広島電鉄 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

広島電鉄 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

広島電鉄は東京証券取引所スタンダード市場に上場する企業です。広島県を基盤とし、鉄軌道事業や自動車事業を中核とする運輸業をはじめ、不動産業、建設業、流通業など多角的な事業を展開しています。直近の業績は、新路線開業やインバウンド客の増加により運輸業が好調で増収となり、経常損失は大幅に縮小しました。


※本記事は、広島電鉄株式会社の有価証券報告書(第117期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 広島電鉄ってどんな会社?


鉄軌道事業や自動車事業を中核とし、広島県西部を中心に多角的な事業を展開する企業です。

(1) 会社概要


1910年に設立され、1912年に軌道線を開業して事業を開始しました。1942年に現在の広島電鉄が設立され、1949年には広島証券取引所に上場しています。2012年には呉市交通局のバス事業を承継し、2024年に新乗車券サービスを導入しました。2026年にはA&Cを完全子会社化しています。

同社グループは連結で2,241名、単体で1,550名の従業員を擁しています。筆頭株主は事業会社である広島日野自動車で、第2位および第3位には主要取引金融機関である広島銀行や三菱UFJ銀行が名を連ねています。

氏名 持株比率
広島日野自動車 3.85%
広島銀行 3.43%
三菱UFJ銀行 2.89%

(2) 経営陣


同社の役員は男性10名、女性2名の計12名で構成され、女性役員比率は16.7%です。代表取締役社長は仮井康裕氏が務めています。社外取締役比率は25.0%です。

氏名 役職 主な経歴
椋田昌夫 代表取締役会長 1969年同社入社。専務等を経て、2013年代表取締役社長、2024年より現職。
仮井康裕 代表取締役社長 1983年同社入社。専務等を経て、2024年より現職。
横田好明 専務取締役経営企画本部長 1988年同社入社。常務等を経て、2024年より現職。
瀬﨑敏正 常務取締役 1989年同社入社。広電建設代表取締役社長等を経て、2026年より現職。
岡田茂 常務取締役 1989年同社入社。広電宮島ガーデン代表取締役会長等を経て、2026年より現職。
立岩薫 取締役 広島市道路交通局次長、安佐北区長等を経て、2018年同社入社、2026年より現職。


社外取締役は、田村興造(広島ガス相談役)、平田かおり(弁護士)、戸井佳奈子(安田女子大学現代ビジネス学部長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「運輸業」「流通業」「不動産業」「建設業」「レジャー・サービス業」を展開しています。

運輸業


鉄軌道事業、自動車事業、索道業、海上運送業などを展開し、広島エリアの公共交通サービスを提供しています。利用者に対して快適で安全な移動環境を提供し、観光客から地域住民まで幅広い顧客を対象としています。

顧客からの運賃や乗車券販売が主な収益源です。鉄軌道事業や一部の自動車事業は同社が運営し、その他の自動車事業や索道業などは備北交通、エイチ・ディー西広島、広島観光開発などの子会社が運営しています。

流通業


山陽自動車道の宮島サービスエリアなどにおいて、物品販売業を展開しています。高速道路を利用する観光客やドライバーに対し、地域の特産品や土産物、飲食などの商品を提供しています。

顧客からの商品購入代金や飲食代金が主な収益源です。本事業は同社の子会社である広電宮島ガーデンが運営し、仕入価格の高騰に対応しながら販路拡大に取り組んでいます。

不動産業


広島エリアを中心に、不動産賃貸業と不動産販売業を展開しています。商業施設やオフィスビルなどのテナント企業、および分譲マンションを購入する一般消費者を主な顧客としています。

テナントからの賃貸収入や、分譲マンションなどの販売代金が収益源です。不動産賃貸業は同社のほか、子会社の交通会館などが運営しており、不動産販売業は同社が主体となって分譲マンション事業を進めています。

建設業


土木・建築業を中心に、公共工事や民間の大型案件の受注、および戸建住宅の販売事業などを展開しています。官公庁や民間企業、一般消費者を対象として幅広い建設サービスを提供しています。

発注者からの工事請負代金や戸建住宅の販売代金が主な収益源です。本事業の運営は同社の子会社である広電建設やA&Cが中心となって行い、働きやすい職場環境の整備や業務効率化に努めています。

レジャー・サービス業


ゴルフ場やゴルフ練習場の運営、ホテル業、飲食業などを展開しています。地域住民や観光客を顧客とし、安全で快適な施設環境とサービスを提供しています。

利用者からの施設利用料や宿泊料、飲食代金が主な収益源です。ゴルフ業はグリーンバーズ・ヒロデンなどが運営し、ホテル業や飲食業はA&Cや広電宮島ガーデンなどの子会社がサービスを提供しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績推移を見ると、経常損失は年々縮小傾向にあります。最終的な当期利益については、一時赤字を計上したものの、その後は黒字に転換し、直近では安定した利益を確保しています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 - - - - -
経常利益 -44億円 -30億円 -10億円 -12億円 -1億円
利益率(%) - - - - -
当期利益(親会社所有者帰属) -9億円 8億円 6億円 10億円 10億円

(2) 損益計算書


直近2期間の営業利益を比較すると、損失幅が大幅に縮小しています。インバウンド需要の拡大や新路線の開業による増収効果が損失の減少に寄与しています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 - -
売上総利益 - -
売上総利益率(%) - -
営業利益 -14億円 -3億円
営業利益率(%) - -


販売費及び一般管理費のうち、人件費が34億円(構成比51%)、経費が23億円(同34%)を占めています。また、運輸業等営業費及び売上原価においては、人件費が119億円(同38%)、売上原価が98億円(同32%)を占めています。

(3) セグメント収益


セグメント別の売上高を見ると、主力の運輸業が新路線開業やインバウンド客の増加により大きく増収となっています。また、不動産業も分譲マンションの引き渡しや新規施設の稼働により売上を伸ばしており、全体として増収傾向にあります。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
運輸業 210億円 232億円
流通業 12億円 12億円
不動産業 52億円 62億円
建設業 55億円 60億円
レジャー・サービス業 9億円 9億円
連結(合計) 337億円 375億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業キャッシュ・フローはプラス、投資キャッシュ・フローはマイナス、財務キャッシュ・フローはプラスとなっており、営業で利益を出し、借入によって積極投資を行う「積極型」のキャッシュ・フロー状態を示しています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 51億円 17億円
投資CF -56億円 -43億円
財務CF 6億円 18億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は2.7%、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は40.8%であり、いずれも市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「広島のワクワクを創造する」をパーパスとして掲げ、すべての行動の判断軸としています。被爆地である広島に根差す交通運輸を中核とした企業グループとして、持続可能な地域社会の実現と事業成長の両立を図りつつ、外部環境の変化に柔軟に対応しながら社会に貢献していくことを目指して経営を行っています。

(2) 企業文化


同社は、従業員一人ひとりの力を最大限発揮できる環境を整えるため「人財ビジョン」を掲げています。責任感(Pride)や感謝(Understanding)といった基礎力をベースに、主体性(Thinking)、挑戦(Action)、協働(Teamwork)という実行力を重んじ、新しい価値を創り出す文化を重視しています。

(3) 経営計画・目標


同社は、2045年を長期ビジョンの起点と捉え、中期経営計画「広電グループ経営総合3ヵ年計画2028」を推進しています。2028年度までにROE4.5%の達成を最重要KGIと位置づけ、財務基盤の再構築と成長領域への投資を両立させることで、持続的な成長の循環を生み出す基盤づくりに取り組んでいます。

* 営業収益:450億円
* 当期純利益:20億円
* ROE:4.5%
* EBITDA有利子負債倍率:7.0倍以下

(4) 成長戦略と重点施策


コーポレート戦略としてグループ経営体制や財務・人財戦略の強化を図りつつ、事業戦略として安全・安心なサービスの提供と交通サービスの価値向上を目指しています。持続可能な公共交通サービスの確立や不動産・建設事業の収益基盤強化、観光の成長ドライバー化などの重点施策を実行し、新たな収益機会の獲得に挑戦しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「人財」を企業の重要な経営資本と位置づけ、人財の獲得・定着・育成に継続的に取り組んでいます。ジェンダー平等やシニア層の活躍促進など多様な人材を獲得し、リスキリング支援や資格取得支援を通じた能力開発を推進することで、従業員一人ひとりが潜在能力を最大限発揮できる環境を整備しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均とほぼ同じ水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 48.3歳 17.2年 5,779,680円


※平均年間給与は諸手当及び賞与を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 10.9%
男性育児休業取得率 100.0%
男女賃金差異(全労働者) 80.8%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 86.8%
男女賃金差異(パート有期雇用) 51.2%


また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、年次有給休暇取得率(95.1%)、採用者に占める女性比率(17.3%)、育児目的休暇の取得率(52.3%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 自然災害・感染症の拡大について


同社の事業展開地域は広島県西部地域に集中しており、大規模な自然災害や感染症の流行により、営業拠点や施設が影響を受ける可能性があります。BCPの策定や防災訓練などの対策を講じていますが、これらの事象が発生した場合、経営成績等に影響を及ぼすリスクがあります。

(2) 運輸部門における事故について


鉄軌道事業や自動車事業などにおいて、車両や設備の欠陥、人為的要因による大規模な事故が発生した場合、運行停止による減収や損害賠償費用の発生に加え、顧客からの信頼失墜につながり、同社の営業活動に多大な影響を及ぼす可能性があります。

(3) 広島県西部地域の経済情勢の変化について


同社の事業展開地域は主に広島市および呉市とその近郊に集中しているため、当該地域における消費動向や、人口の増減、地価の変動などが、同社グループの経営成績等の状況に影響を及ぼす可能性があります。

(4) 法的規制・法令改正への対応について


同社の事業は、鉄道事業法や道路運送法などの各種法令による規制を受けており、運賃上限の設定等が行われています。機動的な運賃変更が困難な場合や、法令の改正によって設備投資の負担が生じた場合、経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。