コスモスイニシア 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

コスモスイニシア 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証スタンダード上場。新築・リノベーションマンションの販売、収益不動産開発、アパートメントホテル運営等を展開。当期は主力のリノベーションマンション販売の堅調やインバウンド需要による宿泊事業の好調により、売上高1295億円、経常利益79億円と増収増益を達成しました。


※本記事は、株式会社コスモスイニシア の有価証券報告書(第56期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月20日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. コスモスイニシアってどんな会社?


リクルートグループ発祥の不動産デベロッパー。マンション開発・販売に加え、宿泊施設運営や工事事業も展開しています。

(1) 会社概要


1969年に株式会社日本リクルート映画社として設立され、1974年に不動産事業へ転換しました。2005年にMBOによりリクルートグループから独立し、翌2006年に現社名へ変更しました。2013年には大和ハウス工業と資本業務提携契約を締結し、同社グループの一員となりました。現在はマンション開発や宿泊事業などを多角的に展開しています。

連結従業員数は1169名、単体従業員数は638名です。筆頭株主は総合建設会社の大和ハウス工業で、第2位は寮・ホテル事業を展開する共立メンテナンスとなっており、これら事業会社との提携関係のもと経営が行われています。

氏名 持株比率
大和ハウス工業株式会社 38.21%
株式会社共立メンテナンス 25.02%
三津 久直 1.63%

(2) 経営陣


同社の役員は男性10名、女性2名の計12名で構成され、女性役員比率は16.7%です。代表取締役社長社長執行役員は髙智 亮大朗氏です。社外取締役比率は58.3%です。

氏名 役職 主な経歴
髙智 亮大朗 代表取締役社長社長執行役員 1990年同社入社。常務執行役員ソリューション本部長等を経て、2020年10月より現職。
高木 嘉幸 代表取締役会長 1983年日本リクルートセンター入社。同社社長等を歴任し、2020年10月より現職。
岡村 さゆり 取締役専務執行役員経営管理本部 本部長<デジタル推進部門推進担当> 1987年同社入社。常務執行役員レジデンシャル本部長等を経て、2021年4月より現職。
森田 和彦 取締役常務執行役員建築本部 本部長 1989年同社入社。大和コスモスコンストラクション取締役等を兼務し、2022年4月より現職。
大戸 聡 取締役(常勤監査等委員) 1988年同社入社。経営管理本部経営企画部門長等を経て、2021年6月より現職。


社外取締役は、名島 弘尚(大和ハウス工業上席執行役員)、富樫 紀夫(大和ハウス工業上席執行役員)、小池 芳夫(共立メンテナンス経営企画本部長)、島 宏一(元リクルートメディアコミュニケーションズ社長)、江端 亘(元Pito AxM Platform会長)、吉田 高志(吉田公認会計士事務所代表)、白川 純子(新霞が関綜合法律事務所パートナー)です。

2. 事業内容


同社グループは、「レジデンシャル事業」「ソリューション事業」「宿泊事業」「工事事業」を展開しています。

(1) レジデンシャル事業

新築マンション「イニシア」、一戸建て「イニシアフォーラム」の開発・販売、および中古マンションのリノベーション販売を行っています。また、買い替え等に伴う不動産仲介や、豪州での分譲住宅開発も手掛けています。

主に個人顧客への住宅販売による対価を収益源としています。運営は同社および株式会社コスモスライフサポート等が担っており、豪州事業はCosmos Australia Holdings Pty Ltdが展開しています。

(2) ソリューション事業

投資用マンション「コスモグラシア」やオフィスビル「クロスシー」の開発・販売、中古物件の再生・販売を行っています。また、シェアオフィス「MID POINT」などの賃貸管理・運営や不動産コンサルティングも提供しています。

投資家や法人顧客への不動産販売および賃貸収入等を収益源としています。運営は同社が行っており、米国での事業はCosmos USA Holdings Incが展開しています。

(3) 宿泊事業

アパートメントホテル「MIMARU」の開発・販売および運営を行っています。また、アウトドアリゾート「ETOWA」の企画・運営も手掛けています。

ホテル施設の販売による対価や、宿泊客からの宿泊料等を収益源としています。施設の開発は同社が行い、運営は株式会社コスモスホテルマネジメントが担当しています。

(4) 工事事業

オフィス移転に伴う内装工事、建築・リノベーション工事、マンションギャラリーの設営工事などを行っています。

法人顧客等からの工事請負代金を収益源としています。運営は主に株式会社GOOD PLACEが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は着実に増加傾向にあり、直近5期間で約1.2倍に拡大しています。経常利益も順調に推移しており、直近では79億円に達しました。利益率も改善傾向が見られ、当期純利益は5期連続で黒字を維持し、直近では53億円と過去5期間で最高益を記録するなど、堅調な成長が続いています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 1,073億円 1,073億円 1,234億円 1,246億円 1,295億円
経常利益 22億円 26億円 45億円 67億円 79億円
利益率(%) 2.1% 2.4% 3.6% 5.4% 6.1%
当期利益(親会社所有者帰属) 20億円 17億円 35億円 43億円 53億円

(2) 損益計算書


売上高は前期比で約50億円増加し、売上総利益も237億円から273億円へと拡大しました。これに伴い売上総利益率も19.0%から21.1%へと改善しています。営業利益は約20億円増加して95億円となり、営業利益率も6.0%から7.3%へ上昇するなど、収益性の向上が見られます。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 1,246億円 1,295億円
売上総利益 237億円 273億円
売上総利益率(%) 19.0% 21.1%
営業利益 74億円 95億円
営業利益率(%) 6.0% 7.3%


販売費及び一般管理費のうち、給与手当などの人件費が66億円(構成比37%)、販売手数料などの支払手数料が22億円(同12%)を占めています。売上原価においては、土地や建物にかかる費用が大半を占めています。

(3) セグメント収益


レジデンシャル事業は販売単価上昇により増収増益となり、利益が倍増しました。ソリューション事業は引渡棟数減で減収となりましたが、利益率は改善し増益を達成しています。宿泊事業はインバウンド需要による単価上昇で増収増益となりました。工事事業は受注減により減収減益となりました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
レジデンシャル事業 435億円 485億円 6億円 13億円 2.7%
ソリューション事業 490億円 479億円 26億円 43億円 9.1%
宿泊事業 224億円 237億円 63億円 68億円 28.6%
工事事業 98億円 94億円 2億円 -1億円 -0.6%
連結(合計) 1,246億円 1,295億円 74億円 95億円 7.3%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


なお、同社は在庫を多く抱える事業を主力としているため、営業CFのマイナスは棚卸資産(商品・販売用不動産等)の増加(事業拡大)に起因している可能性があり、必ずしも業績悪化を意味するものではありません。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF -93億円 -35億円
投資CF -10億円 -10億円
財務CF 110億円 -20億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は11.3%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は27.9%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「Mission(存在意義)」として、『「Next GOOD」お客さまへ。社会へ。一歩先の発想で、一歩先の価値を。』を掲げています。社会の変化や多様化するニーズに応える商品・サービスの提供を通じて、都市に住まう・働く・遊ぶ人々が「もっと楽しく、もっと安心に」暮らせる環境の創造を目指しています。

(2) 企業文化


多様な個性を尊重し合う「ダイバーシティ」の文化を重視しています。創業当時からの「男女平等」という価値観をベースに、性別や年代、キャリア等の異なる人材が自分らしく働き、躍動できる職場づくりを推進しています。また、「一歩先の発想」で新たな価値を生み出すことを目指し、自律的なキャリア形成や健康経営にも注力しています。

(3) 経営計画・目標


「中期経営計画2026」において、以下の数値目標を掲げています。

* 営業利益:110億円
* 営業利益率:7.2%
* 期末自己資本比率:30%

(4) 成長戦略と重点施策


「事業・財務基盤の強化」「新たな事業創造」「ESG経営の実践」を重点テーマとしています。レジデンシャル事業では製販一貫体制による高付加価値化、ソリューション事業では多様なアセットタイプの販売強化、宿泊事業では2030年の運営室数3,000室への拡大を目指します。また、米国やベトナム等の海外展開やDX推進にも注力します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「適切な機会提供と自発的な学びの促進」をテーマに、従業員の自律的なキャリア開発を支援しています。年に1回の自己申告制度や、希望部署への異動を表明できる制度などを運用し、多様なキャリアの実現を後押ししています。また、健康経営優良法人の認定を継続するなど、心身共に健康で働ける環境整備にも注力しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 38.0歳 10.4年 8,162,463円


※平均年間給与は、時間外手当その他の基準外賃金及び賞与が含まれております。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 21.9%
男性育児休業取得率 100.0%
男女賃金差異(全労働者) 60.3%
男女賃金差異(正規雇用) 62.7%
男女賃金差異(非正規雇用) 38.9%

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 不動産市況と金利変動の影響


不動産販売は景気、金利、地価等の影響を受けやすい事業です。大幅な金利上昇による住宅購入意欲の減退や投資利回りの上昇、空室率の上昇等が生じた場合、収益性の低下や評価損の発生により業績に影響を及ぼす可能性があります。同社は市況モニタリングや事業分散により影響の最小化を図っています。

(2) 引渡時期の偏りによる業績変動


不動産販売の売上は顧客への引渡し時点で計上されます。転勤や学期末、決算期末などの要因で引渡しが第4四半期(2〜3月)に集中する傾向があり、四半期ごとの業績に変動が生じやすい特徴があります。事業比率の調整等により業績の平準化に努めています。

(3) 建築コスト高騰と人材不足


建設資材の価格高騰や労務費の上昇は建築費の増加要因となります。また、建設業における時間外労働の上限規制適用等による人手不足が、工期の延長やコスト増を招く可能性があります。協力会社との良好な関係構築や発注管理により、これらの影響を抑制するよう努めています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。