※本記事は、マネックスグループの有価証券報告書(第22期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は IFRS です。
1. マネックスグループってどんな会社?
オンライン証券や暗号資産取引、資産運用サービスをグローバルに展開する総合金融グループです。
■(1) 会社概要
2004年に証券会社2社の共同持株会社として設立され、同年に上場しました。2008年に現社名へ変更し、2011年に米国TradeStation Group、2018年にコインチェックを完全子会社化して事業を拡大。2024年にはNTTドコモとの資本業務提携や、コインチェックグループの米国上場を果たしています。
従業員数は連結で1,122名、単体で57名体制です。大株主の状況は、筆頭株主が事業会社のしずおかフィナンシャルグループで、第2位は資産管理業務を行う信託銀行です。第3位には創業者の松本大氏の資産管理会社である松本が名を連ねています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| しずおかフィナンシャルグループ | 20.32% |
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 11.44% |
| 松本 | 8.78% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性12名、女性5名の計17名で構成され、女性役員比率は29.4%です。代表執行役社長は清明祐子氏が務めており、取締役における社外取締役の比率は過半数を占めています。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 清明 祐子 | 取締役 代表執行役社長チーフ・エグゼクティブ・オフィサー | 2001年三和銀行入行。2009年同社入社、マネックス証券代表取締役社長等を経て、2023年同社取締役兼代表執行役社長より現職。 |
| 松本 大 | 取締役 取締役会議長 | 1987年ソロモン・ブラザーズ・アジア証券入社。1999年マネックス(旧マネックス証券)代表取締役等を歴任し、2025年同社取締役より現職。 |
| 大八木 崇史 | 取締役 執行役チーフ・フィナンシャル・オフィサー | 1991年日本銀行入行。1999年マネックス入社、TradeStation Group, Inc.取締役等を経て、2013年同社取締役兼執行役より現職。 |
| 山田 尚史 | 取締役 執行役 | 2012年AppReSearch代表取締役、PKSHA Technology取締役技術担当役員等を経て、2022年同社取締役兼執行役より現職。 |
社外取締役は、堂前宣夫(元ファーストリテイリング副社長・指名委員長)、槇原純(元ゴールドマン・サックスゼネラルパートナー・報酬委員長)、小泉正明(公認会計士・監査委員長)、羽生祥子(元日経xwoman総編集長)、鈴木蘭美(元モデルナ・ジャパン社長)、下川亮子(SOMPOホールディングス執行役員)、澤野隆之(元大和証券グループ本社常務執行役員)です。
2. 事業内容
同社グループは、「証券事業」「クリプトアセット事業」「アセットマネジメント・ウェルスマネジメント事業」「投資事業」および「その他」事業を展開しています。
■証券事業
主力の証券事業では、日本および米国の個人・法人顧客に対してオンラインによる金融商品取引サービスを提供しています。米国ではアクティブトレーダー層に向けた高機能取引ツールを展開しています。
収益源は、株式等の取引に伴う委託手数料や、顧客の預り金を運用して得られる金融収益です。運営は主にマネックス証券と、米国のTradeStation Securities, Inc.が行っています。
■クリプトアセット事業
暗号資産関連のサービスを展開しており、日本国内で暗号資産の販売所および取引所を運営するほか、カナダ等において機関投資家向けの暗号資産ETFの運用サービスを提供しています。
収益は、暗号資産の売買に伴うトレーディング損益やステーキング報酬、ファンドの運用残高に応じた手数料から得ています。運営はコインチェックや、3iQ Digital Holdings Inc.などが行っています。
■アセットマネジメント・ウェルスマネジメント事業
資産運用および富裕層向けプライベートバンキングサービスを提供しています。ロボアドバイザーサービスや国内外の公募・私募ファンドの運用、上場企業の資本効率改善を追求するアクティビストファンドを展開しています。
収益源は、ファンドの運用残高に応じた基本報酬や、基準価額が一定水準を上回った際に得られる成功報酬です。マネックス・アセットマネジメントやマネックスPBが運営を担っています。
■投資事業
国内外のベンチャー企業などへの投資活動を行っています。次世代の成長が期待されるスタートアップ企業などを対象に、有価証券を通じた資金供給や支援を実施しています。
収益源は、保有する未上場株式や有価証券の評価損益および売却によって得られる金融収益です。事業の運営は、マネックスベンチャーズや各種投資事業組合が主体となって行っています。
■その他
報告セグメントに含まれない事業として、グループ全体の経営管理や間接業務の提供などを行っています。
収益源はグループ内各社からの経営指導料や配当金などです。この事業は、持株会社であるマネックスグループ自身が運営を担っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の連結業績を見ると、売上収益は経済環境や相場変動の影響を受けつつも、直近2期間は連続して増加傾向にあります。税引前利益と当期利益は、成長領域への投資や一過性の費用の影響で赤字を計上した期もありましたが、直近の期では大幅に改善し、黒字転換を果たしています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上収益 | 888億円 | 558億円 | 657億円 | 738億円 | 836億円 |
| 税引前利益 | 208億円 | 10億円 | 253億円 | -46億円 | 158億円 |
| 利益率(%) | 23.4% | 1.7% | 38.5% | -6.3% | 18.8% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 130億円 | 34億円 | 313億円 | -51億円 | 109億円 |
■(2) 損益計算書
売上収益は前期から増加し、堅調な推移を見せています。収益構造の多様化に伴い、アセットマネジメント事業などの成長が全体の押し上げに寄与しています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 738億円 | 836億円 |
販売費及び一般管理費のうち、従業員給料等が9億円(構成比20%)、器具備品費が6億円(同14%)、不動産費が6億円(同13%)を占めています。
■(3) セグメント収益
証券事業は米国法人の取引量増加などにより増収となりました。クリプトアセット事業も収益源の多角化が進み堅調に推移しています。また、アセットマネジメント・ウェルスマネジメント事業は運用パフォーマンスの好調に伴う成功報酬の増加により、大幅な増収を記録しました。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) |
|---|---|---|
| 証券事業 | 519億円 | 545億円 |
| クリプトアセット事業 | 160億円 | 176億円 |
| アセットマネジメント・ウェルスマネジメント事業 | 35億円 | 77億円 |
| 投資事業 | -5億円 | 2億円 |
| その他 | 59億円 | 111億円 |
| 調整額 | -30億円 | -75億円 |
| 連結(合計) | 738億円 | 836億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業CFがプラス、投資CFと財務CFがマイナスとなっており、本業で生み出した資金を将来の成長に向けた投資や有利子負債等の返済に充てる、健全な資金サイクルの状態(健全型)にあります。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 133億円 | 178億円 |
| 投資CF | -322億円 | -146億円 |
| 財務CF | -252億円 | -50億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は8.7%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は74.6%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は、「MONEXとはMONEYのYを一歩進め、一足先の未来における人の活動を表わしています」とし、常に変化し続ける未来に向けて、最先端のIT技術とグローバルで普遍的な価値観、プロフェッショナリズムを備えた経営を行っています。新しい時代におけるお金との付き合い方をデザインし、個人の自己実現を可能にしてその生涯バランスシートを最良化することを企業理念として掲げています。
■(2) 企業文化
同社は、企業理念を実現するための「行動指針」として3つの価値観を重視しています。1つ目は「自主性をもって事業を創造する」ことで、プロフェッショナル意識を持ち自らの価値を高める姿勢です。2つ目は「公正であることを尊重する」ことで、多様な背景を尊重し透明性のあるチームを構築します。3つ目は「企業理念の実現に貢献する」ことで、ステークホルダーの価値創造に向けて短期的・長期的な目標に邁進しています。
■(3) 経営計画・目標
同社は、事業ポートフォリオの最適化と資本コストおよび株価を意識した経営を推進しており、資本効率に関する目標としてROE(自己資本利益率)のターゲット水準を設定しています。
・ROE 15%
■(4) 成長戦略と重点施策
同社は、ROE目標の達成と企業価値向上に向けて、グループ各社の成長戦略を促進しつつ成長領域への投資を図っています。また、事業ポートフォリオの最適化を進め、グループ会社間のシナジーを追求することで新たな価値提供を目指します。加えて、金融とテクノロジーの融合に対応するため、多様な専門人材の獲得やAI・デジタル領域の専門性向上を通じた人的資本経営の高度化を重点施策として推進しています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は、「人材」を最も重要な経営資源と位置付け、人的資本の強化を重要な成長戦略として推進しています。専門性に加え、変化への適応力やテクノロジー活用力を持つ自律型人材を育成するため、グループ間の越境経験やアクティブラーニングの機会を提供しています。また、多様な働き方を受容し、挑戦やプロセスを公正に評価することで、心理的安全性の高い組織と自律的な行動を促す企業文化の醸成を図っています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 43.5歳 | 4.7年 | 9,426,622円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 16.7% |
| 男性育児休業取得率 | 200.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 80.4% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | - |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | - |
※男女賃金差異の正規雇用および非正規雇用の数値については、有報に記載がありません。
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、執行役員・専門役員に占める女性役員の割合(17.6%)、中途採用比率(100.0%)、組織エンゲージメントスコア(68)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 成長領域への投資とビジネスリスク
同社は、アセットマネジメント事業やテクノロジー領域への成長投資を進めていますが、投資の失敗やグループ内のシナジー発現が遅れた場合、利益成長が図れず目標とするROEを達成できない可能性があります。また、証券事業での顧客獲得の停滞や、クリプトアセット事業における激しい競争環境によるシェア低下などにより、収益基盤が拡大しないリスクがあります。
■(2) サイバー攻撃等の情報セキュリティリスク
オンライン金融事業や暗号資産交換業を展開する同社にとって、基幹システムの不具合や通信回線の障害は事業運営に重大な支障を及ぼします。世界的に巧妙化するサイバー攻撃により、個人情報や機密情報が漏洩した場合や、預り暗号資産が不正アクセスにより窃取された場合、企業の信用低下や損害賠償請求の発生につながり、業績に深刻な影響を与えるリスクがあります。
■(3) 顧客取引および金融機関等に関わる信用リスク
証券事業等において、信用取引やFX取引を通じて顧客に信用供与を行っており、急激な市場環境の変動により顧客から立替金を十分に回収できないリスクがあります。また、カバー取引や貸株取引を行う取引金融機関や暗号資産交換業者に対する信用リスクも存在し、相手方の信用不安等が生じた場合には、同社の財政状態および業績に悪影響を及ぼす可能性があります。



上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。