ゴールドクレスト 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ゴールドクレスト 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所スタンダード市場に上場する不動産会社です。首都圏における新築マンションの分譲事業を主力とし、賃貸、管理、ホテル事業も展開しています。2025年3月期の業績は、売上高293億円、経常利益70億円で、主力の分譲事業が好調に推移し増収増益となりました。


※本記事は、株式会社ゴールドクレスト の有価証券報告書(第34期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年7月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. ゴールドクレストってどんな会社?


首都圏に特化した新築マンション「クレスト」シリーズの企画・開発・販売を行う独立系不動産デベロッパーです。

(1) 会社概要


1992年に設立され、1994年に自社分譲物件「クレストフォルム」シリーズの販売を開始しました。1999年には東京証券取引所市場第二部に上場し、同年にマンション管理を行うゴールドクレストコミュニティを設立しています。その後、2000年に市場第一部へ指定替えとなり、2004年には大規模マンション「クレストシティ」ブランドを開始しました。2022年の市場区分見直しを経て、現在はスタンダード市場に上場しています。

連結従業員数は195名、単体では82名です。大株主の状況を見ると、筆頭株主は親会社のミューアセットで48.44%を保有しており、第2位は資産管理業務を行う信託銀行(14.39%)、第3位は資産管理会社のエスディサポート(8.12%)となっています。

氏名 持株比率
ミューアセット 48.44%
INTERTRUST TRUSTEES (CAYMAN)LIMITED SOLEL Y IN ITS CAPACITY AS TRUSTEE OF JAPAN-UP 14.39%
エスディサポート 8.12%

(2) 経営陣


同社の役員は男性7名、女性0名の計7名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は安川秀俊氏が務めています。社外取締役比率は50.0%です。

氏名 役職 主な経歴
安川 秀俊 代表取締役社長 1992年1月同社設立とともに代表取締役社長に就任。ゴールドクレストコミュニティおよびファミリーファイナンスの代表取締役も務める。1992年より現職。
伊藤 正樹 常務取締役 1994年同社入社。企画開発部次長、管理部長、取締役を経て2021年6月より現職。住販サービス等の代表取締役も兼任。


社外取締役は、津村政男(弁護士、ツムラ法律事務所代表)、田中隆吉(元竹中工務店専務執行役員・顧問)です。

2. 事業内容


同社グループは、「不動産分譲事業」「不動産賃貸事業」「不動産管理事業」「ホテル事業」および「その他」事業を展開しています。

不動産分譲事業


首都圏エリアを中心に、新築分譲マンション「クレストシティ」「クレストフォルム」シリーズ等の企画、開発、販売を行っています。ファミリータイプを中心とした商品展開が特徴で、一般消費者を主な顧客としています。

収益はマンション購入者からの販売代金等から得ています。運営は主にゴールドクレストが行っています。

不動産賃貸事業


自社で保有するオフィスビルやマンション等の賃貸を行っています。安定的な収益源として位置づけられており、法人および個人を顧客としています。

収益は賃借人からの賃料収入等から得ています。運営は主にゴールドクレストが行い、不動産分譲事業の従業員が兼務する形をとっています。

不動産管理事業


同社グループが分譲したマンション等の総合管理サービスを提供しています。マンション管理組合や居住者を顧客とし、建物の維持管理や運営サポートを行っています。

収益は管理組合等からの管理委託料から得ています。運営は連結子会社のゴールドクレストコミュニティが行っています。

ホテル事業


自社所有のホテルの経営および運営を行っています。観光やビジネス需要を取り込み、宿泊客に対してサービスを提供しています。

収益は宿泊客からの宿泊料等から得ています。運営は連結子会社の住販サービスおよび浜松町ホテルマネジメントが行っています。

その他


上記報告セグメントに含まれない付帯事業として、不動産の仲介、販売代理、ローン事務、広告宣伝受託業務等を行っています。

収益は仲介手数料や代行手数料等から得ています。運営は連結子会社のゴールドクレスト住宅販売やファミリーファイナンス等が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は2022年3月期をピークに一時減少しましたが、2025年3月期には回復傾向にあります。経常利益率は一貫して20%を超える高い水準を維持しており、収益性の高さが特徴です。2025年3月期は増収増益となりました。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 289億円 342億円 275億円 248億円 293億円
経常利益 67億円 115億円 106億円 55億円 70億円
利益率(%) 23.1% 33.7% 38.4% 22.2% 24.0%
当期利益(親会社所有者帰属) 43億円 76億円 70億円 38億円 50億円

(2) 損益計算書


直近2期間の損益構成を見ると、売上高の増加に伴い、売上総利益、営業利益ともに増加しています。売上総利益率は40%台後半で推移しており、高い付加価値を維持しています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 248億円 293億円
売上総利益 118億円 143億円
売上総利益率(%) 47.5% 48.9%
営業利益 57億円 75億円
営業利益率(%) 23.1% 25.7%


販売費及び一般管理費のうち、人件費が17億円(構成比24.5%)、広告宣伝費が13億円(同18.9%)を占めています。

(3) セグメント収益


2025年3月期は、主力の不動産分譲事業が売上高、利益ともに大きく伸長し、全社の業績を牽引しました。不動産賃貸事業、管理事業、ホテル事業もそれぞれ増収を達成しており、全セグメントで堅調な推移を見せています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
不動産分譲事業 159億円 190億円 39億円 51億円 26.7%
不動産賃貸事業 24億円 26億円 11億円 12億円 46.5%
不動産管理事業 35億円 40億円 3億円 2億円 5.7%
ホテル事業 26億円 31億円 3億円 4億円 13.2%
その他 4億円 5億円 4億円 6億円 116.1%
調整額 -7億円 -8億円 0億円 0億円 -
連結(合計) 248億円 293億円 57億円 75億円 25.7%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社は本業で利益を計上していますが、棚卸資産の増加や運転資本の変動等により営業キャッシュ・フローがマイナスとなっています。不足資金を財務活動(借入等)で調達し、事業投資を行っている「勝負型」のキャッシュ・フロー状態にあります。

なお、同社は在庫を多く抱える事業を主力としているため、営業CFのマイナスは棚卸資産(商品・販売用不動産等)の増加(事業拡大)に起因している可能性があり、必ずしも業績悪化を意味するものではありません。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 51億円 -85億円
投資CF -2億円 -154億円
財務CF -14億円 233億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は3.8%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は60.1%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は東京、神奈川等の首都圏エリアにおいて、「ハイグレードマンション」へのこだわりを持ち、顧客の住環境をより豊かにする良質なマンションづくりを追求しています。多様化するライフスタイルに合わせた上質な暮らしを提案することで、顧客から支持され、信頼される企業グループになることを目指しています。

(2) 企業文化


「顧客第一主義」を徹底し、企画・販売からアフターフォローに至るまでのトータルサービスを行うことで、顧客の声を反映しやすい環境を作ることを重視しています。また、営業経費等を抑えた「効率的な経営」を追求し、経営資源を適切に配分することで、マンションの品質向上につなげる文化を持っています。

(3) 経営計画・目標


同社は、不動産業のリスクを考慮し、安定的な経営と株主への利益還元を可能にするため、以下の指標を目標値として設定しています。

* 売上高経常利益率15%以上
* 自己資本比率30%以上

(4) 成長戦略と重点施策


新築分譲マンション市場では、用地仕入れ競争の激化や建築費上昇が続いています。このような環境下、同社は強い需要が見込める都心および都心近郊部に経営資源を集中させる方針です。販売費および一般管理費を抑えた効率的な経営で収益性を高めつつ、仕入れ競争力、商品開発力、営業力の向上を図ることを重要課題としています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


人材育成を重要課題と認識し、e-ラーニングや階層別研修を通じて従業員の能力開発を支援しています。特に宅地建物取引士などの資格取得に対しては費用負担や手当支給を行っています。また、定期的なジョブローテーションにより幅広いスキルを持つ人材を育成するとともに、多様な人材が活躍できる職場環境の整備や健康経営の推進にも取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 30.9歳 7.3年 7,013,021円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 15.0%
男性育児休業取得率 200.0%
男女賃金差異(全労働者) 96.3%
男女賃金差異(正規) 101.3%
男女賃金差異(非正規) 96.3%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、年次有給休暇取得率(85.0%)、残業時間月平均(23.1時間)、新卒入社3年の定着率(84.8%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 売上計上基準及び季節的変動について


主要事業である新築マンション分譲事業では、顧客への物件引渡しを基準に売上を計上しています。そのため、引渡時期が特定の期間に集中することで、四半期ごとの業績に偏りが生じる可能性があります。また、工期遅延等により引渡時期がずれた場合、業績に影響が及ぶリスクがあります。

(2) 経済的要因による影響について


マンション販売は景気動向や金利、消費者の購買意欲に大きく左右されます。個人消費の低迷や金利の大幅な上昇は需要減退につながる可能性があります。また、地価や建築資材価格の高騰が続き、販売価格への転嫁が困難な場合、利益率が低下する恐れがあります。

(3) 事業エリアについて


同社は設立以来、経営資源の効率化のため事業エリアを首都圏に特化しています。そのため、首都圏において大規模な自然災害や事故等が発生した場合、工期の遅延や資産の毀損などが生じ、同社グループの事業や財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。