※本記事は、株式会社コスモスイニシアの有価証券報告書(第57期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月17日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. コスモスイニシアってどんな会社?
同社は、分譲マンションの販売をはじめ、収益不動産の開発やホテル運営など多彩な事業を展開しています。
■(1) 会社概要
同社は1969年に設立され、1974年に不動産事業へ転換しました。1985年にリクルートコスモスへ商号変更し、2005年のMBOによる独立を経て、2006年に現在のコスモスイニシアとなりました。2013年には大和ハウス工業と資本業務提携を結び、2026年にはWOOCを子会社化しています。
現在の従業員数は連結で1,295名、単体で640名です。筆頭株主は資本業務提携先である大和ハウス工業で、第2位も同じく資本業務提携を結ぶ共立メンテナンスとなっています。両社と強固な関係を築きながら、グループ全体で不動産事業のシナジー創出を推進しています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 大和ハウス工業 | 38.20% |
| 共立メンテナンス | 25.02% |
| 三津久直 | 1.63% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性10名、女性2名の計12名で構成され、女性役員比率は16.7%です。代表取締役社長は髙智亮大朗氏が務めており、社外取締役比率は58.3%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 髙智亮大朗 | 代表取締役社長社長執行役員 | 1990年同社入社。西日本支社長やソリューション本部長などを経て、2020年10月より現職。 |
| 岡村さゆり | 取締役専務執行役員経営管理本部本部長 | 1987年同社入社。レジデンシャル本部長などを経て、2019年4月より現職。 |
| 森田和彦 | 取締役常務執行役員建築本部本部長 | 1989年同社入社。建築本部副本部長などを経て、2022年4月より現職。 |
| 玉嵜真也 | 取締役常務執行役員企画開発本部本部長 | 1991年同社入社。ソリューション事業部長などを経て、2022年4月より現職。 |
| 大戸聡 | 取締役(常勤監査等委員) | 1988年同社入社。経営管理本部経営企画部門長などを経て、2021年6月より現職。 |
社外取締役は、名島弘尚(大和ハウス工業上席執行役員)、富樫紀夫(大和ハウス工業東京本店長)、小池芳夫(共立メンテナンス執行役員)、島宏一(元リクルートメディアコミュニケーションズ社長)、江端亘(元三井物産企業投資部長)、白川純子(新霞が関綜合法律事務所パートナー)、小野英樹(小野英樹公認会計士事務所代表)です。
2. 事業内容
同社グループは、「レジデンシャル事業」「ソリューション事業」「宿泊事業」「工事事業」の4セグメントを中心に展開しています。
■レジデンシャル事業
新築マンション、アクティブシニア向け分譲マンション、新築一戸建、リノベーションマンションの開発・販売を行っています。また、買い替え等の中古物件需要に対するマンションの仲介や、豪州での分譲住宅開発も手掛けています。
不動産の売買代金や仲介手数料が主な収益源です。運営は主にコスモスイニシアが行うほか、不動産管理業務をコスモスライフサポートが、豪州での不動産関連事業をCosmos Australia Holdings Pty Ltdが担当しています。
■ソリューション事業
収益不動産や共同出資型不動産の開発・中古ストック再生・販売を行っています。また、マンションのサブリース、オフィスビルやシェアオフィス、シェアレジデンスの賃貸管理・運営、不動産に関するコンサルティングなどを提供しています。
不動産の売却代金や賃料収入、仲介・コンサルティング手数料が収益源です。運営は主にコスモスイニシアが担い、レンタルオフィス事業などをWOOCが、米国での収益不動産事業をCosmos USA Holdings Incが手掛けています。
■宿泊事業
アパートメントホテルを中心とした宿泊施設の開発・販売や、アウトドアリゾートの企画・運営を行っています。訪日外国人旅行者や家族・グループ向けの滞在ニーズに柔軟に応えられる施設とサービスを提供しています。
ホテル施設の売却代金や、宿泊客からの宿泊料金が主な収益源です。施設の開発・販売およびアウトドアリゾートの企画・運営は主にコスモスイニシアが行い、ホテルの施設運営はコスモスホテルマネジメントが担当しています。
■工事事業
オフィス移転・内装工事をはじめ、建築・リノベーション工事、マンションギャラリーの設営工事などを手掛けています。企業のファシリティマネジメントに対する多様なニーズに応える空間づくりを提供しています。
顧客からの工事請負代金が主な収益源です。この事業は、連結子会社であるGOOD PLACEが主体となって運営し、グループ内のマンションギャラリー設営など、内外部の工事案件を幅広く受注しています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5年間の業績は、売上高・利益ともに着実な右肩上がりの成長を続けています。特に直近の事業年度では、宿泊事業やソリューション事業の好調が牽引し、利益率も大きく改善するなど、収益力の向上が顕著に表れています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 1,073億円 | 1,234億円 | 1,246億円 | 1,295億円 | 1,493億円 |
| 経常利益 | 26億円 | 45億円 | 67億円 | 79億円 | 112億円 |
| 利益率(%) | 2.4% | 3.6% | 5.4% | 6.1% | 7.5% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 20億円 | 49億円 | 37億円 | 36億円 | 82億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間における収益構造を見ると、売上高の拡大に伴い売上総利益も順調に増加しています。利益率の改善も進んでおり、各種コストを適切にコントロールしながら本業の稼ぐ力を高めていることがわかります。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 1,295億円 | 1,493億円 |
| 売上総利益 | 273億円 | 319億円 |
| 売上総利益率(%) | 21.1% | 21.4% |
| 営業利益 | 95億円 | 125億円 |
| 営業利益率(%) | 7.3% | 8.4% |
販売費及び一般管理費のうち、人件費が73億円(構成比38%)、支払手数料が24億円(同12%)、租税公課が20億円(同11%)を占めています。
■(3) セグメント収益
セグメント別の状況では、ソリューション事業と宿泊事業が売上を大きく牽引しています。一方でレジデンシャル事業や工事事業は売上が微減したものの、グループ全体としては力強い収益基盤を確立しています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) |
|---|---|---|
| レジデンシャル事業 | 485億円 | 483億円 |
| ソリューション事業 | 479億円 | 636億円 |
| 宿泊事業 | 237億円 | 291億円 |
| 工事事業 | 94億円 | 83億円 |
| 連結(合計) | 1,295億円 | 1,493億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社は、営業で利益を出しながらも借入返済を優先し、投資も手元資金の範囲内で賄っている健全型のキャッシュ・フロー状況です。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | -35億円 | 39億円 |
| 投資CF | -10億円 | -2億円 |
| 財務CF | -20億円 | -65億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は15.5%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は30.6%で市場平均を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
Missionとして「『Next GOOD』お客さまへ。社会へ。一歩先の発想で、一歩先の価値を。」を掲げています。不動産の利活用に対するニーズが多様化する中、期待を超える安心や喜びをもたらす価値の創出に挑み続け、社会課題を解決することで、次の時代の「新しいあたりまえ」を創り出すことを目指しています。
■(2) 企業文化
同社は、Values(大事にしている価値観)として「お客さま未来起点」「挑戦をクセに」「ワクワク基準」「相互リスペクト」を定めています。これらの指針を基に、一人ひとりの想いや言葉にならない願いに寄り添い、社会の変化や多様なニーズに柔軟に応えるサービス提供と企業価値の向上を重視しています。
■(3) 経営計画・目標
「Vision 2035」および3か年の中期経営計画「中期経営計画2028」を策定し、事業ポートフォリオの再構築による収益安定化を推進しています。最終年度となる2029年3月期(2028年度)の目標として以下の数値を掲げています。
* 経常利益:140億円
* ROE:13%
■(4) 成長戦略と重点施策
既存の不動産販売事業の強化に加え、賃貸資産の取得やデジタル・新規領域への戦略投資を推進します。また、豪州や米国など進出済みの海外地域でのプロジェクト参画を通じて成長基盤を構築するとともに、人的資本やデジタル基盤の強化による価値創造基盤の進化と株主還元の拡充を図っていきます。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
企業成長の源泉を従業員であると捉え、「多様な人材が圧倒的に自分らしく輝き、互いに力を合わせ、躍動する企業」を目指しています。「働きがいと働きやすさの追求」「多様な人材の活躍」「シナジーが生まれる組織づくり」を重点テーマに据え、役割・成果・成長の観点を踏まえた人材育成と環境整備を進めています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 37.8歳 | 10.2年 | 9,342,813円 |
※平均年間給与は時間外手当その他の基準外賃金及び賞与を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 23.8% |
| 男性育児休業取得率 | 100.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 59.3% |
| 男女賃金差異(正規雇用労働者) | 62.6% |
| 男女賃金差異(パート・有期労働者) | 33.9% |
また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性管理職比率目標(30.0%)、育児休業復職率目標(100.0%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 不動産市況に関するリスク
景気や金利、地価や新規供給等の動向により市況が悪化し、不動産に対する需要が低下するリスクがあります。消費者の購買意欲減退や期待利回りの上昇により不動産価格が下落し、収益性の悪化や保有資産の減損が発生する可能性があるため、市場動向の定期的な観測や事業ポートフォリオの分散で対応しています。
■(2) 原価上昇・競合によるリスク
建築工事費やエネルギーコスト、人件費等の原価上昇による収益悪化や、用地取得における競争激化による仕入価格の上昇リスクがあります。これらに対し、コストコントロールの徹底や予備費の計上、顧客ニーズを先取りした商品開発による不動産価値の向上と差別化を図ることで影響の軽減に努めています。
■(3) 海外情勢・法制度の変更によるリスク
国外の政治的・社会的混乱による海外事業計画の変更や、訪日外国人旅行者数の減少によるホテル運営の業績悪化リスクがあります。また、不動産取得に関する税制変更等が購買意欲を減退させる懸念もあるため、政治情勢等の事前調査や影響が低い地域での展開、各種法令動向の早期分析により対応しています。
■(4) 人材に関するリスク
人口減少やニーズの多様化により、不動産開発等に必要な専門人材の確保が困難となり、企業競争力の低下や採用費用の増加を招くリスクがあります。これに対応するため、多様な働き方の整備や処遇向上を通じた人的資本の強化、勤怠管理システムによる適切な労働環境の維持・改善に努めています。



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