丸全昭和運輸 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

丸全昭和運輸 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所プライム市場に上場する丸全昭和運輸は、貨物自動車運送や港湾運送、倉庫業、工場での構内作業などを展開する総合物流企業です。直近の業績は、売上高が前期比2.8%増の1,486億円、親会社株主に帰属する当期純利益が同29.4%増の127億円となり、堅調な増収増益を達成しています。


※本記事は、丸全昭和運輸株式会社 の有価証券報告書(第124期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 丸全昭和運輸ってどんな会社?


同社は国内外で貨物自動車運送や港湾運送、倉庫業、工場内での構内作業など幅広い物流サービスを提供しています。

(1) 会社概要


1931年に横浜市で創立され、京浜工業地帯の工場建設資材や原料などの運搬から事業を開始しました。1947年に現在の社名へ変更し、1961年に株式上場を果たしました。1974年の米国進出を皮切りに海外展開も推進し、近年は他業種の物流子会社をM&Aするなど、事業基盤の拡大を続けています。

現在の従業員数は連結で3,723名、単体で1,108名です。筆頭株主は関連会社である丸全商事で、第2位は資産管理業務などを行う信託銀行、第3位は大手生命保険会社となっています。

氏名 持株比率
丸全商事 8.40%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 8.09%
明治安田生命保険相互会社 6.22%

(2) 経営陣


同社の役員は男性7名、女性1名の計8名で構成され、女性役員比率は12.5%です。代表取締役社長社長執行役員は岡田廣次氏が務めています。社外取締役比率は37.5%です。

氏名 役職 主な経歴
浅井俊之 代表取締役会長 1968年入社。関西支店長、営業本部長などを経て、2012年代表取締役社長に就任。2020年代表取締役社長社長執行役員を経て、2022年より現職。
岡田廣次 代表取締役社長社長執行役員 1982年入社。中部支店長、関西支店長などを経て、2020年に代表取締役専務執行役員に就任。2022年より現職。
中村匡宏 代表取締役専務執行役員 1987年入社。経営企画室長などを経て、1999年に取締役就任。2019年に国際埠頭代表取締役会長に就き、2022年より現職。
安藤雄一 取締役専務執行役員 1989年入社。営業企画部長、丸全北海道運輸代表取締役社長、営業本部長などを経て、2022年より現職。
澁谷康弘 取締役(監査等委員)(常勤) 1983年横浜銀行入行。同社執行役員や取締役を経て、2016年に同社監査役に就任。2020年より現職。


社外取締役は、内藤彰信(学校法人実践学園理事長)、佐藤昭雄(佐藤昭雄会計事務所所長)、桑野和泉(玉の湯代表取締役社長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「物流事業」「構内作業及び機械荷役事業」および「その他」事業を展開しています。

物流事業


貨物自動車運送事業、港湾運送事業、倉庫業、通関業などを提供しています。主な顧客は化学品や精密機械、食料品などを扱うメーカーであり、輸送や保管業務の効率的な運営と地域的な補完を目的に、国内外の拠点が連携して一貫輸送サービスを展開しています。

顧客から運送料や保管料、荷役料などを収益として受け取ります。運営は同社のほか、丸十運輸倉庫、丸全トランスポートなどの国内子会社、および米国、中国、東南アジアなどに所在する多数の海外子会社や関連会社が担っています。

構内作業及び機械荷役事業


顧客の工場構内において、原料や製品、重量物、精密機械などの移送から、組み立て、充填、構内倉庫への保管、入出荷作業、それに付帯する諸作業などを提供しています。加えて、機械の賃貸なども行っています。

顧客企業から構内での作業に対する対価や、機械の賃貸料を収益として受け取ります。運営は同社をはじめ、丸十運輸倉庫や丸全茨城流通、丸全流通サービスなどの国内グループ会社が、主に同社の協力企業として事業を担っています。

その他


報告セグメントに含まれない事業として、主に建設業や不動産業、保険代理業、自動車整備業、警備業などを展開しています。

顧客から建設工事代金や不動産の賃貸料、保険代理手数料などを収益として受け取ります。同社が建設業などを行うほか、子会社の丸昭自動車工業がグループの車両整備を、関連会社の丸全商事が事務機器のリースなどを行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5年間の業績は、売上高が堅調に推移しており、経常利益および当期利益も継続的な増加傾向にあります。特に当期は、新規受注の獲得や継続的な料金改定の推進、新規連結子会社の業績寄与などにより、売上高・利益ともに過去最高水準を記録し、利益率も11%台に達するなど収益性の向上も顕著です。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 1,369億円 1,409億円 1,402億円 1,446億円 1,486億円
経常利益 126億円 138億円 143億円 158億円 166億円
利益率(%) 9.2% 9.8% 10.2% 10.9% 11.2%
当期利益(親会社所有者帰属) 86億円 89億円 97億円 98億円 127億円

(2) 損益計算書


売上高の増加に伴い、売上総利益および営業利益ともに前年を上回る実績となりました。運賃や作業費などのコスト上昇圧力がある中で、適正な料金収受への取り組みが奏功し、売上総利益率および営業利益率は前年から改善を見せており、コストコントロールの有効性がうかがえます。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 1,446億円 1,486億円
売上総利益 196億円 206億円
売上総利益率(%) 13.6% 13.9%
営業利益 146億円 155億円
営業利益率(%) 10.1% 10.4%


販売費及び一般管理費(当期52億円)のうち、給料及び手当が16億円(構成比32%)、その他が16億円(同31%)を占めています。また、営業原価(当期1,280億円)においては、作業費が450億円(構成比35%)、傭車費が375億円(同29%)と大きな割合を占めています。

(3) セグメント収益


主力の物流事業は、一部の取扱い減少があったものの、酒類や穀物の増加、新規連結子会社の寄与などにより増収増益となりました。構内作業及び機械荷役事業も設備補修の取り扱いが増加し増収増益です。一方、その他事業は国内の設備移設案件が減少し、減収減益となっています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期) 利益(2025年3月期) 利益(2026年3月期) 利益率
物流事業 1,255億円 1,293億円 127億円 134億円 10.4%
構内作業及び機械荷役事業 166億円 169億円 15億円 16億円 9.5%
その他 25億円 24億円 5億円 5億円 20.8%
調整額 -6億円 -6億円 5億円 5億円 -
連結(合計) 1,446億円 1,486億円 146億円 155億円 10.4%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業で利益を出し、借入によって積極投資を行う状態です。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 163億円 172億円
投資CF -104億円 -54億円
財務CF -91億円 -95億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は9.3%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は69.4%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「物流の分野に於て、お客様第一主義をモットーに、高品質なサービスの提供をします」を経営理念の第一に掲げています。お客様にとって最良のロジスティクスパートナーとなるべく、「モノや情報の流れ」を一体としてシステムと捉えた物流最適化の提案を行っています。サービス品質の向上と経営基盤の安定的な拡大により、広く社会に貢献できる企業を目指しています。

(2) 企業文化


社是として「熱と努力」を掲げています。これは、仕事への熱い思い入れと仕事をやり遂げる不断の努力がいかに大切であるかという創業者の精神を引き継いだものです。この精神のもと、同社グループの全社員が一丸となって日々の業務に取り組む風土が形成されています。

(3) 経営計画・目標


2025年度から2027年度までの3年間を対象とする「第9次中期経営計画」を推進しています。「テクノロジーと現場力で、お客様の未来を創造するロジスティクスパートナー」を目指す姿として掲げ、事業の飛躍と企業価値の向上を図っています。

* 2027年度 売上高:1,760億円
* 2027年度 経常利益:185億円
* ROE(2025年度〜2027年度):9.0%〜10.0%を目標
* 配当性向:3年間の連結ベースで35%以上を目標

(4) 成長戦略と重点施策


中期経営計画に基づき、「売上の拡大」「事業競争力の強化」「企業基盤の変革」を重点施策としています。3PL事業やグローバル物流事業の拡大を進めるとともに、国内外の物流拠点の強化を図ります。また、次期基幹システムの稼働によるDX推進や、専門組織の設置によるM&Aの実施、人的資本の強化などを通じて、より効果的な事業戦略を実行できる企業への進化を目指しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「人材こそが企業価値の源泉」と捉え、従業員一人ひとりの成長を組織力強化と企業価値向上に直結させる方針です。企業内大学「Maruzen Logistics College」を通じて、キャリア開発や物流専門知識の習得を支援し、プロフェッショナル人材の育成に注力しています。また、DX人材やグローバルに活躍できる人材の育成を進めるとともに、女性の活躍推進など多様な働き方ができる職場づくりにも取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 40.5歳 16.2年 7,018,578円


※平均年間給与は基準外賃金及び賞与を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 4.9%
男性育児休業取得率 75.0%
男女賃金差異(全) 74.7%
男女賃金差異(正規) 78.9%
男女賃金差異(非正規) 74.7%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、全従業員に占める女性の割合(11.2%)、障害者雇用率(1.66%)、法定健康診断受診率(100%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 物流市場における価格競争の激化


国内貨物輸送量の減少や荷主企業による物流業務の集約により、同業他社との価格競争が激化しています。高付加価値な3PLサービスの提供などで差別化を図っていますが、将来的に競争優位性を保てない場合、顧客離れを引き起こし、同社の業績や財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

(2) 原油および原材料価格の高騰


主要事業であるトラック運送において、燃料となる軽油やタイヤの原材料であるナフサは、原油価格に連動して価格が変動します。原油価格が高騰した場合、同社のコストが増大します。これを適切な形で運賃等のサービス価格に転嫁できない場合、利益率が低下し、業績に影響を及ぼすリスクがあります。

(3) 重大な事故やシステム障害の発生


貨物事故や車両事故、労災事故などの発生により多額の損害賠償を負担することや、顧客の信頼失墜により売上が低下するリスクがあります。また、基幹システムが予期せぬ災害やサイバー攻撃等によって停止・データ喪失した場合も、事業運営に支障をきたし、同社の業績に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。