丸運 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

丸運 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証スタンダード上場。貨物輸送とエネルギー輸送を主軸に事業展開する物流企業。2025年3月期は適正運賃収受の進展や投資有価証券売却益等により、売上収益461億円、経常利益14億円の増収増益を達成。自己資本比率は68.9%と財務健全性は高く、2030年に向け成長投資を推進している。


※本記事は、株式会社丸運 の有価証券報告書(第123期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 丸運ってどんな会社?


貨物輸送とエネルギー輸送を中核とする総合物流企業です。素材物流や危険物輸送に強みを持ちます。

(1) 会社概要


1892年に静岡県で天龍運輸会社として創業し、1960年に現社名の丸運へ商号変更しました。1990年に東京証券取引所市場第一部へ指定され、2019年には静岡石油輸送を子会社化するなど事業基盤を拡大しました。2025年には中村運輸機工の株式を取得し、機工分野への展開も強化しています。

連結従業員数は2,158名、単体では349名です。筆頭株主は、非鉄金属大手のJX金属(持株比率38.22%)で、同社はその他の関係会社に該当します。第2位は佐藤企業、第3位は個人株主の佐藤謙一氏となっています。

氏名 持株比率
JX金属 38.22%
佐藤企業 17.87%
佐藤謙一 5.40%

(2) 経営陣


同社の役員は男性7名、女性1名、計8名で構成され、女性役員比率は12.5%です。代表取締役社長は中村正幸氏です。社外取締役比率は62.5%です。

氏名 役職 主な経歴
中村正幸 代表取締役社長社長執行役員 1987年日本鉱業(現JX金属)入社。JX金属執行役員、タツタ電線常務執行役員などを経て、2024年6月より現職。
佐久間成安 取締役貨物輸送事業部長補佐 1986年丸運入社。潤滑油・化成品事業部長、貨物輸送事業部長等を歴任し、2022年4月より現職。丸運ロジスティクス関東代表取締役社長を兼務。
中澤晃成 取締役常務執行役員コーポレート管理本部長 1988年共同石油(現ENEOS)入社。ENEOS機能材事業企画部長、丸運経営企画部長等を経て、2024年6月より現職。


社外取締役は、太内義明(元ENEOSホールディングス常務執行役員)、岡香里(弁護士)、中澤謙二(元JXエネルギー総合企画部)、有野一馬(元国土交通省北陸信越運輸局長)、鳴瀧英也(元三洋化成工業常務執行役員)です。

2. 事業内容


同社グループは、「貨物輸送」「エネルギー輸送」「海外物流」「テクノサポート」および「その他」事業を展開しています。

(1) 貨物輸送


一般貨物のトラック輸送、鉄道・海上コンテナ輸送、重量品の搬出入・据付、産業廃棄物の収集運搬などを提供しています。特に銅・アルミなどの非鉄金属や建設資材などの素材物流に強みを持ち、食品低温物流や引越サービスも手掛けています。

主に荷主企業からの運送代金や保管料、作業料等を収益源としています。運営は、丸運および丸運ロジスティクス東北、丸運ロジスティクス関東、丸運ロジスティクス東海、丸運ロジスティクス西日本、丸運産業などのグループ会社が行っています。

(2) エネルギー輸送


石油製品やLPG、潤滑油、化成品などの輸送および保管業務を提供しています。タンクローリーによる配送ネットワークを構築しており、エネルギーの安定供給を支えるインフラとしての役割を担っています。

エネルギー関連企業や化学メーカー等から受け取る輸送料や作業料が主な収益源です。運営は、丸運および丸運トランスポート札幌、丸運トランスポート東日本、丸運トランスポート西日本、静岡石油輸送、北豊運輸などが行っています。

(3) 海外物流


国際海上コンテナ輸送、国際航空貨物輸送、輸出入通関業務などを提供しています。中国やベトナムに拠点を持ち、現地での物流サービスや日本との一貫輸送サービスを展開しています。

輸出入を行う企業からの国際輸送運賃や通関手数料などを収益源としています。運営は、丸運および中国の丸運国際貨運代理(上海)、丸運物流(天津)、ベトナムの丸運物流ベトナムなどが行っています。

(4) テクノサポート


石油備蓄基地や製油所、油槽所構内における入出荷作業、桟橋作業、防災業務などの各種構内作業を請け負っています。顧客の施設内での操業支援を行い、安全と安定操業をサポートしています。

顧客企業からの業務委託料や作業料を収益源としています。運営は、丸運および丸運テクノサポートが行っています。

(5) その他


不動産賃貸業、損害保険代理業、事務代行業などを展開しています。

テナントからの賃貸料や保険手数料などを収益源としています。運営は、丸運および丸運サービス、丸運ビジネスアソシエイトなどが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


2021年3月期から2025年3月期までの5期間を見ると、売上収益は450億円から470億円前後で安定的に推移しています。経常利益は6億円から14億円の範囲で変動しており、2025年3月期は前期比で利益が倍増し、過去5期で最高水準となりました。利益率も改善傾向にあります。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上収益 473億円 467億円 466億円 450億円 461億円
経常利益 7億円 8億円 6億円 7億円 14億円
利益率(%) 1.6% 1.7% 1.3% 1.6% 3.0%
当期利益(親会社所有者帰属) 5億円 5億円 3億円 4億円 11億円

(2) 損益計算書


直近2期間の比較では、売上収益の増加に伴い売上総利益が増加しました。売上総利益率は8.0%から9.7%へ改善しています。営業利益も大幅に増加し、営業利益率は1.1%から2.7%へと上昇しました。コストコントロールと適正運賃収受の効果が表れています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 450億円 461億円
売上総利益 36億円 45億円
売上総利益率(%) 8.0% 9.7%
営業利益 5億円 13億円
営業利益率(%) 1.1% 2.7%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が19億円(構成比58%)、その他が11億円(同33%)を占めています。売上原価においては、人件費や外注費などが主な内訳となっています。

(3) セグメント収益


貨物輸送とエネルギー輸送が売上の大半を占めています。2025年3月期は、貨物輸送とエネルギー輸送の両セグメントで利益が増加しました。特に貨物輸送は利益率が改善しています。海外物流は赤字となりましたが、テクノサポートとその他事業は黒字を維持しています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
貨物輸送 224億円 224億円 1億円 5億円 2.3%
エネルギー輸送 156億円 163億円 5億円 6億円 3.6%
海外物流 51億円 55億円 -1億円 -0億円 -0.4%
テクノサポート 18億円 19億円 0億円 1億円 7.5%
その他事業 0億円 0億円 1億円 1億円 292.9%
調整額 -億円 -億円 1億円 1億円 -%
連結(合計) 450億円 461億円 7億円 14億円 3.0%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 26億円 33億円
投資CF -13億円 -17億円
財務CF -15億円 -13億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は4.5%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は68.9%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、物流事業を通じて社会の発展に貢献するとともに、企業価値の向上を目指しています。「お客様第一」「安全・確実・迅速」「創意工夫」を基本とし、社会から信頼される企業グループとなることを経営の基本方針として掲げています。

(2) 企業文化


同社は「安全」「コンプライアンス」「品質」を重視する文化を持っています。行動指針として、法令や社会規範の遵守、公正で透明な企業活動、環境保全への取り組みなどを定めており、誠実な事業運営を通じてステークホルダーとの信頼関係を築くことを行動の基本としています。

(3) 経営計画・目標


2022年に策定した「2030丸運グループ長期ビジョン」において、2030年のありたい姿として「高いコスト競争力と提案営業力を有する物流エキスパート企業」を掲げています。このビジョンの実現に向け、以下の数値目標を設定しています。

* 営業収益:600億円以上
* 経常利益:20億円以上
* 投資総額:120億円(M&A含む)

(4) 成長戦略と重点施策


長期ビジョン実現に向け、貨物輸送とエネルギー輸送の両輪経営を継続しつつ、成長分野への投資を加速させます。具体的には、素材の国内外一貫物流の強化、リサイクル物流や機工分野、食品流通分野への投資を実行します。また、海外物流事業の戦略見直しやDXによる業務効率化も推進します。

* 機工分野等の成長領域でのM&Aや資本提携の推進
* 適正運賃収受の継続とコスト競争力の強化
* DX実装による物流効率化とドライバー不足対応

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


OJTや階層別教育による人材育成と、ワークライフバランスを重視した職場環境の整備を進めています。特にダイバーシティ推進を最優先課題の一つとし、女性採用比率や女性管理職割合の向上、障がい者雇用の維持・向上に取り組んでいます。また、多様な人材が能力を発揮できる環境構築により、人材の確保と定着を目指しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 45.3歳 17.7年 6,920,136円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 4.7%
男性育児休業取得率 -%
男女賃金差異(全労働者) 62.0%
男女賃金差異(正規雇用) 61.8%
男女賃金差異(非正規) 66.5%


※パート・有期労働者の対象者がいないため「-」と表示しています。

また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性採用比率(52.9%)、障がい者雇用率(3.4%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 法令違反・コンプライアンスリスク


事業活動において、道路交通法や貨物自動車運送事業法など多数の法的規制を受けています。法令違反や企業倫理に反する行為が発生した場合、社会的信用の失墜や行政処分により、事業活動や業績に悪影響を及ぼす可能性があります。同社はコンプライアンス委員会等を通じて遵守体制を強化しています。

(2) 交通事故・労働災害リスク


貨物自動車による輸送や構内作業を行っているため、交通事故や労働災害が発生するリスクがあります。重大な事故が発生した場合、営業停止処分や損害賠償請求、社会的信用の低下を招く可能性があります。安全対策の徹底や教育研修を通じて、事故防止に努めています。

(3) 人材の確保・育成リスク


物流業界における労働力不足、特にドライバー不足は深刻な課題です。必要な人材を確保・育成できない場合、事業運営に支障をきたし、競争力が低下する可能性があります。同社は採用活動の強化や労働環境の改善、多様な人材の活用により、人材の確保に取り組んでいます。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。