※本記事は、京福電気鉄道株式会社 の有価証券報告書(第119期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月19日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 京福電気鉄道ってどんな会社?
京阪ホールディングス傘下で、京都の「嵐電」や福井のバス事業、不動産、レジャー施設を運営する企業です。
■(1) 会社概要
同社の前身は1888年設立の京都電燈会社で、1942年に電鉄部門を継承して設立されました。1949年に上場を果たし、2003年には福井地区の鉄道事業をえちぜん鉄道へ譲渡するなど事業再編を進めました。2022年の市場区分見直しに伴い、東証スタンダード市場へ移行しています。
現在の従業員数は連結613名、単体109名です。筆頭株主は事業会社である親会社の京阪ホールディングスで、第2位は駐車場事業等を展開する日本駐車場開発、第3位は日本生命保険(信託口)となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 京阪ホールディングス | 43.17% |
| 日本駐車場開発 | 8.86% |
| 日本生命保険相互会社 | 4.70% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性12名、女性1名の計13名で構成され、女性役員比率は7.7%です。代表取締役社長は大塚憲郎氏です。社外取締役比率は15.4%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 大塚 憲郎 | 取締役社長(代表取締役) | 1987年京阪電気鉄道(現京阪ホールディングス)入社。同社執行役員等を経て、2019年6月より現職。 |
| 長尾 拡昭 | 専務取締役グループ事業室長福井事務所長 | 1988年同社入社。管理本部長、監査室長、常務取締役グループ事業室長等を経て、2024年6月より現職。 |
| 山崎 正睦 | 常務取締役鉄道部長 | 1992年京阪電気鉄道(現京阪ホールディングス)入社。同社車両部長を経て、2024年6月より現職。 |
| 三宅 章夫 | 取締役グループ事業室副室長 | 1997年同社入社。鉄道部長を経て、2018年6月取締役就任。2024年7月より現職。 |
| 竹内 康弘 | 取締役福井事務所副所長 | 1995年同社入社。不動産事業部長を経て、2019年6月取締役就任。2023年7月より現職。 |
| 濱 和彦 | 取締役沿線創造事業部長 | 1989年京阪電気鉄道(現京阪ホールディングス)入社。京都バス常務取締役等を経て、2020年6月より現職。 |
| 藤木 斉 | 取締役管理部長監査室長 | 1993年京阪電気鉄道(現京阪ホールディングス)入社。京福リムジンバス社長等を経て、2021年6月より現職。 |
| 石丸 昌宏 | 取締役 | 1985年京阪電気鉄道(現京阪ホールディングス)入社。京阪ホールディングス社長を経て、2019年6月より現職。 |
社外取締役は、大柳雅利(元第一工業製薬代表取締役社長)、山口記弘(元東映京都スタジオ代表取締役社長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「運輸業」「不動産業」「レジャー・サービス業」の3つの報告セグメントを展開しています。
■(1) 運輸業
京都地区での鉄軌道事業(嵐電、叡山ケーブル・ロープウェイ)および、京都・福井地区でのバス・タクシー事業を行っています。地域住民や観光客を主な顧客とし、安全な輸送サービスを提供しています。
収益は、乗客からの運賃収入が中心です。運営は、鉄軌道事業を同社が、バス事業を京都バスや京福バスが、タクシー事業をケイカン交通や福井交通などが担っています。
■(2) 不動産業
京都・福井・大阪エリアにおいて、不動産の賃貸および販売事業を展開しています。マンションや商業施設の賃貸、宅地の分譲などを行い、安定的な収益基盤の構築を図っています。
収益は、テナントや入居者からの賃貸料、および不動産購入者からの販売代金です。運営は、同社および三国観光産業、京福不動産が行っています。
■(3) レジャー・サービス業
ホテル、水族館の運営のほか、物販業や広告代理店業を行っています。越前松島水族館や嵐山駅ビル内の商業施設などを通じ、観光客や地域住民にレジャー体験を提供しています。
収益は、施設利用者からの入場料、宿泊料、物販収入などです。運営は、同社、三国観光産業、京福不動産が各事業を担当しています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は着実に増加傾向にあります。特に直近の2025年3月期は145億円まで拡大しました。経常利益も順調に推移し、利益率は10%台後半を維持するなど高い収益性を示しています。当期純利益については2024年3月期に大きく伸長した後、当期はやや減少しましたが、依然として高水準を保っています。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 104億円 | 116億円 | 133億円 | 140億円 | 145億円 |
| 経常利益 | 1.3億円 | 9億円 | 14億円 | 19億円 | 23億円 |
| 利益率(%) | 1.2% | 7.6% | 10.5% | 13.9% | 16.1% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | -3.4億円 | 7億円 | 12億円 | 21億円 | 17億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は前期比で増加し、145億円となりました。営業利益も増加し、営業利益率は15.9%に向上しています。鉄道・運輸事業という特性上、営業費用の中で人件費や減価償却費を含む営業費の割合が高く、販管費の計上が少ない構造となっています。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 140億円 | 145億円 |
| 売上総利益 | - | - |
| 売上総利益率(%) | - | - |
| 営業利益 | 19億円 | 23億円 |
| 営業利益率(%) | 13.6% | 15.9% |
営業費合計122億円のうち、運輸業等営業費及び売上原価が121億円(構成比99.5%)と大半を占めています。販売費及び一般管理費は0.6億円(同0.5%)で、その主な内訳は人件費0.4億円となっています。これは同社が鉄道事業会計規則に基づき表示しているためです。
■(3) セグメント収益
当期は全セグメントで増収増益となりました。運輸業はインバウンド需要や北陸新幹線延伸効果で好調、不動産業は新規物件取得が寄与しました。レジャー・サービス業も水族館の新施設効果等で利益を伸ばしています。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) | 利益(2024年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 運輸業 | 75億円 | 78億円 | 3.0億円 | 4.2億円 | 5.4% |
| 不動産業 | 53億円 | 54億円 | 14億円 | 16億円 | 30.2% |
| レジャー・サービス業 | 12億円 | 12億円 | 1.8億円 | 2.5億円 | 20.3% |
| 連結(合計) | 140億円 | 145億円 | 19億円 | 23億円 | 15.9% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業CFで得た資金を借入金の返済や投資に充当しており、健全な財務運営が行われています(健全型)。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 25億円 | 36億円 |
| 投資CF | -18億円 | -29億円 |
| 財務CF | -7億円 | -5億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は15.0%で市場平均を大きく上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は49.2%で市場平均をやや上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同グループは、「安全・安心をブランドの礎とし、人と社会に貢献します」を経営理念として掲げています。京都地区では鉄軌道事業、福井地区ではバス・タクシー事業を中心とした交通インフラを核に、地域と協働して沿線の魅力を高めることで、企業価値の向上を目指しています。
■(2) 企業文化
「安全・安心・感動を基礎に、社会と一体となって歩みます」「進取・挑戦の歩みを止めず、日々進化し続けます」「人と自然を敬愛します」という3つの経営姿勢を重視しています。安全輸送の確保を最優先としつつ、環境負荷の低減や地域のにぎわいづくりに貢献する姿勢を持っています。
■(3) 経営計画・目標
「京福グループ中期経営計画2025」を策定し、2030年度の長期目標も定めています。確実に成長を続け、地域インフラとしての重要性を高めること、安定的な経営を持続することを目指しています。
* 2030年度営業利益:20億円
* 親会社株主に帰属する当期純利益:各年度安定的に10億円以上
■(4) 成長戦略と重点施策
「安全・安心の着実な推進」「沿線深耕と地域貢献への取組み」「持続可能な経営」を重点施策としています。嵐山線への新型車両導入やバリアフリー化、EVバス導入等の設備投資を進めるほか、不動産では収益物件の取得や賃貸住宅の展開拡大を行います。また、MaaSなどの新技術活用や観光資源の掘り起こしにより、新たな顧客の流れを取り込む戦略です。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「誰もが働きやすい職場環境の整備」を掲げ、健康経営や人材育成に取り組んでいます。資格取得支援やジョブローテーションにより能力開発を促すとともに、多様な価値観を持つ人材が活躍できるよう、女性・外国人・中途採用者の積極採用と職域拡大を進めています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 40.1歳 | 14.6年 | 5,047,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | - |
| 男性育児休業取得率 | - |
| 男女賃金差異(全) | - |
| 男女賃金差異(正規) | - |
| 男女賃金差異(非正規) | - |
※提出会社の数値については、該当者がいない(配偶者の出産がない)等の理由により「-」と表示されています。
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、男性の育児休業取得者(5名 ※2021年度~2024年度の累計)、女性正社員の割合(7.1%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 少子高齢化と人口減少
就業・就学人口の減少は、同社グループの主力である鉄軌道およびバス事業の輸送人員減少に直結します。また、労働力人口の減少による採用難が深刻化した場合、運転士等の要員確保が困難となり、事業継続や業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 自然災害・気候変動
大規模な地震や風水害の発生は、交通インフラや観光施設に物理的な損害を与えるだけでなく、沿線の観光資源である自然環境に変化をもたらす可能性があります。これにより、同社グループの営業活動に著しい支障が生じ、経営成績や財政状態に影響を与えるリスクがあります。
■(3) 電力供給不足への対応
同社の鉄軌道事業は電力を使用して車両を運行しているため、発電所の稼働停止等により電力供給が不足し大規模停電などのトラブルが発生した場合、安定的な輸送サービスの提供が困難となり、事業継続に大きな支障が生じる可能性があります。



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