※本記事は、相鉄ホールディングス株式会社 の有価証券報告書(第157期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年06月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 相鉄ホールディングスってどんな会社?
相模鉄道を中心とする相鉄グループの純粋持株会社。鉄道・バスの運輸業や、沿線開発等の不動産業を展開しています。
■(1) 会社概要
1918年に相模鉄道として設立され、1949年に東京証券取引所へ上場しました。2009年に持株会社体制へ移行し、相鉄ホールディングスに商号変更すると同時に、鉄道事業を相模鉄道(事業会社)に承継しました。2019年にはJR線との、2023年には東急線との相互直通運転を開始し、広域鉄道ネットワークを形成しています。
連結従業員数は5,246人、単体では74人です。筆頭株主は資産管理業務を行う日本マスタートラスト信託銀行(信託口)で、第2位、第3位にはそれぞれ三井住友銀行、横浜銀行といった金融機関が名を連ねています。金融機関や信託銀行が上位を占める安定した株主構成となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 8.61% |
| 三井住友銀行 | 4.20% |
| 横浜銀行 | 4.20% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性10名、女性2名、計12名で構成され、女性役員比率は16.7%です。代表取締役社長は滝澤秀之氏です。社外取締役比率は25.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 林 英 一 | 代表取締役会長 | 1972年入社。経営企画室部長、グループ経営戦略室長、副社長執行役員を経て、2012年代表取締役、2013年社長に就任。2019年より現職。 |
| 滝 澤 秀 之 | 代表取締役社長社長執行役員 | 1984年入社。相鉄ビルマネジメント専務、相模鉄道社長などを歴任。2019年より現職。 |
| 平 野 雅 之 | 取締役常務執行役員経営戦略室長 | 1987年入社。相模鉄道常務、相鉄ネクストステージ社長などを経て、2023年より現職。 |
| 後 藤 亮 一 | 取締役執行役員 | 1989年入社。経営戦略室部長、相鉄ビジネスサービス社長、相鉄ウィッシュ社長などを経て、2023年より現職。 |
社外取締役は、加々美 光 子(加々美法律事務所パートナー弁護士)、恩 地 祥 光(有限会社オズ・コーポレーション代表)、藤 川 裕紀子(公認会計士・税理士)です。
2. 事業内容
同社グループは、「運輸業」「流通業」「不動産業」「ホテル業」および「その他」事業を展開しています。
■(1) 運輸業
鉄道業およびバス業を展開しています。鉄道業では、相模鉄道が横浜~海老名間等の路線網を有し、旅客輸送サービスを提供しています。バス業では、相鉄バスが乗合バスおよび貸切バスの運行を行っています。
収益は、鉄道およびバスの利用者からの運賃収入が主となります。運営は、鉄道事業を株式会社相模鉄道、バス事業を株式会社相鉄バスが行っています。
■(2) 流通業
スーパーマーケット業およびその他流通業を展開しています。相鉄沿線を中心に、地域密着型のスーパーマーケット運営や、駅構内等での物品販売を行っています。
収益は、店舗における商品販売代金等です。運営は、スーパーマーケット業を相鉄ローゼン株式会社、その他流通業を相鉄ステーションリテール株式会社等が主に行っています。
■(3) 不動産業
不動産分譲業および不動産賃貸業を展開しています。分譲業ではマンションや戸建住宅の開発・販売を行い、賃貸業ではオフィスビルや商業施設等の保有・運営を行っています。
収益は、不動産購入者からの物件販売代金およびテナントからの賃貸料収入等です。運営は、分譲業を相鉄不動産株式会社や相鉄不動産販売株式会社、賃貸業を株式会社相鉄アーバンクリエイツや株式会社相鉄ビルマネジメント等が主に行っています。
■(4) ホテル業
宿泊特化型ホテルを中心にホテル事業を展開しています。国内および海外(韓国、台湾、ベトナム、タイ)において、「相鉄フレッサイン」「相鉄グランドフレッサ」「ザ・スプラジール」等のブランドでホテルを運営しています。
収益は、宿泊客からの宿泊料や付帯サービス利用料等です。運営は、相鉄ホテル株式会社、株式会社相鉄ホテルマネジメント、株式会社相鉄ホテル開発等が主に行っています。
■(5) その他
ビルメンテナンス業、熱供給事業、建設業、その他サービス業を展開しています。グループ内外の施設の清掃・警備・設備管理や、地域冷暖房事業等を行っています。
収益は、業務委託料や熱供給料金、工事代金等です。運営は、相鉄企業株式会社、横浜熱供給株式会社、相鉄リフォーム株式会社、相鉄ビジネスサービス株式会社等が主に行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、経常利益は2021年3月期の赤字からV字回復し、毎期増益を続けています。当期純利益も同様に回復基調にあり、直近では過去最高水準の利益を計上しています。全体として、コロナ禍からの回復と成長軌道への回帰が鮮明です。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上収益(または売上高) | -億円 | -億円 | -億円 | -億円 | -億円 |
| 経常利益 | -46億円 | 33億円 | 127億円 | 270億円 | 348億円 |
| 利益率(%) | - | - | - | - | - |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | -51億円 | 4億円 | 46億円 | 91億円 | 191億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間の損益構成を見ると、営業利益および経常利益が大きく伸長しています。特別利益の増加や特別損失の計上があるものの、最終的な当期純利益は前期比で倍増しており、収益性が大幅に向上していることがわかります。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | -億円 | -億円 |
| 売上総利益 | -億円 | -億円 |
| 売上総利益率(%) | -% | -% |
| 営業利益 | 290億円 | 378億円 |
| 営業利益率(%) | -% | -% |
販売費及び一般管理費のうち、経費が385億円(構成比54.5%)、人件費が276億円(同39.0%)を占めています。
■(3) セグメント収益
全てのセグメントで増収または高水準を維持しています。特にホテル業はインバウンド需要等を背景に大幅な増収となりました。不動産業も分譲・賃貸ともに好調で、全体業績を牽引しています。運輸業は定期外利用の増加等により堅調に推移しています。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) |
|---|---|---|
| 運輸業 | 414億円 | 429億円 |
| 流通業 | 949億円 | 948億円 |
| 不動産業 | 597億円 | 669億円 |
| ホテル業 | 543億円 | 665億円 |
| その他 | 198億円 | 210億円 |
| 連結(合計) | 2,700億円 | 2,922億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
**積極型**
本業である営業活動から得た資金と、財務活動による調達資金を合わせて、投資活動に積極的に充当しており、成長投資を継続している状態です。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 206億円 | 367億円 |
| 投資CF | -580億円 | -438億円 |
| 財務CF | 349億円 | 52億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は12.9%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は24.0%で市場平均を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「快適な暮らしをサポートする事業を通じてお客様の喜びを実現し、地域社会の豊かな発展に貢献します」という「基本理念」を掲げています。この理念のもと、生活に密着したサービスや顧客ニーズを捉えた各種サービスを提供し、地域社会への貢献を目指しています。
■(2) 企業文化
同社グループは、「経営姿勢」として、「(1)徹底したお客様視点の実践」「(2)グループ連結利益の最大化」「(3)活力ある企業風土の醸成」「(4)よりよい社会への貢献」の4つを掲げています。各社が自己責任に基づく自立経営を行うとともに、相互の連携を強化する風土を重視しています。
■(3) 経営計画・目標
同社は「長期ビジョン“Vision2030”」および「第7次中期経営計画(2025年度~2027年度)」において、経営目標の達成状況を判断するための客観的な指標を設定しています。
* 2027年度 営業利益:380億円
* 2027年度 親会社株主に帰属する当期純利益:224億円
* 2027年度 EBITDA:670億円
* 2027年度 ROA:4.5%
* 2027年度 ROE:10.2%
■(4) 成長戦略と重点施策
同社グループは、「長期ビジョン“Vision2030”」および「第7次中期経営計画」において、「既存事業の構造改革と新たな稼ぐ力の強化」「不動産事業の抜本的な強化」「選ばれる沿線の創造」「新たな事業領域への拡大」等を重点戦略として推進します。また、大規模投資に備えた強固な財務基盤の整備や、グループ総合力の最大化、サステナビリティの追求にも取り組み、持続的な成長を目指します。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社グループは、成長戦略実現のため、多様な思考を持ち改革できる人財、専門性とグループ横断的視点を持つ人財、新領域に挑戦する人財を求めています。適正人財の確保、積極的なジョブローテーション、Off-JTの充実、ダイバーシティ&インクルージョンの推進、健康経営の強化、およびテレワークやフレックスタイム制等の社内環境整備に取り組んでいます。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 47.0歳 | 15.9年 | 9,530,350円 |
※平均年間給与は、賞与及び基準外賃金を含んでいます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 8.1% |
| 男性育児休業取得率 | 90.5% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 68.5% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 68.5% |
| 男女賃金差異(非正規) | -% |
※男女賃金差異(非正規)については、同社(提出会社)は純粋持株会社であり管理部門のみの少人数体制であること等から、該当者がいない、または公表義務の対象外である可能性があります。
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性管理職比率(7.4%)、新規採用時の女性労働者の割合(29.5%)、年次有給休暇取得率(78.9%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 金利変動リスク
同社グループは多額の設備投資を要する事業を営んでおり、資金の多くを有利子負債で調達しています。固定金利化等でリスク抑制に努めていますが、市場金利の上昇や格付け低下が生じた場合、金利負担の増加や資金調達条件の悪化により、業績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 少子高齢化
国内の少子高齢化の進展に伴い、安全対策やバリアフリー化等の設備投資が増加する可能性があります。また、生産年齢人口や就学・就業人口の減少により旅客輸送需要が減退し、収益減少やコスト増加を通じて、業績や財政状態に影響を与える可能性があります。
■(3) 自然災害等
鉄道や商業施設等の多数の設備を保有し、多くの顧客を対象とする事業を展開しているため、地震・台風等の自然災害、事故、テロ等が発生した場合、営業休止や顧客減少による売上減少、復旧費用の増加等が生じ、業績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。これに対し、BCPの策定や訓練、防災対策等を行っています。
■(4) 不動産市況悪化のリスク
同社グループが保有する棚卸資産や有形・無形固定資産について、時価の下落や不動産市況の停滞・悪化が生じた場合、評価損の計上等により、業績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。これに対し、アセットマネジメント戦略による資産価値維持等に取り組んでいます。



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