※本記事は、富士急行株式会社の有価証券報告書(第125期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月15日提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 富士急行ってどんな会社?
富士急行は、富士山周辺を拠点に運輸、レジャー・サービス、不動産等の事業を多角的に展開しています。
■(1) 会社概要
1926年に富士山麓電気鉄道として設立され、1929年に大月〜富士吉田間の鉄道営業を開始しました。1950年に東京証券取引所に上場し、1960年に現在の富士急行に商号を変更しています。1961年に富士急ハイランドの前身となる施設を開業したほか、直近では2022年に鉄道事業を子会社へ移譲しています。
従業員数は連結で1,979名、単体で128名です。筆頭株主は創業家関連とみられる堀内浩庵会で、第2位はエフ・ジェイ、第3位は日本生命保険となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 堀内浩庵会 | 12.09% |
| エフ・ジェイ | 11.90% |
| 日本生命保険(常任代理人 日本マスタートラスト信託銀行) | 9.88% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性15名、女性2名の計17名で構成され、女性役員比率は11.8%です。代表取締役社長は堀内光一郎氏が務めています。社外取締役は6名(比率35.3%)です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 堀内光一郎 | 代表取締役社長 | 日本長期信用銀行を経て同社に入社し、経営企画部長や専務取締役を歴任。1989年より現職。 |
| 野田博喜 | 常務取締役常務執行役員 | みずほコーポレート銀行等で要職を務めたのち同社に入社し、事業部長等を歴任。2022年より現職。 |
| 山田美之 | 常務取締役常務執行役員 | 富士急商事を経て同社に入社し、企画部長やグループ事業部部長等を歴任。2024年より現職。 |
| 堀内基光 | 常務取締役常務執行役員 | みずほ銀行を経て同社に入社。シカゴ大学経営大学院修士号を取得し、社長室長等を歴任。2025年より現職。 |
| 雨宮正雄 | 取締役執行役員 | 同社に入社後、人事部長やグループ事業部部長、岳南電車代表取締役社長等を歴任し、2022年より現職。 |
| 岩田大昌 | 取締役執行役員 | 同社に入社後、富士急ハイランド代表取締役社長や営業部長等を歴任し、2024年より現職。 |
| 相生光晴 | 取締役執行役員 | 同社に入社後、経営管理部長等を歴任し、2024年より現職。 |
社外取締役は、佐藤美樹(元朝日生命保険社長)、長岡勤(元東京ドーム社長)、大原慶子(神谷町法律事務所創立パートナー)、清水博(日本生命保険会長)、米山好映(富国生命保険会長)、伊岐典子(元21世紀職業財団会長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「運輸業」「不動産業」「レジャー・サービス業」および「その他」事業を展開しています。
■(1) 運輸業
運輸業では、富士山麓を中心とした鉄道、バス、タクシー、船舶など、地域に密着した生活の足や観光へのアクセスとなる安全な交通手段を提供しています。鉄道は富士山麓電気鉄道や岳南電車が旅客輸送を担っています。
収益は、旅客運賃や貸切バス等の利用料として顧客から受け取ります。運営は同社や富士山麓電気鉄道、富士急バスなどの複数の子会社が行っています。
■(2) 不動産業
不動産業では、富士山麓を中心とした別荘地等の開発・分譲や、山梨県内・静岡県内等での建物の賃貸および管理事業を展開し、快適なリゾート空間や生活空間を提供しています。
収益は、顧客からの不動産の売買代金や仲介手数料、賃貸料、別荘地管理費として受け取ります。運営は同社や富士急リゾートアメニティなどの子会社が行っています。
■(3) レジャー・サービス業
レジャー・サービス業では、遊園地、ホテル、ゴルフ場、スキー場、アウトドア事業、旅行業などを通じて、ホスピタリティあふれるアメニティ・ライフを提供しています。
収益は、施設の入園料、宿泊料、利用料等として顧客から受け取ります。運営は同社を中心に、富士急ハイランドやハイランドリゾート、ピカなどの子会社が行っています。
■(4) その他
その他事業では、百貨店などの物品販売業、グループ各施設の建設や修繕等を手掛ける建設業のほか、情報処理サービスやミネラルウォーターの製造販売事業を展開しています。
収益は、商品の販売代金や工事請負代金、サービス利用料等として顧客から受け取ります。運営は富士急百貨店、富士急建設、富士ミネラルウォーターなどの子会社が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
過去5年間の業績推移を見ると、新型コロナウイルス感染症の影響による落ち込みから脱却し、売上高および経常利益ともに順調な回復・成長を遂げています。特にインバウンド需要の増加や各種施策の奏功により、直近では増収増益基調が定着し、経常利益率は16%台まで改善するなど、高い収益性を確保しています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 351億円 | 429億円 | 507億円 | 522億円 | 535億円 |
| 経常利益 | 5億円 | 40億円 | 79億円 | 81億円 | 86億円 |
| 利益率(%) | 1.4% | 9.3% | 15.6% | 15.5% | 16.1% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 4億円 | 23億円 | 46億円 | 51億円 | 58億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間の損益構成を比較すると、売上高の増加に伴い売上総利益も順調に拡大しています。売上総利益率は18%台から19%台へ改善し、営業利益率も15%台から16%台へと上昇しています。効率的な事業運営と付加価値の高いサービス提供により、収益性が着実に向上していることが伺えます。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 522億円 | 535億円 |
| 売上総利益 | 97億円 | 102億円 |
| 売上総利益率(%) | 18.6% | 19.1% |
| 営業利益 | 83億円 | 88億円 |
| 営業利益率(%) | 15.9% | 16.4% |
販売費及び一般管理費のうち、経費が8億円(構成比52%)、人件費が6億円(同42%)を占めています。
■(3) セグメント収益
各事業セグメントにおいて、インバウンドを含む観光需要の回復が寄与し、主力のレジャー・サービス業や運輸業を中心に売上が増加しています。特に運輸業は増収増益を達成し、高い利益率を誇るなどグループ全体の業績を牽引しています。不動産業も安定した収益基盤として機能しています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益(2026年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 運輸業 | 196億円 | 204億円 | 47億円 | 51億円 | 25.0% |
| 不動産業 | 20億円 | 22億円 | 5億円 | 5億円 | 22.7% |
| レジャー・サービス業 | 247億円 | 252億円 | 26億円 | 25億円 | 9.9% |
| その他 | 59億円 | 58億円 | 6億円 | 7億円 | 12.1% |
| 連結(合計) | 522億円 | 535億円 | 83億円 | 88億円 | 16.4% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 108億円 | 117億円 |
| 投資CF | -59億円 | -81億円 |
| 財務CF | -61億円 | -80億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は15.0%で市場平均を上回り、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も40.7%で非製造業の市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「富士を世界に拓く」という創業精神のもと、オリジナリティの高い「喜び・感動」を創造し、世界の人々の心の豊かさに貢献することを目指しています。経営理念として『いつも「喜び・感動」』を掲げ、アメニティビジネスのリーディングカンパニーとしての役割を果たしていく方針です。
■(2) 企業文化
同社は「120%の安全と最高のホスピタリティの提供」を最優先の価値観として行動しています。自然環境や地域社会を大切にしながら、株主価値の向上や皆様から信頼される会社を目指すとともに、社員一人ひとりが夢と誇りを持てるような企業文化の醸成を重視し、事業活動を展開しています。
■(3) 経営計画・目標
同社は、中期的な成長を目指し具体的な数値目標を定めて経営を行っています。資本コスト経営の実践に向けて適切なBSマネジメントを行い、更なる企業価値の向上を図っています。
* 2029年3月期 営業収益目標:630億円
* 2029年3月期 営業利益目標:105億円
* 中長期 ROE目標:14%以上
■(4) 成長戦略と重点施策
同社は、顧客体験価値を起点としたビジネスの再構築を重点施策としています。レジャー・サービスや運輸を中心とした大規模な成長投資により将来のキャッシュ・フロー極大化を目指すとともに、グループ内外の連携を通じた中核プロジェクト「ULTRA Q」を始動させ、データマーケティングやクロスセル促進による収益拡大を図っています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は、全てのお客様に「安心・安全」で質の高いサービスを提供するため、社員が常にチャレンジし、イノベーションを追求できる環境づくりを推進しています。経営幹部や自ら考え行動する人材、専門性の高いDX人材の育成に注力するとともに、多様な人材が融合し健康で活き活きと活躍できる職場づくりを目指しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 38.7歳 | 13.7年 | 6,812,736円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 12.5% |
| 男性育児休業取得率 | 100.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 73.5% |
| 男女賃金差異(正規雇用労働者) | 75.2% |
| 男女賃金差異(有期雇用労働者) | 60.2% |
また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性労働者の割合(28.3%)、適正体重維持者率(64.1%)、有給休暇取得率(54.8%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 自然災害・事故等
事業エリアでの地震や富士山噴火等の自然災害、異常気象のほか、設備故障や人為的ミス等による事故が発生した場合、事業運営に支障をきたし、信頼性の低下や復旧費用の発生が業績に影響を与える可能性があります。
■(2) 消費者マインドの動向
レジャー・サービス業や不動産業は景況悪化による個人消費の落ち込みに影響を受けやすく、悪天候や休日の日並び、ガソリン価格の動向などが集客や売上に直結し、業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(3) 世界経済の情勢及び地政学的リスク
外国人旅行者の動向は為替や地政学的リスクに左右されやすく、また、テロや紛争等によるエネルギー価格の高騰や供給不足が生じた場合、事業の稼働制限やコスト増加を招き、経営成績に著しい影響を与える可能性があります。
■(4) 少子高齢化を伴う人口の減少と人手不足
生産年齢人口の減少により従業員の確保が困難となることで、採用コストや人件費の増加、サービスレベルの低下が生じる恐れがあります。また、中長期的には利用客の減少が業績に影響を及ぼす可能性があります。



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