※本記事は、富士急行株式会社 の有価証券報告書(第124期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月17日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 富士急行ってどんな会社?
富士山麓を事業基盤とし、鉄道・バスの交通網と遊園地・ホテル等の観光施設を一体的に展開する企業です。
■(1) 会社概要
1926年に富士山麓電気鉄道として設立され、1929年に鉄道営業を開始しました。1960年に現社名へ変更し、1961年には東証一部に上場しています。同年、現在の「富士急ハイランド」の前身となる施設を開業し、レジャー事業を拡大させました。2022年には鉄道事業を子会社へ分社化するなど、事業体制の再編も進めています。
2025年3月31日現在、連結従業員数は1,919名、単体では116名です。筆頭株主は公益財団法人堀内浩庵会で、第2位は同社代表取締役社長が代表を務めるエフ・ジェイ、第3位は生命保険会社となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 公益財団法人堀内浩庵会 | 12.09% |
| エフ・ジェイ | 11.90% |
| 日本生命保険相互会社(常任代理人 日本マスタートラスト信託銀行) | 9.88% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性15名、女性2名の計17名で構成され、女性役員比率は11.8%です。代表取締役社長は堀内光一郎氏です。社外取締役比率は約35.3%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 堀内 光一郎 | 代表取締役社長 | 1983年日本長期信用銀行入行。1988年同社入社。専務取締役を経て1989年より現職。エフ・ジェイ代表取締役、ハイランドリゾート代表取締役会長等を兼任。 |
| 野田 博喜 | 常務取締役常務執行役員事業部長 | 1990年日本興業銀行入行。みずほ銀行営業第一部部長、福岡営業部部長等を経て2020年同社入社。2022年より現職。 |
| 山田 美之 | 常務取締役常務執行役員社長室担当兼企画部担当 | 1989年富士急商事(現エフ・ジェイ)入社。2000年同社入社。企画部部長等を経て2024年より現職。 |
| 雨宮 正雄 | 取締役執行役員監査室長兼総務部長兼コンプライアンス担当 | 1987年同社入社。人事部長、岳南電車代表取締役社長等を経て2022年取締役就任。2024年より現職。 |
| 岩田 大昌 | 取締役執行役員営業部長 | 1989年同社入社。富士急ハイランド代表取締役社長等を経て2023年富士急トラベル代表取締役社長就任。2024年より現職。 |
| 堀内 基光 | 取締役執行役員社長室長兼企画部長兼人事部担当兼宣伝部担当 | 2014年みずほ銀行入行。2020年同社入社。2022年ハイランドリゾート代表取締役社長就任。2024年より現職。 |
| 相生 光晴 | 取締役執行役員経営管理部長 | 1993年同社入社。経営管理部部長を経て2024年より現職。 |
社外取締役は、佐藤美樹(朝日生命保険相互会社特別顧問)、長岡勤(東京ドーム代表取締役社長COO)、大原慶子(神谷町法律事務所創立パートナー)、清水博(日本生命保険相互会社代表取締役会長)、米山好映(富国生命保険相互会社取締役会長)、伊岐典子(元厚生労働省雇用均等・児童家庭局長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「運輸業」「不動産業」「レジャー・サービス業」および「その他」事業を展開しています。
■(1) 運輸業
富士山麓エリアを中心に、鉄道、バス、タクシー、船舶などの交通手段を提供しています。鉄道はJR中央線大月駅から河口湖駅間などを運行し、バス事業では地域密着型の貸切・乗合バスや、東京・山梨等での高速バスを運行しています。また、熱海・初島間の定期船や芦ノ湖での遊覧船などの船舶事業も行っています。
主な収益は、旅客からの運賃・料金収入です。鉄道事業は子会社の富士山麓電気鉄道や岳南電車、バス事業は富士急バス、フジエクスプレス、富士急モビリティなどの子会社が運営しています。ハイヤー・タクシーは富士急静岡タクシーなどが、船舶事業は富士急マリンリゾートなどが担当しています。
■(2) 不動産業
富士山麓を中心に、別荘地の開発・分譲や建物の賃貸を行っています。主な物件として、山中湖畔別荘地や十里木高原別荘地があり、快適なリゾート空間を提供しています。また、山梨県、静岡県、東京都内等において、駅ビルや商業施設などの不動産賃貸事業も展開しています。
収益源は、別荘地等の土地・建物販売代金、管理料、および賃貸物件からの賃料収入です。別荘地の管理業務は主に子会社の富士急リゾートアメニティに委託しており、同社および連結子会社が連携して運営を行っています。
■(3) レジャー・サービス業
遊園地、ホテル、ゴルフ場、スキー場、アウトドア施設などを運営し、リゾートライフを提供しています。「富士急ハイランド」や「ハイランドリゾート ホテル&スパ」、アウトドア施設「PICA」ブランドなどが主要施設です。また、旅行業として富士急トラベルが送客やバスの斡旋を行っています。
収益は、各施設の利用料(入園料、宿泊料、プレーフィー等)や旅行商品の販売代金から得ています。施設の運営は、同社が所有する施設を富士急ハイランドやハイランドリゾート、ピカといった連結子会社に委託する形態などをとっています。
■(4) その他
百貨店業、建設業、情報処理サービス、ミネラルウォーターの製造販売などを行っています。建設業では、グループ各施設の建設や修繕なども手掛けています。
収益源は、物品販売収入、工事請負代金、製品販売代金、情報処理サービス料などです。運営は、ピカ、富士急百貨店、富士急建設、富士ミネラルウォーター、レゾナント・システムズなどの連結子会社が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
2021年3月期は新型コロナウイルス感染症の影響を大きく受けましたが、その後は回復基調にあります。売上収益は右肩上がりで推移しており、直近の2025年3月期には522億円に達しました。利益面でも、経常利益、当期純利益ともに回復・成長を続け、直近では高水準の利益率を確保しています。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上収益(または売上高) | 305億円 | 351億円 | 429億円 | 507億円 | 522億円 |
| 経常利益 | -34億円 | 5億円 | 40億円 | 79億円 | 81億円 |
| 利益率(%) | -11.2% | 1.4% | 9.3% | 15.7% | 15.6% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | -28億円 | 4億円 | 23億円 | 46億円 | 51億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間を比較すると、売上高の増加に伴い、営業利益も増加しています。売上総利益率はほぼ横ばいですが、営業利益率は高い水準を維持しており、効率的な事業運営が継続されていることがうかがえます。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 507億円 | 522億円 |
| 売上総利益 | 96億円 | 97億円 |
| 売上総利益率(%) | 19.0% | 18.6% |
| 営業利益 | 82億円 | 83億円 |
| 営業利益率(%) | 16.1% | 15.9% |
販売費及び一般管理費のうち、経費が7億円(構成比50%)、人件費が6億円(同45%)を占めています。売上原価については、運輸業等営業費及び売上原価として一括計上されており、売上原価全体の100%を構成しています。
■(3) セグメント収益
全ての報告セグメントおよびその他事業において売上が増加または高水準を維持しています。特に運輸業はインバウンド需要の回復等を背景に増収となりました。レジャー・サービス業は最大の売上規模を維持しており、グループ全体の収益を牽引しています。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) |
|---|---|---|
| 運輸業 | 178億円 | 196億円 |
| 不動産業 | 26億円 | 20億円 |
| レジャー・サービス業 | 248億円 | 247億円 |
| その他 | 55億円 | 59億円 |
| 連結(合計) | 507億円 | 522億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社は、営業活動で得た資金を借入金の返済や設備投資に充てており、**健全型**のキャッシュ・フロー状態といえます。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 130億円 | 108億円 |
| 投資CF | -57億円 | -59億円 |
| 財務CF | -84億円 | -61億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は15.2%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は35.3%で市場平均を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「富士を世界に拓く」という創業精神のもと、オリジナリティの高い「喜び・感動」を創造することを目指しています。また、企業活動を通じて世界の人々の心の豊かさに貢献することを目的としています。
■(2) 企業文化
「いつも『喜び・感動』」を経営理念に掲げ、「120%の安全と最高のホスピタリティの提供」を目指す姿勢を重視しています。また、創立100周年に向けて刷新したグループロゴとタグライン「わくわくの最高峰へ」を旗印に、「夢・喜び・やすらぎ・快適・感動・健やかさ」を提供する新たなステージへの挑戦を掲げています。
■(3) 経営計画・目標
2023~2025年度を成長戦略推進期間と位置づけ、インバウンド需要の取り込みなどを図る3ヶ年の事業計画を推進しています。最終年度である2025年度には以下の数値目標を掲げています。
* 営業収益:507億円(3ヶ年平均)
* 営業利益:67億円(3ヶ年平均)
* 売上高営業利益率:13.2%(3ヶ年平均)
* 経常利益:63億円(3ヶ年平均)
* 親会社株主に帰属する当期純利益:38億円(3ヶ年平均)
* ROA(総資産経常利益率):6.5%(3ヶ年平均)
* 有利子負債:487億円(2025年度末)
■(4) 成長戦略と重点施策
「顧客生涯価値」の最大化を目指し、「超日常」体験の提供やDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進しています。運輸業では観光需要への対応や自動運転EVバスの実証実験、レジャー業ではインバウンド誘致や施設の魅力向上に取り組むほか、サステナビリティ経営として富士山エリアの持続可能な地域社会の実現を目指しています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「安心・安全」で質の高いサービスを提供するため、社員が「チャレンジ」し「イノベーション」を追求できる機会の整備を進めています。人材育成では、経営幹部や自律型人材、イノベーション人材の育成を方針とし、DX人材育成やキャリア形成プログラム「フジQアカデミー」等の教育施策を拡充しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 38.4歳 | 13.4年 | 6,576,510円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 12.0% |
| 男性育児休業取得率 | 100.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 67.2% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 69.9% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 40.3% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、ワークエンゲージメント(2.6)、有給取得率(58.2%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 自然災害・事故等
富士山エリアを主要拠点としているため、地震や富士山噴火等の自然災害、悪天候などの外部環境の異常事態が発生した場合、事業運営に支障をきたす可能性があります。また、施設での事故等は、信頼性の低下や復旧費用の発生につながるリスクがあります。
■(2) 消費者マインドの動向
不動産業やレジャー・サービス業は、景況悪化による個人消費の落ち込みや市場環境の変化の影響を受けやすい事業です。特にレジャー・サービス業は、天候不順や猛暑、休日の日並び、ガソリン価格の動向などが経営成績に影響を与える可能性があります。
■(3) 世界経済の情勢及び地政学的リスク
外国人旅行者の動向は経営環境に大きく影響します。為替状況や地政学的情勢によりインバウンド需要が減少した場合や、エネルギー価格の高騰が発生した場合、経営成績に影響を与える可能性があります。
■(4) 気候変動への対応
気候変動に伴う気温上昇や自然災害の激甚化は、各施設の運営に支障をきたす恐れがあります。また、温室効果ガス削減などの取り組みがステークホルダーから不十分と評価された場合、社会的信用が毀損し、経営成績に影響を与える可能性があります。



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