丸全昭和運輸 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

丸全昭和運輸 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

同社はプライム市場に上場しており、貨物自動車運送や港湾運送などの物流事業、および工場内での作業を請け負う構内作業事業を展開しています。直近の業績は、売上高が前期比3.1%増、経常利益が同10.5%増となり、増収増益で推移しています。


※本記事は、丸全昭和運輸株式会社 の有価証券報告書(第123期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 丸全昭和運輸ってどんな会社?


物流事業と構内作業事業を柱とする総合物流企業です。3PL事業やグローバル展開による成長を目指しています。

(1) 会社概要


1931年に横浜市で株式会社丸全昭和組として創立され、1963年に東京証券取引所市場第一部へ上場しました。2004年には3PL事業システムを稼働させ、近年では2015年に日本電産ロジステック(現 丸全電産ロジステック)を子会社化するなどM&Aも推進しています。2022年の市場区分見直しに伴いプライム市場へ移行しました。

同グループの連結従業員数は3,660名(単体1,103名)です。筆頭株主は資産管理業務を行う信託銀行で、第2位は同社の関連会社である丸全商事、第3位は生命保険会社となっています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 9.19%
丸全商事 8.29%
明治安田生命保険相互会社 6.14%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性1名の計9名で構成され、女性役員比率は11.1%です。代表取締役社長社長執行役員は岡田廣次氏が務めています。社外取締役比率は33.3%です。

氏名 役職 主な経歴
浅井俊之 代表取締役会長 1968年同社入社。中部支店長、関西支店長、営業本部長等を歴任。2012年代表取締役社長就任。2022年6月より現職。
岡田廣次 代表取締役社長社長執行役員 1982年同社入社。中部支店長、関西支店長、営業本部長等を歴任。2022年6月より現職。
中村匡宏 代表取締役専務執行役員 1987年同社入社。経営企画室長、常務取締役、国際埠頭代表取締役会長等を歴任。2022年6月より現職。
安藤雄一 取締役専務執行役員 1989年同社入社。3PL事業部長、丸全北海道運輸代表取締役社長、営業本部長等を歴任。2022年6月より現職。
石川健一 取締役 1978年同社入社。経理部長、常務取締役、取締役常務執行役員等を歴任。2012年6月より現職。
澁谷康弘 取締役(監査等委員)(常勤) 1983年横浜銀行入行。同行取締役等を歴任。2016年同社監査役就任。2020年6月より現職。


社外取締役は、内藤彰信(元三菱商事社員・国際埠頭社長)、佐藤昭雄(公認会計士)、桑野和泉(玉の湯代表取締役社長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「物流事業」「構内作業及び機械荷役事業」および「その他」事業を展開しています。

(1) 物流事業


貨物自動車運送、港湾運送、倉庫、通関、3PL(サードパーティ・ロジスティクス)など、国内外で総合的な物流サービスを提供しています。顧客は化学品メーカーや精密機械メーカーなどが中心です。

収益は、顧客からの運送料、保管料、荷役料などで構成されます。運営は、丸全昭和運輸に加え、丸全水戸運輸、丸全北海道運輸、丸全九州運輸などの地域子会社や、海外子会社が行っています。

(2) 構内作業及び機械荷役事業


顧客の工場構内において、原料や製品、重量物、精密機械などの移送、組立、充填、倉庫保管、入出荷作業などを請け負っています。

収益は、これらの作業に対する対価や機械の賃貸料から得ています。運営は主に丸全昭和運輸や丸十運輸倉庫、丸全茨城流通などのグループ会社が連携して行っています。

(3) その他


建設業、不動産業、保険代理業、自動車整備業、警備業などを展開しています。

収益は、建設請負代金、不動産賃貸料、保険手数料、整備料などから得ています。運営は丸全昭和運輸のほか、子会社の丸昭自動車工業や昭和アルミサービスなどが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上収益と経常利益はともに増加傾向にあり、安定した成長を続けています。特に利益率は堅調に推移しており、当期利益も高水準を維持しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上収益(または売上高) 1,211億円 1,369億円 1,409億円 1,402億円 1,446億円
経常利益 105億円 126億円 138億円 143億円 158億円
利益率(%) 8.7% 9.2% 9.8% 10.2% 10.9%
当期利益(親会社所有者帰属) 67億円 86億円 89億円 97億円 98億円

(2) 損益計算書


直近2期間の損益構成を見ると、売上高の増加に伴い、売上総利益および営業利益が増加しています。営業利益率も改善しており、収益性が向上していることが読み取れます。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 1,402億円 1,446億円
売上総利益 184億円 196億円
売上総利益率(%) 13.1% 13.6%
営業利益 132億円 146億円
営業利益率(%) 9.4% 10.1%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が16億円(構成比32%)、その他費用が15億円(同29%)を占めています。

(3) セグメント収益


物流事業は、貨物自動車運送や港湾運送などの取り扱いが増加し、増収増益となりました。構内作業及び機械荷役事業も、発電用原料などの取り扱い増加により増収増益を達成しました。その他事業も地代収入などで増収増益となっています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
物流事業 1,219億円 1,255億円 114億円 127億円 10.1%
構内作業及び機械荷役事業 159億円 166億円 14億円 15億円 9.1%
その他 24億円 25億円 5億円 5億円 19.8%
調整額 30億円 30億円 - - -
連結(合計) 1,402億円 1,446億円 132億円 146億円 10.1%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社は、営業活動で得た資金を用いて投資を行い、同時に借入金の返済も進めている「健全型」のキャッシュ・フロー状態にあります。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 145億円 163億円
投資CF -41億円 -104億円
財務CF -67億円 -91億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は7.7%で市場平均(9.4%)を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は67.7%で市場平均(非製造業24.2%)を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は、「物流の分野に於て、お客様第一主義をモットーに、高品質なサービスの提供をします」を経営理念の第一に掲げています。モノや情報の流れをシステムとして捉え、物流最適化を提案することで、顧客にとって最良のロジスティクスパートナーとなることを目指しています。

(2) 企業文化


同社は「熱と努力」を社是として掲げています。これは、仕事への熱い思い入れと、仕事をやり遂げる不断の努力がいかに大切であるかという創業者中村全宏氏の精神を引き継ぐものであり、グループ全社員が一丸となって業務に取り組む姿勢を表しています。

(3) 経営計画・目標


同社は、2025年度から2027年度までの3年間を対象とする第9次中期経営計画を策定しています。「テクノロジーと現場力で、お客様の未来を創造するロジスティクスパートナー」を目指す姿とし、以下の数値目標を掲げています。

* 2027年度 売上高:1,760億円
* 2027年度 経常利益:185億円
* ROE(2025〜2027年度):9.0%〜10.0%

(4) 成長戦略と重点施策


第9次中期経営計画では、「売上の拡大」「事業競争力の強化」「企業基盤の変革」を重点施策としています。3PL事業やグローバル物流の拡大、DXによるビジネスモデルの変革を進めるとともに、設備投資やM&Aを積極的に実施します。

* 設備投資:400億円(DX投資含む)
* M&A:100億円

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は企業基盤の変革の一環として人的資本の活用と強化を掲げています。継続的な人材確保、グループ会社の人事制度整備、キャリアパスの策定とダイバーシティの推進、教育による能力向上とプロフェッショナルの育成に取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 40.4歳 16.0年 6,767,820円


※平均年間給与は基準外賃金及び賞与を含めています。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 3.4%
男性育児休業取得率 75.0%
男女賃金差異(全労働者) 74.6%
男女賃金差異(正規雇用) 79.3%
男女賃金差異(非正規) 75.7%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性従業員比率(10.4%)、ストレスチェック受検率(99.7%)、法定健康診断受診率(100%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 価格競争


物流業界では、荷主企業の物流業務集約や国内貨物輸送量の減少に伴い、競争が激化しています。同社は3PL事業等で高付加価値サービスを提供していますが、価格面やサービス面で競争力を維持できなくなった場合、顧客離れにより業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 原油価格の高騰


トラック運送事業における燃料(軽油)やタイヤ等は原油価格の影響を強く受けます。これらの価格が高騰した際に運賃への転嫁が十分に進まない場合、コスト増大により同社グループの業績に影響を与える可能性があります。

(3) 事故による影響


安全衛生活動等を通じて事故撲滅を目指していますが、貨物事故、車両事故、労災事故等を完全に防ぐ保証はありません。多額の損害賠償を伴う事故が発生した場合、保険の適用範囲を超えた賠償額の負担や社会的信用の低下により、業績に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。