丸八証券 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

丸八証券 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証スタンダード上場の丸八証券は、東海東京フィナンシャル・ホールディングス傘下の証券会社です。愛知県を地盤に、対面営業を中心とした投資・金融サービス業を展開しています。2025年3月期は、株式委託手数料やトレーディング収益の減少等が響き、営業収益は31億円で前期比減収、当期純利益も3.9億円と減益になりました。


※本記事は、丸八証券株式会社 の有価証券報告書(第83期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月20日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 丸八証券ってどんな会社?


投資・金融サービス業を中核に、愛知県を主要地盤として地域密着型の対面営業を展開する老舗証券会社です。

(1) 会社概要


同社は1944年に設立され、1948年に証券業者として登録を行いました。2013年には東京証券取引所JASDAQ(スタンダード)市場へ上場を果たしています。2021年には公開買付け等を経て東海東京フィナンシャル・ホールディングスの連結子会社となり、強固な経営基盤のもとで事業を展開しています。

2025年3月31日時点の従業員数は単体で139名です。筆頭株主は親会社の東海東京フィナンシャル・ホールディングスで、第2位は個人株主の中村吉孝氏、第3位は大手証券会社の野村證券です。

氏名 持株比率
東海東京フィナンシャル・ホールディングス 43.63%
中村吉孝 10.05%
野村證券 5.52%

(2) 経営陣


同社の役員は男性7名、女性0名の計7名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長には鈴木卓也氏が就任しています。社外取締役比率は57.1%です。

氏名 役職 主な経歴
原田 学 代表取締役会長 東海東京証券執行役員等を経て、2023年6月より現職。
鈴木 卓也 代表取締役社長 東海東京証券専務執行役員等を経て、2021年6月より現職。
鈴木 正己 取締役(監査等委員) 東海東京証券執行役員等を経て、2024年6月より現職。


社外取締役は、中村 昭彦(元三菱UFJ銀行副頭取)、山田 尚武(弁護士法人しょうぶ法律事務所代表社員)、丸山 弘昭(株式会社アタックス代表取締役)、広井 幹康(元東栄社長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「投資・金融サービス業」および「その他」事業を展開しています。

投資・金融サービス事業


株式や債券、投資信託などの有価証券の売買、媒介、取次ぎ、引受けなどを個人・法人顧客向けに提供しています。愛知県内に店舗網を持ち、地域密着型の対面コンサルティング営業を強みとしています。

主な収益源は、顧客からの株式委託手数料や投資信託の販売手数料、信託報酬などです。また、自己資金による有価証券のトレーディング業務や、預金・貸付金等による金融収益も計上しています。運営は丸八証券が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高(営業収益)は30億円前後で推移しています。2024年3月期は好調な市況を背景に増収増益となりましたが、2025年3月期は減収減益となりました。利益面では、市況変動の影響を受けつつも経常黒字を維持しており、安定した収益基盤を有しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
営業収益 30.4億円 28.6億円 25.0億円 32.6億円 30.8億円
経常利益 6.1億円 4.5億円 1.3億円 7.7億円 6.0億円
利益率 20.0% 15.8% 5.2% 23.5% 19.4%
当期純利益(親会社所有者帰属) 4.1億円 2.9億円 0.6億円 5.2億円 3.9億円

(2) 損益計算書


2024年3月期から2025年3月期にかけて、営業収益および純営業収益が減少しました。これは主に株式委託手数料やトレーディング損益の減少によるものです。一方、販売費及び一般管理費は微増しており、結果として営業利益率は低下しました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 33億円 31億円
売上総利益 33億円 31億円
売上総利益率(%) 100.0% 100.0%
営業利益 7億円 4億円
営業利益率(%) 20.3% 14.3%


販売費及び一般管理費のうち、人件費が14億円(構成比54%)、事務費が5億円(同20%)を占めています。

(3) セグメント収益


同社は単一セグメントですが、2025年3月期は株式委託手数料やトレーディング収益の減少により、全体の売上高(営業収益)が前期比で減少しました。投資信託の販売手数料や信託報酬などのストック収入は増加傾向にあります。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期)
投資・金融サービス業 33億円 31億円
全社(合計) 33億円 31億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標

丸八証券のキャッシュ・フローの状況についてご説明します。

当事業年度は、営業活動によるキャッシュ・フローが前期の収入から支出に転じました。これは、主に株式委託手数料の減少などが影響したためです。投資活動によるキャッシュ・フローは、引き続き支出となりました。財務活動によるキャッシュ・フローも支出となり、前期よりも支出額が増加しました。これらの結果、現金及び現金同等物の残高は減少しました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 16.3億円 -0.4億円
投資CF -5.3億円 -5.0億円
財務CF -1.2億円 -3.2億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「未来の安心のために」を基本理念として掲げています。お客様へは堅実な資産形成と喜びを、株主へは永続的な成長と喜びを、従業員へは考え働く幸福と喜びを、そして社会へは地元愛知への貢献と喜びを提供することを目指しています。

(2) 企業文化


透明性の高い明確なコーポレート・ガバナンスの確立、お客様を第一に考えた収益の最大化、業務水準の均一化による付加価値向上の確立を経営の基本方針としています。また、地元愛知への貢献を重視し、地域密着と地域貢献を掲げた企業活動を行っています。

(3) 経営計画・目標


2022年4月から2025年3月までの中期経営計画を終え、その検証を踏まえて次期中期経営計画を策定する方針です。前計画では、預り資産や投資信託積立金額などの数値目標を掲げ、資産形成層の拡大に取り組んできました。

(4) 成長戦略と重点施策


地域密着の店舗展開と対面営業を軸に、営業基盤の拡大を図っています。デジタルツールを活用した提案力の向上や利便性の改善による推進体制の強化、および教育研修の充実や業務効率化による収益構造の安定化を重点施策としています。また、新NISA普及を背景とした資産形成支援や、相続・贈与等の課題解決にも注力しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


お客様の最善の利益を追求するため、人材を重要な資本と位置づけています。ファイナンシャル・プランナー等の資格取得促進や階層別研修、自主参加型研修などを通じて社員のスキルアップを支援するとともに、働きやすい労働環境の整備に努めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 44.0歳 15.2年 7,632,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 20.8%
男性育児休業取得率 -
男女賃金差異(全労働者) -
男女賃金差異(正規雇用) -
男女賃金差異(非正規雇用) -


※同社は公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。

また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、ファイナンシャル・プランナー資格取得率(76.9%)、相続診断士資格取得率(69.0%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 金融商品取引業の収益変動リスク


国内および海外の株式・債券相場の下落や低迷、為替相場の変動により、流通市場での売買高が減少した場合、同社の主要な収益源である受入手数料等が減少し、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。同社は多様な金融商品を取り扱い、相場環境に合わせた提案に努めています。

(2) トレーディング業務の影響


自己勘定で行う株券・債券等のトレーディング業務は、市況によって損益が大きく変動するため、業績や財政状態に影響を与える可能性があります。同社は運用限度額やロスカットルールを取締役会で定め、日次で損益やポジションをモニタリングするなどのリスク管理を徹底しています。

(3) 金融商品取引法等法令の遵守


金融商品取引業者は厳格な規制の下で営業を行っており、法令違反等が発生した場合には行政処分や訴訟のリスクがあります。同社はコンプライアンスプログラムの策定や内部管理態勢の整備、役職員研修などを通じて、法令遵守と適切な業務運営に努めています。

(4) システム関連のリスク


業務に使用する情報システムや回線に障害、外部からの不正アクセス、災害等によるトラブルが発生した場合、業務に支障をきたし業績に影響を及ぼす可能性があります。同社はハードウェアの強化や緊急時の業務執行体制の整備により、リスクの軽減を図っています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。