※本記事は、ゴールドクレストの有価証券報告書(第35期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月17日提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準はJapan GAAPです。
1. ゴールドクレストってどんな会社?
首都圏で「クレスト」シリーズなど新築分譲マンションの企画・開発・販売を展開する不動産会社です。
■(1) 会社概要
1992年に設立され、1994年より自社分譲物件「クレストフォルム」シリーズの販売を開始しました。1999年に東京証券取引所市場第二部へ上場し、マンション管理業務を行う子会社を設立しています。2000年に同市場第一部銘柄へ指定替えとなり、2023年に同スタンダード市場へ移行しました。
現在の従業員数は連結で199名、単体で78名です。筆頭株主は同社役員が兼任するミューアセットで、第2位は信託業務を行う金融機関、第3位はエスディサポートとなっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| ミューアセット | 48.44% |
| INTERTRUST TRUSTEES (CAYMAN)LIMITED SOLEL Y IN ITS CAPACITY AS TRUSTEE OF JAPAN-UP(常任代理人 みずほ銀行) | 16.25% |
| エスディサポート | 8.12% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性8名、女性0名の計8名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は安川秀俊氏が務めています。社外取締役比率は40.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 安川秀俊 | 代表取締役社長 | 1992年同社を設立し、代表取締役社長に就任。1999年にゴールドクレストコミュニティ代表取締役、2013年にファミリーファイナンス代表取締役に就任。 |
| 伊藤正樹 | 常務取締役 | 1994年同社に入社。企画開発部次長や管理部長を経て、2013年に取締役に就任。2021年より現職。住販サービス等の代表取締役を兼任。 |
| 篠原雄輔 | 取締役 | 2001年同社に入社。サクセス・プロへの出向を経て、2025年より現職。 |
社外取締役は、津村政男(ツムラ法律事務所開設)、田中隆吉(元竹中工務店専務執行役員)です。
2. 事業内容
同社グループは、「不動産分譲事業」「不動産賃貸事業」「不動産管理事業」「ホテル事業」および「その他」事業を展開しています。
■不動産分譲事業
新築分譲マンション「クレストシティ」「クレストフォルム」シリーズなどの企画、開発、販売を提供しており、実需者層の一般消費者が主な顧客です。
分譲マンションの各住戸を顧客へ引き渡すことで収益を得ています。運営は主にゴールドクレストが担っています。
■不動産賃貸事業
オフィスビルやマンションなどの不動産物件をテナントに賃貸し、快適な事業用および居住用空間を提供しています。
不動産の賃貸借契約に基づき、入居者から施設賃貸料等を受け取ることで収益を得ています。運営は主にゴールドクレストが行っています。
■不動産管理事業
同社グループが分譲したマンション等の総合管理サービスを提供しており、マンションの管理組合および入居者が顧客となります。
マンションの管理業務を受託し、継続的に管理委託手数料等を受け取ることで収益を得ています。運営は主にゴールドクレストコミュニティが担っています。
■ホテル事業
自社で所有するホテルの経営および運営を行っており、旅行者やビジネス客などの一般消費者が顧客です。
ホテルの宿泊利用料や関連サービスの提供を通じて収益を得ています。運営は主に住販サービスや浜松町ホテルマネジメントが行っています。
■その他
不動産の仲介および販売代理、ローン事務、広告宣伝の受託業務などの付帯事業を展開しています。顧客はマンション購入者や不動産取引を行う一般消費者です。
手数料等の受け取りにより収益を得ています。運営はファミリーファイナンスやゴールドクレスト住宅販売などが担っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績は、売上高が248億円から342億円の範囲で推移しています。経常利益は2024年3月期に一時減少したものの、その後は回復傾向にあり、利益率は安定して20%以上の高水準を維持しています。当期利益も直近2期で連続して増益となっており、堅調な業績拡大がうかがえます。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 342億円 | 275億円 | 248億円 | 293億円 | 304億円 |
| 経常利益 | 115億円 | 106億円 | 55億円 | 70億円 | 86億円 |
| 利益率(%) | 33.7% | 38.4% | 22.2% | 24.0% | 28.1% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 79億円 | 71億円 | 32億円 | 43億円 | 54億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は前期比で増収となり、売上総利益も増加しています。売上総利益率および営業利益率ともに前期を上回っており、収益性の向上が確認できます。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 293億円 | 304億円 |
| 売上総利益 | 143億円 | 159億円 |
| 売上総利益率(%) | 48.9% | 52.1% |
| 営業利益 | 75億円 | 89億円 |
| 営業利益率(%) | 25.7% | 29.3% |
販売費及び一般管理費のうち、人件費が18億円(構成比25%)、広告宣伝費が13億円(同19%)を占めています。また、売上原価の内訳としては、建物原価が71億円(構成比64%)、土地原価が25億円(同23%)を占めています。
■(3) セグメント収益
主力である不動産分譲事業が堅調なマンションの引き渡しにより売上を伸ばし、全体を牽引しています。ホテル事業や不動産賃貸事業も増収となっている一方、不動産管理事業やその他事業は前期比で減収となりました。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) |
|---|---|---|
| 不動産分譲事業 | 190億円 | 206億円 |
| 不動産賃貸事業 | 26億円 | 27億円 |
| 不動産管理事業 | 40億円 | 36億円 |
| ホテル事業 | 31億円 | 33億円 |
| その他 | 5億円 | 3億円 |
| 連結(合計) | 293億円 | 304億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
本業は一時的にマイナスですが、将来成長のため借入等で資金調達を行い、積極的な投資を継続している局面です。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | -85億円 | -50億円 |
| 投資CF | -154億円 | -1029億円 |
| 財務CF | 233億円 | 887億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は4.3%、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は42.1%であり、いずれも市場平均を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
「お客様本位の徹底」と「社会的責任の遂行」を企業理念として掲げています。「ハイグレードマンション」へのこだわりを持ち、顧客の住環境をより豊かにする良質なマンションづくりを追求することで、お客様から支持され信頼される企業グループになることを目指しています。
■(2) 企業文化
良質なマンションづくりのために、専門部署を通じて設計・施工の各工程に積極的に関与し、品質管理を徹底する文化があります。また、企画や販売からアフターフォローに至るまでトータルサービスを提供し、顧客の意見を反映しやすい環境を作ることで満足度を高める姿勢を重視しています。
■(3) 経営計画・目標
主たる事業である不動産業の事業リスクの高さを鑑み、安定的な経営を行うための盤石な経営基盤の確保を図りつつ、株主への安定した利益還元を可能にするため、以下の数値を目標値として設定しています。
* 売上高経常利益率15%以上
* 自己資本比率30%以上
■(4) 成長戦略と重点施策
強い需要が見込める都心および都心近郊部に経営資源を集中し、営業経費等を抑えた効率的な経営を行うことで収益性を高める方針です。仕入れ競争力や商品開発力、営業力を向上させるとともに、得られた経営資源を適切に配分し、継続的なマンションの品質向上へつなげる施策に注力しています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
人材育成を重要な経営課題と位置づけ、従業員一人ひとりの能力開発とキャリア形成の機会創出を推進しています。また、性別や経歴等に関わらず多様な人材が活躍できる機会や環境づくりを目指し、育休制度の推奨や労働時間の柔軟な対応など、安心して長く就労できる職場環境の構築に取り組んでいます。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 31.9歳 | 8.3年 | 7,644,063円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 13.6% |
| 男性育児休業取得率 | 100.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 90.3% |
| 男女賃金差異(正規雇用労働者) | 95.6% |
| 男女賃金差異(パート・有期労働者) | 77.4% |
また、同社は「人的資本」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、年次有給休暇取得率(89.4%)、残業時間月平均(20.8時間)、新卒入社3年の定着率(83.9%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 経済的要因・金利変動による影響
マンションの販売は購買者の需要動向に左右されやすく、個人消費の低迷や金利の大幅な上昇が購買意欲を減退させる可能性があります。また、事業資金の調達手段には有利子負債が含まれるため、金利上昇が業績に影響を及ぼすリスクがあります。
■(2) 建築コストの上昇
主力事業である新築マンション分譲事業では建築工事を外注しています。建築資材の価格や人件費が想定を上回って上昇した場合や、工事中の予期せぬ事象が発生した場合、販売価格への転嫁が難しければ収益性を低下させる可能性があります。
■(3) 首都圏への事業エリア集中
設立以来、首都圏に事業エリアを特化して経営資源の効率化を図っています。しかし、当該エリアで大規模な自然災害や事故等が発生した場合、工期の遅延や資産の毀損を招き、事業および財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(4) 建築・不動産取引に関する法規制
不動産業界は建築基準法や宅地建物取引業法など多数の法的規制を受けており、マンション管理業界も関連法の規制下にあります。将来の大幅な法規制の改廃や新法制定が行われた場合、事業計画の見直しを迫られるリスクがあります。



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