※本記事は、株式会社日神グループホールディングス の有価証券報告書(第51期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 日神グループホールディングスってどんな会社?
日神グループホールディングスは、首都圏を中心に分譲マンションの企画・販売、建設、管理を行う総合不動産・建設グループです。
■(1) 会社概要
1975年に設立され、1979年に自社開発マンション第1号を発売しました。2000年に東京証券取引所市場第二部へ上場し、2003年には同市場第一部へ指定替えとなりました。2020年に持株会社体制へ移行し、現在の商号へ変更しました。2022年の市場区分見直しに伴い、プライム市場へ移行しています。
連結従業員数は680名、提出会社(単体)は9名です。筆頭株主は事業会社のエヌディファクターで、第2位は資産管理業務を行う信託銀行、第3位は同社名誉会長の神山和郎氏です。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| エヌディファクター | 35.19% |
| 日本マスタートラスト信託銀行株式会社(信託口) | 7.81% |
| 神山 和郎 | 2.99% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性11名、女性2名、計13名で構成され、女性役員比率は15.4%です。代表取締役社長は神山隆志氏です。社外取締役比率は23.1%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 神山 隆志 | 代表取締役社長 | 1995年同社入社。平川カントリークラブ社長などを経て2019年代表取締役専務、2024年6月より現職。 |
| 黒岩 英樹 | 代表取締役専務 | 1985年同社入社。経理部長、執行役員財務・経理担当などを経て2020年6月より現職。 |
| 坂入 尚 | 取締役 | 1990年同社入社。執行役員横浜支店長などを経て、日神不動産社長(現任)。2020年1月より現職。 |
| 島田 克美 | 取締役 | 1988年同社入社。日神管財代表取締役社長(現任)。2022年6月より現職。 |
| 日置 健 | 取締役 | 1998年同社入社。企画管理部長などを経て、日神不動産投資顧問社長(現任)。2024年6月より現職。 |
| 田口 二朗 | 取締役 | 1986年多田建設入社。同社常務取締役兼事業企画本部長(現任)。2024年6月より現職。 |
社外取締役は、阿部泰彦(阿部総合法律事務所代表)、清水郁夫(一般社団法人日本補償コンサルタント協会会長)、齊藤広子(横浜市立大学国際教養学部教授)です。
2. 事業内容
同社グループは、「不動産事業」「建設事業」「不動産管理事業」および「その他」事業を展開しています。
■(1) 不動産事業
分譲マンション「パレステージ」「デュオステージ」シリーズ等の企画・販売、不動産賃貸、不動産ファンドの組成・運用、戸建住宅の開発・販売を行っています。主な顧客は住宅購入者や不動産投資家です。
収益は、マンションや戸建住宅等の販売代金、賃貸収入、ファンド運用報酬等から得ています。運営は主に日神不動産、日神不動産投資顧問、リコルドが行っています。
■(2) 建設事業
マンション等の建築工事に加え、土木工事を行っています。また、建設資材のリースも行っています。主な顧客はマンションデベロッパーや官公庁等です。
収益は、請負工事契約に基づく工事代金や建設資材のリース料から得ています。運営は主に多田建設、シンコーが行っています。
■(3) 不動産管理事業
マンション共用部分の管理、ビル管理、賃貸物件の管理受託、これらに伴うリフォームや大規模修繕工事、賃貸物件の販売、管理員の派遣を行っています。主な顧客はマンション管理組合やビルオーナー等です。
収益は、管理業務委託契約に基づく管理料、工事代金、不動産販売代金等から得ています。運営は主に日神管財、日神ライフサポートが行っています。
■(4) その他
小額の新規貸付等の金融事業を行っていますが、縮小均衡を目指しています。
収益は、貸付金利息等から得ています。運営は主に日神ファイナンスが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
2021年3月期から2023年3月期にかけて売上高は800億円台前半で推移していましたが、直近2期は減少傾向にあり、2025年3月期は762億円となりました。利益面では、2021年3月期以降、経常利益・当期純利益ともに減少傾向が続いており、利益率も低下しています。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 808億円 | 815億円 | 823億円 | 810億円 | 762億円 |
| 経常利益 | 50億円 | 50億円 | 41億円 | 32億円 | 31億円 |
| 利益率(%) | 6.2% | 6.2% | 4.9% | 4.0% | 4.0% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 34億円 | 35億円 | 28億円 | 21億円 | 21億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間の比較では、売上高は減少しましたが、売上総利益率は13.1%から13.7%へと改善しました。営業利益は微減となりましたが、営業利益率は4.4%から4.5%へとわずかに上昇しており、収益性は維持されています。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 810億円 | 762億円 |
| 売上総利益 | 106億円 | 104億円 |
| 売上総利益率(%) | 13.1% | 13.7% |
| 営業利益 | 35億円 | 34億円 |
| 営業利益率(%) | 4.4% | 4.5% |
販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が25億円(構成比36.5%)、租税公課が4億円(同5.8%)を占めています。売上原価については、大部分が用地費や建築費等で構成されています。
■(3) セグメント収益
不動産事業は新築マンションの売上減少により大幅な減収減益となりました。一方、建設事業は売上が横ばいながら利益率の改善により大幅増益となりました。不動産管理事業は売上は横ばいでしたが、販管費の増加により減益となりました。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) | 利益(2024年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 不動産事業 | 334億円 | 286億円 | 20億円 | 9億円 | 3.0% |
| 建設事業 | 368億円 | 368億円 | 8億円 | 20億円 | 5.6% |
| 不動産管理事業 | 108億円 | 108億円 | 11億円 | 10億円 | 8.8% |
| その他 | 0.3億円 | 0.2億円 | 0.1億円 | 0.1億円 | 47.1% |
| 調整額 | -15億円 | -14億円 | -4億円 | -4億円 | - |
| 連結(合計) | 810億円 | 762億円 | 35億円 | 34億円 | 4.5% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
なお、同社は在庫を多く抱える事業を主力としているため、営業CFのマイナスは棚卸資産(商品・販売用不動産等)の増加(事業拡大)に起因している可能性があり、必ずしも業績悪化を意味するものではありません。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | -4億円 | -55億円 |
| 投資CF | -17億円 | 31億円 |
| 財務CF | -10億円 | 34億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は3.0%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は51.2%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
信用を重んじ、有為の人材育成に努め、事業活動を通じて豊かな生活環境を創造し、社会に貢献することを共通理念としています。グループ各社が連携し、「住みやすさ」に加え、資産形成や安定的な投資対象の創出など複合的な価値提供を行う「総合不動産・建設業」としての発展を目指しています。
■(2) 企業文化
多様な人材が個々の能力を最大限発揮できる環境整備を重視しています。OJTや階層別研修、資格取得支援などの人材育成を行うとともに、優秀社員の表彰などで意欲を喚起しています。また、グループ各社間の人材交流や各種イベント開催により、組織の活性化と親睦を図っています。
■(3) 経営計画・目標
長期ビジョン達成のための基盤づくり期間と位置づけた中期経営計画を推進しています。売上高の拡大、収益力の向上、人材の確保及び育成を重要課題としています。また、株主還元も重要視しており、配当性向は50%を目安としています。
■(4) 成長戦略と重点施策
不動産事業では、コンパクトマンションと資産運用型マンションを主力とし、東京近郊での売上拡大とコスト削減を目指します。建設事業では、九州・東北への展開や非住宅物件の受注強化を進めます。不動産管理事業では、AIやシステム活用による業務効率化とOEM開発を推進します。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
人材の確保・育成を最重要課題と位置づけ、人的資本投資を拡大しています。新卒・中途採用の強化、資格取得支援や手当の拡充、各種研修制度の充実により、人材の早期戦力化と定着を図っています。また、多様性の確保に向け、性別や国籍等を問わない評価を行っています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 43.5歳 | 15.8年 | 5,642,156円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 11.9% |
| 男性育児休業取得率 | 100.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 74.6% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 71.1% |
| 男女賃金差異(非正規) | 0.0% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、中途採用者管理職比率(48.7%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 不動産市況と金融機関の融資動向
マンション分譲事業では、用地取得から引渡しまで長期間を要するため、市況動向や金融機関の融資姿勢が経営に大きく影響します。販売低迷による在庫滞留や新規借入困難などの事態が生じた場合、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 建設コストの高騰と部材不足
建設工事の請負契約から引渡しまでの期間に、建設資材価格や人件費が想定以上に上昇し、請負金額への転嫁が困難な場合、収益が悪化する可能性があります。また、資材不足や供給遅延が発生した場合、工期に影響を与えるリスクがあります。
■(3) 金融子会社の債権管理リスク
金融子会社において、住宅ローンの債務保証を行っており、顧客の返済遅延や自己破産等により代位弁済が発生する可能性があります。地価下落により担保価値が求償権を下回る場合や、不良債権が新たに発生した場合には、追加費用が発生するリスクがあります。



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