※本記事は、新潟交通株式会社の有価証券報告書(第113期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月24日提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準はJapan GAAPです。
1. 新潟交通ってどんな会社?
運輸事業を中核に、不動産開発から観光関連まで地域密着型の多様な事業を展開する新潟県の企業です。
■(1) 会社概要
新潟交通は1943年に新潟電鉄と新潟合同自動車が合併して設立されました。1949年に新潟証券取引所に上場し、下越・佐渡地方を中心に路線バス等の運行を展開してきました。1973年には本社用地再開発計画として万代シテイを開業し、2000年に東京証券取引所市場第二部へ上場しました。近年では2024年に新潟駅新バスターミナルが供用開始されるなど、地域社会の発展に貢献しています。
同社グループの従業員数は連結で1,174名、単体で551名となっています。大株主の構成を見ると、筆頭株主は地域の金融機関である第四北越銀行で、第2位は事業会社のブリヂストン、第3位はいすゞ自動車となっており、関連事業会社や金融機関を中心とした安定した資本関係が構築されています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 第四北越銀行(常任代理人日本マスタートラスト信託銀行) | 4.55% |
| ブリヂストン | 4.27% |
| いすゞ自動車 | 4.04% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性11名、女性0名の計11名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は星野佳人氏が務めています。社外取締役は2名選任されており、客観的な視点から経営監督を行っています。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 星野 佳人 | 代表取締役社長 | 1987年4月同社入社。経営管理室部長、乗合バス部長、執行役員等を経て、2014年6月に取締役に就任。2016年6月より現職。 |
| 古川 公一 | 代表取締役常務 | 1987年4月同社入社。乗合バス部長、経営管理室部長、執行役員等を経て、2014年6月に取締役に就任。2016年6月より現職。 |
| 長沼 哲男 | 常務取締役 | 1987年4月同社入社。執行役員総務部長等を経て、2017年6月に取締役に就任。2019年7月より現職。 |
| 髙井 俊幸 | 取締役 | 1991年4月同社入社。旅行部長、事業部長等を経て、2019年6月に取締役に就任。2023年4月より現職。 |
| 竹内 正喜 | 取締役経営管理室長 | 1991年4月同社入社。事業部長、経営管理室長等を経て、2019年6月より現職。 |
| 今井 敦 | 取締役旅行部長 | 1993年4月同社入社。旅行部長、執行役員等を経て、2025年6月より現職。 |
社外取締役は、馬場伸行氏(コニカミノルタNC会長)、三部正歳氏(りゅーと法律税務会計事務所所長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「運輸事業」「不動産事業」「商品販売事業」「旅行事業」「旅館事業」「航空代理事業」および「その他事業」を展開しています。
■(1) 運輸事業
一般乗合バス、高速バス、貸切バスによる旅客自動車運送業やタクシー業を展開しています。地域の足として欠かせない公共交通機関を提供し、一般の乗客や旅行会社、自治体などを主な顧客としています。
顧客から運賃や貸切料金などを受け取ることで収益を上げています。事業の運営は同社のほか、新潟交通観光バス、新潟交通佐渡などの連結子会社が担っています。
■(2) 不動産事業
万代シテイ等の商業施設を中心に不動産の賃貸業務および不動産売買業を展開しています。入居するテナント企業や店舗、駐車場を利用する一般客を顧客としています。
商業施設へのテナント誘致による賃貸収入や、歩合賃料、駐車場の利用料金などを主な収益源としています。同事業は主に同社が単独で運営を行っています。
■(3) 商品販売事業
新潟県の特産品を活用したオリジナル商品の開発や、土産物等の物品販売業を展開しています。新潟空港や新潟駅、高速サービスエリア等の販売店、大手スーパーなどが主な顧客です。
土産品などの商品を卸売り・販売することで対価を受け取る収益モデルです。運営は同社のほか、新潟交通商事や新潟マルオカなどの連結子会社が行っています。
■(4) 旅行事業
募集型企画旅行「くれよん」などの日帰りバスツアーや高付加価値商品、私立高校等の修学旅行・職場体験研修パッケージなどを企画・販売しています。一般の旅行客や学校法人、行政機関などが顧客です。
顧客に旅行商品や研修プランを販売し、代金を受け取ることで収益を得ています。運営は同社のほか、新潟交通佐渡や持分法適用会社の新潟交通サービスセンターが担っています。
■(5) 旅館事業
新潟市内の「万代シルバーホテル」や佐渡市内の「国際佐渡観光ホテル八幡館」において、宿泊サービスや飲食サービスを提供しています。観光客やビジネスユース、団体・インバウンド客が顧客です。
顧客から宿泊料金や館内施設・飲食店の利用料金を受け取る収益モデルとなっています。運営はシルバーホテルおよび国際佐渡観光ホテルの各連結子会社が行っています。
■(6) 航空代理事業
新潟空港における航空機の運航支援業務をはじめとする各種地上支援(ハンドリング)業務を提供しています。業務を委託する航空会社が主な顧客となります。
航空会社から空港ハンドリング業務等の委託を受け、受託手数料を得ることで収益を上げています。運営は同社および連結子会社の新潟航空サービスが行っています。
■(7) その他事業
広告代理業や清掃・設備・環境業などを展開しています。テレビ・新聞広告やデジタルサイネージへの出稿を希望する企業、設備の維持管理を必要とする企業や自治体が顧客です。
広告出稿の手数料や清掃・廃棄物処理などの受託業務に対する対価を収益源としています。運営は新交企画や新潟交友事業などの連結子会社が担っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績推移を見ると、売上高は継続的な回復傾向にあり、順調に拡大を続けています。経常利益もコロナ禍による落ち込みから黒字転換を果たして以降、安定した利益水準を維持しており、着実な収益改善が見られます。一方で、当期利益については増減があり、一時的な特別損益等の影響がうかがえます。全体としては、事業基盤の強化を通じて安定的な黒字体質を確立しつつあります。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 144億円 | 175億円 | 194億円 | 200億円 | 203億円 |
| 経常利益 | -2億円 | 10億円 | 13億円 | 16億円 | 18億円 |
| 利益率(%) | -1.6% | 5.6% | 6.8% | 8.1% | 8.7% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | -7億円 | 5億円 | 10億円 | 7億円 | 6億円 |
■(2) 損益計算書
売上高の増加に伴い、売上総利益も順調に拡大しています。利益率の面でも、売上総利益率および営業利益率がいずれも前期から改善しており、コストコントロールが適切に機能していることがうかがえます。各種需要の回復や各事業の着実な推進により、本業の収益力が着実に高まっている状況です。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 200億円 | 203億円 |
| 売上総利益 | 64億円 | 68億円 |
| 売上総利益率(%) | 32.3% | 33.2% |
| 営業利益 | 20億円 | 22億円 |
| 営業利益率(%) | 10.1% | 11.0% |
販売費及び一般管理費のうち、給料・手当等が20億円(構成比45%)、減価償却費が3億円(同7%)を占めています。また、売上原価のうち、自動車事業営業費が69億円(構成比51%)、賃貸不動産他売上原価が47億円(同34%)を占めています。
■(3) セグメント収益
セグメント別の状況を見ると、基幹の運輸事業は運賃改定等の効果があったものの、補助金減少等により微減収・減益となりました。一方、不動産事業は商業施設等でのテナント誘致や歩合賃料増加により増収増益を達成しました。商品販売事業や旅館事業も需要が堅調に推移し増収増益となっており、グループ全体の収益改善を牽引しています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益(2026年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 運輸事業 | 86億円 | 85億円 | 5億円 | 5億円 | 6.0% |
| 不動産事業 | 26億円 | 27億円 | 9億円 | 10億円 | 37.3% |
| 商品販売事業 | 25億円 | 27億円 | 1億円 | 2億円 | 5.9% |
| 旅行事業 | 26億円 | 26億円 | 0.1億円 | 0.5億円 | 2.1% |
| 旅館事業 | 17億円 | 18億円 | 0.7億円 | 1億円 | 6.3% |
| 航空代理事業 | 8億円 | 8億円 | 2億円 | 2億円 | 27.8% |
| その他事業 | 12億円 | 13億円 | 2億円 | 2億円 | 13.1% |
| 調整額 | -14億円 | -14億円 | - | - | - |
| 連結(合計) | 200億円 | 203億円 | 20億円 | 22億円 | 11.0% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 26億円 | 28億円 |
| 投資CF | -12億円 | -9億円 |
| 財務CF | -14億円 | -20億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は5.9%で市場平均を下回っており、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も35.5%で市場平均を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
企業理念(社是)は「和衷協力」です。また、会社綱領として「一、親切と安全それが仕事」「一、思考、礼節そして実行」「一、信頼と協調で繁栄を」「一、接客マナー日本一」を掲げています。同社グループは、公共性の高い運輸事業を基幹に多角的な事業を展開し、「地域社会との絆」を大切にしながら、安全・安心な社会の実現と企業価値の向上を目指しています。
■(2) 企業文化
「人材は最も大切な財産」との認識のもと、「自ら学び、自ら考え、自らが源となって行動する」という人材育成の基本方針を掲げています。「すべては安全から」という安全方針を全従業員が深く認識し、法令を遵守しながら旅客運送事業者としての責務を誠実に果たすことで、地域社会から信頼される企業風土の醸成に取り組んでいます。
■(3) 経営計画・目標
安定的な黒字体質の継続と新たな収益への挑戦による高収益体質の実現などを経営方針に掲げています。客観的な指標として、売上高、営業利益、経常利益、親会社株主に帰属する当期純利益を重視し、事業基盤の強化を図っています。
* 2026年度売上高目標:205億円
* 2026年度営業利益目標:15億円
* 2026年度経常利益目標:10億円
■(4) 成長戦略と重点施策
基幹事業である運輸事業においては、運転士の確保を重要課題とし、各種媒体を活用した採用活動や定着施策を推進します。アプリを活用したデータ利活用や新たな収入源の創出、地域と連携した利用促進にも注力します。不動産事業では、万代シテイの価値向上に向けた周年施策や設備更新を進めるほか、各事業においても商品造成や販路拡大、DX推進等を通じて収益基盤の強化を図ります。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
経営計画に掲げる「活力ある企業風土の実現」を戦略課題とし、組織の活性化や従業員の成長支援、健康経営を通じた企業力の強化に取り組んでいます。階層別研修や専門教育を通じたマネジメント人材の育成を図るとともに、育児時短勤務制度の延長や副業制度などの多様な働き方を可能とする制度整備を進め、従業員が能力を最大限に発揮できる職場環境づくりを推進しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 48.4歳 | 15.6年 | 4,400,547円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 10.4% |
| 男性育児休業取得率 | 85.7% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 76.6% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 81.7% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 77.9% |
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 有利子負債の金利変動リスク
同社グループは一定規模の有利子負債を抱えており、金利が急速かつ大幅に変動した場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。対策として、借入金契約に金利デリバティブ条件を取り入れるなど金利の固定化を図り、有利子負債の圧縮と安定的な資金調達に努めています。
■(2) 燃油価格変動によるコスト増加リスク
運輸事業のバス部門が主体であり、燃料として主に軽油を使用しています。地政学リスクや為替変動などに伴う原油価格の高騰が生じた場合、事業コストが増加し業績に悪影響を及ぼす可能性があります。必要に応じて原油デリバティブ取引を導入し、燃料価格の安定化を図っています。
■(3) バス運転士等の労働力不足リスク
基幹事業である運輸事業をはじめとして労働集約型の事業が多く、労働力の不足によってバス路線の維持が困難になる等の影響が懸念されます。大型2種免許取得補助制度やバス運転士カムバック制度の導入、多様な働き方を可能にする制度の拡充により人材確保に努めています。
■(4) 運輸事業における重大事故リスク
運輸事業において重大な事故が発生した場合、社会的信頼の失墜や行政処分を受けるなど、業績に深刻な影響を与える可能性があります。運輸安全マネジメントや「すべては安全から」という安全方針のもと、安全計画の実行と改善のサイクルを回し、輸送の安全確保を最優先としています。



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