※本記事は、光世証券株式会社 の有価証券報告書(第65期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 光世証券ってどんな会社?
1961年設立の独立系証券会社。対面営業による資産運用支援や独自のトレーディング、システム提供を行う。
■(1) 会社概要
1961年に設立され、1968年に証券免許を取得した独立系証券会社です。1990年に大阪証券取引所市場第二部へ上場し、翌1991年には東京証券取引所市場第一部へ上場しました。2014年には証券基幹系システムをクラウド環境で提供するサービスを開始しています。
同社(単体)の従業員数は39名です。筆頭株主は創業家資産管理会社とみられる巽也蔵で、第2位は巽事務所、第3位は哲学の道文庫となっており、安定的な株主構成を有しています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 巽也蔵 | 19.27% |
| 巽事務所 | 13.03% |
| 哲学の道文庫 | 9.65% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性6名、女性0名の計6名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は巽大介氏が務めています。社外取締役比率は50.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 巽大介 | 取締役社長(代表取締役) | 1997年同社入社。1998年取締役社長室長委嘱を経て、2000年より現職。 |
| 石川卓也 | 取締役システムソリューショングループ兼ネット事業統括兼管理部門管掌 | 1985年同社入社。2016年常務執行役員などを経て、2023年より現職。 |
| 森正行 | 取締役監査等委員 | 1993年同社入社。2012年監査役、2019年執行役員を経て、2020年より現職。 |
社外取締役は、山本將晴(山本会計事務所所長)、児玉憲夫(新世綜合法律事務所所長)、村形聡(税理士法人ゼニックス・コンサルティングCEO)です。
2. 事業内容
同社は、「投資・金融サービス業」の単一セグメントで事業を展開しています。
(1) 金融商品取引事業
株式、債券、投資信託などの有価証券の売買、媒介、取次ぎ、引受、募集・売出しなどを手掛けています。個人投資家を中心とした顧客に対し、対面営業による資産運用コンサルティングや、インターネット取引を通じたサービスを提供しています。
収益は、顧客からの委託手数料(株式委託手数料等)や、募集・売出しの取扱手数料などが主な柱です。また、同社自身の計算による有価証券の売買(ディーリング)や、信用取引等に伴う金融収益も重要な収益源となっています。運営は主に光世証券が行っています。
(2) システムソリューション事業
証券会社向けに、クラウド環境で利用可能な自社開発の証券基幹系システムを提供しています。株式や投資信託だけでなく、デリバティブ商品にも対応したシステムを特徴としています。
収益は、システム導入企業からの利用料や、電子計算機のプログラム作成・販売、計算受託業務などから得ています。この事業により、証券業務のノウハウをシステム外販につなげ、収益の多角化を図っています。運営は光世証券が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、市況の影響を大きく受け、損益の変動が激しい傾向にあります。2021年3月期や2024年3月期は黒字を確保しましたが、2022年3月期、2023年3月期、そして直近の2025年3月期は経常赤字となっています。特に直近は営業収益が大きく減少し、厳しい決算となりました。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 営業収益 | 11.1億円 | 4.5億円 | 4.4億円 | 15.0億円 | 5.6億円 |
| 経常利益 | 1.8億円 | -2.1億円 | -3.9億円 | 4.4億円 | -4.6億円 |
| 利益率(%) | 15.8% | - | - | 29.4% | - |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 1.6億円 | -2.1億円 | -4.0億円 | 3.8億円 | -4.7億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間を比較すると、営業収益は前期の15.0億円から当期は5.6億円へと大幅に減少しました。これに伴い、純営業収益(売上総利益相当)も大きく落ち込み、営業損益は前期の黒字から5.2億円の赤字に転落しました。トレーディング損益の減少などが響いています。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 15.0億円 | 5.6億円 |
| 売上総利益 | 14.5億円 | 5.4億円 |
| 売上総利益率(%) | 96.5% | 96.5% |
| 営業利益 | 4.4億円 | -5.2億円 |
| 営業利益率(%) | 29.0% | - |
販売費及び一般管理費のうち、給与手当などの人件費が5.0億円(構成比47%)、不動産関係費が1.9億円(同18%)を占めています。固定費の割合が高く、収益の減少が直接利益を圧迫する構造となっています。
■(3) セグメント収益
同社は投資・金融サービス業の単一セグメントですが、前期に比べて全社の営業収益は大幅に減少しました。受入手数料は減少したほか、トレーディング損益が前期の10億円から当期は1.7億円へと大きく縮小したことが主な減収要因です。結果としてセグメント利益(営業利益)も赤字となりました。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) | 利益(2024年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 投資・金融サービス業 | 15.0億円 | 5.6億円 | 4.4億円 | -5.2億円 | - |
| 連結(合計) | 15.0億円 | 5.6億円 | 4.4億円 | -5.2億円 | - |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
光世証券は、トレーディング業務における商品有価証券等の減少が、営業活動によるキャッシュ・フローの減少に影響しました。投資活動によるキャッシュ・フローは、有価証券の評価替え等により減少しました。財務活動によるキャッシュ・フローは、資金調達の変動等により減少しました。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 8.3億円 | -16.9億円 |
| 投資CF | -4.2億円 | -4.9億円 |
| 財務CF | -0.5億円 | -1.6億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
「お客様に満足いただける金融サービス」の提供と、金融市場の担い手として市場への貢献を目指しています。多くの投資家に均一化されたサービスではなく、一人ひとりのニーズに合わせた「オーダーメイド型」サポートを心掛け、投資家の最適な選択を支援することを本来の使命としています。
■(2) 企業文化
創業以来一貫して堅持してきた自主独立路線と開かれた社風を特徴としています。その中で社員一人ひとりの創造性を高めることが企業価値の最大化につながると考えており、旧弊に留まらず常により良きものを求める「進取の精神」を育むことを重視しています。
■(3) 経営計画・目標
具体的な数値目標としての売上高や利益計画は公表していませんが、財務健全性の指標である「自己資本規制比率」を最重要指標と位置付けています。コンサルティングとトレーディングのバランスの取れた事業拡充やコスト構造の見直しを通じ、同指標1,000%の維持を目標としています。
■(4) 成長戦略と重点施策
コンサルティング部門では、専門知識を活かしたウェルスマネジメントを進め、「安心・信頼・満足できる証券会社」としての地位を強化します。トレーディング部門では、技術とリスク管理能力の向上を図り、収益獲得を目指します。また、システム部門ではクラウド型自社システムの提供を通じ、デリバティブ取引の大衆化と市場発展に貢献する方針です。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
組織のダイバーシティを高めることを経営の重要課題とし、性別や年齢に関係なく多様な人材が活躍できる環境整備を進めています。職業能力の向上に加え、「進取の精神」を育む人材育成に注力しており、在宅勤務や柔軟な働き方の推進を通じて、従業員の働き方改革を後押ししています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 44.5歳 | 23.7年 | 7,770,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、平均勤続年数(23.6年)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 金融商品取引業としての収益変動
主たる収益である委託手数料は、証券市場の売買代金や経済環境により大きく変動する性質があります。また、トレーディング収益についても、相場水準やボラティリティの予期せぬ変動により損失を被る可能性があり、業績への影響が避けられません。
■(2) 貸倒れリスク
信用取引や先物・オプション取引等において、取引先の信用不安や株価急落、債務不履行が発生した場合、追加的な損失や引当計上が必要となるリスクがあります。これにより、同社の業績および財務状況が悪化する可能性があります。
■(3) システムおよびオペレーショナル・リスク
業務の根幹となるITシステムにおいて、不具合やサイバー攻撃、災害等による障害が発生した場合、業務や財務に悪影響を及ぼす可能性があります。また、業務処理のミスや不適切な行動といったオペレーショナル・リスクも、賠償請求や信用低下を招く要因となります。



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