※本記事は、HSホールディングス株式会社 の有価証券報告書(第68期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. HSホールディングスってどんな会社?
独自の金融コングロマリット構想の下、モンゴル等の海外銀行事業やリユース事業、投資事業を展開しています。
■(1) 会社概要
1958年に協立証券として設立。1999年にエイチ・アイ・エス社長の澤田秀雄氏が大株主となり、2003年にモンゴルのハーン銀行を子会社化しました。2004年にヘラクレス(現・東証スタンダード)へ上場し、2007年に持株会社体制へ移行。2022年に商号を現在のHSホールディングスへ変更するとともに、株式会社STAYGOLDを子会社化しリユース事業へ参入しました。
連結従業員数は588名、単体では5名です。筆頭株主は投資事業組合で、第2位、第3位には証券会社が名を連ねています。特定の事業会社による支配関係はなく、独立した経営体制をとっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| ウプシロン投資事業有限責任組合 | 42.15% |
| SBI証券 | 6.89% |
| 松井証券 | 6.85% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性8名、女性1名の計9名で構成され、女性役員比率は11.1%です。代表取締役社長は原田 泰成氏です。社外取締役比率は50.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 原田 泰成 | 取締役社長(代表取締役) | 日本興業銀行、モルガン・スタンレー証券、BNPパリバ証券等を経て、2021年同社代表取締役社長に就任。H.S. International (Asia) Limited取締役などを兼務。 |
| 松村 恭也 | 取締役 | ガリバーインターナショナル(現IDOM)を経て、2015年同社入社。財務部長、執行役員を歴任し、2020年より現職。JSC Solid Bank取締役を兼務。 |
| 村井 希有子 | 取締役 | 高島屋を経て、META Capitalディレクターに就任。2021年より現職。株式会社STAYGOLD監査役を兼務。 |
社外取締役は、服部 純一(和陽代表取締役)、石井 喜三郎(元国土交通審議官・在ルーマニア大使)、税所 篤(META Capital代表取締役)です。
2. 事業内容
同社グループは、「銀行関連事業」、「リユース事業」、「その他」事業を展開しています。
■(1) 銀行関連事業
モンゴル国、キルギス共和国、ロシア連邦において銀行業務を行っています。主要な関連会社として、モンゴル最大のリテール銀行であるハーン銀行、キルギスのキルギスコメルツ銀行、ロシアのソリッド銀行を有しています。
収益源は、貸出金利息や各種手数料収入などです。運営は、持分法適用関連会社のKhan Bank LLC(モンゴル)、JSC Solid Bank(ロシア)、および連結子会社のOJSC Kyrgyzkommertsbank(キルギス)がそれぞれ行っています。
■(2) リユース事業
ブランド品、貴金属、時計、バッグ、衣料品などを対象としたリユース品の買取・卸売・小売事業を展開しています。一般顧客からの買取に加え、オークション運営も行っています。
収益源は、リユース品の販売代金やオークション手数料です。運営は、主に連結子会社である株式会社STAYGOLDが行っています。
■(3) その他事業
上記セグメントに含まれない事業として、投資業、M&A仲介・コンサルティング事業などを行っています。国内外の企業への投資や、企業再生、M&Aアドバイザリーなどを手掛けています。
収益源は、投資有価証券の売却益、受取配当金、コンサルティング手数料などです。運営は、同社(提出会社)、H.S. International (Asia) Limited、HS FINANCIAL Pte. Ltd.が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
2024年3月期に大幅な減収となりましたが、これは主要子会社であったハーン銀行が持分法適用関連会社へ異動したためです。利益面では、経常利益は高水準を維持しており、当期純利益も安定的に推移しています。直近の2025年3月期は、リユース事業の伸長等もありましたが、銀行事業の連結除外影響が通期で響き減収となりました。一方、持分法投資利益の貢献により純利益は増加しています。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上収益(または売上高) | 578億円 | 616億円 | 777億円 | 496億円 | 378億円 |
| 経常利益 | 97億円 | 178億円 | 257億円 | 158億円 | 151億円 |
| 利益率(%) | 16.8% | 28.9% | 33.1% | 31.8% | 40.0% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | -30億円 | 65億円 | 114億円 | 95億円 | 121億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間の比較では、売上高が減少する一方で、当期純利益は増加しました。売上高の減少は、前述の通り銀行事業の連結除外によるものです。一方、営業外収益に含まれる持分法による投資利益が増加したことで、経常利益は微減にとどまり、税負担の調整等もあり最終利益は増益となりました。営業損益は赤字に転じていますが、これは持株会社費用やリユース事業ののれん償却費等の影響によるものです。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 496億円 | 378億円 |
| 売上総利益 | - | - |
| 売上総利益率(%) | - | - |
| 営業利益 | 50億円 | -11億円 |
| 営業利益率(%) | 10.1% | -2.9% |
販売費及び一般管理費のうち、その他が42億円(構成比41%)、広告宣伝費が25億円(同25%)、給与手当が17億円(同17%)を占めています。
■(3) セグメント収益
銀行関連事業は連結子会社から持分法適用関連会社への異動に伴い大幅な減収となりました。リユース事業は新規出店や販売好調により増収となりました。その他事業は同社単体の受取配当金等が寄与しました。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) |
|---|---|---|
| 銀行関連事業 | 205億円 | 29億円 |
| リユース事業 | 291億円 | 348億円 |
| その他事業 | 0.1億円 | 0.1億円 |
| 調整額 | 0.0億円 | -62億円 |
| 連結(合計) | 496億円 | 378億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
HSホールディングスは、ハーン銀行からの配当金受取などにより、営業活動で資金を増加させました。一方で、有形固定資産の取得や貸付金の増加により、投資活動では資金が減少しました。また、配当金の支払いにより、財務活動でも資金が減少しました。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | -256億円 | 45億円 |
| 投資CF | -81億円 | -61億円 |
| 財務CF | 121億円 | -3億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は、「自然の摂理を大切にすること」「お客様とスタッフを大切にし、社会に貢献できる企業であること」を経営理念として掲げています。独自の金融コングロマリット構想の下、特長ある各種金融サービス事業の拡充や成長性の高い事業分野の強化を通じて、更なる発展を目指しています。
■(2) 企業文化
グループ各社間の業務展開により、顧客に喜ばれ満足されるサービスを提供すること、各事業分野において「ナンバー・ワン」あるいは「オンリー・ワン」となるサービスを育成することを目指しています。また、管理体制と経営体制の強化を図り、グループとしての信用力強化およびブランドイメージ向上に取り組んでいます。
■(3) 経営計画・目標
経営上の目標とする指標として、資本の効率性を示すROE(株主資本当期純利益率)を重視しています。具体的には、連結ベースでROE10%以上を安定的に維持していくことを中期的な経営目標として掲げています。
* 連結ROE 10%以上
■(4) 成長戦略と重点施策
金融サービス事業では、新たな金融サービスの企画開発や既存サービスの改良に努めるとともに、コンプライアンスの徹底等を進めます。特にハーン銀行については、モンゴル銀行法の改正に伴い、2026年12月末までに持分比率を20%以下まで引き下げるという課題に対処します。
リユース事業では、市場拡大を背景に積極的な新規出店による買取チャネルの拡大、個人向け販売の強化などの営業施策を実施し、収益・利益の増加を目指します。投資業務では、アジア新興国や新規事業への投資、M&A仲介・コンサルティング業務を積極的に展開していきます。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
人的資本の強化が持続可能な企業価値向上につながると認識し、多様性を考慮した人材育成に努めています。国籍・人種・性別・年齢等による制約を設けず、在外子会社では現地人材を経営層や管理職に登用しています。また、男性の育児休暇取得やフレックスタイム制など、ワークライフバランスを重視した環境整備を進めています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 48.0歳 | 11.2年 | 7,993,500円 |
※平均年間給与は基準外賃金及び賞与を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。なお、以下の数値は連結子会社である株式会社STAYGOLDの実績です。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 8.5% |
| 男性育児休業取得率 | 37.5% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 75.6% |
| 男女賃金差異(正規) | 78.6% |
| 男女賃金差異(非正規) | 82.5% |
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) グループの利益構造について
同社グループの利益は、銀行業、特にモンゴルのハーン銀行に多くを依存しています。ハーン銀行はモンゴル国内で競争優位を確保していますが、金利変動やモンゴル経済の悪化などの固有リスクが顕在化し、同行の収益が減少した場合、グループ全体の連結業績に重要な影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 海外銀行事業のカントリーリスク
モンゴル(ハーン銀行)、キルギス(キルギスコメルツ銀行)、ロシア(ソリッド銀行)で銀行業を展開しており、各国における政治・社会情勢の混乱、法改正、経済情勢の悪化などがリスク要因となります。特にロシア・ウクライナ情勢に関連する経済制裁や、各国のインフレ率上昇、為替相場の変動などが業績に影響を与える可能性があります。
■(3) リユース事業の市場環境
リユース事業を行う株式会社STAYGOLDでは、景気動向や競合の増加、顧客マインドの変化により、安定的な商品確保が困難になるリスクがあります。また、貴金属やブランド品などの相場変動、偽造品の買取リスク、古物営業法などの法的規制への抵触、個人情報の漏洩などが生じた場合、業績や社会的信用に影響を与える可能性があります。
■(4) 主要株主の影響力
筆頭株主であるウプシロン投資事業有限責任組合が議決権総数の約42.2%を保有しており、取締役・監査役の選任や配当実施など、株主総会の決議事項すべてに対して強い影響力を持っています。このため、同社の経営方針や意思決定が、主要株主の意向に影響を受ける可能性があります。



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