大和自動車交通 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

大和自動車交通 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

大和自動車交通は、東京証券取引所スタンダード市場に上場し、ハイヤーやタクシーなどの旅客自動車運送事業を主力としています。近年は乗務員の確保や稼働率の向上により増収を達成しており、運賃改定等の効果も相まって営業黒字への転換を果たしています。不動産事業等の多角化も進め、収益基盤の安定化を図っています。


記事タイトル:大和自動車交通転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

※本記事は、大和自動車交通株式会社の有価証券報告書(第119期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月24日提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準はJapan GAAPです。

1. 大和自動車交通ってどんな会社?


旅客自動車運送事業を中心に、不動産や関連事業を多角的に展開する企業グループです。

(1) 会社概要


1939年に中野相互自動車として設立され、普通旅客自動車運送事業を開始しました。1945年に大和自動車交通へ商号を変更し、1949年に東京証券取引所へ上場しています。1963年には不動産賃貸事業へ進出し、以降も自動車教習や警備業など事業の多角化を進めました。2014年には持株会社体制へ移行しています。

従業員数は連結で2,177名、単体で102名です。筆頭株主は個人の新倉文明氏となっており、第2位および第3位には東都自動車や国際自動車といった同業の事業会社が名を連ねています。

氏名 持株比率
新倉文明 9.36%
東都自動車 8.37%
国際自動車 8.27%

(2) 経営陣


同社の役員は男性9名、女性1名の計10名で構成され、女性役員比率は10.0%です。代表取締役社長は大塚一基が務めており、社外取締役比率は20.0%です。

氏名 役職 主な経歴
大塚一基 代表取締役社長 三井住友銀行を経て同社へ入社し、総合企画部長や営業企画部長を歴任。2021年より現職。
岩﨑孝雄 常務取締役 同社へ入社後、各営業所長やタクシー事業統括部長を歴任し、2024年より現職。
松本敬之 常務取締役 三井住友銀行を経て同社へ入社し、関連事業部長を歴任。2024年より現職。
新倉眞由美 取締役 著述業等を経て、2016年より現職。
和田彩輝 取締役 アスクルやモーションなどを経て、2024年より現職。


社外取締役は、石山智久(元太陽生命保険取締役常務執行役員)、宮内敏光(元第一生命経済研究所代表取締役副社長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「旅客自動車運送事業」「不動産事業」「販売事業」「サービス・メンテナンス事業」を展開しています。

旅客自動車運送事業


ハイヤー業やタクシー業、運行管理業を展開しています。一般顧客向けのタクシーサービスに加え、法人向けのハイヤーサービスや事前確定運賃サービスを備えた配車アプリなどを提供し、利便性の向上と安全な運行管理に取り組んでいます。

収益は、乗客からの運賃や法人契約による利用料が主な柱です。事業の運営は大和自動車交通ハイヤーや大和自動車交通吉祥寺などの連結子会社が担い、それぞれの地域やサービス特性に合わせた営業活動を行っています。

不動産事業


オフィスビルや居住用マンションなどの不動産物件を対象とした賃貸、売買、仲介、および管理事業を展開しています。東京近郊や京都府内の収益物件を中心に、テナントの要望に応じた施設改善や物件の再開発による収益力の強化を進めています。

収益は、テナントや入居者から受け取る不動産賃貸収入を主な源泉としています。事業の運営は同社および連結子会社のスリーディが行っており、不動産会社との情報交換を通じて事業収益の増強に努めています。

販売事業


自動車用の燃料や資材の販売、営繕材料となる金属製品の製造販売、およびタクシー用自動車メーターの販売や修理を行っています。外部顧客への販売に加え、グループ内の需要にも対応することで安定的な取引基盤を構築しています。

収益は、顧客企業や一般消費者からの販売代金や修理代金から得ています。事業の運営は大和物産が燃料販売を、大和工機が金属製品の製造販売を、日本自動車メーターがメーターの販売・修理をそれぞれ担当しています。

サービス・メンテナンス事業


ゴルフ場のクラブハウスにおける清掃や設備管理を中核とした総合管理業務のほか、商業施設やホテルなどの清掃業務を提供しています。顧客との年間契約に基づき、安全で清潔な環境を維持するためのサービスを継続的に提供しています。

収益は、顧客企業から受け取る業務委託料や定期的な清掃・メンテナンス料金から得ています。事業の運営はスリーディおよびトータルメンテナンスジャパンが主体となって推進しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


過去5年間の業績推移を見ると、新型コロナウイルス感染症の影響による落ち込みから回復基調にあり、直近では増収を達成しています。運賃改定や稼働率の上昇により経常利益も黒字化を果たしており、収益性の改善が進んでいます。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 153億円 178億円 184億円 190億円 199億円
経常利益 -0.3億円 2億円 -3億円 -億円 3億円
利益率(%) -0.2% 1.1% -1.8% -0.0% 1.3%
当期利益(親会社所有者帰属) 15億円 -1億円 -3億円 -3億円 2億円

(2) 損益計算書


売上高が増加する一方で、コスト管理の徹底や営業効率化が進み、売上総利益率は改善しています。結果として営業黒字への転換に成功しており、本業における利益創出力が着実に高まっていることが確認できます。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 190億円 199億円
売上総利益 17億円 25億円
売上総利益率(%) 9.1% 12.4%
営業利益 -0.2億円 4億円
営業利益率(%) -0.1% 1.9%


販売費及び一般管理費のうち、人件費が11億円(構成比52%)を占め、次いで諸手数料が3億円(同16%)となっています。人件費の割合が高く、労働集約型の事業特性がコスト構造にも表れています。

(3) セグメント収益


主力である旅客自動車運送事業が乗務員の確保や運賃改定により大きく増収増益となり、全体の業績を牽引しました。一方、販売事業やサービス・メンテナンス事業は、コスト上昇等の影響により減益となっています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期) 利益(2025年3月期) 利益(2026年3月期) 利益率
旅客自動車運送事業 139億円 148億円 -0.4億円 4億円 2.4%
不動産事業 11億円 11億円 6億円 6億円 60.4%
販売事業 20億円 19億円 1億円 2億円 10.3%
サービス・メンテナンス事業 20億円 21億円 0.3億円 -0.1億円 -0.6%
連結(合計) 190億円 199億円 -0.2億円 4億円 1.9%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業CFはプラス、投資CFおよび財務CFはマイナスとなっており、営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業である健全型を示しています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 5億円 10億円
投資CF 0.4億円 -7億円
財務CF -9億円 -13億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は2.4%で、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も32.2%であり、いずれも市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は創業以来、「和」の精神を企業理念として掲げています。顧客満足を第一とし、営業の効率化と原価意識の徹底により、増収増益を図る組織体制と経営基盤の確立を目指しています。旅客運送事業や不動産関連事業などの運営を通じて、社会の発展に貢献することを経営の基本方針としています。

(2) 企業文化


人材が最大の財産であるという認識のもと、多様な人材が活躍できる環境整備や、新しいことに挑戦する風土の醸成を重視しています。また、「環境との和」を経営指針に掲げており、自動車による二酸化炭素排出量の抑制や環境に配慮したグリーン経営を推進するなど、社会的責任を果たす姿勢が根付いています。

(3) 経営計画・目標


「人・地域社会・モビリティの『新しい調和』をつくる先進企業グループへ」という長期ビジョンの実現に向け、中期経営計画を策定しています。2027年度を最終年度とする計画では、資本コストを意識した経営に注力し、以下の数値目標の達成を目指しています。

・連結営業利益10億円
・ROE7%
・配当性向30%(1株当たり配当金年間8円を下限)

(4) 成長戦略と重点施策


主力の旅客自動車運送事業において、人材の確保と経営効率化を推し進めることで利益創出力を高めます。ハイヤー・タクシー部門の事業所大型化による効率化や、法人顧客の需要確保を図ります。また、不動産事業では所有物件の再開発や立体化利用による収益基盤の強化を進め、事業領域の拡張とビジネスモデルの多様化に取り組みます。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


人材基盤の強化に向け、デジタルに強い人材や従来の価値観にとらわれない多様な人材の確保を進めています。新卒およびキャリア採用の強化に加え、研修や教育体制の充実により定着率の向上と次世代人材の育成を図ります。また、多様な人材が生き生きと働きやすいよう、労働環境や職場環境の整備にも注力しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 48.8歳 16.5年 5,212,989円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 4.9%
男性育児休業取得率 100.0%
男女賃金差異(全労働者) 62.2%
男女賃金差異(正規雇用) 64.5%
男女賃金差異(パート・有期) 78.5%

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 市場環境変動リスク


燃料価格の変動や、モビリティサービス競合の増加などの需要動向の変化、配車アプリの規制強化や運賃改定などの制度変更が業績に影響を及ぼす可能性があります。多様なサービスの提供による収益源の分散や、デジタル配車システム等の導入による効率化で対応しています。

(2) 労働力確保リスク


タクシードライバーの人手不足や離職率の上昇、高齢化の進行に伴う車両稼働の減少リスクが存在します。従業員エンゲージメント調査に基づく職場改善や柔軟な勤務制度の推進、特定技能制度を活用した外国人乗務員の採用、高齢運転者への支援策強化により定着と確保に努めています。

(3) 法規制・コンプライアンスリスク


運輸関連法規の変更や労働法規の改正、外国人労働者に関連する法規の遵守、個人情報保護の規制などが事業に影響を与える可能性があります。社内研修やマニュアルの更新を継続的に行い、法令遵守の徹底と管理体制の強化に取り組んでいます。

(4) 財務リスク


資金調達環境の変化や金利上昇リスク、および燃料費などの変動コストが財務状況に影響を与える可能性があります。中期経営計画において財務健全性指標の維持や改善に向けた施策を明確化し、資金調達計画の着実な実行とコスト管理の強化を進めています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。