エスリード 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

エスリード 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証プライム上場の総合不動産会社です。マンション分譲事業を中核に、賃貸や管理などの周辺事業も展開しています。直近の業績は、売上高948億円、経常利益137億円と増収増益を達成し、当期純利益も93億円で過去最高益を更新するなど、堅調な成長を続けています。


※本記事は、エスリード株式会社 の有価証券報告書(第33期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. エスリードってどんな会社?


近畿圏を中心にマンション分譲を行う総合デベロッパーです。森トラストグループの一員として事業を拡大しています。

(1) 会社概要


1992年に日本エスリードとして設立され、翌年には自社ブランドマンションの販売を開始しました。2001年に大証一部および東証一部へ上場を果たし、関西の主要デベロッパーとしての地位を確立しました。2013年には森トラストが親会社となり、強固な経営基盤を構築しています。2019年に現商号であるエスリードへ変更し、総合不動産会社としてのブランド強化を図っています。

同グループの従業員数は連結で419名、単体で210名です。大株主構成は、筆頭株主が親会社で不動産開発やホテル経営を行う森トラスト、第2位は資産管理業務を行う信託銀行となっています。創業社長やその親族も上位株主に名を連ねています。

氏名 持株比率
森トラスト 53.72%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 5.89%
荒牧杉夫 2.01%

(2) 経営陣


同社の役員は男性13名、女性1名の計14名で構成され、女性役員比率は7.0%です。代表取締役社長は荒牧杉夫氏です。社外取締役比率は約21.4%です。

氏名 役職 主な経歴
荒牧 杉夫 代表取締役社長 1979年大京観光(現大京)入社。1992年同社設立とともに代表取締役社長に就任し、創業以来トップとして経営を牽引。
井上 祐造 専務取締役管理本部長 1996年入社。経理部長、取締役管理本部長、常務取締役を経て、2017年より現職。
戸井 幸治 専務取締役事業本部長 1997年入社。事業第一部長、取締役事業本部長、常務取締役を経て、2023年より現職。
大場 健夫 専務取締役営業本部長 1997年入社。営業第四部長、取締役営業本部長、常務取締役を経て、2019年より現職。
毎熊 正徳 常務取締役事業副本部長 大和ハウス工業、大京などを経て2012年入社。事業部長、取締役事業副本部長を経て、2024年より現職。
藤野 正明 常務取締役 大阪ガス出身。綜電社長、エスリード建物管理社長を経て、2024年より現職。
小倉 大輔 取締役営業副本部長 1997年入社。営業第四部長を経て、2019年より現職。
大城 元樹 取締役営業副本部長 2005年入社。営業第五部長を経て、2019年より現職。
名倉 功 取締役事業副本部長 住友銀行(現三井住友銀行)出身。2020年出向、2021年入社し事業部長を経て、同月より現職。
半田 智之 取締役 森ビル出身。森トラスト執行役員大阪支店長などを経て、2019年より同社常務執行役員。2012年より同社取締役。


社外取締役は、大石歌織(北浜法律事務所パートナー)、米津均(米津税務会計事務所所長)、石川宗隆(石川公認会計士事務所所長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「不動産販売事業」および「その他事業」を展開しています。

(1) 不動産販売事業


自社ブランドマンション「エスリード」シリーズの企画・開発・分譲を行っています。近畿圏を中心に、ファミリータイプや投資用ワンルームなど多様なニーズに対応したマンションを供給しており、用地取得から企画、販売までを一貫して手がけています。主な顧客は一般個人や投資家です。

収益は、顧客へのマンション販売代金によって得ています。運営は主にエスリードが担っていますが、戸建分譲事業については子会社のエスリードハウスも事業を展開しており、グループ全体で住まいに関する販売事業を推進しています。

(2) その他事業


分譲マンションの管理、賃貸、電力供給、建設・リフォーム、不動産仲介・買取再販、ホテル運営など、多岐にわたる周辺事業を展開しています。マンション購入後の顧客サポートや、ストックビジネスとしての収益基盤を強化しています。

収益源は、管理組合からの管理委託費、入居者からの賃料、電力サービスの利用料、工事代金、仲介手数料などです。運営は、エスリード建物管理、エスリード賃貸、綜電、イー・エル建設、エスリードリアルティ、エスリードホテルマネジメントなどのグループ各社が担当しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は690億円から948億円へと右肩上がりで成長しています。経常利益も70億円から137億円へと倍増近くまで伸長しており、利益率も10%台から14%台へと向上傾向にあります。増収増益基調が続いており、安定した成長軌道に乗っています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 690億円 746億円 799億円 803億円 948億円
経常利益 70億円 86億円 94億円 113億円 137億円
利益率(%) 10.1% 11.5% 11.7% 14.1% 14.5%
当期利益(親会社所有者帰属) 32億円 42億円 46億円 58億円 69億円

(2) 損益計算書


売上高の大幅な増加に伴い、売上総利益も204億円から238億円へと拡大しています。売上総利益率は約25%前後を維持しており、安定した収益性を確保しています。営業利益も順調に増加しており、本業の儲けを示す営業利益率は15%を超える高い水準を達成しています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 803億円 948億円
売上総利益 204億円 238億円
売上総利益率(%) 25.4% 25.1%
営業利益 116億円 145億円
営業利益率(%) 14.5% 15.4%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び賞与が34億円(構成比36%)、租税公課が22億円(同24%)を占めています。売上原価においては、不動産販売に伴う用地費や建築費等が大半を占めています。

(3) セグメント収益


主力の不動産販売事業は、底堅い住宅需要や投資家向けの販売が好調で、売上・利益ともに増加しました。その他事業も、管理戸数の増加や賃貸関連事業の拡大により大幅な増収増益となり、グループ全体の成長に寄与しています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
不動産販売事業 595億円 657億円 102億円 115億円 17.4%
その他事業 207億円 291億円 35億円 54億円 18.4%
調整額 - - -24億円 -31億円 -
連結(合計) 803億円 948億円 113億円 137億円 14.5%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


なお、同社は在庫を多く抱える事業を主力としているため、営業CFのマイナスは棚卸資産(商品・販売用不動産等)の増加(事業拡大)に起因している可能性があり、必ずしも業績悪化を意味するものではありません。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF -322億円 -354億円
投資CF -6億円 -10億円
財務CF 225億円 513億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は13.3%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は32.4%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「総合デベロッパーとして。都市と住まいの未来を見据えて。」を経営理念として掲げています。顧客の暮らしのステージである都市と住まいが快適で豊かなものとなるよう、グループ一体となって暮らしを幅広くサポートし、永く快適に住んでもらうことを目指しています。

(2) 企業文化


同社は、社名の由来でもある「不動産業界をリードする(real EState LEAD)」という気概を持ち、創業以来培ってきた用地仕入力や商品企画力を重視しています。また、マンション販売にとどまらず、多様化する社会ニーズに対応するため、新たな事業領域への挑戦やシナジーの創出を積極的に行う姿勢を持っています。

(3) 経営計画・目標


同社グループは、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標として「経常利益」を採用しています。これは、主要事業であるマンション分譲事業において資金調達に伴う支払利息などの財務コストも含めた数値が、本来の稼ぐ力を測るのに最適であると判断しているためです。

* 2025年3月期実績:経常利益137億48百万円(期初予想137億円を達成)

(4) 成長戦略と重点施策


「真の総合不動産会社」への進化を目指し、マンション分譲事業では良質な供給による着実な成長を図りつつ、マンション周辺事業のさらなる拡大・充実を推進しています。また、オフィスビル開発やホテル事業、商業施設開発など、マンション事業に縛られない新たな領域へも挑戦し、収益源の多角化を進めています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は人的資本への投資を重要戦略と位置づけ、社内人材の育成や外部専門人材の採用、従業員エンゲージメント向上に注力しています。具体的には、ベースアップの実施や新卒初任給の引き上げによる人材確保、ジョブローテーションによる適材適所の配置と活性化、資格取得支援などのスキルアップ施策を推進しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 33.6歳 5.8年 8,719,180円


※平均年間給与は、税込支払給与額であり、基準外賃金、業績給、その他の臨時手当及び賞与を含んでおります。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 1.8%
男性育児休業取得率 23.0%
男女賃金差異(全労働者) 48.3%
男女賃金差異(正規雇用) 47.8%
男女賃金差異(非正規雇用) -%


※男女賃金差異(非正規雇用)の「-」は、女性のパート・有期労働者がいないため比較できないことを示します。

また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、新卒採用 女性比率(10.1%)、育児休業復職率(85.7%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 将来の事業環境と事業構造


少子高齢化や顧客ニーズの多様化が進む中、主力である不動産販売事業のみへの依存はリスクとなります。これに対し同社は、マンション周辺事業や総合不動産事業を拡大し、収益源の多角化を進めることで、持続的な成長を図っています。

(2) 開発用地取得と建築コスト


用地取得競争の激化による価格高騰や、建築資材・人件費の上昇は、事業利益を圧迫する要因となります。同社は綿密なマーケティング調査による適正価格での用地取得や、設計監理の徹底、施工会社の分散発注などにより、コスト管理と品質維持に努めています。

(3) 金利動向と資金調達


事業用地の取得資金を主に金融機関からの借入で調達しているため、金利上昇は経営成績に影響を及ぼす可能性があります。同社は、保有期間のコントロールや販売方法の最適化により資金回収の効率化を図るとともに、グループ資金マネジメントを活用して財務体質の健全性を維持しています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。