※本記事は、株式会社日神グループホールディングスの有価証券報告書(第52期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 日神グループホールディングスってどんな会社?
同社は首都圏を中心としたマンション開発と、全国展開する建設事業を両輪とする総合不動産・建設企業です。
■(1) 会社概要
1975年に設立し、不動産事業を開始しました。1979年に自社開発マンション第1号を発売し、1990年に日神不動産へ商号変更しました。2003年に東京証券取引所市場第一部へ上場し、2010年には多田建設を子会社化して建設事業を拡大しました。2020年に持株会社体制へ移行し現在の社名となりました。
同社の従業員数は連結で663名、単体で11名です。筆頭株主は事業会社のエヌディファクターで発行済株式の35.19%を保有しており、第2位は信託業務を行う日本マスタートラスト信託銀行(信託口)、第3位は同社名誉会長の神山和郎氏となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| エヌディファクター | 35.19% |
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 6.86% |
| 神山和郎 | 2.99% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性11名、女性2名の計13名で構成され、女性役員比率は15.4%です。代表取締役社長は神山隆志氏が務めています。社外取締役比率は33.3%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 神山隆志 | 代表取締役社長 | 1995年同社入社。平川カントリークラブ代表取締役社長などを経て、2015年同社取締役、2019年代表取締役専務に就任。2024年より現職。 |
| 黒岩英樹 | 代表取締役専務 | 1985年同社入社。経理部長、執行役員財務・経理担当などを経て、2017年取締役専務兼執行役員管理部門担当に就任。2020年より現職。 |
| 坂入尚 | 取締役 | 1990年同社入社。横浜支店長などを経て、2019年日神不動産代表取締役社長に就任。2020年より現職。 |
| 島田克美 | 取締役 | 1988年同社入社。日神管財取締役常務などを経て、2021年日神管財代表取締役社長に就任。2022年より現職。 |
| 日置健 | 取締役 | 1998年同社入社。総務部長、企画管理部長などを経て、2022年日神不動産投資顧問代表取締役社長に就任。2024年より現職。 |
| 田口二朗 | 取締役 | 1986年多田建設入社。同社第一事業本部営業部長などを経て、2024年多田建設常務取締役兼事業企画本部長に就任。2024年より現職。 |
社外取締役は、阿部泰彦(阿部総合法律事務所代表)、清水郁夫(日本補償コンサルタント協会会長)、齊藤広子(東京都市大学大学院教授)です。
2. 事業内容
同社グループは、「不動産事業」「建設事業」「不動産管理事業」および「その他」事業を展開しています。
■(1) 不動産事業
新築分譲マンションの企画開発・販売を中心に、不動産の賃貸や投資家向けの証券化事業向け物件の提供を行っています。居住者の住みやすさの追求に加え、投資対象としての複合的な価値提供を行っており、個人および機関投資家が主な顧客となります。
主な収益源は、マンション購入者からの分譲代金や、投資家からの物件売却代金、賃貸収入です。マンションの企画開発および分譲販売は日神不動産が担い、不動産アセットマネジメント業務は日神不動産投資顧問が運営を行っています。
■(2) 建設事業
マンションをはじめとする様々な建築工事に加え、土木工事や不動産開発、建設資材のリース事業を展開しています。長年の経験と取引に基づく技術力を活かし、民間企業や公共機関などを顧客として幅広い建設ニーズに対応しています。
主な収益源は、顧客からの建築・土木工事の請負代金や、建設資材のリース料金です。建設・土木工事および不動産開発の運営は多田建設が行っており、建設資材のリース業務についてはシンコーが運営を担当しています。
■(3) 不動産管理事業
マンションの管理組合から受託する不動産管理業務を主軸に、修繕工事や区分所有者のニーズに応える賃貸管理、流通・買取再販、管理受託を企図したアパート開発・一棟販売を行っています。マンションの居住者や管理組合が主な顧客です。
主な収益源は、管理組合からの管理委託手数料や、修繕工事の請負代金、不動産仲介手数料などです。管理業務や修繕工事、不動産の買取再販などの運営は日神管財が行っており、マンションの管理員の派遣業務は日神ライフサポートが担っています。
■(4) その他
グループの事業を補完する金融・保険サービスを展開しています。マンション購入者を対象とした少額に限定した新規貸付や、住宅ローンに関連する損害保険の代理業などを行っており、不動産購入者が主な顧客となります。
主な収益源は、貸付金に対する受取利息や、保険会社からの損害保険代理店手数料などです。これらの業務の運営は日神ファイランスが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
過去5期間の業績は、売上高が760億円から870億円のレンジで推移し、直近では大幅な増収となっています。経常利益も一時的な減少を経て当期は大きく回復し、増収増益のトレンドを示しています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 815億円 | 823億円 | 810億円 | 762億円 | 878億円 |
| 経常利益 | 50億円 | 41億円 | 32億円 | 31億円 | 60億円 |
| 利益率(%) | 6.2% | 4.9% | 4.0% | 4.0% | 6.8% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 8億円 | 12億円 | 11億円 | 12億円 | 13億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間を比較すると、売上高の増加に伴い売上総利益が大きく伸びており、収益性が向上しています。営業利益も前年比でほぼ倍増しており、本業での稼ぐ力が強まっていることが伺えます。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 762億円 | 878億円 |
| 売上総利益 | 104億円 | 140億円 |
| 売上総利益率(%) | 13.7% | 16.0% |
| 営業利益 | 34億円 | 67億円 |
| 営業利益率(%) | 4.5% | 7.6% |
販売費及び一般管理費のうち、交際費が1.4億円、租税公課が1.1億円を占めています。売上原価については、支払管理料が1.2億円(構成比44.6%)、減価償却費が1.0億円(同36.7%)を占めています。
■(3) セグメント収益
全セグメントで増収を達成しています。特に建設事業はコスト上昇を価格転嫁し収益確保に努めたほか、不動産管理事業も管理棟数の増加が寄与し、全体の売上成長を牽引しました。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) |
|---|---|---|
| 不動産事業 | 286億円 | 314億円 |
| 建設事業 | 368億円 | 394億円 |
| 不動産管理事業 | 108億円 | 170億円 |
| その他 | 0.2億円 | 0.2億円 |
| 連結(合計) | 762億円 | 878億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
なお、同社は在庫を多く抱える事業を主力としているため、営業CFのマイナスは棚卸資産(商品・販売用不動産等)の増加(事業拡大)に起因している可能性があり、必ずしも業績悪化を意味するものではありません。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | -55億円 | -64億円 |
| 投資CF | 31億円 | -17億円 |
| 財務CF | 34億円 | 117億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は6.0%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は48.7%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
「信用を重んじ、有為の人材育成に努め、事業活動を通じて豊かな生活環境を創造し、社会に貢献する」ことを共通理念としています。「住みやすさ」に加え、居住者の資産形成や投資家向けの安定的な投資対象の創出などの複合的な価値提供を行う「総合不動産・建設業」としてグループの発展を図る方針を掲げています。
■(2) 企業文化
長年の経験と取引の蓄積に基づく技術力と信用を事業の基盤とし、多様な人材が個々の能力を最大限発揮できる環境づくりを重視しています。また、グループ各社間の人材交流により従業員の適性に応じたキャリア形成を支援し、ワークライフバランスを意識した計画的な業務遂行を推進しています。
■(3) 経営計画・目標
同社は、株主重視の方針に加え、今後の事業展開等を勘案し、内部留保にも意を用い、業績に応じた適正配当を行うとともに、長期的な安定配当を維持することを基本方針として掲げています。
* 配当性向は50%を目安
■(4) 成長戦略と重点施策
不動産開発事業においては、工期長期化や人手不足に対応するため開発プロジェクトの「大型化」を進め、施工効率の向上と原価抑制を図ります。建設事業では、集中購買や早期発注によるコスト抑制と、利益率の高い工事の選別受注に注力します。不動産管理事業においては、デジタル技術を活用して業務効率化を進めます。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社グループは、人的資本が持続的成長の基盤であるとの認識のもと、多様な人材の確保と育成を重要な経営課題と位置づけています。性別や年齢、国籍を問わず公正な採用と評価を行い、OJTや資格取得支援を通じて専門性の高い人材を育成するとともに、ハラスメント窓口の設置や育児休業制度などの社内環境整備を推進しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 42.2歳 | 14.9年 | 4,989,884円 |
※平均年間給与は基準外賃金及び賞与を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 12.2% |
| 男性育児休業取得率 | 50.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 60.5% |
| 男女賃金差異(正規雇用労働者) | 61.1% |
| 男女賃金差異(パート・有期労働者) | 55.8% |
また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性従業員管理職比率(7.0%)、中途採用者管理職比率(55.2%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 不動産事業におけるプロジェクト遅延・滞留リスク
中東情勢等を背景とした建築資材の確保難により、計画時期に建物の竣工や引渡しができず、業績に影響が及ぶ可能性があります。また、プロジェクト期間中の市況悪化によって完成在庫が滞留し、棚卸資産の評価損や資金繰りに悪影響を及ぼすリスクがあります。
■(2) 建設事業における採算悪化・人材不足リスク
受注競争の変化や建築資材・労務費の高騰により、工事の採算が悪化する可能性があります。また、技術力を持つ現場監督などの資格者が流出または高齢化により退職し、新規人材の確保・育成が困難になった場合、受注可能な工事現場数が制限されるリスクがあります。
■(3) 不動産管理事業における人的資本リスク
マンションの日常管理業務を担う管理員について、高齢等の理由で退職する人材に見合う新規人材を確保できない場合、基本的なサービス提供に支障をきたし、管理受託棟数の拡大が制約される可能性があります。同社は働き方改革やデジタル技術の活用で対応を図っています。
■(4) 情報セキュリティに関するリスク
サイバー攻撃等によりシステムが利用不能となる場合や、個人情報の漏洩が発生した場合、多額の対応コストが生じるだけでなく、営業活動や業務処理が滞り、企業としての対外的な信用に重大な影響を及ぼす可能性があります。



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