広島電鉄 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

広島電鉄 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証スタンダード市場に上場し、広島県西部を中心に路面電車やバス等の運輸業を展開するほか、不動産、建設事業も手掛けています。2025年3月期は、インバウンド需要の回復や建設・不動産事業の伸長により増収となりました。営業損益は赤字が継続したものの、当期純利益は前期比で増益を達成しています。


※本記事は、広島電鉄株式会社 の有価証券報告書(第116期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 広島電鉄ってどんな会社?


広島県内最大のバス・路面電車ネットワークを持ち、地域交通インフラを支えつつ不動産開発等も行う企業です。

(1) 会社概要


1910年に広島電気軌道として設立され、1912年に軌道線を開業して創業しました。1942年に広島瓦斯電軌より交通事業を分離して現社名で設立され、1949年には広島証券取引所へ上場しました。その後、2000年に東京証券取引所市場第二部へ上場し、2005年には国産初の完全超低床型路面電車を導入、2008年にはICカード「PASPY」を導入するなど、交通サービスの高度化を推進しています。

現在の従業員数は連結2,182名、単体1,555名です。筆頭株主は広島日野自動車で、第2位は地元の有力金融機関である広島銀行、第3位は三菱UFJ銀行となっており、地元企業や金融機関が主要株主として名を連ねています。

氏名 持株比率
広島日野自動車 3.85%
広島銀行 3.44%
三菱UFJ銀行 2.89%

(2) 経営陣


同社の役員は男性11名、女性1名の計12名で構成され、女性役員比率は8.3%です。代表取締役社長は仮井康裕氏です。社外取締役比率は25.0%です。

氏名 役職 主な経歴
椋田 昌夫 代表取締役会長 1969年入社。取締役M・Sカンパニープレジデント、専務取締役等を経て2013年に社長就任。広電建設取締役会長等を兼務し、2024年6月より現職。
仮井 康裕 代表取締役社長DX・IT戦略室広報・ブランド戦略室担当 1983年入社。バス事業本部長、交通政策本部長、DX戦略室長等を歴任。2022年に代表取締役専務就任後、2024年6月より現職。
横田 好明 専務取締役人財管理本部電車事業本部バス事業本部広島東部事業本部交通技術研究室担当 1988年入社。経営企画本部長、地域共創本部長、広報・ブランド戦略室長等を歴任。2024年6月より現職。
瀬﨑 敏正 常務取締役地域共創本部不動産事業本部担当 1989年入社。不動産事業本部長を経て広電建設代表取締役社長に就任(現任)。2021年6月より現職。
岡田  茂 常務取締役経営管理本部経営企画室担当 1989年入社。経理管理グループマネジャー、経営管理本部長等を経て、2021年6月より現職。
立岩  薫 取締役交通政策本部担当 1981年広島市採用。同市道路交通局次長、安佐北区長等を経て2018年に同社入社。交通政策本部長等を歴任し2024年6月より現職。


社外取締役は、田村興造(広島ガス相談役)、荒本徹哉(元広島市副市長)、平田かおり(弁護士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「運輸業」「流通業」「不動産業」「建設業」「レジャー・サービス業」および「その他」事業を展開しています。

(1) 運輸業


鉄軌道事業、自動車(バス)事業、索道業、海上運送業、航空運送代理業、ハイヤー業を行っています。広島市内を中心とした路面電車やバスの運行、宮島航路の運航など、地域の移動インフラを担っています。

収益源は、利用者からの運賃収入や航空運送代理業務の手数料などです。運営は、鉄軌道・自動車事業を主に広島電鉄が担い、備北交通、エイチ・ディー西広島、芸陽バスなどの子会社がバス事業等を、宮島松大汽船が海上運送を、広島観光開発が索道業を行っています。

(2) 流通業


物品販売業を展開しており、主に山陽自動車道の宮島サービスエリアにおける店舗運営を行っています。

収益源は、サービスエリア利用客への商品販売代金や飲食提供による売上です。運営は、連結子会社の広電宮島ガーデンが行っています。

(3) 不動産業


自社保有物件等の不動産賃貸業および分譲マンションなどの不動産販売業を展開しています。広島市内のオフィスビルや商業施設の賃貸、マンション開発などが主な事業です。

収益源は、テナントからの賃貸料収入および不動産購入者からの物件販売代金です。運営は、主に広島電鉄が行うほか、交通会館、広島バスセンター(持分法適用会社)なども賃貸事業を行っています。

(4) 建設業


土木・建築工事および電気通信工事を行っています。公共工事や民間工事の請負のほか、グループ内の設備保全なども担っています。

収益源は、発注者からの工事請負代金です。運営は、主に連結子会社の広電建設が行っています。

(5) レジャー・サービス業


飲食業、ボウリング業、ゴルフ業、旅行業を展開しています。ゴルフ場やボウリング場の運営、旅行商品の販売などを行っています。

収益源は、施設利用者からのプレー代金や利用料、飲食代金、旅行代金などです。運営は、広電宮島ガーデン、ヒロデンプラザ、グリーンバーズ・ヒロデンなどがそれぞれの施設・事業を担当しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


2022年3月期から2024年3月期にかけては経常損失が続いていましたが、赤字幅は縮小傾向にありました。2025年3月期は、営業収益が300億円台後半まで回復し増収となりましたが、経常損失はやや拡大しました。一方で、当期純利益は前期比で倍増し、黒字幅を拡大させています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上収益(または売上高) 254億円 274億円 275億円 305億円 337億円
税引前利益 / 経常利益 / 営業利益 -60億円 -44億円 -30億円 -10億円 -12億円
利益率(%) -23.8% -16.2% -11.0% -3.2% -3.7%
当期利益(親会社所有者帰属) -33億円 -11億円 9億円 7億円 14億円

(2) 損益計算書


直近2期の損益構造を見ると、売上高は増加しているものの、営業損失が継続しており、損失額は拡大しました。売上総利益の段階では利益を確保していますが、販売費及び一般管理費の負担により営業段階では赤字となっています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 305億円 337億円
売上総利益 50億円 52億円
売上総利益率(%) 16.5% 15.3%
営業利益 -11億円 -14億円
営業利益率(%) -3.6% -4.2%


販売費及び一般管理費のうち、人件費が33億円(構成比50%)、経費が23億円(同35%)を占めています。また、売上原価においては、人件費が115億円(構成比40%)、経費が53億円(同18%)となっています。

(3) セグメント収益


運輸業は売上規模が最大ですが、営業損失が拡大しています。一方、不動産業と建設業は増収増益となり、全社の収益を下支えしています。特に不動産業は高い利益率を維持しており、建設業も大幅な増収となりました。流通業とレジャー・サービス業は小幅な動きに留まっています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
運輸業 200億円 210億円 -24億円 -31億円 -14.8%
流通業 11億円 12億円 0.2億円 0.0億円 0.3%
不動産業 46億円 52億円 12億円 16億円 30.3%
建設業 39億円 55億円 1億円 2億円 4.5%
レジャー・サービス業 8億円 9億円 -0.4億円 -0.7億円 -8.5%
その他 16億円 16億円 -億円 -億円 -%
調整額 -305億円 -337億円 -0.0億円 -0.7億円 -%
連結(合計) 305億円 337億円 -11億円 -14億円 -4.2%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


* **パターン:** 積極型
* **財務指標:** 企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は3.3%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は40.1%で市場平均を下回っています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 55億円 51億円
投資CF -36億円 -56億円
財務CF -24億円 6億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは「広電グループの旗印(パーパス)」として「広島のワクワクを創造する」を掲げています。これは、大切な人に出会う幸せや喜び、こころ豊かで快適な暮らしに貢献し、魅力ある広島を創り出していくことをグループの存在意義とするものです。

(2) 企業文化


同社は「人財ビジョン」として「基礎力」と「実行力」を重視しています。「基礎力」には責任感(Pride)と感謝(Understanding)を、「実行力」には主体性(Thinking)、挑戦(Action)、協働(Teamwork)を掲げ、従業員一人ひとりの力を最大限発揮できる環境作りを目指しています。

(3) 経営計画・目標


中期経営計画「広電グループ経営総合3ヵ年計画2025」において、2025年度の数値目標を設定しています。

* 営業収益:335億円
* 営業利益:△10億円
* 親会社株主に帰属する当期純利益:6億円
* 有利子負債/EBITDA倍率:7.0倍

(4) 成長戦略と重点施策


中期経営計画に基づき、安定した財務基盤の確保と強化を図りつつ、交通サービスの価値向上や新たな収益機会の獲得に挑戦します。特に、広島駅前大橋ルートの整備や新乗車券システム「MOBIRY DAYS」の導入を通じた公共交通の進化、不動産事業等の強化による収益拡大を推進します。

* 新乗車券システム「MOBIRY DAYS」による利便性向上と運賃制度の柔軟化
* 2025年夏開業予定の広島駅前大橋ルート整備による都心部の回遊性向上
* 分譲マンション事業等の不動産業における収益確保と他社協業の推進
* 技術部門のDX化やワンマン運行拡大による業務効率化

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


労働集約型の事業特性を踏まえ、安定した労働力の確保とともに、多様な能力を持つ人材によるイノベーション創出を目指しています。社内兼務者制度や社内起業家育成プログラムにより社員の挑戦を支援し、「リスキリング宣言」に基づくスキル習得支援も行っています。また、短時間正社員制度やフレックスタイム制、企業内保育園の整備など、多様な働き方に対応した環境整備を進めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 48.2歳 17.4年 5,592,984円


※平均年間給与は、諸手当及び賞与を含んでおります。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 9.1%
男性育児休業取得率 64.3%
男女賃金差異(全労働者) 80.6%
男女賃金差異(正規) 85.8%
男女賃金差異(非正規) 48.7%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、電車・バス乗務員の採用者に占める女性比率(7.3%)、係長以上の職種に占める女性比率(11.1%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 自然災害・感染症の拡大について


事業エリアが広島県西部地域に集中しており、大規模災害や感染症流行が発生した場合、設備損害や事業継続困難な状況により業績に影響を及ぼす可能性があります。BCP策定や防災訓練等の対策を講じていますが、被害を完全に排除できるものではありません。

(2) 運輸部門における事故について


鉄軌道やバス等の安全確保は最重要課題ですが、大規模事故が発生した場合、運行停止による減収や損害賠償費用の発生、社会的信頼の失墜により、業績や今後の事業活動に多大な影響を及ぼす可能性があります。

(3) 広島県西部地域の経済情勢の変化について


事業基盤である広島県西部地域の消費動向、人口増減、地価変動等が業績に影響を与える可能性があります。地域活性化に貢献しつつ、同社グループの成長を図る戦略を展開しています。

(4) 法的規制・法令改正への対応について


鉄道事業法や道路運送法等の法的規制を受けており、運賃改定の機動性制限や法令改正に伴う設備投資負担などが生じた場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。国や自治体の交通政策変更も事業計画に影響する要因となります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。