東洋証券 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東洋証券 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証プライム上場の証券会社。中国株取引のパイオニアとして知られ、対面営業を主体に金融商品取引業を展開しています。2025年3月期は、日本株委託手数料や投資信託の募集手数料が減少し減収減益(経常)となりましたが、投資有価証券売却益の計上により当期純利益は大幅な増益となりました。


※本記事は、東洋証券株式会社の有価証券報告書(第103期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 東洋証券ってどんな会社?


中国株取引のパイオニアとして独自の地位を築く中堅証券会社。対面営業を軸に地域密着型のサービスを展開しています。

(1) 会社概要


同社は1934年に廣島証券商事として設立されました。1967年に高井証券と合併し本店を東京へ移転、1971年に現社名へ変更しています。1987年には香港に現地法人を設立し、中国・アジア株に強みを持つ独自の事業基盤を構築しました。2022年の市場区分見直しに伴い、現在は東証プライム市場に上場しています。

連結従業員数は646名、単体では633名です。筆頭株主はシステム開発大手の野村総合研究所で、第2位は資産管理業務を行う信託銀行、第3位は大手生命保険会社です。主要株主には金融機関や事業会社が名を連ねており、安定した資本構成となっています。

氏名 持株比率
野村総合研究所 9.77%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 7.85%
住友生命保険 7.76%

(2) 経営陣


同社の役員は男性9名、女性1名の計10名で構成され、女性役員比率は10.0%です。代表者は取締役社長兼社長執行役員の小川憲洋氏です。社外取締役比率は30.0%です。

氏名 役職 主な経歴
小川憲洋 取締役社長兼社長執行役員(代表取締役)監査部担当 1992年同社入社。浜田、今治、広島の各支店長や業務推進部長を経て、2022年執行役員に就任。2024年6月より現職。
圓城寺貢 取締役兼常務執行役員経営企画部担当兼内部管理本部・投資情報部管掌 元三菱UFJモルガン・スタンレー証券常務執行役員。2022年同社取締役就任。2024年6月より常務執行役員として経営企画部を担当。
松本誠 取締役兼上席執行役員人事総務部担当兼公開・引受部担当兼法人部担当 1983年同社入社。事務統括部長、執行役員を経て、2023年取締役就任。情報本部長兼法人本部長などを歴任し、2024年10月より現職。
平田聡 取締役兼上席執行役員内部管理本部長兼商品統括部担当 1987年同社入社。浜松、呉の各支店長を経て、2022年執行役員内部管理本部長。2025年6月より現職。


社外取締役は、田中秀和(元MUSビジネスサービス取締役会長)、佐藤義雄(住友生命保険特別顧問)、石田惠美(BACeLL法律会計事務所代表)です。

2. 事業内容


同社グループは、「投資・金融サービス業」事業を展開しています。

投資・金融サービス業


同社グループは、国内外の有価証券(株式、債券等)の売買、媒介、取次ぎ、代理をはじめ、有価証券の引受け、売出し、募集の取扱い、その他の金融商品取引業を行っています。国内金融商品取引市場を中核としつつ、中国・香港株式市場などの外国株取引にも強みを持ち、顧客の資産形成を支援しています。

収益は、顧客からの委託手数料、投資信託等の募集・販売手数料、信託報酬(代行手数料)、トレーディング損益、および信用取引等に伴う金融収支等から構成されています。運営は主に同社が行っており、中国・アジア市場に関する業務の一部を連結子会社の東洋証券亜洲有限公司が担っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


2023年3月期は市場環境の悪化により経常赤字および最終赤字となりましたが、2024年3月期には黒字転換を果たしました。直近の2025年3月期は、日本株委託手数料等の減少により営業収益は減少しましたが、投資有価証券売却益などの特別利益を計上したことで、当期純利益は大幅な増益となり、回復基調を示しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上収益(または売上高) 120億円 109億円 83億円 120億円 113億円
経常利益 11億円 6億円 -17億円 14億円 10億円
利益率(%) 9.4% 5.3% -19.9% 12.0% 9.2%
当期利益(親会社所有者帰属) 10億円 10億円 -28億円 15億円 27億円

(2) 損益計算書


営業収益は前期比で減少しました。受入手数料全体が減少したことが主な要因ですが、トレーディング損益や金融収益は増加しています。費用面では、人件費の減少等により販売費・一般管理費が抑制されましたが、減収の影響が大きく、営業利益は減少しました。売上高営業利益率は低下しています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 120億円 113億円
売上総利益 - -
売上総利益率(%) - -
営業利益 12億円 7億円
営業利益率(%) 9.6% 6.1%


販売費・一般管理費のうち、人件費が50億円(構成比48%)、事務費が21億円(同21%)を占めています。

(3) セグメント収益


同社は「投資・金融サービス業」の単一セグメントであるため、セグメントごとの詳細な増減分析はありませんが、全体として日本株の委託手数料や投資信託の販売手数料が減少した一方で、投資信託の代行手数料や米国株取扱手数料が増加しました。結果として営業収益は前期比で減少しました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
投資・金融サービス業 120億円 113億円 12億円 7億円 6.1%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

東洋証券は、顧客分別金信託の増加や信用取引資産の増加が営業活動によるキャッシュ・フローを押し上げました。投資活動では、投資有価証券の売却収入が増加し、プラスに寄与しました。財務活動では、長期借入金の返済支出がなくなったものの、自己株式の取得による支出が大きくなりました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 35億円 9億円
投資CF 15億円 23億円
財務CF -21億円 -55億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「信頼」「付加価値」「得意分野」を経営理念として掲げています。社員一人ひとりが地域社会の活性化に取り組み、質の高いサービスの提供を通じて個人の資産形成を支えることで社会に貢献し、中長期的な企業価値の向上と持続可能な社会の実現を目指しています。

(2) 企業文化


同社は「お客さまの信頼獲得」を最重要視し、顧客本位の業務運営を徹底する文化を持っています。また、多様性を尊重し、従業員一人ひとりが能力を最大限に発揮できる環境作りにも注力しています。「お客さまの信頼がすべて」という考えのもと、ステークホルダーとの信頼関係を深めることを重視しています。

(3) 経営計画・目標


同社は第六次中期経営計画の見直しを行い、2028年3月期までの目標を設定しています。資本コストや株価を意識した経営を実現するため、PBR1倍以上の達成を目指した財務施策とともに、以下の数値目標を掲げています。

* ROE: 8%以上(2028年3月期)
* 預り資産残高: 1兆5,000億円以上
* 株式投信残高: 5,000億円以上
* NISA口座残高: 1,040億円以上

(4) 成長戦略と重点施策


同社は「お客さまの信頼獲得」「付加価値サービスの提供」「得意分野の選択・集中」を戦略の軸とし、コスト構造改革も並行して進めています。特に対面サービスの強化やアフターフォローの充実、中国株のパイオニアとしてのブランド再構築、IFAプラットフォームビジネスへの取り組みなどを重点施策としています。

* ROE: 8%以上(2028年3月期)

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は人材を企業価値向上の重要な資本と位置づけ、高い付加価値を提供できる従業員の育成を掲げています。「創造的社員」「活力ある信頼される社員」「時代に即応する適応性と能力を備えた社員」の育成を教育の基本理念とし、年次や職位に応じた研修を実施しています。また、多様な人材が活躍できる環境整備や健康経営も推進しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 43.4歳 17.9年 6,440,000円


※平均年間給与は、賞与及び基準外賃金を含んでおります。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 11.8%
男性育児休業取得率 33.3%
男女賃金差異(全労働者) 84.6%
男女賃金差異(正規雇用) 83.3%
男女賃金差異(非正規雇用) 80.9%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、有給休暇取得率(48.7%)、新規採用者に占める女性労働者の割合(21.7%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 金融商品取引業の収益変動リスク


同社グループの中核事業である金融商品取引業は、国内外の金融市場の動向に強く影響を受けます。市場環境の変動により営業収益が大きく増減する可能性があり、それに伴い財政状態や経営成績も変動するリスクがあります。同社は顧客基盤の拡大により安定的な収益確保を目指しています。

(2) 競合環境の激化


インターネット専業証券や異業種からの参入、業界再編などにより、競争環境は厳しさを増しています。競争優位性を維持できない場合、経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。同社は対面サービス等の強みを活かし、差別化を図ることで競争力を維持しようとしています。

(3) システムに関するリスク


業務遂行に不可欠なコンピュータ・システムにおいて、品質不良や外部からの不正アクセス等による障害が発生した場合、業務の停止や混乱を招き、財政状態や経営成績に影響を与える可能性があります。同社は基幹システムの共同利用型サービスへの移行や内部統制の強化により、リスク低減に努めています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。