マネックスグループ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

マネックスグループ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証プライム上場の金融持株会社。日米でのオンライン証券事業、暗号資産交換業、投資事業などを展開しています。当期は暗号資産市場の活況や米国事業の好調により増収となりましたが、子会社の米国NASDAQ上場に伴う多額の一過性費用を計上したことなどにより、最終損益は赤字となりました。


※本記事は、株式会社マネックスグループ の有価証券報告書(第21期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月27日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は IFRS です。

1. マネックスグループってどんな会社?


日米の証券事業と暗号資産(クリプトアセット)事業を柱とするグローバルなオンライン金融グループです。

(1) 会社概要


2004年にマネックス・ビーンズ・ホールディングスとして設立され、翌2005年に東証一部へ上場しました。2011年に米国のTradeStation Groupを買収して米国進出を果たし、2018年にはコインチェックを完全子会社化して暗号資産事業へ参入しました。2024年にはマネックス証券をNTTドコモとの資本業務提携により持分法適用関連会社へ移行し、同年12月にはCoincheck Group N.V.が米国NASDAQ市場へ上場を果たしています。

連結従業員数は1,078名、単体従業員数は57名です。筆頭株主は資本業務提携先であるしずおかフィナンシャルグループで、第2位は資産管理業務を行う信託銀行、第3位は創業者である松本大氏の資産管理会社です。

氏名 持株比率
しずおかフィナンシャルグループ 20.21%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 11.47%
松本 8.73%

(2) 経営陣


同社の役員は男性12名、女性5名の計17名で構成され、女性役員比率は29.4%です。代表執行役社長は清明祐子氏が務めています。社外取締役は取締役11名中7名で、過半数を占めています。

氏名 役職 主な経歴
清明 祐子 取締役 代表執行役社長チーフ・エグゼクティブ・オフィサー 三和銀行(現三菱UFJ銀行)入行後、2009年に同社入社。マネックス証券社長等を経て、2023年6月より現職。
松本 大 取締役取締役会議長 ソロモン・ブラザーズ、ゴールドマン・サックスを経て、1999年にマネックス(旧マネックス証券)を創業。同社代表執行役社長、会長を経て、2023年6月より現職。
大八木 崇史 取締役 執行役チーフ・フィナンシャル・オフィサー 日本銀行、ゴールドマン・サックス証券等を経て、2011年同社取締役就任。2013年6月より現職。
山田 尚史 取締役 執行役 弁理士。PKSHA Technology取締役等を経て、2021年同社取締役就任。2022年4月より現職。


社外取締役は、槇原純(元ゴールドマン・サックス・アンド・カンパニー ゼネラルパートナー)、堂前宣夫(良品計画取締役会長)、小泉正明(公認会計士)、朱殷卿(コアバリューマネジメント代表)、羽生祥子(羽生プロ代表)、鈴木蘭美(ARC Therapies代表)、下川亮子(SOMPOホールディングス執行役員)です。

2. 事業内容


同社グループは、「日本」「米国」「クリプトアセット事業」「投資事業」の4つの報告セグメントで事業を展開しています。

(1) 日本


国内における事業投資や金融商品取引業、アセットマネジメント事業を展開しています。主な顧客は個人投資家や機関投資家です。当期よりマネックス証券は持分法適用会社となりましたが、引き続き重要なグループ会社として連携しています。

アセットマネジメント事業における運用報酬や、グループ会社からの経営指導料などが主な収益源です。運営はマネックスグループ、マネックス・アセットマネジメント、3iQ Digital Holdings Inc.などが行っています。

(2) 米国


米国において、アクティブトレーダーや機関投資家を主要顧客とした金融商品取引業を展開しています。高度な取引ツールや分析機能を提供し、先物やオプション取引などのニーズに対応しています。

顧客からの株式・先物取引等に係る委託手数料や、顧客預り金の運用による金利収益(受取利息)が主な収益源です。運営は主にTradeStation Securities, Inc.が行っています。

(3) クリプトアセット事業


日本国内において暗号資産交換業(販売所および取引所)を運営しています。ビットコインをはじめとする多種多様な暗号資産を取り扱い、個人および法人顧客に取引サービスを提供しています。

顧客との暗号資産取引におけるスプレッド(売買差額)や取引手数料が主な収益源です。また、NFTマーケットプレイスやIEO(Initial Exchange Offering)等のサービスも展開しています。運営はコインチェック、Coincheck Group N.V.が行っています。

(4) 投資事業


スタートアップ企業等への投資事業を行っています。金融分野に限らず、将来的な成長が見込まれる企業を発掘し、資金提供および経営支援を行っています。

投資先企業の株式売却益(キャピタルゲイン)や、保有期間中の評価益が主な収益源です。運営はマネックスベンチャーズや同社グループが組成した投資事業有限責任組合が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近の業績を見ると、売上収益は増加傾向にありますが、利益面では変動が見られます。特に当期は、売上収益が増加した一方で、最終損益は赤字に転落しました。これは主に、子会社の上場に伴う一時的な費用の計上が影響しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上収益 779億円 888億円 558億円 657億円 738億円
税引前利益 213億円 208億円 10億円 253億円 -46億円
利益率(%) 27.3% 23.4% 1.7% 38.5% -6.3%
当期利益(親会社所有者帰属) 144億円 130億円 34億円 313億円 -51億円

(2) 損益計算書


売上収益は前期比で増加しましたが、多額のその他費用が計上されたことにより営業段階から損失となっています。これはCoincheck GroupのDe-SPAC上場に関連する株式報酬費用などが要因です。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上収益 657億円 738億円
売上総利益 - -
売上総利益率(%) - -
営業利益 - -
営業利益率(%) - -


販売費及び一般管理費のうち、人件費が227億円(構成比37%)、取引関係費が188億円(同31%)を占めています。売上原価は24億円であり、費用の大半は販管費とその他の費用が占めています。

(3) セグメント収益


米国セグメントは金利収益の増加等により増収増益となり、過去最高の業績を記録しました。クリプトアセット事業は市場活況により大幅な増収となりましたが、上場関連の一過性費用によりセグメント損失となりました。日本セグメントは、主要子会社の異動に伴う持分法投資利益の計上などがありましたが、利益は減少しました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
日本 96億円 101億円 168億円 9億円 9.1%
米国 482億円 519億円 57億円 87億円 16.8%
クリプトアセット事業 94億円 135億円 28億円 -135億円 -100.5%
投資事業 3億円 -5億円 0.1億円 -7億円 -
連結(合計) 657億円 738億円 253億円 -46億円 -6.3%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


本業の儲けを示す営業CFはプラスを維持しており、投資CFと財務CFはマイナスとなっています。これは営業活動で得た資金を元に、投資や借入金の返済を行っている状態であり、資金繰りの観点では健全な状態と言えます。

なお、同社は金融・証券関連事業を主力としているため、営業CFのマイナスは主に金銭の信託の増加(事業拡大)によるものであり、直ちに業績悪化を意味するものではありません。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 81億円 133億円
投資CF -864億円 -322億円
財務CF -51億円 -252億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は-4.0%で市場平均を下回り、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は17.5%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「MONEXとはMONEYのYを一歩進め、一足先の未来における人の活動を表しています」とし、常に変化し続ける未来に向けて、最先端のIT技術とグローバルで普遍的な価値観を備え、新しい時代のお金との付き合い方をデザインすることを理念としています。個人の自己実現を可能にし、生涯バランスシートを最良化することを目指しています。

(2) 企業文化


同社は行動指針として「自主性をもって事業を創造する」「公正であることを尊重する」「企業理念の実現に貢献する」を掲げています。社員一人ひとりが未来のあるべき姿のために自ら考え、多様な背景や考え方を尊重し、透明性のある公正なチームを構築することで、企業価値の向上とより良い社会の実現を目指す文化があります。

(3) 経営計画・目標


同社は業績予想の開示を行っていませんが、資本効率に関する目標としてROE(自己資本利益率)を重視しており、15%を達成すべき水準として設定しています。経済環境や相場環境の影響を大きく受けるビジネスモデルであるため、短期的な収益計画よりも資本効率を重視した経営を行っています。

(4) 成長戦略と重点施策


ROE15%の達成に向け、成長領域への投資による利益成長とグループ内シナジーの追求を掲げています。米国事業ではアクティブトレーダー層への注力、国内証券事業ではNTTドコモ等との提携効果の最大化、暗号資産事業ではNASDAQ上場を機としたグローバル展開や法人需要の取り込み、アセットマネジメント事業の拡大を重点施策として推進します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は人材を最も重要な経営資源と捉え、高い志と情熱を持って変革を試みる社員のチャレンジ精神を鼓舞する環境を整備しています。また、多様な人材の多様な働き方を受け入れ、主体性ある取り組みが公正に評価される環境作りを推進しています。これらを通じて、新たな未来の価値を創造できる自律型人材の育成を目指しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 42.3歳 4.2年 9,348,601円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 -%
男性育児休業取得率 66.7%
男女賃金差異(全労働者) 79.5%


※女性管理職比率は提出会社において「-」と表示されています。

また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、全社員の女性比率(27.2%)、男性育児休業取得率(92.9%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) ビジネスリスク


成長領域への投資が進まない場合や投資の失敗、グループ間シナジーの発現が遅れた場合、利益成長が図れずROE目標を達成できない可能性があります。また、米国事業での顧客獲得や国内証券事業でのパートナー連携、暗号資産事業でのM&Aや収益源多様化が想定通り進まない場合、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(2) 信用リスク


信用取引や先物・オプション取引等により顧客に対して信用供与を行っているため、市況の急変等により顧客からの回収が困難になる可能性があります。また、カバー取引等における取引金融機関や暗号資産交換業者の信用状況が悪化した場合、同社の業績に影響を与える可能性があります。

(3) 情報セキュリティリスク


証券事業やクリプトアセット事業において基幹システムを自社保有しており、システム障害や通信回線の障害が発生した場合、事業運営に重大な支障が生じる恐れがあります。サイバー攻撃による情報漏洩や、暗号資産の窃取・不正送金が発生した場合には、信用低下や損害賠償請求により業績に影響を与える可能性があります。

(4) その他のリスク(不正取引等)


フィッシング詐欺等による不正取引が発生しており、巧妙化する手口により顧客が被害に遭うリスクが高まっています。多要素認証の必須化等の対策を講じていますが、こうした不正取引の発生は同社グループの信用低下や顧客離れを招き、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。