トレイダーズホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

トレイダーズホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

トレイダーズホールディングスは東京証券取引所スタンダード市場に上場する企業です。主力である外国為替証拠金取引サービス「みんなのFX」等の金融商品取引事業と、これらを支えるシステム開発事業を展開しています。直近の業績トレンドは、為替相場のボラティリティ低下等により減収減益となっています。


※本記事は、トレイダーズホールディングス株式会社 の有価証券報告書(第27期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月16日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. トレイダーズホールディングスってどんな会社?


トレイダーズホールディングスは、FX等の金融デリバティブ取引とシステム開発を展開する企業です。

(1) 会社概要


1999年にインターネット等を通じた金融デリバティブ取引サービスを提供することを目的として設立され、同年外国為替証拠金取引サービスを開始しました。2005年に大阪証券取引所ヘラクレス市場(現・東京証券取引所スタンダード市場)へ上場を果たし、2006年に持株会社体制へ移行しています。2015年にはシステム開発会社を完全子会社化し、開発体制を強化しました。

現在の従業員数は連結で285名、単体で18名です。筆頭株主は事業会社であるKパワーで、第2位は有限会社ジェイアンドアールです。第3位は創業家等の個人である金丸多賀氏となっています。

氏名 持株比率
Kパワー 22.29%
有限会社ジェイアンドアール 12.73%
金丸 多賀 3.94%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性0名の計8名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役会長兼社長は金丸貴行氏です。社外取締役の比率は50.0%です。

氏名 役職 主な経歴
金丸 貴行 代表取締役会長兼社長 1967年大和商品代表取締役社長、1991年ダイワフューチャーズ取締役などを経て、2020年より現職。
金丸 武嗣 代表取締役副社長 2015年電通入社、2021年同社入社。戦略事業推進部部長、取締役などを経て、2024年より現職。
新妻 正幸 常務取締役 1995年監査法人トーマツ入所。2001年同社入社後、取締役、顧問などを経て、2022年より現職。
小俣 真一 取締役(常勤監査等委員) 1986年住友銀行入行。SMBC日興証券大阪キャピタル・マーケット部長、同社常勤監査役などを経て、2024年より現職。


社外取締役は、市川正史(市川公認会計士事務所代表)、川畑大輔(日比谷見附法律事務所パートナー)、菅川洋(税理士法人TGN東京代表社員)、淺枝謙太(牛込橋法律事務所パートナー弁護士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「金融商品取引事業」および「システム開発・システムコンサルティング事業」を展開しています。

金融商品取引事業


外国為替(FX)証拠金取引サービス「みんなのFX」「LIGHT FX」や、自動売買サービス「みんなのシストレ」、FXオプション取引、暗号資産証拠金取引などの金融デリバティブ商品を、一般の個人投資家向けにインターネットを通じて提供しています。

顧客との取引により生じたポジションをカバー先金融機関とカバー取引することで為替変動リスクを回避しつつ、顧客との取引におけるスプレッドやトレーディング損益等から収益を獲得しています。運営は主にトレイダーズ証券が行っています。

システム開発・システムコンサルティング事業


金融商品取引システム等の開発、運用・保守や、生成AIを用いた業務効率化ツールをはじめとしたDX化支援システムの提供、Web制作およびマーケティング支援、営業アウトソースなどのサービスを提供しています。

グループ内部向けとしては、トレイダーズ証券からのFX取引システムの利用料等を受け取り、外部向けにはシステム等の販売や保守運用収入から収益を獲得しています。運営はFleGrowthおよびその海外子会社等が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績推移を見ると、営業収益は2022年3月期から2025年3月期にかけて継続して拡大し、経常利益も大幅な増益を達成して利益率は約50%近くまで上昇しました。直近の2026年3月期は為替市場のボラティリティ低下等の影響を受け、営業収益、経常利益ともにわずかに減少しましたが、依然として高い水準を維持しています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
営業収益 71億円 92億円 101億円 134億円 132億円
経常利益 24億円 37億円 44億円 67億円 62億円
利益率(%) 33.3% 40.6% 43.4% 49.5% 46.6%
当期利益(親会社所有者帰属) 22億円 32億円 33億円 45億円 42億円

(2) 損益計算書


売上高にあたる営業収益は微減となったものの、依然として高水準を維持しています。営業利益についても前年を下回りましたが、利益率は40%台後半を保っており、安定した高い収益構造を確保していることがうかがえます。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業収益 134億円 132億円
営業利益 66億円 62億円
営業利益率(%) 49.4% 46.6%


販売費及び一般管理費のうち、人件費が28億円(構成比40%)、広告宣伝費等を含む取引関係費が22億円(同31%)を占めています。

(3) セグメント収益


セグメント別の業績を見ると、主力の金融商品取引事業は為替相場のボラティリティ低下による影響で減収減益となりました。一方、システム開発・システムコンサルティング事業は、外部向けのシステム販売等は減少したものの、グループ内向けの開発案件が増加したことにより増益を達成しています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期) 利益(2025年3月期) 利益(2026年3月期) 利益率
金融商品取引事業 133億円 131億円 61億円 60億円 45.6%
システム開発・システムコンサルティング事業 1億円 1億円 6億円 7億円 560.5%
連結(合計) 134億円 132億円 66億円 62億円 46.6%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


なお、同社は金融・証券関連事業を主力としているため、営業CFのマイナスは主に短期差入保証金の増加(事業拡大)によるものであり、直ちに業績悪化を意味するものではありません。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 65億円 -8億円
投資CF -6億円 -10億円
財務CF -26億円 -20億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は22.9%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は11.9%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は、「金融サービスを通じて、社会・経済の発展に貢献する」「金融サービスにおける革新者を目指す」「健全な事業活動を通じて、関わる全ての人を大切にする」の三つを基本理念として掲げています。また、ミッションに「Create the New Values 新たな価値を創造し続ける」、ビジョンに「お客様から最も信頼される“FinTech”グループとなり、だれもが未来に投資できる社会を実現させる」を制定し、企業価値の向上と株主利益の最大化を目指しています。

(2) 企業文化


同社グループはタグラインとして「“金融をもっと面白く。”」を掲げ、金融リテラシーの有無を問わず誰もが安心して投資を行いやすい環境づくりに挑戦しています。またバリューにおいて、「関わるすべての“人”を大切にしながら、コンプライアンスとダイバーシティ(多様性)を尊重した経営で、変革にチャレンジし続ける」行動様式を重視し、お客様目線に立った革新的なサービスの提供を推進しています。

(3) 経営計画・目標


同社グループは、収益の源泉である顧客口座数と預り資産、およびグループ全体の事業活動の成果を示す連結営業利益率を重要視しています。中期的な目標として、業界ポジションにおいてFX専業の中でトップ3に位置付けることを掲げており、預り資産の継続的な積み上げを図っています。また、資本効率の指標としてROEを重要な経営指標に位置づけています。

* 預り資産:2027年3月期末までに約1,450億円
* ROE:25%台の維持

(4) 成長戦略と重点施策


同社は、限られた経営資源を金融デリバティブ事業とシステム事業の拡大に集中し、本業の収益強化を目指します。主力商品ではスイスフランを軸とした独自通貨ペアの拡充などで競争優位性を高める一方、自社開発の強みを活かしシステムの機能強化や先端技術の導入による開発力の向上に注力します。さらに、デジタルマーケティングを通じたプロモーション展開や地政学的リスクに備えた拠点分散、人材基盤の強化などにより、持続的な成長を実現していく方針です。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社グループは、金融サービスとシステム開発の高度化を実現するため、専門性を有する優秀な人材の確保を最重要課題と位置づけています。コンプライアンスとダイバーシティを尊重し、変化に挑戦できる人材を育成するため、目標管理制度を通じた能力開発やリスキリングの機会を提供しています。また、従業員の心身の健康とワークライフバランスを守るウェルビーイング経営を推進し、多様な人材が長期的に活躍できる魅力的な職場環境の整備に取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 43.5歳 6.8年 10,060,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 0.0%
男性育児休業取得率 -
男女賃金差異(全労働者) 63.1%
男女賃金差異(正規雇用) 56.3%
男女賃金差異(パート・有期) 79.5%


※男性労働者の育児休業取得率は、当事業年度において育児休業の取得資格に該当する男性労働者がいないため「-」となっています。

また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性従業員比率(35.3%)、外国人労働者比率(6.5%)、月平均残業時間(21.4時間)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 業界競争の激化に伴う収益性低下のリスク


FX事業は多数の事業者が参入する成熟市場であり、スプレッドの縮小やスワップポイントの引き上げなど顧客獲得競争が激化しています。同社の商品条件が他社に劣後した場合や広告宣伝費が高騰した場合には、資金流出や収益性の圧迫が生じ、グループの業績に重大な影響を及ぼす可能性があります。

(2) 法令・規制遵守に関するリスク


金融商品取引業を営む同社グループは、厳格な規制の下で事業を行っています。法令や諸規則等に違反する行為や内部管理体制上の重大な不備が認められた場合には、業務改善命令や登録取消しなどの行政処分を受ける可能性があり、社会的信用や業績に重要な影響を及ぼすリスクがあります。

(3) 為替相場の変動等に伴うリスク


為替相場の急激な変動は顧客の損失を招き、預り資産の減少や取引控え、口座解約につながる恐れがあります。また、ボラティリティの高まりはシステム処理能力やオペレーション体制に負荷を与えるため、リスク管理体制の強化が求められており、収益性の低下等に影響を及ぼす可能性があります。

(4) 地政学的リスクへの対応


同社グループは、金融商品取引システムの開発・運用保守を中国やベトナムの海外子会社で行っています。米中関係の動向をはじめとする国際関係の緊張化や各国の法規制強化、政治情勢の急変等の地政学的リスクが顕在化した場合、システム開発や業務継続に大きな影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。