誠建設工業 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

誠建設工業 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

誠建設工業は東証スタンダードおよび名証メイン市場に上場し、大阪府堺市を中心に戸建分譲住宅事業、不動産仲介、不動産賃貸を展開する企業です。直近の業績は、売上高が減少したものの、営業利益および経常利益は大幅な増益を達成しました。高品質で低価格な住宅を提供し、地域密着型で安定した収益基盤の構築を目指しています。


※本記事は、株式会社誠建設工業の有価証券報告書(第35期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月24日提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準はJapan GAAPです。

1. 誠建設工業ってどんな会社?


同社は大阪府堺市を拠点とし、戸建分譲住宅の企画・設計・施工・販売までを一貫して手がける企業です。

(1) 会社概要


1991年に大阪府大阪狭山市で設立され建築事業を開始しました。1999年には宅地建物取引業者免許を取得し、2004年に誠不動産(現誠ホームサービス)を設立するなど事業を拡大しました。2006年に大阪証券取引所市場第二部へ上場を果たし、2024年には名古屋証券取引所メイン市場への上場も行っています。

現在の従業員数は連結で26名、単体で18名です。筆頭株主は同社の支配株主である誠インベストで、第2位は誠リサーチ、第3位はホームリサーチとなっています。

氏名 持株比率
誠インベスト 33.34%
誠リサーチ 7.95%
ホームリサーチ 6.55%

(2) 経営陣


同社の役員は男性6名、女性1名の計7名で構成され、女性役員比率は14.0%です。代表取締役社長は西元敏之氏が務めており、社外取締役の比率は約42.9%です。

氏名 役職 主な経歴
西元敏之 代表取締役社長 1997年丸石工業入社。2001年同社に入社し、誠design工房代表取締役や同社建築部長などを経て、2025年6月より現職。
平岩和人 取締役 1976年幸福相互銀行入行。2006年同社出向、経営企画室長や代表取締役社長などを経て、2025年6月より現職。
井上正美 取締役 1992年中部コーポレーション入社。2003年同社に入社し、管理部管理課長や管理部長を経て、2025年2月より現職。
古城敏夫 取締役 1974年大和銀行入行。2004年誠ホームサービスに入社し、同社初芝支店店長などを経て、2019年6月より現職。


社外取締役は、北村健介(元関西クレジット・サービス監査役)、松本俊昭(ONE WORLD取締役)、坂口晃一(坂口建築計画代表)です。

2. 事業内容


同社グループは、「戸建分譲住宅事業」「不動産仲介事業」「不動産賃貸事業」を展開しています。

戸建分譲住宅事業


大阪府堺市や周辺エリアを中心に、建売住宅、請負住宅、注文住宅の企画・設計・施工・販売を行っています。特に第一次取得者をメインターゲットとし、良質な土地と品質重視のデザインを施した住宅を提供しています。

顧客への住宅引き渡しによる売上を主な収益源としています。事業の運営は主に親会社である誠建設工業が行い、設計業務は誠design工房が担当しています。

不動産仲介事業


同社グループが開発・分譲する建売住宅の仲介業務を主に行っています。地域に密着した宣伝・販売活動を展開し、顧客への直接的なアプローチを行っています。

住宅の販売仲介による手数料を主な収益源としています。運営は連結子会社である誠ホームサービスおよび誠コーポレーションが担当し、各店舗が連携して販売力の強化を図っています。

不動産賃貸事業


同社グループが所有するオフィスビルや賃貸マンション、駐車場の賃貸および管理業務を行っています。自社保有物件を活用し、安定的な不動産運用を推進しています。

物件の入居者やテナントから受け取る賃貸料を主な収益源としています。運営は親会社である誠建設工業に加え、連結子会社である誠エステートが担当しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5年間の業績推移を見ると、売上高は31億円から35億円の間で安定して推移しています。経常利益は2023年3月期にピークを迎えましたが、その後は原材料費や人件費の高騰等の影響で減少傾向にありました。しかし、直近では利益率が改善し、経常利益が回復の兆しを見せています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 31億円 35億円 32億円 33億円 31億円
経常利益 2億円 3億円 2億円 0.2億円 0.4億円
利益率(%) 6.8% 9.5% 6.0% 0.5% 1.2%
当期利益(親会社所有者帰属) 1億円 2億円 1億円 0.2億円 0.2億円

(2) 損益計算書


売上高は前期比で減少しましたが、営業利益は前期の2倍以上に増加しました。これは販売活動の効率化や原価管理の徹底により、売上総利益率および営業利益率がともに改善したことが要因です。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 33億円 31億円
売上総利益 5億円 4億円
売上総利益率(%) 14.0% 14.2%
営業利益 0.2億円 0.4億円
営業利益率(%) 0.6% 1.3%


販売費及び一般管理費のうち、販売手数料が0.8億円(構成比20%)、給料及び手当が0.8億円(同19%)を占めています。

(3) セグメント収益


主力の戸建分譲住宅事業は、利益率の低い物件の販売等の影響もあり、前期比で減収となりました。一方、不動産仲介事業および不動産賃貸事業は堅調に推移し、それぞれ前期比で増収を達成しています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
戸建分譲住宅事業 32億円 31億円
不動産仲介事業 0.1億円 0.1億円
不動産賃貸事業 0.2億円 0.3億円
連結(合計) 33億円 31億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


本業・投資・財務いずれもマイナスで資金繰りが危機的(末期型)な状況となっています。なお、同社は在庫を多く抱える事業を主力としているため、営業CFのマイナスは棚卸資産(販売用不動産等)の増加(事業拡大)に起因している可能性があり、必ずしも業績悪化を意味するものではありません。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF -7億円 -2億円
投資CF -0.8億円 -0.4億円
財務CF 11億円 -5億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は0.6%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は61.7%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「建築の技術者集団として『より良い家をより安く提供する』」を基本方針として、新しい価値を創造するトータルハウジングを目指しています。また、品質の良さと価格の安さを両立した住宅を提供する顧客第一主義に徹し、顧客満足度を高めて社会的評価の高い企業となることを使命としています。

(2) 企業文化


地元密着路線を貫き、品質重視と安全性に重点を置いた住宅創りに専念する文化があります。「直に見る安全性・高品質」を売り物にするなど、誠実な施工と地域社会との信頼関係を大切にしています。また、技術者集団としてのプライドを持ち、コストダウンと品質向上を同時に追求する姿勢が根付いています。

(3) 経営計画・目標


財務体質の強化と収益性の向上を経営目標に掲げており、特に利益率の改善を重視しています。分譲用地の仕入においては利益率を考慮した情報収集に注力し、適正な販売価格の設定を行うことで安定的な収益確保を目指しています。

* 売上高総利益率15%以上を確保

(4) 成長戦略と重点施策


堺市を中心とした南大阪地区での地域ナンバーワンを目指し、建売住宅事業と請負住宅事業の2本柱で事業拡大を図ります。また、一次取得者のみならず二次取得者や富裕層向けの商品開発を進めるほか、人材の確保・育成、調達窓口の多様化によるコスト削減などを通じて経営基盤の強化を推進します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


人材こそが企業の発展を実現する原動力であるとの認識のもと、新卒者の定期採用と即戦力となる中途採用を継続して行っています。社員が専門知識やスキルを身につけられるよう研修制度を充実させ、資格取得支援や資格手当の拡充を行っています。また、多様な人材が活躍できる環境整備や、ポジションの公募化による自発的なキャリア形成を支援しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 52.2歳 15.0年 5,417,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社および連結子会社は公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 小規模組織による人材確保の課題

同社グループは小規模な組織体制であり、今後の成長には販売・仕入・開発・管理の各部門における優秀な人材の確保が不可欠です。必要な人材を適時に採用できなかった場合や、従業員の増加に伴う管理体制の構築が順調に進まなかった場合、業務に支障をきたす可能性があります。

(2) 開発・販売地域の集中リスク

同社グループの開発・販売地域は、大阪府堺市を中心とした南大阪地区に集中しています。地域密着型の事業展開は強みである一方で、同地域の景気が悪化した場合や、地震や台風などの重大な自然災害が生じた場合、事業活動や業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(3) 開発用地の取得に関するリスク

建売住宅を主力事業とする同社グループにとって、良質な分譲用地を大量かつ迅速に仕入れることが重要です。しかし、他社との競合激化により用地価格が上昇する中で、適切な価格で土地を確保できない場合や、計画通りの仕入ができなかった場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。

(4) 住宅市場における競合激化リスク

同社グループの主要販売エリアである南大阪地区は住宅購入者の人気が高く、新規参入する同業他社が増加しています。このような市場環境下で土地仕入価格の高騰や販売価格の下落が進み、効率的な販売活動が行えなくなった場合、収益性が低下する可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。