※本記事は、神姫バス株式会社 の有価証券報告書(第142期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 神姫バスってどんな会社?
兵庫県を地盤とするバス事業者です。運送業に加え、不動産、飲食、旅行など地域密着型の多角化事業を展開しています。
■(1) 会社概要
1927年に神戸市で神姫自動車として設立され、1943年には周辺事業者の合併を経て神姫合同自動車となりました。1972年に現在の神姫バスへ商号変更し、兵庫県下の広域バスネットワークを構築しました。2013年の市場統合に伴い東京証券取引所第二部に上場し、2022年の市場区分見直しによりスタンダード市場へ移行しました。
現在の従業員数は連結3,426名、単体1,614名です。株主構成を見ると、筆頭株主は同業の鉄道事業者、第2位は資産管理業務を行う信託銀行、第3位は従業員持株会となっています。地域交通の担い手として、関連企業や従業員が安定的に株式を保有していることが特徴です。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 阪神電気鉄道 | 9.79% |
| 日本カストディ銀行(三井住友信託銀行再信託分・山陽電気鉄道退職給付信託口) | 7.29% |
| 神姫バス従業員持株会 | 2.53% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性13名、女性1名の計14名で構成され、女性役員比率は7.1%です。代表取締役社長は長尾真氏です。社外取締役比率は40.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 長尾 真 | 代表取締役社長 | 1982年入社。企画部長、神姫トラベル社長、神姫観光社長などを経て2013年より現職。兵庫県バス協会会長も務める。 |
| 丸山 明則 | 代表取締役専務取締役総括、地域事業本部・東京オフィス担当、地域事業本部長 | 1981年入社。バス事業部長、神姫Bizプロデュース社長、神姫バス不動産社長などを歴任し、2017年より代表取締役専務就任。 |
| 三谷 康生 | 専務取締役経営企画部担当 | 日本興業銀行出身。日本M&Aセンター執行役員、ジャパンM&Aアドバイザー社長などを経て2025年6月より現職。 |
| 梅谷 榮一 | 常務取締役バス事業部・次世代モビリティ推進室担当 | 1987年入社。神姫Bizプロデュース社長、神姫フードサービス社長などを経て2023年より現職。 |
| 井村 在宏 | 取締役総務部・人事部担当総務部長・人事部長 | 1994年入社。神姫観光取締役、人事部長、しんきエンジェルハート社長などを経て2020年より現職。 |
| 三木 公仁 | 取締役事業戦略部担当事業戦略部長 | 2001年入社。バンコクオフィス所長、Shinki International社長を経て2023年より現職。 |
社外取締役は、上門一裕(山陽電気鉄道会長)、藤岡資正(明治大学専門職大学院教授)、殿村美樹(TMオフィス代表・指名報酬委員長)、久須勇介(阪神電気鉄道社長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「自動車運送」「車両物販・整備」「不動産」「レジャーサービス」「旅行貸切」および「その他」事業を展開しています。
■(1) 自動車運送
兵庫県内を中心に、乗合バス、特定輸送、タクシー、貨物運送などを行っています。地域の重要な移動手段として、路線バスや高速バスの運行を担うほか、企業送迎などの受託も行っています。
収益は、乗客からの運賃収入や、特定輸送の契約先からの委託料などが主な柱です。運営は、神姫バス(同社)のほか、神姫ゾーンバス、ウイング神姫、神姫タクシーなどのグループ各社が行っています。
■(2) 車両物販・整備
自動車に関連する物品販売やメンテナンスサービスを提供しています。具体的には、車両の部品やタイヤの販売、車両修理、車検整備などを行っています。
収益は、車両部品やタイヤの販売代金、および車両整備に伴う工賃収入などから得ています。運営は、主に神姫産業および神姫商工が行っています。
■(3) 不動産
不動産の賃貸、売買、仲介、管理および建設業を展開しています。商業施設やオフィスビル、住宅などの物件を取り扱い、地域の開発にも関与しています。
収益は、保有不動産の賃貸料収入、不動産売買代金、建設工事の請負代金などが中心です。運営は、神姫バス(同社)および神姫バス不動産が行っています。
■(4) レジャーサービス
飲食業や物販、フランチャイズ事業を行っています。高速道路のサービスエリア内店舗や「まいどおおきに食堂」などの飲食店運営、TSUTAYAのフランチャイズ展開などが含まれます。
収益は、飲食店舗や物販店舗における顧客からの代金収入、TSUTAYA事業での販売・レンタル収入などです。運営は、神姫バス(同社)および神姫フードサービスなどが行っています。
■(5) 旅行貸切
旅行の企画・販売および貸切バスの運行を行っています。国内・海外旅行のパッケージツアー販売や、団体旅行向けの貸切バスサービスを提供しています。
収益は、旅行商品の販売代金や貸切バスの運賃収入などから構成されています。運営は、神姫バス(同社)、神姫観光、神姫トラベルが行っています。
■(6) その他
上記セグメントに含まれない多様な事業を展開しています。公共施設の指定管理業務、Webサービス、広告代理業、農業、介護サービス、保育事業などが含まれます。
収益は、施設の管理運営委託料、商品販売代金、サービス利用料など多岐にわたります。運営は、神姫バス(同社)のほか、神姫Bizプロデュース、ケアサービス神姫、しんきエンジェルハートなどの子会社が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は着実に増加傾向にあり、コロナ禍の影響からの回復が見て取れます。利益面でも、過去には赤字の時期もありましたが、直近では経常利益、当期純利益ともに黒字を維持し、利益率も改善傾向にあります。全体として業績は回復・成長基調にあります。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 357億円 | 388億円 | 448億円 | 495億円 | 530億円 |
| 経常利益 | -13億円 | 11億円 | 26億円 | 33億円 | 37億円 |
| 利益率(%) | -7.4% | 5.7% | 12.7% | 14.8% | 15.9% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | -7億円 | 20億円 | 12億円 | 15億円 | 14億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間を比較すると、売上高の増加に伴い、売上総利益および営業利益ともに増加しています。原価や販管費も増加していますが、増収効果が上回っており、本業の収益性が向上していることがわかります。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 221億円 | 234億円 |
| 売上総利益 | 114億円 | 122億円 |
| 売上総利益率(%) | 51.5% | 52.1% |
| 営業利益 | 31億円 | 35億円 |
| 営業利益率(%) | 14.2% | 14.8% |
販売費及び一般管理費のうち、給料・手当等が47億円(構成比54%)、施設使用料が9億円(同10%)を占めています。売上原価においては、運送費が180億円(売上原価の44%)を占め、その内訳として人件費や燃料油脂費が大きな割合を占める構造となっています。
■(3) セグメント収益
自動車運送事業は増便や運賃改定により増収となりました。車両物販・整備事業は部品価格上昇や整備機会の増加により増収、不動産事業も新規物件稼働や販売好調により増収です。旅行貸切事業も需要回復により大幅な増収となりました。全体として全セグメントで増収基調です。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) |
|---|---|---|
| 自動車運送 | 226億円 | 239億円 |
| 車両物販・整備 | 71億円 | 76億円 |
| 不動産 | 51億円 | 56億円 |
| レジャーサービス | 45億円 | 45億円 |
| 旅行貸切 | 58億円 | 65億円 |
| その他 | 45億円 | 47億円 |
| 連結(合計) | 495億円 | 530億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
本業で得たキャッシュを、投資活動に積極的に回す一方で、新たな借入等による資金調達も行っている「積極型」のキャッシュ・フロー状態です。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 37億円 | 47億円 |
| 投資CF | -65億円 | -53億円 |
| 財務CF | -12億円 | 6億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は5.1%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は73.7%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは「地域共栄 未来創成」を企業理念としています。輸送サービスを中心として、地域の発展とともに企業価値を向上させていくことを基本方針とし、地域社会との共存共栄を目指しています。
■(2) 企業文化
「安全は全てに優先する」という基本理念を掲げ、基幹事業である自動車運送業において地域からの信頼を重視しています。安全管理体制の構築や、コンプライアンス順守、企業倫理の醸成に努める文化があります。
■(3) 経営計画・目標
2030年のありたい姿「グループ構想2030」の実現に向け、「中期経営計画(2025-2027)」を策定しています。2027年度の数値目標として以下を掲げています。
* 連結売上高:590億円
* 連結営業利益:37億円
* 連結経常利益:38億円
* 親会社株主に帰属する当期純利益:26億円
* 売上高経常利益率:6.4%
■(4) 成長戦略と重点施策
「既存事業の強化」と「成長事業の開拓・拡大」の両利きの経営を推進します。路線バス等の交通体系構築や不動産賃貸による安定収益確保に加え、不動産開発事業への参入やインバウンド需要の取り込み、M&A活用による新規分野への投資を重点施策としています。また、運転士確保を最優先課題とし、人的資本経営にも注力します。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「まちづくり・地域づくり企業」の実現に向け、課題解決能力を持つ人材の確保・育成を重視しています。多様な人材の採用、リスキリングや階層別研修による育成、社内ベンチャー制度などを推進しています。また、健康経営や働きがいのある職場環境の整備にも努めています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 50.3歳 | 11.5年 | 5,457,882円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 4.5% |
| 男性育児休業取得率 | 62.5% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 44.2% |
| 男女賃金差異(正規) | 70.3% |
| 男女賃金差異(非正規) | 68.3% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性運転士数(37名)、有給休暇取得率(84.6%)、喫煙者率(28.5%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 自動車運送業に係る補助金
不採算路線の維持において国や自治体の補助金制度を活用していますが、将来的に制度の廃止や削減が行われた場合、路線廃止や事業規模縮小を余儀なくされ、地域社会からの信用低下や業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 原油相場の動向
バスの動力源として軽油を使用しているため、原油価格の変動が燃料費に直結します。価格高騰時には営業費用の増加要因となり、業績に影響を与えます。EVバスへの移行を進めても電力価格は原油相場の影響を受けるため、エネルギーコストのリスクは継続します。
■(3) 自動車運送業に係る重大事故
事業の特性上、交通事故のリスクは常に存在します。万一、死亡事故等の重大事故が発生した場合、多額の賠償費用に加え、行政処分による事業制限や社会的信用の失墜を招き、グループ全体の経営基盤に深刻な影響を与える可能性があります。
■(4) 労働力の確保
バス運転士をはじめとする人材不足が深刻化しており、必要な人員を確保できない場合、減便や路線廃止など事業計画の停滞を招く恐れがあります。採用難や人件費の高騰は、経営成績および財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。



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