東 祥 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

 東 祥 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東祥は東京証券取引所スタンダード市場および名古屋証券取引所プレミア市場に上場し、「ホリデイスポーツクラブ」を展開するスポーツクラブ事業、ホテル事業、不動産事業を柱としています。直近の連結業績では不動産事業の反動等により減収となったものの、営業利益および経常利益が大きく増加する減収増益を達成しています。


※本記事は、株式会社東祥の有価証券報告書(第48期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月24日提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準はJapan GAAPです。

1. 東祥ってどんな会社?


大人専用のスポーツクラブやホテル、不動産事業を展開する企業です。

(1) 会社概要


1979年に土木建設請負業を目的として東和建設が設立され、1986年に分譲マンション等を手がける祥福不動産を設立しました。1990年には余暇事業への進出を目的にホリデイを設立し、1999年にこれら各社を合併して東祥へ商号変更しました。2004年にジャスダックへの上場を果たし、2014年の東証一部指定等を経て、現在は3事業を主力に展開しています。

従業員数は連結で376名、単体で273名です。筆頭株主は創業者の沓名俊裕氏で、第2位も創業家関連とみられる現代表取締役の沓名裕一郎氏、第3位は資産管理業務を行う日本マスタートラスト信託銀行(信託口)となっています。

氏名 持株比率
沓名俊裕 43.71%
沓名裕一郎 11.58%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 6.29%

(2) 経営陣


同社の役員は男性7名、女性1名の計8名で構成され、女性役員比率は12.5%です。代表取締役社長は沓名裕一郎氏が務めています。社外取締役比率は25.0%です。

氏名 役職 主な経歴
沓名裕一郎 代表取締役社長 1997年当社入社。1999年取締役、2008年スポーツクラブカンパニー社長、2013年経営戦略室長等を経て、2020年より現職。
沓名俊裕 取締役会長 1973年和泉芝生入社。1979年当社設立。2003年代表取締役社長、2014年ABホテル代表取締役社長等を経て、2023年より現職。
谷澤亜希 取締役管理本部長 1997年当社入社。2004年ホテル部長、2010年内部監査室長、2011年内部統制室長、2016年執行役員等を経て、2024年より現職。


社外取締役は、神谷明文(神谷明文法律事務所開業)、菊池修(元安城商工会議所常務理事)です。

2. 事業内容


同社グループは、「スポーツクラブ事業」「ホテル事業」「不動産事業」を展開しています。

スポーツクラブ事業


16歳以上の大人に特化した会員制スポーツクラブ「ホリデイスポーツクラブ」を全国で展開しています。「大人の健康」をキーワードに「遊ぶ・楽しむ・フィットネス」をコンセプトとし、誰でも楽しめるエクササイズプログラムやリラクゼーションの場所を提供しています。

会員からの月会費を主な収益源としています。地域の特性やニーズに合わせた深夜までの営業、リラクゼーション施設の充実、グループ会員制の導入を図り、差別化による会員確保に努めています。事業の運営は同社が行っています。

ホテル事業


愛知県を中心として「ABホテル」の名称でホテルを展開しています。「ビジネスホテルより快適に、シティホテルよりリーズナブルに」をキーワードとして、忙しいビジネスシーンやアクティブな観光利用をサポートするくつろぎ空間を提供しています。

宿泊客からの宿泊料金を主な収益源としています。駅前や主要インターチェンジを重点地区として出店を進めており、コスト変動を販売価格に反映させるレベニューマネジメントを実施して収益の最大化に努めています。運営は子会社のABホテルが行っています。

不動産事業


愛知県内で賃貸マンション「A・City」等を所有・運営するほか、テナントビルや駐車場の管理、ゴルフ練習場「ホリデイゴルフガーデン」の運営を行っています。高品質で重厚感あふれる設計を採用した独自のノウハウにより、安定した収益性を実現しています。

入居者からの賃貸料や施設利用者からの利用料を主な収益源としています。自社で土地所有者より土地を購入もしくは賃借し、運営管理を行うことで、入居者ニーズに合わせた住環境の整備と満室経営を目指しています。運営は同社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は増減を繰り返していますが、直近の第48期では前期の不動産売却の反動などにより減収となりました。一方で経常利益は大幅に増加し、利益率も大きく改善しています。当期純利益も順調に伸びており、収益性の向上が確認できます。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 273億円 225億円 309億円 356億円 276億円
経常利益 45億円 31億円 41億円 59億円 75億円
利益率(%) 16.6% 13.9% 13.3% 16.7% 27.1%
当期利益(親会社所有者帰属) 24億円 -0.1億円 -34億円 12億円 35億円

(2) 損益計算書


直近の期間において、売上高は減少したものの、売上原価が減少したことにより売上総利益は増加しています。これに伴い、売上総利益率および営業利益率ともに大きく改善し、効率的な利益創出が進んでいることがうかがえます。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 356億円 276億円
売上総利益 78億円 92億円
売上総利益率(%) 21.9% 33.3%
営業利益 59億円 75億円
営業利益率(%) 16.5% 27.1%


販売費及び一般管理費(17億円)のうち、販売手数料が4億円(構成比24%)、給料及び賞与が4億円(同20%)を占めています。売上原価(184億円)においては、スポーツクラブ事業売上原価が102億円(構成比55%)を占めています。

(3) セグメント収益


主力のスポーツクラブ事業は既存店の収益力強化により売上を維持しています。ホテル事業は客室単価の上昇や稼働率の適正化により増収となりました。不動産事業は前期に大型の収益用不動産の売却があった反動で、当期は大幅な減収となっています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
スポーツクラブ事業 126億円 126億円
ホテル事業 107億円 123億円
不動産事業 124億円 28億円
連結(合計) 356億円 276億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


本業の営業活動で生み出した資金の範囲内で、設備投資や借入金の返済などの財務活動を賄っている健全な状態を示しています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 154億円 79億円
投資CF -66億円 -13億円
財務CF -44億円 -56億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は9.6%で市場平均を上回り、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も52.5%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「健康づくりで世のため人のために尽くす」を経営理念として掲げています。この理念に基づき「健康」をキーワードにした事業展開を行い、大人専用の総合型スポーツクラブなどを通じて、顧客に喜ばれ必要とされる会社としての持続的成長と地域社会への貢献を目指しています。

(2) 企業文化


建設業を母体として発祥した同グループは、各事業において費用対効果の高い建築ノウハウを活用する文化を持っています。また、常に顧客の視点に立ち、競争優位性の構築と生産性の向上を見据え、柔軟性とスピード、戦略的思考をもって経営環境の変化に対応していくことを重視しています。

(3) 経営計画・目標


同社は各事業において具体的な出店モデルや投資利回りを設定し、収益性の確保を目標とした開発方針を掲げています。

* スポーツクラブ事業:単独店舗の経常利益率35%以上
* ホテル事業:単独店舗の経常利益率35%以上
* 不動産事業:投資利回り12%以上、年間300室の新規開発

(4) 成長戦略と重点施策


既存施設の収益力の回復および向上を最優先課題とし、急激な競争環境の変化に適応するためのマーケティング政策を重点的に実施しています。スポーツクラブではスタジオプログラムの充実や設備リニューアル、ホテルではオンライン販売サイトを活用した集客強化とレベニューマネジメントを推進し、組織能力の強化に努めています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


持続的な成長を確保するため、人的資本への取り組みを最重要課題と位置づけ、多様性を含めた人材確保と人材育成を推進しています。属性にとらわれない人材登用や「ホリデイカレッジ」を通じた社員教育の強化を行うとともに、社員の健康保持・増進を図るための社内環境整備にも取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 30.0歳 6.5年 4,840,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 4.7%
男性育児休業取得率 42.9%
男女賃金差異(全労働者) 62.9%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 72.7%
男女賃金差異(パート・有期労働者) 143.1%


また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、中途採用管理職比率(16.5%)、研修施設における年間使用時間(648時間)、健康診断受診率(100%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 複数の事業展開に伴うリスク


スポーツクラブ事業を主力としつつホテルや不動産事業を展開していますが、景気動向や競合との価格競争により、一時的な売上縮小や事業撤退の可能性があります。事業構成の変化が業績に影響を及ぼすリスクがあります。

(2) 新規出店・開発の制約


独自のマーケティングノウハウで開発を進める計画ですが、好条件の出店候補地や必要な人材が確保できない場合など、予期せぬ事由が発生した際には新規出店計画に支障が生じ、業績に悪影響を与える可能性があります。

(3) 金利上昇リスク


施設開発の資金調達は金融機関からの借入金が主となっています。長期資金は金利の固定化を図っていますが、短期および中期資金については、金利上昇により支払利息が増加し、業績に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。