※本記事は、トレイダーズホールディングス株式会社 の有価証券報告書(第26期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月16日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. トレイダーズホールディングスってどんな会社?
主力のFX取引事業と、それを支えるシステム開発事業をグループ内で展開し、高い収益性と技術力を兼ね備える企業です。
■(1) 会社概要
1999年に設立され、同年FXサービスを開始しました。2005年に大阪証券取引所ヘラクレス市場(現・東証スタンダード)へ上場し、2006年に持株会社体制へ移行しました。2015年にシステム開発会社(現FleGrowth)を完全子会社化し、製販一体の体制を構築しています。2022年には暗号資産証拠金取引サービスも開始しました。
グループ全体の従業員数は278名、単体では18名です。大株主は、株式会社Kパワーが筆頭株主、有限会社ジェイアンドアールが第2位となっており、第3位には代表取締役会長兼社長の金丸貴行氏が名を連ねています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 株式会社Kパワー | 18.06% |
| 有限会社ジェイアンドアール | 12.31% |
| 金丸貴行 | 5.88% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性8名、女性0名の計8名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役会長兼社長は金丸貴行氏が務めています。社外取締役比率は50.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 金丸 貴行 | 代表取締役会長兼社長 | 1967年大和商品社長、1991年ダイワフューチャーズ(現ひまわり証券)取締役を経て、2009年同社代表取締役就任。2020年6月より現職。 |
| 金丸 武嗣 | 代表取締役副社長 | 2015年電通入社。2021年同社入社後、戦略事業推進部部長、グループ会社取締役を経て、2024年6月より現職。 |
| 新妻 正幸 | 常務取締役 | 1995年監査法人トーマツ入所。公認会計士・税理士。2001年トレイダーズ証券入社後、同社取締役、顧問を経て2022年6月より現職。 |
| 小俣 真一 | 取締役(常勤監査等委員) | 住友銀行(現三井住友銀行)、大和証券、SMBC日興証券等を経て、2022年同社常勤監査役。2024年6月より現職。 |
社外取締役は、市川正史(市川公認会計士事務所代表)、川畑大輔(日比谷見附法律事務所パートナー)、菅川洋(税理士法人TGN東京代表社員)、淺枝謙太(牛込橋法律事務所パートナー弁護士)です。
2. 事業内容
同社グループは、「金融商品取引事業」および「システム開発・システムコンサルティング事業」の2つの報告セグメントで事業を展開しています。
■金融商品取引事業
個人投資家向けに、外国為替証拠金取引(FX)サービス『みんなのFX』『LIGHT FX』や、システムトレード『みんなのシストレ』、暗号資産証拠金取引『みんなのコイン』などを提供しています。24時間取引可能な環境と、顧客ニーズに合わせた多様なサービスが特徴です。
収益は主に、顧客との取引から生じるトレーディング損益等です。運営はトレイダーズ証券が行っており、顧客の注文に対するカバー取引を適切に行うことで収益性を高めています。また、顧客資産は信託口座で全額保全されています。
■システム開発・システムコンサルティング事業
金融商品取引システムの開発および運用・保守を行っています。特にトレイダーズ証券向けのFX取引システムや暗号資産CFDアプリケーションの開発に注力しており、機能強化や安定稼働を支えています。中国(大連)やベトナム(ハノイ)にも開発拠点を有しています。
収益は、グループ会社であるトレイダーズ証券からのシステム開発・保守運用収入(レベニューシェア型を含む)や、外部顧客へのシステム販売・保守収入からなります。運営はFleGrowthが行っており、生成AIを活用したDX支援ツール等の非金融分野へのサービス展開も進めています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績は、売上収益が69億円から134億円へと倍増し、右肩上がりの成長を続けています。特に経常利益は23億円から67億円へと約3倍に拡大し、利益率も30%前後から50%近くへと大幅に向上しました。2025年3月期には過去最高の売上と利益を達成しています。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 営業収益 | 69億円 | 71億円 | 92億円 | 101億円 | 134億円 |
| 経常利益 | 23億円 | 24億円 | 37億円 | 44億円 | 67億円 |
| 利益率(%) | 33.1% | 33.3% | 40.6% | 43.4% | 49.5% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 18億円 | 22億円 | 32億円 | 33億円 | 45億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間を比較すると、営業収益は約33%増加し、営業利益も約50%増加するなど、収益性がさらに高まっています。営業利益率は40%台後半まで上昇しており、効率的な事業運営が行われています。コストコントロールと売上拡大の両立により、大幅な増益を実現しました。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業収益 | 101億円 | 134億円 |
| 純営業収益 | 99億円 | 133億円 |
| 純営業収益率(%) | 98.1% | 99.0% |
| 営業利益 | 44億円 | 66億円 |
| 営業利益率(%) | 43.7% | 49.4% |
販売費及び一般管理費のうち、人件費が30億円(構成比45%)、取引関係費(広告宣伝費等)が21億円(同31%)を占めています。売上原価は1億円未満であり、コストの大半は販管費となっています。
■(3) セグメント収益
主力の金融商品取引事業は、顧客預り資産の増加と相場変動を捉えたトレーディングにより大幅な増収増益となり、全社業績を牽引しました。システム開発・システムコンサルティング事業は、外部売上が減少したものの、グループ内部売上の増加により増収増益を確保しています。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) | 利益(2024年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 金融商品取引事業 | 99億円 | 133億円 | 39億円 | 61億円 | 45.9% |
| システム開発・システムコンサルティング事業 | 2億円 | 1億円 | 6億円 | 6億円 | 460.6% |
| 連結(合計) | 101億円 | 134億円 | 44億円 | 66億円 | 49.4% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
トレイダーズホールディングスでは、営業活動により資金が増加し、投資活動および財務活動により資金が減少しました。営業活動による資金は、税金等調整前当期純利益やトレーディング商品の増減により増加しましたが、FX取引にかかる短期差入保証金の増加により一部減少しました。投資活動では、無形固定資産や投資有価証券の取得により資金が減少しました。財務活動では、社債償還、配当金の支払い、自己株式の取得により資金が減少しました。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 52億円 | 65億円 |
| 投資CF | -3億円 | -6億円 |
| 財務CF | -13億円 | -26億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
「金融サービスを通じて、社会・経済の発展に貢献する」「金融サービスにおける革新者を目指す」「健全な事業活動を通じて、関わる全ての人を大切にする」の3つを基本理念としています。個人投資家向けに最先端の金融デリバティブ取引サービスを提供するリーディング・カンパニーを目指し、株主利益の最大化と企業価値の向上を図っています。
■(2) 企業文化
「Create the New Values ~新たな価値を創造し続ける~」をミッションとし、「関わるすべての“人”を大切にしながら、コンプライアンスとダイバーシティ(多様性)を尊重した経営で、変革にチャレンジし続ける」というバリューを掲げています。「金融をもっと面白く。」というタグラインのもと、投資への期待感を持てる環境づくりに挑戦しています。
■(3) 経営計画・目標
収益の源泉である顧客口座数と預り資産、および連結営業利益率を重要視しています。中期的な目標として、FX専業の中で業界トップ3のポジション確立を目指しています。また、資本効率の指標としてROE25%台の維持を目標としています。
* 預り資産:2027年3月期末までに約1,450億円
* ROE:25%台の維持
■(4) 成長戦略と重点施策
経営資源を金融デリバティブ事業とシステム事業に集中させます。金融事業ではデジタルマーケティングやブランディング広告による顧客獲得、独自システムの導入による処理能力向上を図ります。システム事業では国内外の開発拠点におけるエンジニア確保と育成に投資し、競争力の高いシステム開発を加速させます。
* 預り資産の純増強化
* 約定システムの自社独自システムへの載せ替え
* システム開発人員の拡充および国内拠点の育成
* 地政学的リスクへの対応(開発拠点の相互補完体制構築)
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「関わるすべての“人”を大切にし、コンプライアンスとダイバーシティを尊重し、変革にチャレンジし続ける」人材の育成を目指しています。専門性の高い優秀な人材の確保と定着のため、人事諸制度の改善や魅力的なオフィス環境への投資を行い、人的資本への重点投資を強化しています。ウェルビーイング経営にも取り組み、従業員の心身の健康維持を図っています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 43.4歳 | 6.3年 | 9,321,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 管理職に占める女性労働者の割合 | 14.3% |
| 男性労働者の育児休業取得率 | 100.0% |
| 労働者の男女の賃金の差異(全労働者) | 67.7% |
| 労働者の男女の賃金の差異(正規雇用) | 62.7% |
| 労働者の男女の賃金の差異(パート・有期) | 0.0% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性従業員比率(33.6%)、外国人労働者比率(8.4%)、月平均残業時間(21.0時間)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 業界競争の激化に伴う収益性低下のリスク
FX業界は成熟市場であり、スプレッド競争や広告費の増加により収益性が圧迫される傾向にあります。同社が競争条件で劣後した場合、預り資産の流出や取引量の減少といった負の連鎖が起こる可能性があります。これに対し、独自機能の開発や高取引量顧客への対応強化で差別化を図っています。
■(2) オンライン取引のシステム障害に伴うリスク
主力であるFX証拠金取引はインターネット経由で行われており、サイバー攻撃やシステム障害により取引執行が不可能になるリスクがあります。障害発生時には顧客対応に支障をきたし、損害賠償や信頼失墜につながる恐れがあります。これに対し、24時間監視体制やバックアップ体制の強化を進めています。
■(3) 地政学的リスク(海外拠点依存に関するリスク)
システム開発・保守を主に中国(大連)およびベトナム(ハノイ)の海外子会社で行っており、国際関係の緊張や政治情勢の変化により業務が制限されるリスクがあります。これに対し、国内開発体制の強化や3拠点間での業務分散、BCP(事業継続計画)の見直しを進めています。



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