※本記事は、エスリードの有価証券報告書(第34期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. エスリードってどんな会社?
総合不動産事業やマンションの開発分譲を中心に、多岐にわたる不動産関連サービスを提供する企業です。
■(1) 会社概要
1992年に日本エスリードとして設立され、マンション分譲を開始しました。2001年に東京証券取引所市場第一部に上場を果たしています。2013年には森トラストによる公開買付けが成立して同社が親会社となり、2019年に現在のエスリードへと商号を変更しました。近年は東京や北海道にも支店を開設しています。
現在の従業員数は連結で476名、単体で248名となっています。筆頭株主は親会社であり不動産開発を手掛ける森トラストで、第2位は資産管理業務を行う信託銀行、第3位には創業者の荒牧杉夫氏が名を連ねており、親会社との強固な資本関係を基盤に事業を展開しています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 森トラスト | 53.72% |
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 5.21% |
| 荒牧杉夫 | 2.01% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性13名、女性2名の計15名で構成され、女性役員比率は13.0%です。代表取締役社長は荒牧杉夫氏が務めています。社外取締役比率は33.3%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 荒牧杉夫 | 代表取締役社長 | 1979年に大京観光(現大京)に入社して経験を積み、1992年5月にエスリードを設立しました。設立と同時に代表取締役社長に就任して以来、同社の事業拡大を牽引し、現在より現職。 |
| 井上祐造 | 専務取締役 | 1996年に同社に入社し、経理部長、取締役経理部長などを経て、2009年に取締役管理本部長に就任しました。その後、常務取締役管理本部長、専務取締役管理本部長を歴任し、2026年4月より現職。 |
| 戸井幸治 | 専務取締役事業本部長 | 1997年に同社に入社し、事業第一部長や事業本部長などを務めました。2016年に取締役事業本部長、2019年に常務取締役事業本部長に就任して事業部門を統括し、2023年6月より現職。 |
| 大場健夫 | 専務取締役営業本部長 | 1997年に同社に入社し、営業第四部長などを経て、2012年に取締役営業第四部長に就任しました。その後、取締役営業本部長、常務取締役営業本部長を歴任して営業部門を牽引し、2019年6月より現職。 |
| 毎熊正徳 | 常務取締役事業副本部長 | 大和ハウス工業や大京などを経て、2012年に同社に入社しました。その後、事業部長兼名古屋支店長として拠点の立ち上げに貢献し、2019年に取締役事業副本部長兼名古屋支店長に就任、2024年4月より現職。 |
| 藤野正明 | 常務取締役 | 1982年に大阪ガスに入社し、2019年に綜電の代表取締役社長に就任しました。2021年にはエスリード建物管理の代表取締役社長を務め、2022年に同社取締役に就任し、2024年6月より現職。 |
| 小倉大輔 | 取締役営業副本部長 | 1997年に同社に入社し、営業部門で経験を積みました。2016年に営業第四部長に就任して実績を上げ、営業部門における中核的な役割を担い、2019年6月より現職。 |
| 大城元樹 | 取締役営業副本部長 | 2005年に同社に入社して営業部門でキャリアを重ね、2016年に営業第五部長に就任しました。営業の最前線で事業の推進に貢献し、2019年6月より現職。 |
| 名倉功 | 取締役事業副本部長 | 1990年に住友銀行(現三井住友銀行)に入行し、2020年に同社へ出向しました。2021年4月に同社に転籍して事業部長に就任し、これまでの金融機関での経験を活かして、2021年6月より現職。 |
| 半田智之 | 取締役 | 1988年に森ビルに入社し、2010年に森トラストのビル営業部営業第1部部長を務めました。2012年に同社取締役に就任し、2019年からは森トラストの常務執行役員も兼務し、現在より現職。 |
社外取締役は、大石歌織(北浜法律事務所パートナー)、米津均(米津税務会計事務所所長)、石川宗隆(石川公認会計士事務所所長)、廣瀬主嘉(梅田中央法律事務所共同代表)、柴田直子(柴田直子公認会計士事務所代表)です。
2. 事業内容
同社グループは、「不動産販売事業」および「その他事業」を展開しています。
■不動産販売事業
分譲マンションの開発および販売を主力として展開しています。立地を厳選し、品質にこだわったマンションを企画・開発しており、主に個人顧客や国内外の機関投資家などに対して良質な住環境や投資用物件を提供しています。
顧客と締結した不動産売買契約に基づくマンションなどの物件引き渡しに伴う販売代金を主な収益源としています。自社開発物件の売却によるキャピタルゲインの獲得を中心としており、事業の運営は主にエスリードが行っています。
■その他事業
マンションの管理や賃貸関連事業をはじめ、電力供給、建設・リフォーム、不動産の仲介・買取再販、宿泊施設の運営、ビルメンテナンスなど、マンション周辺や総合不動産に関わる多岐にわたるサービスを提供しています。
販売後の物件管理料、賃貸収入、電力販売代金、工事代金、宿泊施設の運営収入などを収益源とし、安定的なインカムゲインを確保しています。エスリードのほか、エスリード建物管理、綜電などのグループ各社が運営を行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績は、不動産販売の堅調な推移や事業領域の拡大により、毎期連続して増収増益を達成しています。特に売上高は着実な成長軌道を描いており、利益面でも高い水準を維持しながら右肩上がりで推移するなど、安定した成長と収益力の向上が見受けられます。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 746億円 | 799億円 | 803億円 | 948億円 | 1169億円 |
| 経常利益 | 86億円 | 94億円 | 113億円 | 137億円 | 164億円 |
| 利益率(%) | 11.5% | 11.7% | 14.1% | 14.5% | 14.0% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 42億円 | 46億円 | 58億円 | 69億円 | 85億円 |
■(2) 損益計算書
売上高の拡大に伴い、売上総利益および営業利益ともに順調に増加しています。利益率に関しても前期間と比較して微増傾向にあり、適切なコストコントロールと付加価値の高い物件の提供によって、効率的に利益を創出できていることが分かります。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 948億円 | 1169億円 |
| 売上総利益 | 238億円 | 294億円 |
| 売上総利益率(%) | 25.1% | 25.2% |
| 営業利益 | 145億円 | 185億円 |
| 営業利益率(%) | 15.4% | 15.8% |
販売費及び一般管理費のうち、給料及び賞与が39億円(構成比35%)、租税公課が26億円(同24%)を占めています。売上原価については個別原価計算による物件の取得・建築コストなどが主に計上されています。
■(3) セグメント収益
主力である不動産販売事業は、投資家等に向けた出口戦略が奏功して販売が大きく伸長し、大幅な増収増益となりました。また、マンション周辺事業などを担うその他事業も堅調に推移して収益の多角化に寄与しており、全社的な利益水準の底上げにつながっています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益(2026年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 不動産販売事業 | 657億円 | 866億円 | 115億円 | 133億円 | 15.3% |
| その他事業 | 291億円 | 303億円 | 54億円 | 59億円 | 19.6% |
| 調整額 | -107億円 | -77億円 | -31億円 | -28億円 | - |
| 連結(合計) | 948億円 | 1169億円 | 137億円 | 164億円 | 14.0% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
なお、同社は在庫を多く抱える事業を主力としているため、営業CFのマイナスは棚卸資産(商品・販売用不動産等)の増加(事業拡大)に起因している可能性があり、必ずしも業績悪化を意味するものではありません。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | -354億円 | -395億円 |
| 投資CF | -10億円 | -11億円 |
| 財務CF | 513億円 | 264億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は14.4%で市場平均を上回り、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も30.4%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
「総合デベロッパーとして。都市と住まいの未来を見据えて。」という経営理念を掲げています。都市と住まいを日々の暮らしのステージと位置づけ、それが快適で豊かなものとなるよう、将来にわたり幅広くサポートして永く快適に住んでいただくことを目指し、持続可能な社会への貢献を社会的使命としています。
■(2) 企業文化
同社は、立地に優れ納得できる価格で供給できる土地だけを厳選して取得し、細部まで商品企画にこだわった良質なマンションを提供するという価値観を重視しています。また、不動産に関する社会の多様なニーズに対応するため、既存の枠組みに縛られず新たな事業領域に積極的にチャレンジする姿勢を組織の行動様式としています。
■(3) 経営計画・目標
経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標として「経常利益」を採用しています。不動産販売事業では棚卸資産の取得を目的とした資金調達が多いため、営業利益だけでなく支払利息などの財務コストも含めた経常利益が、本来の稼ぐ力を測る最適な指標だと判断して重視しています。
■(4) 成長戦略と重点施策
創業30周年を機に「真の総合不動産会社」を目指しており、良質なマンション供給体制を維持しつつ、周辺事業の拡大や新規事業の創出に注力しています。
・商業施設やホテル、物流施設、高齢化対応施設など多様なアセットタイプの事業展開強化
・マンション分譲事業とのシナジーを生み出す周辺事業の拡充
・環境配慮型マンション開発(ZEHなど)やクリーンエネルギー活用の推進
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
人材を重要な経営資本の一つと位置づけ、社内人材の育成や外部専門人材の積極採用、従業員エンゲージメントの向上に向けた投資を推進しています。OJTや階層別研修、資格取得支援によるスキル向上を図るとともに、ジョブローテーションで適正職種の見極めを行い、多様な価値観に対応した職場環境の整備を進めています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 32.8歳 | 5.2年 | 8,933,360円 |
※平均年間給与は基準外賃金、業績給、その他の臨時手当及び賞与を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 3.5% |
| 男性育児休業取得率 | 21.1% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 52.5% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 52.4% |
| 男女賃金差異(非正規) | - |
※労働者の男女の賃金の額の差異のうち「パート・有期労働者」は、対象となる女性労働者がいないため「-」としています。
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、新卒採用 女性比率(9.6%)、育児休業復職率(100.0%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 将来の事業環境に関するリスク
少子高齢化に伴う需要の減退や社会構造の変化、顧客ニーズの多様化が進んだ場合、主力である不動産販売事業のみで事業を永続的に発展させることが困難になる可能性があります。これに対応するため、マンション分譲以外のマンション周辺事業や総合不動産事業を展開し、収益源の多角化を進めています。
■(2) 不動産販売事業に関するリスク
景気動向や金利上昇、住宅税制の変化などにより購買者の購入意欲が減退した場合や、用地取得競争により開発用地の価格が高騰した場合、同社の経営成績に影響を及ぼす可能性があります。これに対し、徹底したマーケティング調査に基づく用地取得や、適切な保有期間のコントロールなどビジネスモデルの転換により対応しています。
■(3) 新規事業に関するリスク
総合不動産事業などを担うグループ各社の拡大や新規事業への進出において、事業環境が当初の想定から変化し、投資の回収に至らない場合は固定資産の減損損失などが発生する可能性があります。同社では、新たな事業を行う際に取締役会の承認を必須とする体制を整え、適切にリスクを把握した上で投資判断を行っています。



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