相鉄ホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

相鉄ホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

相鉄ホールディングスは、東京証券取引所プライム市場に上場し、運輸業、流通業、不動産業、ホテル業などを幅広く展開する持株会社です。直近の業績は、既存線の利用増やホテル需要の好調などにより、営業収益3,076億円(前年同期比5.3%増)、営業利益388億円(同2.7%増)と増収増益を達成しています。


※本記事は、相鉄ホールディングス株式会社の有価証券報告書(第158期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 相鉄ホールディングスってどんな会社?


運輸業、流通業、不動産業、ホテル業を中心とした生活関連サービスを展開する持株会社です。

(1) 会社概要


1918年1月に設立され、1949年に東京証券取引所へ上場しました。2009年に鉄道事業を分割し、現在の持株会社体制へ移行しています。近年は鉄道ネットワークの拡充を進めており、2019年にはJR線との相互直通運転、2023年には東急線との相互直通運転をそれぞれ開始し、事業領域を拡大しています。

現在の従業員数は連結で5,321名、単体で85名です。筆頭株主は資産管理業務を行う日本マスタートラスト信託銀行で、第2位および第3位には取引金融機関である三井住友銀行と横浜銀行が名を連ねており、安定した株主構成となっています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 8.96%
三井住友銀行 4.26%
横浜銀行 4.26%

(2) 経営陣


同社の役員は男性9名、女性3名の計12名で構成され、女性役員比率は25.0%です。代表取締役会長は滝澤秀之氏、代表取締役社長社長執行役員は加藤尊正氏が務めています。社外取締役は3名で構成されています。

氏名 役職 主な経歴
滝澤秀之 代表取締役会長 1984年同社入社。相模鉄道社長などを経て2019年同社代表取締役社長に就任。2025年6月より現職。
加藤尊正 代表取締役社長社長執行役員 1985年同社入社。相鉄ホテルなどグループ会社の社長を歴任し、2025年6月より現職。
後藤亮一 取締役執行役員 1989年同社入社。相鉄ビジネスサービスなどの社長を経て2023年同社取締役に就任し現職。
廣瀨佳恵 取締役執行役員 1990年同社入社。相鉄ビジネスサービスなどの社長を経て2025年6月より現職。


社外取締役は、恩地祥光(元レコフ代表取締役会長)、藤川裕紀子(藤川裕紀子公認会計士事務所所長)、芳仲美惠子(畑・芳仲法律事務所パートナー)です。

2. 事業内容


同社グループは、「運輸業」「流通業」「不動産業」「ホテル業」および「その他」事業を展開しています。

運輸業


相模鉄道による鉄道事業と、相鉄バスによるバス事業を通じて、地域住民の足となる旅客運輸サービスを提供しています。ダイヤ改正や新型車両の導入など、利便性や安全性の向上を図っています。

収益は、切符や定期券の購入などによる旅客運輸収入を主としています。運営は相模鉄道や相鉄バスが行っています。

流通業


スーパーマーケットや駅売店等の運営を通じ、食料品を中心とした生活必需品を顧客に提供しています。店舗のリニューアルや新規出店、オリジナル商品の開発などを進めています。

収益は、スーパーマーケット各店等で顧客に商品を引き渡した際の販売代金から得ています。運営は相鉄ローゼンや相鉄ステーションリテールが行っています。

不動産業


マンションや戸建住宅の分譲を行う不動産分譲業と、オフィスビルや商業施設の賃貸・運営を行う不動産賃貸業を展開しています。駅周辺の再開発や魅力ある街づくりを推進しています。

分譲マンション等の販売代金や、保有するオフィスビル・商業施設のテナントから得られる賃貸収入を収益源としています。運営は相鉄不動産や相鉄アーバンクリエイツ等が行っています。

ホテル業


シティホテルや宿泊特化型ホテルを国内外で幅広く展開し、宿泊施設の提供とそれに付随するサービスを行っています。産学連携プロジェクトやオリジナルウエディングの企画などで集客を強化しています。

収益は、顧客からの室料収入やレストラン等の付帯サービス利用料から得ています。運営は相鉄ホテルマネジメントや相鉄ホテル等が行っています。

その他


報告セグメントに含まれない事業として、建物の維持管理を行うビルメンテナンス業のほか、熱供給事業、建設業、その他サービス業などを多角的に展開しています。

施設の管理受託料や熱供給の料金、工事代金などを収益源としています。運営は相鉄企業、横浜熱供給、相鉄リフォーム等のグループ各社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、営業収益は毎期増加を続けており、新型コロナウイルス感染症の影響からの回復と事業基盤の拡大により成長軌道に乗っています。経常利益もこれに連動して増加傾向にあり、収益性の改善が着実に進んでいます。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
営業収益 2,167億円 2,497億円 2,700億円 2,922億円 3,076億円
経常利益 33億円 127億円 270億円 348億円 357億円
利益率(%) 1.5% 5.1% 10.0% 11.9% 11.6%
当期利益(親会社所有者帰属) 19億円 70億円 161億円 224億円 248億円

(2) 損益計算書


営業収益、売上総利益、営業利益ともに前期を上回る実績を計上しています。各段階の利益率も安定して推移しており、物価高騰などの外部要因がある中でも堅実な事業運営が行われていることがうかがえます。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業収益 2,922億円 3,076億円
売上総利益 1,085億円 1,141億円
売上総利益率(%) 37.1% 37.1%
営業利益 378億円 388億円
営業利益率(%) 12.9% 12.6%


販売費及び一般管理費のうち、経費が419億円(構成比56%)、人件費が286億円(同38%)を占めています。

(3) セグメント収益


すべてのセグメントで前期比増収を達成しています。利益面では、不動産業が前年の収益物件開業の反動などで減益となったものの、ホテル業における宿泊需要の増加による平均客室単価の上昇や、流通業の黒字転換などが寄与し、連結全体での増益を牽引しました。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期) 利益(2025年3月期) 利益(2026年3月期) 利益率
運輸業 429億円 444億円 49億円 57億円 12.9%
流通業 948億円 972億円 -2億円 9億円 0.9%
不動産業 669億円 688億円 190億円 140億円 20.3%
ホテル業 665億円 751億円 126億円 164億円 21.9%
その他 210億円 221億円 17億円 22億円 9.8%
調整額 -億円 -億円 -2億円 -3億円 -
連結(合計) 2,922億円 3,076億円 378億円 388億円 12.6%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業活動によるキャッシュ・フローはプラス、投資活動によるキャッシュ・フローはマイナス、財務活動によるキャッシュ・フローはプラスとなっており、営業で稼いだ資金に借入を加えて積極的な投資を行っている積極型と言えます。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 367億円 228億円
投資CF -438億円 -304億円
財務CF 52億円 98億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は12.9%、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は25.0%となっており、いずれも非製造業の市場平均を上回る水準です。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「快適な暮らしをサポートする事業を通じてお客様の喜びを実現し、地域社会の豊かな発展に貢献します」というグループ「基本理念」に則り経営を行っています。各社の自己責任に基づく自立経営および相互の連携強化により、地域社会の発展に貢献することを目指しています。

(2) 企業文化


「経営姿勢」として「徹底したお客様視点の実践」「グループ連結利益の最大化」「活力ある企業風土の醸成」「よりよい社会への貢献」の4つを掲げています。生活に密着したサービスや、お客様のニーズを的確に捉えた事業を展開する企業風土が根付いています。

(3) 経営計画・目標


「長期ビジョン“Vision2030”」および「第7次中期経営計画(2025年度〜2027年度)」を策定し、収益性、健全性、効率性の観点から客観的な経営指標を設定しています。

* 営業利益:380億円(2027年度)、370億円程度(2030年度)
* EBITDA:670億円(2027年度)、620億円程度(2030年度)
* ROA(総資産営業利益率):4.5%(2027年度)
* ROE(自己資本利益率):10.2%(2027年度)
* 自己資本比率:26.5%(2027年度)、20%台後半(2030年度)

(4) 成長戦略と重点施策


少子高齢化やコスト増といった厳しい事業環境の中、「既存事業の構造改革と新たな稼ぐ力の強化」「不動産事業の抜本的な強化」「選ばれる沿線の創造」「新たな事業領域への拡大」などを重点戦略として掲げています。大規模投資フェーズに備えて強固な財務基盤の整備を行うとともに、サステナビリティの追求により持続的な成長を目指します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「市場価値の高い人財が育成され、働きがいと働きやすさでその人財に選ばれるグループであり続ける」ことをテーマに掲げています。教育体系の再構築や自律的なキャリア形成支援、戦略的な人財育成・配置を進め、変化の激しいビジネス環境に柔軟に対応し挑戦できる人財の育成を目指しています。また、多様な人材が活躍できる心理的安全性の高い組織風土の醸成にも取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 46.6歳 14.0年 9,744,410円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 5.3%
男性育児休業取得率 96.2%
男女賃金差異(全労働者) 68.4%
男女賃金差異(正規労働者) 68.4%
男女賃金差異(非正規労働者) -


※同社において非正規労働者の該当がないため、男女賃金差異(非正規労働者)は記載がありません。

また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、年次有給休暇取得率(81.3%)、自己都合離職率(5.1%)、管理職複数事業経験率(78.6%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 重大事故の発生

鉄道やバスの運行における事故や火災、流通事業における食中毒や異物混入などが発生した場合、人命に関わる事態や社会的信用の失墜を招き、事業継続に影響を及ぼす可能性があります。設備の定期点検や安全管理体制の強化、危機対応体制の構築により未然防止に努めています。

(2) 事業構造の変化

少子高齢化の進展やテクノロジーの進化、生活様式の変化により、既存の収益モデルや顧客層が大きく変わるリスクがあります。環境適応が遅れれば業績や成長性に影響が出るため、ニーズの変化を適時に把握し、新規事業の創出や沿線価値向上に向けた施策に取り組んでいます。

(3) 金利変動と調達コスト上昇

設備投資や再開発に向けて多額の有利子負債を抱えているため、市場金利や調達コストが上昇すると支払利息が増加し、投資採算が悪化するリスクがあります。これに対し、借入金の固定金利化を進め、資金調達先や手法の多様化を図りながら財務健全性の維持に努めています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。