HSホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

HSホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

HSホールディングスは東京証券取引所スタンダード市場に上場し、海外における銀行関連事業と国内でのリユース事業を主軸に展開する金融グループです。当期はリユース事業の好調や、持分法適用関連会社であるハーン銀行の業績拡大などにより、前期比で大幅な増収および増益(経常利益・純利益ベース)を達成しています。


※本記事は、HSホールディングス株式会社の有価証券報告書(第69期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. HSホールディングスってどんな会社?


国内外で独自の金融コングロマリットを形成し、銀行業やリユース事業を多角的に展開しています。

(1) 会社概要


1958年に協立証券として設立され、1999年にエイチ・アイ・エスの澤田秀雄氏が大株主となりエイチ・エス証券に社名変更しました。2004年に大証ヘラクレスへ上場し、2007年には持株会社体制へ移行しています。2022年に現在のHSホールディングスへ商号変更し、リユース事業等を拡大しています。

従業員数は連結で706名、単体で5名です。筆頭株主はMETA Capitalが業務執行組合員を務めるウプシロン投資事業有限責任組合で、第2位は事業会社のDMM.com証券、第3位は個人の川村洋一氏となっています。多角的な事業展開を通じ、国内外で独自の金融コングロマリットを形成しています。

氏名 持株比率
ウプシロン投資事業有限責任組合 42.15%
DMM.com証券 8.47%
川村洋一 6.67%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性1名の計9名で構成され、女性役員比率は11.1%です。代表取締役社長は原田泰成氏が務めています。社外取締役比率は33.3%です。

氏名 役職 主な経歴
原田泰成 取締役社長(代表取締役) 日本興業銀行、モルガン・スタンレー証券、BNPパリバ証券などを経て日本旗艦キャピタル顧問等を歴任。2021年12月より現職。
松村恭也 取締役 ガリバーインターナショナルを経て、同社財務部長やエイチ・エス証券取締役等を歴任。2020年6月より現職。
村井希有子 取締役 髙島屋、META Capitalディレクターなどを経て、2021年12月より現職。META Capital取締役も兼務。


社外取締役は、服部純一(和陽代表取締役)、石井喜三郎(元国土交通審議官)、税所篤(META Capital代表取締役)です。

2. 事業内容


同社グループは、「銀行関連事業」「リユース事業」および「その他」事業を展開しています。

(1) 銀行関連事業


ハーン銀行(モンゴル)、キルギスコメルツ銀行(キルギス)、ソリッド銀行(ロシア)を通じて、個人や法人向けの融資、預金、デジタルバンキングなどの金融サービスを展開しています。各国の経済成長を取り込みながら、決済や外為取引等のサービスも提供しています。

収益源は、顧客からの貸出金利やカード手数料、送金・決済手数料などです。運営はキルギスコメルツ銀行などが担い、ハーン銀行やソリッド銀行は持分法適用関連会社として業績に寄与しています。

(2) リユース事業


時計、宝石、貴金属、ブランド品などのリユース品の買取および販売を行っています。店舗やECサイトを通じた個人向け小売販売を強化しているほか、自社で運営する業者向けオークションを通じた卸売販売も展開し、循環型社会の形成に貢献しています。

収益源は、一般消費者へのリユース品販売代金や、オークション参加業者からの手数料などです。運営はSTAYGOLDなどが担当し、PRICING DATAの吸収合併により在庫管理と買取体制を強化しています。

(3) その他事業


独自の金融コングロマリット構想のもと、企業再生のための出資や将来性のあるアジア新興国・新規事業への投資業務を展開しています。さらに、経営参加や事業支援を目的としたM&A仲介、コンサルティング業務などを通じてグループの拡大を図っています。

収益源は、投資先からの配当金や投資収益、M&A仲介およびコンサルティング業務による手数料などです。運営はHSホールディングスおよびH.S. International (Asia) Limitedなどが担当しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上収益は直近で大幅な増加に転じており、経常利益や当期利益も高水準で推移しています。海外の関連銀行事業が安定的な収益基盤として機能しているほか、リユース事業の規模拡大が増収増益を強力に牽引する構図となっています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上収益 616億円 777億円 496億円 378億円 579億円
経常利益 178億円 257億円 158億円 151億円 177億円
利益率(%) 28.9% 33.1% 31.9% 40.0% 30.6%
当期利益(親会社所有者帰属) 65億円 114億円 95億円 121億円 147億円

(2) 損益計算書


リユース事業を中心とした売上規模の拡大に伴い、売上総利益(純営業収益)が大きく伸びています。一方で、事業規模拡大に向けた投資や販管費の増加により営業利益はマイナスとなっていますが、持分法投資利益などの営業外収益が厚く、最終的な利益創出につながっています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 378億円 579億円
売上総利益 90億円 115億円
売上総利益率(%) 23.8% 19.9%
営業利益 -11億円 -4億円
営業利益率(%) -2.9% -0.6%


販売費及び一般管理費のうち、広告宣伝費が27億円(構成比22%)、給与手当が24億円(同20%)を占めています。

(3) セグメント収益


主力の「リユース事業」が急速に成長しており、前期比で大幅な増収を達成しています。「銀行関連事業」は堅調に推移しており、ハーン銀行などの関連会社を通じた利益面での貢献がグループの収益を支えています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
銀行関連事業 29億円 26億円
リユース事業 348億円 553億円
その他事業 62億円 75億円
調整額 -62億円 -75億円
連結(合計) 378億円 579億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業である「健全型」です。なお、同社は金融・証券関連事業を主力としているため、営業CFの増減は貸出金や事業拡大に伴う要因が大きく、必ずしも純粋な本業の悪化を意味するものではありません。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 45億円 22億円
投資CF -61億円 -3億円
財務CF -3億円 -2億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は15.8%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は75.8%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


経営理念として「自然の摂理を大切にすること」や「お客様とスタッフを大切にし、社会に貢献できる企業であること」を掲げています。環境や社会問題への取り組みと強固なガバナンスが企業の安定的かつ長期的な成長に不可欠であると認識し、ESGを重視した投資や経営の実践を目指しています。

(2) 企業文化


グループ各社間で自律的かつ挑戦的な風土を育んでおり、リユース事業のSTAYGOLDでは「ひとつのモノ、ひとつの想いを大切に豊かな社会を創る」というミッションを掲げています。多様な価値観を尊重し、時間や場所を超えてお客様をつなぐリユースを文化として根付かせる姿勢が浸透しています。

(3) 経営計画・目標


同社グループは、株主への還元と資本の効率性を重視した経営を推進しています。経営目標を判断するための客観的な指標としてROE(株主資本当期純利益率)を設定し、安定的な収益基盤の維持と企業価値の向上を目指しています。

* ROE:10%以上

(4) 成長戦略と重点施策


金融関連の法改正や規制緩和に対応し、新たな金融サービスの企画開発や既存サービスの改良に努めています。また、リユース事業では積極的な新規出店を行って個人からの買取チャネルを拡大し、小売販売を強化する方針です。投資業務では、成長著しいアジア新興国への投資やM&A仲介業務の積極展開を図ります。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


人的資本の強化が持続可能な企業価値向上につながると認識し、多様性を考慮した人材育成を推進しています。国籍、人種、性別、年齢等の制約を設けない採用方針を厳守し、在外子会社でも現地人材を積極的に登用しています。また、フレックスタイム制や在宅勤務などを導入し、柔軟な働き方を支援しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 49.0歳 12.2年 7,674,061円

※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 11.3%
男性育児休業取得率 77.0%
男女賃金差異(全労働者) 75.6%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 83.4%
男女賃金差異(パート・有期労働者) 66.4%


また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、国内子会社における全従業員に対する女性従業員割合(40.0%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 利益構造のハーン銀行への依存リスク


グループの利益の多くを持分法適用関連会社であるモンゴルのハーン銀行に依存しています。同国の法規制変更や経済情勢の悪化により同銀行の業績が低迷した場合、グループ全体の業績に重大な影響を及ぼす可能性があります。

(2) リユース事業における外部環境変化のリスク


リユース事業は、景気動向や競合の増加、流行の変化による商品の陳腐化、貴金属や為替相場の変動により、買取価格や販売価格が影響を受けます。安定的な商品の確保が困難となった場合、収益性が低下するリスクがあります。

(3) ロシア・ウクライナ情勢等による地政学的リスク


ロシア極東地域を拠点とするソリッド銀行や、キルギスコメルツ銀行などは、ロシアへの経済制裁に伴う金利上昇や経済悪化の影響を受ける可能性があります。国際情勢の緊迫化が長期化した場合、金融事業の業績に波及する恐れがあります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。