カンダホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

カンダホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証スタンダード上場の総合物流企業。貨物自動車運送事業と国際物流事業を主力とし、国内物流から国際宅配便、フォワーディングまで幅広く展開。直近の業績は、国内輸送の堅調な推移により増収となった一方、燃料価格やコスト上昇の影響等で当期純利益は減益となりました。


※本記事は、カンダホールディングス株式会社 の有価証券報告書(第112期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. カンダホールディングスってどんな会社?


物流を通じて社会に貢献する総合物流企業です。国内での貨物自動車運送に加え、国際物流や不動産賃貸など多角的に事業を展開しています。

(1) 会社概要


1943年に東京都神田区内の運送会社が統合し発足、翌年神田運送として設立されました。2004年に東証二部へ上場し、2009年には持株会社体制へ移行して現社名に変更しました。2010年にペガサスグローバルエクスプレスを設立して国際物流へ本格進出し、2022年の市場区分見直しに伴い東証スタンダード市場へ移行しました。

同グループの連結従業員数は2,791名、単体では25名です。筆頭株主は創業家資産管理会社と見られる不動産会社で、第2位は従業員持株会、第3位は取引先等で構成される共栄会となっています。安定した株主構成のもと、経営が行われています。

氏名 持株比率
原島不動産 36.83%
カンダ従業員持株会 4.96%
カンダ共栄会 4.04%

(2) 経営陣


同社の役員は男性5名、女性3名の計8名で構成され、女性役員比率は37.5%です。代表取締役社長は原島藤壽氏です。社外取締役比率は40.0%です。

氏名 役職 主な経歴
原島 藤壽 代表取締役社長 1990年凸版印刷入社。1995年同社入社。管理本部長、グループ会社統括室長等を経て2019年より現職。
中谷 智 専務取締役営業本部長 1987年三井銀行(現三井住友銀行)入行。法人営業部長等を歴任後、2020年同社入社。2025年より現職。
江文 順一 専務取締役管理本部長グループ会社統括室長人事部長 1984年神田運送(現同社)入社。神田エンタープライズ社長等を歴任。2025年より現職。
加藤 俊彦 取締役 1997年東京都立大学講師。2011年一橋大学大学院教授。2014年より現職。
齊藤 実 取締役 1983年日通総合研究所研究員。2001年神奈川大学経済学部教授。2021年より現職。


社外取締役は、加藤俊彦(一橋大学理事・副学長)、齊藤実(神奈川大学名誉教授)です。

2. 事業内容


同社グループは、「貨物自動車運送事業」「国際物流事業」「不動産賃貸事業」および「その他」事業を展開しています。

(1) 貨物自動車運送事業


一般貨物の自動車運送、流通加工商品の仕分・梱包・保管などのサービスを顧客に提供しています。小売・量販店向け輸送や医薬品配送など、生活に密接した物資の輸送を担っています。

顧客から受け取る運送賃や作業料などが主な収益源です。運営は主にカンダコーポレーション、カンダコアテクノ、埼玉配送などの連結子会社が行っています。

(2) 国際物流事業


国際宅配便、フォワーディング(航空・海上輸送)、輸出入通関手続きなどのサービスを提供しています。近年は越境EC事業にも注力し、国内外一体となった物流サービスを展開しています。

顧客から受け取る輸送料、通関料などが主な収益源です。運営は主にペガサスグローバルエクスプレス、ニュースターラインなどの連結子会社が行っています。

(3) 不動産賃貸事業


同社グループが保有する物流施設やオフィスビル等を、外部テナント等へ賃貸する事業です。

テナントから受け取る賃貸料が主な収益源です。運営は主にカンダホールディングスが行っています。

(4) その他


上記セグメントに含まれない事業として、ソフトウエア開発・保守、保険代理店、太陽光発電、車両リース、清掃業、事務代行などを展開しています。

顧客からのシステム開発料、手数料、売電収入などが収益源です。運営はカンダホールディングス、ケイ・コム、神田ファイナンスなどが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


過去5期間の推移を見ると、売上高は着実に増加傾向にあり、事業規模の拡大が続いています。一方、利益面では、2024年3月期に経常利益が最高水準に達したものの、直近ではコスト増や特別損失の計上等により当期純利益が減少しています。全体として増収基調を維持しつつ、利益率の安定化が課題となっています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 440億円 476億円 516億円 511億円 520億円
経常利益 25億円 31億円 28億円 35億円 35億円
利益率(%) 5.6% 6.5% 5.4% 6.9% 6.7%
当期利益(親会社所有者帰属) 15億円 19億円 18億円 23億円 22億円

(2) 損益計算書


直近2期間の損益構成を比較します。売上高は増加しましたが、売上原価も増加しており、売上総利益率はほぼ横ばいで推移しています。販管費のコントロールにより営業利益は微増を確保しました。特別損失の増加等により、最終的な当期純利益は減少しています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 511億円 520億円
売上総利益 58億円 58億円
売上総利益率(%) 11.4% 11.1%
営業利益 34億円 34億円
営業利益率(%) 6.7% 6.6%


販売費及び一般管理費のうち、その他経費が7億円(構成比31%)、給料及び手当が6億円(同26%)、役員報酬が4億円(同18%)を占めています。

(3) セグメント収益


貨物自動車運送事業は既存取引の拡大等により増収となり、適正運賃確保で増益となりました。国際物流事業は海上運賃の上昇等で増収ながら減益。不動産賃貸事業は安定的に推移し増収増益でした。その他事業はコスト増により減益となっています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
貨物自動車運送事業 386億円 390億円 27億円 27億円 6.9%
国際物流事業 106億円 111億円 11億円 11億円 9.8%
不動産賃貸事業 9億円 9億円 6億円 6億円 64.3%
その他 10億円 10億円 1億円 1億円 10.5%
調整額 -0億円 -0億円 -11億円 -10億円 -
連結(合計) 511億円 520億円 34億円 34億円 6.6%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 46億円 38億円
投資CF -31億円 -11億円
財務CF 6億円 -18億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は8.9%で市場平均(スタンダード市場7.2%)を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は54.3%で市場平均(スタンダード市場非製造業48.5%)を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「物流を通じて豊かで快適な社会の実現」を社会的使命とし、顧客満足の追求、和の精神による社員の生活向上、自己改革への挑戦、そして物流を通じた社会発展への貢献を経営理念として掲げています。総合物流企業として研究と創造を大切にし、全員参加型の経営を目指しています。

(2) 企業文化


「和」の精神に基づく全員参加型の経営と、創造的な経営の推進を基本方針としています。また、安全と生命をすべてに優先するという理念のもと、交通事故や労働災害の防止に積極的に取り組む姿勢が根付いています。コンプライアンスやリスク管理の徹底も重視されています。

(3) 経営計画・目標


2028年3月期を最終年度とする3カ年の中期経営計画を推進しており、以下の数値目標を掲げています。

* 連結営業収益:565億円
* 連結経常利益:40億円
* 自己資本当期純利益率(ROE):8.2%

(4) 成長戦略と重点施策


新規業務の獲得による業容拡大、グループ連携強化、M&Aや物流DXの推進を重点施策としています。国際部門では国際宅配便とフォワーディングに加えEC事業にも注力します。また、人手不足対応としての採用強化や教育、適正運賃の確保による利益向上、環境対応(EV・FCトラック導入等)も推進します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


人材を最大の経営資源と位置付け、採用の強化、職場環境の整備、チャレンジ精神の醸成を柱としています。特に管理者層の不足解消に向けた教育研修への投資を強化しており、専門知識習得や自己啓発支援を通じて次世代幹部の育成に注力しています。また、多様な人材が活躍できる環境づくりにも取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 50.5歳 15.4年 7,683,014円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 1.1%
男性育児休業取得率 50.0%
男女賃金差異(全労働者) 35.9%
男女賃金差異(正規雇用) 61.8%
男女賃金差異(非正規) 80.1%


※数値は主要子会社であるカンダコーポレーション株式会社の実績です。

また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、エコカー保有台数(67)、CO2排出量(14,125)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 燃料費等の原価管理リスク


事業で使用するトラック等の燃料費は、原油価格や為替相場の変動により影響を受けます。環境対応車の導入などでリスク抑制に努めていますが、急激な価格上昇が生じ、運賃への転嫁が困難な場合、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(2) 配送工程におけるトラブルリスク


集荷から納品までの工程において、荷物の破損、紛失、遅延、誤配送などのトラブルが発生した場合、顧客からの信用を損なう可能性があります。マニュアル化や周知徹底を行っていますが、トラブル頻発や損害賠償請求が発生した際は、業績や財政状態に影響を与える可能性があります。

(3) 重大事故等の発生におけるリスク


貨物自動車運送を主たる事業としているため、重大な交通事故や労働災害が発生した場合、行政処分や事業停止命令を受ける可能性があります。社会的信用の失墜や事業継続の困難化を招き、業績に深刻な影響を及ぼすリスクがあります。

(4) 情報漏洩に関するリスク


顧客情報や従業員情報など多くの個人情報を扱っています。サイバー攻撃や不正アクセス、管理ミスなどにより情報漏洩が発生した場合、社会的信用の失墜や損害賠償請求などにより、業績や財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。