日本空港ビルデング 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

日本空港ビルデング 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証プライム上場の日本空港ビルデングは、羽田空港における旅客ターミナルの建設、管理・運営を中核事業とし、物品販売業や飲食業も展開しています。当連結会計年度は、コロナ禍からの航空需要回復を受け、売上高は前期比92.5%増と大幅な増収となり、営業利益等の各利益段階でも黒字転換を果たし過去最高益を記録しました。


#記事タイトル:日本空港ビルデング転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

※本記事は、株式会社日本空港ビルデング の有価証券報告書(第80期、自 2023年4月1日 至 2024年3月31日、2024年6月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 日本空港ビルデングってどんな会社?


羽田空港旅客ターミナルの建設、管理・運営を行う「家主」としての役割を担い、直営の免税店や飲食店運営も手がける空港機能施設事業者です。

(1) 会社概要


1953年に設立され、1955年に東京国際空港ターミナルビルを開館しました。1990年に東京証券取引所市場第二部に上場し、1991年に同市場第一部へ指定替えとなりました。1993年には第1ターミナル、2004年には第2ターミナルを開館し、2018年には東京国際空港ターミナルを連結子会社化するなど、羽田空港の機能拡張と共に事業を拡大しています。

連結従業員数は2,660人、単体では293人です。筆頭株主は日本マスタートラスト信託銀行(信託口)、第2位は日本航空、第3位はANAホールディングスとなっており、主要な航空会社が大株主として名を連ねています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 9.99%
日本航空 4.72%
ANAホールディングス 4.72%

(2) 経営陣


同社の役員は男性12名、女性3名の計15名で構成され、女性役員比率は20.0%です。代表者は代表取締役社長執行役員兼COOの横田 信秋氏です。社外取締役比率は46.7%です。

氏名 役職 主な経歴
鷹城  勲 代表取締役会長兼CEO取締役会議長、エグゼクティブ戦略会議議長 1968年4月同社入社。専務取締役、代表取締役副社長、代表取締役社長を経て、2016年6月より現職。
横田 信秋 代表取締役社長執行役員兼COO経営会議議長、経営管理委員会委員長、グループ経営会議議長、コンプライアンス推進委員会委員長、サステナビリティ委員会委員長、リスク管理委員会委員長 1974年4月同社入社。常務、専務、代表取締役副社長を経て、2016年6月より現職。一般社団法人全国空港事業者協会会長を兼務。
鈴木 久泰 代表取締役副社長執行役員社長補佐、渉外業務統括 1975年4月運輸省入省。国土交通省航空局長、海上保安庁長官を経て、同社常勤顧問、専務執行役員を歴任し、2015年6月より現職。
大西  洋 代表取締役副社長執行役員社長補佐、日本空港ビルグループCS推進会議議長、旅客ターミナル運営統括、総務グループ統括 1979年4月伊勢丹入社。三越伊勢丹ホールディングス代表取締役社長執行役員等を歴任後、同社特別顧問を経て、2023年6月より現職。
田中 一仁 取締役副社長執行役員経理・経営企画グループ統括、事業開発推進統括、サステナビリティ推進統括 1987年4月同社入社。常務執行役員、常務取締役執行役員経営企画本部長、専務取締役執行役員を経て、2023年6月より現職。
小山 陽子 専務取締役執行役員事業開発推進本部長旅客ターミナル運営本部長(施設管理グループ担当)、社長特命事項担当 1992年4月同社入社。常務執行役員、常務取締役執行役員を経て、2023年6月より現職。羽田みらい開発等の社外取締役を兼務。
藤野 威 専務取締役執行役員事業開発推進本部長(新規事業等担当)、旅客ターミナル運営本部長(リテール営業グループ担当)、社長特命事項担当 1991年4月同社入社。執行役員国際線事業部長、常務執行役員、上席常務執行役員を経て、2023年6月より現職。
松田 圭史 常務取締役執行役員企画管理本部副本部長(経理・経営企画グループ担当)、事業開発推進本部副本部長(事業開発全般担当)、社長特命事項担当 1994年4月同社入社。執行役員企画管理本部経理・経営企画グループ統括部長等を歴任し、2023年6月より現職。


社外取締役は、木村 惠司(元三菱地所取締役会長)、福澤 一郎(全日本空輸常勤監査役)、川俣 幸宏(京浜急行電鉄社長)、斎藤 祐二(日本航空副社長)、柿﨑 環(明治大学法学部教授)、武田 涼子(弁護士)、岩崎 賢二(綜合警備保障社外取締役)です。

2. 事業内容


同社グループは、「施設管理運営業」「物品販売業」「飲食業」の3つの報告セグメントを展開しています。

(1) 施設管理運営業


羽田空港における旅客ターミナルの建設、管理・運営を行っており、航空会社などの航空関連企業への事務室やカウンター等の施設の賃貸、ターミナルの保守・営繕、警備、清掃、旅客サービス業務等を提供しています。

収益は主に航空会社からの家賃収入や、旅客から収受する旅客取扱施設利用料、駐車場利用料等から得ています。運営は主に日本空港ビルデング、東京国際空港ターミナル株式会社が行い、付随業務を日本空港テクノ株式会社などの子会社が担っています。

(2) 物品販売業


羽田空港の国内線・国際線ターミナル、および成田空港、関西空港等において、直営の売店や免税店を運営し、航空旅客等へ商品を販売しています。また、中部空港等の空港会社に対する商品卸売も行っています。

収益は店舗での商品販売代金や卸売代金から得ています。運営は主に日本空港ビルデング、東京国際空港ターミナル株式会社、国際協商株式会社等が行っており、株式会社日本空港ロジテムが商品の運送・倉庫管理を行っています。

(3) 飲食業


羽田空港の国内線・国際線ターミナルおよび成田空港において、利用者に対する飲食サービスの提供を行っています。また、国際線航空会社に対する機内食の製造・販売も手掛けています。

収益は飲食店舗での飲食代金や、航空会社への機内食販売代金から得ています。運営は主に日本空港ビルデング、東京国際空港ターミナル株式会社、東京エアポートレストラン株式会社が行い、機内食事業はコスモ企業株式会社等が担っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


2020年3月期以降、コロナ禍による航空需要激減の影響を強く受け、2021年3月期から2023年3月期まで大幅な赤字または低収益が続きました。しかし、2024年3月期は旅客数の回復により売上が急拡大し、各利益項目も黒字転換を果たしてV字回復を実現しています。

項目 2020年3月期 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期
売上収益(または売上高) 2,498億円 526億円 571億円 1,131億円 2,176億円
経常利益 87億円 -573億円 -439億円 -121億円 272億円
利益率(%) 3.5% -109.0% -76.9% -10.7% 12.5%
当期利益(親会社所有者帰属) 50億円 -366億円 -252億円 -39億円 193億円

(2) 損益計算書


売上高は約1.9倍に増加し、収益性が劇的に改善しました。前期は売上総利益の段階で利益を確保していたものの営業損失となっていましたが、当期は売上の大幅増により営業利益率13.6%と高い収益性を達成しています。

項目 2023年3月期 2024年3月期
売上高 1,131億円 2,176億円
売上総利益 840億円 1,447億円
売上総利益率(%) 74.3% 66.5%
営業利益 -106億円 295億円
営業利益率(%) -9.4% 13.6%


販売費及び一般管理費のうち、その他の経費が361億円(構成比31%)、減価償却費が282億円(同24%)を占めています。売上原価においては、商品売上原価が649億円(構成比89%)を占めています。

(3) セグメント収益


全てのセグメントで大幅な増収増益となりました。特に物品販売業は国際線旅客数の増加と円安効果等により売上が2.7倍に急増し、利益も大きく伸長しました。施設管理運営業も黒字転換を果たし、飲食業も営業黒字を回復しています。

区分 売上(2023年3月期) 売上(2024年3月期) 利益(2023年3月期) 利益(2024年3月期) 利益率
施設管理運営業 633億円 917億円 -31億円 179億円 19.5%
物品販売業 413億円 1,112億円 16億円 211億円 19.0%
飲食業 85億円 147億円 -14億円 0.7億円 0.4%
連結(合計) 1,131億円 2,176億円 -106億円 295億円 13.6%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

項目 2023年3月期 2024年3月期
営業CF 163億円 478億円
投資CF -106億円 -430億円
財務CF -126億円 -196億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は12.1%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は36.5%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「公共性と企業性の調和」を基本理念としています。羽田空港の旅客ターミナルを建設・運営する企業として、絶対安全の確立とお客様本位の運営に努め、社会的責任を果たすとともに、戦略的な投資を通じて企業価値の向上とステークホルダーへの適切な還元を目指しています。

(2) 企業文化


サステナビリティを戦略推進の中核と位置づけ、「人にも環境にもやさしい先進的空港」の実現を追求しています。また、インナーブランディング活動「プラスワンプロモーション」を通じて、従業員が自ら考え挑戦する企業風土の構築に取り組んでいます。

(3) 経営計画・目標


中期経営計画において、2025年度を最終年度とする目標指標を設定しています。コロナ禍からの回復と成長を目指し、以下の数値目標を掲げています。

* 連結当期純利益:200億円以上
* コスト削減策:25億円
* ROA(EBITDA):12%以上
* 自己資本比率:40%台への回復
* 配当性向:30%以上

(4) 成長戦略と重点施策


「To Be a World Best Airport 2025」を掲げ、サステナビリティを中核とした空港事業の成長と収益基盤の拡大に取り組んでいます。具体的には、第1・第2ターミナルのサテライト新設等の施設整備による機能強化、ロボット技術やDX活用による運営効率化、EC事業のリニューアルや新規事業開拓による非航空系収益の獲得を推進しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「自ら考え挑戦する人財」の育成と「多様な人財が互いを高めあう企業風土」の構築を掲げています。専門性を持つ多様な人材の採用、自律的な学びを支援する研修制度へのシフト、DX人財育成を推進するとともに、女性管理職比率の維持や男性育児休業取得の促進など、DEI(多様性・公平性・包摂性)の推進に取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2024年3月期 37.7歳 12.4年 7,987,305円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 38.8%
男性育児休業取得率 88.9%
男女賃金差異(全労働者) 84.7%
男女賃金差異(正規) 87.2%
男女賃金差異(非正規) 48.2%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、産産・産学連携等プロジェクト参加者数(24名)、外部出向者数(21名)、ITパスポート取得率(31.0%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 危機管理(外的要因)


テロ・破壊活動、自然災害や事故による空港機能の低下、重大な感染症のまん延などが想定されています。これらが発生した場合、人的・物的損害や航空需要の著しい減少により、経営成績等に重要な影響を及ぼす可能性があります。

(2) 経営基盤


人財不足や育成不足により店舗営業や新規事業推進が制約されるリスク、グループガバナンスの不足、DEI推進や人権尊重の不足による企業イメージの失墜、財務制限条項への抵触などが挙げられています。

(3) 事業環境変化


環境課題への対応遅れによる評判低下や規制強化に伴うコスト増、旅客の行動様式変化や技術革新による購買意欲の低下、航空需要への依存度が高いことによる市況変動の影響などがリスクとして認識されています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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