京極運輸商事 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

京極運輸商事 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

京極運輸商事は、東京証券取引所スタンダードおよび名古屋証券取引所メイン市場に上場する総合物流企業です。国内輸送、国際物流、ドラム缶・ペール缶、エネルギー、タンク洗浄の5事業を展開しています。2026年3月期の連結業績は、適正運賃の収受や各種事業の好調により増収を達成し、営業利益も大幅な増益となりました。


※本記事は、京極運輸商事株式会社の有価証券報告書(第86期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 京極運輸商事ってどんな会社?


石油製品や化学品の液体輸送を中心に、港湾運送や容器販売など総合物流関連事業を展開しています。

(1) 会社概要


1891年に創業し、1947年に京極社として設立されました。1964年に京極運輸商事へ改称し、1966年に株式店頭売買を開始(現スタンダード市場上場)しています。1971年にタンククリーニング部門を分離して日本タンクサービスを、1973年には石油部門を分離して京極石油を設立しました。2024年に名古屋証券取引所メイン市場へ上場しています。

従業員数は連結315名、単体300名です。筆頭株主は事業会社であるENEOSホールディングスで、第2位のグリーンエイト、第3位のジェットエイトと続きます。

氏名 持株比率
ENEOSホールディングス 34.96%
グリーンエイト 5.72%
ジェットエイト 5.72%

(2) 経営陣


同社の役員は男性6名、女性2名の計8名で構成され、女性役員比率は25.0%です。代表取締役社長は北山剛規氏が務めています。社外取締役比率は25.0%です。

氏名 役職 主な経歴
北山剛規 代表取締役社長 1990年日本石油(現ENEOS)入社。同社グループ各社の役員を経て、2025年4月に京極運輸商事社長付となり、同年6月より現職。
鈴木秀樹 代表取締役常務 デジタル推進室・人事部・営業部・京葉支店・川崎支店・鹿島支店・倉庫事業部担当 1989年京極運輸商事入社。京浜支店長、内部監査室長、デジタル推進室長、常務取締役などを経て、2025年6月より現職。
立岩敦 常務取締役 営業サポート部・経理部・総務部担当 1989年日本石油(現ENEOS)入社。同社副支店長などを経て、2019年5月より京極石油代表取締役社長。2025年6月より現職。


社外取締役は、深澤晶久(実践女子大学教授 学長補佐)、笹森良子(元三越伊勢丹ホールディングス参与・エムアイ友の会代表取締役社長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「国内輸送事業」「国際物流事業」「ドラム缶・ペール缶事業」「エネルギー事業」「タンク洗浄事業」の5つの報告セグメントを展開しています。

(1) 国内輸送事業


石油類や化学製品等の液体貨物輸送を中心に、一般貨物や容器類の輸送を手掛けています。日本各地に拠点を持ち、主に関東一円の顧客需要に応じて貨物を運送しています。また、関連施設での構内作業も行います。

対価として運賃や荷役料を受け取る収益モデルです。顧客の需要に応じて貨物運送の取次や委託等も行い、対価を収受しています。事業の運営は主に京極運輸商事と、関連会社の弥生京極社が行っています。

(2) 国際物流事業


荷主や船舶運航業者の委託を受け、港湾荷役や貨物の本船への積込み、取卸し、上屋への搬出入、保管、荷捌等の作業を行っています。

顧客のために物品を倉庫に保管し、運送や入出庫などの諸作業を行うことで、保管料、運賃、荷役料を受け取ります。ISOタンクコンテナによる液体化学品輸送の取扱い等も推進しており、事業の運営は同社が行っています。

(3) ドラム缶・ペール缶事業


顧客の需要に応じて、石油類容器の売買と販売に関連する配送業務を行っています。新缶だけでなく更生缶の取り扱いも行っています。

ドラム缶等の販売代金および配送による収益を主な収入源としています。事業の運営は同社が行っています。

(4) エネルギー事業


ENEOSの特約店として、顧客の需要に応じて石油類の賃貸借および売買、石油製品類およびその副産物の売買を行っています。

石油燃料の供給等により収益を得ており、周辺ビジネスとして電力やガス、カーリースなども展開しています。運営は主に子会社の京極石油が行っています。

(5) タンク洗浄事業


顧客の需要に応じて、石油・化学製品およびその他の貯蔵タンクの洗浄・修理、配管工事などを行っています。

競争入札等により受注を確保し、タンク洗浄や修理等の代金を収受するモデルです。事業の運営は主に子会社の日本タンクサービスが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は80億円台で安定して推移しています。経常利益は一時的に落ち込みが見られたものの、直近の2026年3月期には価格改定などの効果もあり、大幅な増益を達成し利益率も向上しています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 90億円 87億円 84億円 84億円 87億円
経常利益 2.0億円 0.9億円 1.2億円 1.0億円 2.4億円
利益率(%) 2.3% 1.0% 1.5% 1.2% 2.8%
当期利益(親会社所有者帰属) 1.0億円 0.7億円 1.0億円 0.6億円 0.9億円

(2) 損益計算書


売上総利益、営業利益ともに直近の期で増加しています。これは、適正運賃収受に向けた価格改定や各事業の好調によるもので、利益率の改善に大きく寄与しています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 84億円 87億円
売上総利益 6.2億円 7.6億円
売上総利益率(%) 7.4% 8.7%
営業利益 0.2億円 1.6億円
営業利益率(%) 0.2% 1.9%


販売費及び一般管理費のうち、従業員給料が1.8億円(構成比31%)、役員報酬が0.9億円(同15%)を占めています。また、売上原価については人件費が20億円(同30%)、商品仕入費が17億円(同26%)、下払費が11億円(同18%)となっています。

(3) セグメント収益


主力である国内輸送事業は、価格改定の効果などにより増収となりました。ドラム缶・ペール缶事業やタンク洗浄事業も好調に推移し増収に寄与していますが、エネルギー事業は取扱数量の減少により減収となっています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
国内輸送事業 39億円 40億円
国際物流事業 6.1億円 6.3億円
ドラム缶・ペール缶事業 24億円 25億円
エネルギー事業 11億円 9.6億円
タンク洗浄事業 5.1億円 6.9億円
連結(合計) 84億円 87億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業といえます。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 3.9億円 9.1億円
投資CF -0.9億円 -0.7億円
財務CF -3.6億円 -4.2億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は3.9%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は52.2%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「私たちの使命」「私たちの目指す姿」「私たちの行動基準」からなる企業理念を制定しています。一人ひとりが働き甲斐を感じ、自ら参加したくなる組織を目指して「いい会社にしよう」を合言葉に、次の100年に向かって前進することを掲げて経営を行っています。

(2) 企業文化


デジタル技術の発展や消費者ニーズの多様化といった目まぐるしく変化するビジネス環境下においても、企業理念を事業の方向を柔軟に決定する羅針盤として重視しています。従業員が働き甲斐を感じる組織づくりと、持続的な企業成長に向けた多様性のある組織構築を推進する文化があります。

(3) 経営計画・目標


2026〜2028年度を対象とする「第3次中期経営計画」を策定し、「事業価値の向上」「サステナビリティへの取り組み」「人的資本の充実」をテーマとして掲げています。最終年度の目標として以下の数値を設定しています。

* 売上高100億円以上
* 営業利益3億円以上
* ROE5%以上

(4) 成長戦略と重点施策


顧客への提供価値最大化を目的に、「クロスセールス型ビジネスへの転換」「マルチワークステーション(MWS)の立ち上げ」「経営基盤の機能強化」を基本方針として掲げています。国内輸送ではデジタル技術を活用した安全管理システムの導入や資格取得支援による専門人材育成を推進します。国際物流ではISOタンクコンテナによる液体化学品輸送の取扱いに注力し、収益性の向上と物流オペレーションの高度化に取り組みます。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


持続的な企業成長を遂げるため、「人材の採用、研修・育成、評価」を軸としています。採用面では多様性のある組織作りを推進し、研修・育成面では職種別、階層別研修や資格取得支援制度を実施しています。年齢に関係なく誰もが正当に評価される公平・公正な実力主義の制度へ改定し、社員の成長を促しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均とほぼ同じ水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 49.7歳 12.8年 5,930,187円


※平均年間給与は賞与及び時間外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社および連結子会社は公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。

また、同社は「人的資本の充実」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、事務職の女性比率(34%)、運転職の女性比率(3%)、障がい者比率(0.7%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 法規制による影響


国内輸送事業において、大気汚染にかかわる国や地方自治体の環境確保による法規制がさらに強化されることが予想されます。これにより車両代替のための設備投資やコスト増が発生し、企業収益を圧迫するリスクがあります。

(2) 気候条件の影響


暖冬による石油類等の輸送量の減少や、冷夏による空冷用ガスの輸送量の減少など、気候条件の変動が国内輸送事業、国際物流事業、エネルギー事業の損益に影響を与えるリスクがあります。

(3) 素材価格の影響


鉄鋼や原油など素材価格の高騰が、ドラム缶の販売量減少や車両燃料費の高騰を招き、国内輸送事業やドラム缶・ペール缶事業の一部の損益を変動させるリスクがあります。

(4) 海外の需要動向の影響


海外の需要動向が得意先の販売量や仕入量に影響を与え、結果として国際物流事業における取扱量の増減を通じて損益を変動させるリスクがあります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。