能な社会の実現を追求しています。
■(2) 企業文化
同社は「お客さまの信頼がすべて」とする考え方を重視しています。顧客の状況や経済環境に応じた最善・最適で質の高い金融サービスを提供することで、中長期的な顧客の資産価値の向上に貢献するという価値観が根付いています。また、人権や環境を尊重し、社会貢献に努める倫理方針を行動規範として定めています。
■(3) 経営計画・目標
同社は第六次中期経営計画を推進しており、最終年度の2028年3月期において以下の数値目標を掲げています。
* ROE:8%以上
* 預り資産残高:1兆5,000億円以上
* 株式投信残高:5,000億円以上
* NISA口座残高:1,040億円以上
■(4) 成長戦略と重点施策
同社は、「お客さまの信頼獲得」「付加価値サービスの提供」「得意分野の選択・集中」に軸足を置いた戦略を展開しています。対面サービスの質と量の強化や、きめ細やかなアフターフォローを通じた顧客満足度の追求を進めるとともに、アジア関連投資信託やIFAプラットフォームビジネスなどの得意分野に注力しています。
* コンサルティングサービスの強化
* 中国株のパイオニアとしてのブランド再構築
* コスト構造改革の実践による成長分野への資金投下
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は、人材を企業価値向上の重要な資本と位置づけ、顧客に喜ばれる高い付加価値を提供できる従業員を育成することを人材戦略として掲げています。双方向の対話を通じた組織のエンゲージメント向上に努め、人事制度の改正や多様な人材がやりがいを持って活躍できる職場環境の整備を進めています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 43.3歳 | 17.7年 | 6,713,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 13.6% |
| 男性育児休業取得率 | 50.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 83.0% |
| 男女賃金差異(正規雇用労働者) | 82.3% |
| 男女賃金差異(パート・有期労働者) | 76.6% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、新規採用者に占める女性労働者の割合(34.4%)、有給休暇取得率(47.3%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 金融商品取引業の収益変動リスク
同社グループの中核事業は金融商品取引業であるため、営業収益は国内外の金融商品取引市場の動向から大きな影響を受けます。市場の変動によっては、同社の財政状態および経営成績が大きく変動する可能性があります。これに対し、地域密着型のリテール証券会社として顧客基盤を拡大し、安定的な収益確保に努めています。
■(2) システムに関するリスク
インターネット取引をはじめ、事業遂行においてコンピュータ・システムの利用は不可欠です。品質不良や外部からの不正アクセス等によってシステムに障害が発生した場合、その規模によっては同社グループの財政状態に影響を及ぼす可能性があります。対策として、共同利用型サービスの活用や内部統制の有効性検証を実施しています。
■(3) 重要な訴訟等に関するリスク
顧客に対する営業活動における不法行為や、職場でのハラスメントなどの不正行為が発生した場合、訴訟等の法的手続きの対象となる可能性があります。将来的に重要な訴訟等が提起された場合、業績に影響を及ぼす恐れがあるため、営業部門のコンプライアンス態勢の徹底や社内通報制度の活用により健全な職場環境の確立を図っています。



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