※本記事は、平和不動産株式会社 の有価証券報告書(第105期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 平和不動産ってどんな会社?
日本全国の証券取引所ビルのオーナーとして知られ、日本橋兜町・茅場町の再開発を推進する不動産会社です。
■(1) 会社概要
同社は1947年、日本証券取引所の解散に伴い、その施設を賃貸する目的で設立されました。1949年に東京・大阪・名古屋の各取引所に上場。1988年には東京証券取引所ビル本館、2004年には大阪証券取引所ビルを竣工させ、証券市場のインフラを支えてきました。2009年にはアセットマネジメント会社を連結子会社化し、事業領域を拡大しています。
現在の従業員数は連結259名、単体103名です。筆頭株主は同社と資本業務提携契約を締結している大成建設(20.12%)、第2位は信託業務を行う日本マスタートラスト信託銀行(12.39%)、第3位は個人投資家の野村 絢氏(7.29%)となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 大成建設 | 20.12% |
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 12.39% |
| 野村 絢 | 7.29% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性11名、女性1名の計12名で構成され、女性役員比率は8.3%です。代表執行役社長は土本 清幸氏が務めています。取締役9名のうち過半数の5名が社外取締役です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 土本 清幸 | 取締役 代表執行役社長 | 1982年東京証券取引所入所。同所取締役専務執行役員などを経て2017年平和不動産入社。2019年代表取締役社長、2022年6月より現職。 |
| 富田 朱彦 | 代表執行役専務 | 1984年大成建設入社。同社理事都市開発本部副本部長などを経て2024年平和不動産入社。執行役常務を経て2025年4月より現職。 |
| 中尾 友治 | 代表執行役専務 | 1987年東京証券取引所入所。日本駐車場開発取締役などを経て2011年平和不動産入社。執行役常務などを経て2025年4月より現職。 |
| 山田 和雄 | 取締役 | 1980年平和不動産入社。ビルディング事業部長、財務部長、常務執行役員、代表執行役専務などを歴任。2011年6月より現職。 |
| 青山 誉久 | 取締役 | 1993年平和不動産入社。財務部長、不動産投資事業部長、執行役などを経て、2025年4月より執行役常務として経営企画等を管掌。2022年6月より現職。 |
| 小林 大輔 | 取締役 | 1993年平和不動産入社。総務部兼IR室、名古屋支店長などを経て、2020年平和不動産アセットマネジメント取締役。2022年6月より現職。 |
社外取締役は、増井 喜一郎(元日本証券業協会副会長・指名委員長)、森口 隆宏(元JPモルガン証券会長・報酬委員長)、宇都宮 純子(弁護士)、山田 英司(元NTTデータ副社長)、山口 光信(公認会計士・監査委員長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「ビルディング事業」「アセットマネジメント事業」を展開しています。
■(1) ビルディング事業
証券取引所、オフィス、商業施設および住宅等の開発、賃貸、管理ならびに売却等を行っています。また、プロパティマネジメント業務も手掛けています。
賃貸収益や物件売却収入などが主な収益源です。運営は主に平和不動産が行い、株式会社東京証券会館、東京日比谷ホテル株式会社、東京日本橋兜町ホテル株式会社が各事業に携わっています。また、平和不動産プロパティマネジメント株式会社がプロパティマネジメントを行っています。
■(2) アセットマネジメント事業
平和不動産リート投資法人の資産運用業務や、不動産の仲介業務を行っています。
投資法人からのアセットマネジメントフィーや仲介手数料が収益源です。運営は、平和不動産および平和不動産アセットマネジメント株式会社が資産運用等を担い、ハウジングサービス株式会社が不動産仲介等を行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は2022年3月期をピークに変動していますが、利益面では安定して高い利益率を維持しています。特に経常利益率は20%を超える水準で推移しており、収益性の高さがうかがえます。当期は減収となったものの、当期純利益は過去最高水準となっています。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 350億円 | 578億円 | 445億円 | 444億円 | 421億円 |
| 経常利益 | 102億円 | 116億円 | 96億円 | 115億円 | 117億円 |
| 利益率(%) | 29.2% | 20.0% | 21.7% | 25.8% | 27.7% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 71億円 | 87億円 | 91億円 | 85億円 | 96億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は減少しましたが、売上総利益および営業利益は増加しており、利益率が改善しています。売上原価の減少が寄与しており、効率的な事業運営が行われていることが分かります。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 444億円 | 421億円 |
| 売上総利益 | 186億円 | 190億円 |
| 売上総利益率(%) | 41.8% | 45.3% |
| 営業利益 | 130億円 | 132億円 |
| 営業利益率(%) | 29.3% | 31.4% |
販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が16億円(構成比28%)、支払手数料が9億円(同16%)を占めています。
■(3) セグメント収益
ビルディング事業は販売用不動産の売却減少により減収となりましたが、賃貸収益の増加等により営業利益は微増となりました。アセットマネジメント事業はマネジメントフィーの増加により増収増益となり、高い利益率を維持しています。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) | 利益(2024年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| ビルディング事業 | 405億円 | 380億円 | 126億円 | 130億円 | 34.2% |
| アセットマネジメント事業 | 39億円 | 41億円 | 22億円 | 24億円 | 57.7% |
| 調整額 | - | - | -18億円 | -22億円 | - |
| 連結(合計) | 444億円 | 421億円 | 130億円 | 132億円 | 31.4% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
平和不動産は、営業活動で資金を創出し、投資活動で事業基盤を強化し、財務活動で資金調達と株主還元を行っています。
当期は、税金等調整前当期純利益や棚卸資産の減少により、営業活動で資金が増加しました。一方、有形固定資産や投資有価証券の取得による支出が大きかったため、投資活動では資金が減少しました。財務活動では、長期借入による収入があったものの、長期借入金の返済、自己株式の取得、配当金の支払い等により、資金は増加しました。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 196億円 | 160億円 |
| 投資CF | -194億円 | -248億円 |
| 財務CF | 3億円 | 77億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「人々を惹きつける場づくりで、未来に豊かさをもたらす」というグループパーパスを制定しています。このパーパスの下、社会価値の向上と企業価値の向上に努めています。
■(2) 企業文化
同社は長期ビジョンのスローガンとして、「場づくりの連続で、非連続な成長を遂げる“Bazukuri Company”へ」を掲げています。これは、単なる不動産開発にとどまらず、人々を惹きつける場づくりを通じて社会課題の解決に取り組み、サステナブルな社会の実現に貢献するという価値観を表しています。
■(3) 経営計画・目標
中期経営計画「WAY 2040 Stage 1」(2024年度〜2026年度)において、以下の数値目標を掲げています。
* 2026年度 連結営業利益:140億円以上
* 2026年度 EPS(1株当たり当期純利益):135円以上(株式分割考慮後)
* ROE:7%以上(2024年度〜2026年度)
■(4) 成長戦略と重点施策
「再開発事業の拡大」「利益成長と資本効率向上の両立」「社会価値の向上」「経営基盤の強化」に取り組んでいます。特に、日本橋兜町・茅場町ブランドの確立や、札幌での大規模再開発プロジェクトの推進に注力しています。また、ホテル事業の強化やM&Aの活用による新規事業分野への進出も模索しています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は「WAY 2040」の実現に向け、「多様な人材の獲得と大切にする価値観を備えた人材の育成により、人的資本経営を推進します」という基本方針を掲げています。キャリア開発やDX人材の育成による「人づくり」、多様性を推進する「組織づくり」、健康経営等の「働きやすい環境づくり」に取り組んでいます。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 42.5歳 | 14.6年 | 11,033,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 15.2% |
| 男性育児休業取得率 | 100.0% |
※男女賃金差異については、同社は女性活躍推進法の規定に基づき公表しないため、有報には本項の記載がありません。
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、新卒女性採用比率(50.0%)、キャリア採用者管理職比率(45.5%)、有給休暇取得率(81.4%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) ビルディング事業の市況変動リスク
同社グループの主力であるオフィスビル賃貸事業は、経済情勢や需給バランス等の要因により、賃料水準や稼働率が変動する可能性があります。特に東京都心3区や地方主要都市に展開していますが、想定以上の景気変動等があった場合、賃貸収益に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 不動産開発プロジェクトのリスク
日本橋兜町・茅場町や札幌再開発等のプロジェクトにおいて、資材費の高騰、工期の遅延、テナント誘致の遅れなどが生じる可能性があります。既存ビルの解体に伴う特別損失や、開発期間中の賃貸収益減少に加え、想定外の事象による費用の発生やプロジェクトの遅延が業績に影響を与える可能性があります。
■(3) 金利上昇と有利子負債のリスク
事業資金を主に有利子負債で調達しているため、金利上昇による金融費用の増加リスクがあります。同社は長期借入や固定金利化により影響を抑制していますが、想定以上の金融情勢の変化があった場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。また、保有不動産の価格下落による減損損失のリスクもあります。



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