京極運輸商事 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

京極運輸商事 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証スタンダード・名証メイン上場。石油製品や化学製品の国内輸送事業を主力とし、国際物流、ドラム缶販売、エネルギー事業等を展開しています。直近の連結業績は、運賃交渉等により増収となったものの、コスト増で経常減益となりました。一方、受取配当金の増加等により親会社株主に帰属する当期純利益は増益となりました。


※本記事は、京極運輸商事株式会社 の有価証券報告書(第85期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 京極運輸商事ってどんな会社?

創業130年超の歴史を持ち、ENEOSグループとの取引が深い総合物流企業です。石油・化学品の輸送に強みがあります。

(1) 会社概要

1891年の創業以来、石油製品等の運送事業を展開し、1947年に株式会社京極社を設立しました。1964年に現社名へ変更し、1966年に株式店頭売買を開始しました。1973年には石油部門を分離して京極石油を設立しました。2010年にJXホールディングス(現ENEOSホールディングス)の関係会社となり、2024年には名証メイン市場へ上場しました。

連結従業員数は311名、単体では295名です。筆頭株主は事業会社(親会社的関係)のENEOSホールディングスで、第2位はその他の法人であるジェットエイト、第3位は個人株主となっています。ENEOSグループとの資本・取引関係が強く、安定的な事業基盤を有しています。

氏名 持株比率
ENEOSホールディングス 34.00%
ジェットエイト 5.53%
西 將弘 5.46%

(2) 経営陣

同社の役員は男性5名、女性1名の計6名で構成され、女性役員比率は17.0%です。代表取締役社長は立岩 敦氏です。社外取締役比率は16.7%です。

氏名 役職 主な経歴
立岩 敦 代表取締役社長営業サポート部・経理部・総務部担当 1989年日本石油(現ENEOS)入社。同社グループでの要職を経て、2019年より京極石油社長、京極運輸商事常務取締役を歴任。2025年1月より現職。
鈴木 秀樹 常務取締役デジタル推進室・人事部・営業部・京葉支店・川崎支店・鹿島支店・倉庫事業部担当 1989年入社。京浜支店長、内部監査室長、デジタル推進室長などを歴任。2021年取締役就任を経て、2024年6月より現職。


社外取締役は、深澤 晶久(実践女子大学教授・学長補佐)です。

2. 事業内容

同社グループは、「国内輸送事業」、「国際物流事業」、「ドラム缶・ペール缶事業」、「エネルギー事業」、「タンク洗浄事業」を展開しています。

国内輸送事業

タンクローリーによる石油類、化学製品等の液体貨物輸送を主力とし、普通トラックでの一般貨物や容器類の輸送も行っています。関東一円を中心に営業し、関連施設での構内作業も手掛けています。

顧客からの運賃や作業料が主な収益源です。運営は主に京極運輸商事が行っており、関係会社の株式会社弥生京極社も事業に関与しています。

国際物流事業

港湾荷役、輸出入貨物の通関業務、倉庫での物品保管や入出庫作業を行っています。保税蔵置場としての機能も有し、顧客のために貨物を管理・保管します。

荷主や船舶運航業者からの荷役料、保管料、運賃などが収益となります。運営は京極運輸商事が行っています。

ドラム缶・ペール缶事業

石油類容器(ドラム缶・ペール缶)の売買および、これら販売に伴う配送業務を行っています。

顧客への商品販売代金および配送による運賃が収益源です。運営は京極運輸商事が行っています。

エネルギー事業

石油類の賃貸借および売買、石油製品類やその副産物の売買を行っています。ガソリンスタンドの運営や燃料供給が含まれます。

顧客への石油製品等の販売代金が収益となります。運営は主に連結子会社の京極石油株式会社が行っています。

タンク洗浄事業

石油・化学製品およびその他の貯蔵タンクの洗浄・修理、配管工事等を行っています。

顧客からの工事代金や作業料が収益源です。運営は主に連結子会社の日本タンクサービス株式会社が行っています。

3. 業績・財務状況

同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移

直近5期間の業績を見ると、売上高は80億円台後半から半ばで推移しており、大きな変動はありません。利益面では、2023年3月期に利益率が低下しましたが、その後は回復傾向にあります。当期は微増収ながら、経常利益は減少しました。一方、当期利益は増加しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 87億円 90億円 87億円 84億円 84億円
経常利益 2.2億円 2.0億円 0.9億円 1.2億円 1.0億円
利益率(%) 2.5% 2.3% 1.0% 1.5% 1.2%
当期利益(親会社所有者帰属) 0.8億円 1.0億円 0.7億円 1.0億円 0.6億円

(2) 損益計算書

直近2期間を比較すると、売上高は横ばいですが、売上原価率の上昇により売上総利益率は低下しています。営業利益率も低下傾向にあり、コストコントロールが課題となっています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 84億円 84億円
売上総利益 6.9億円 6.2億円
売上総利益率(%) 8.2% 7.4%
営業利益 0.3億円 0.2億円
営業利益率(%) 0.4% 0.2%


販売費及び一般管理費のうち、従業員給料が約2.0億円(構成比32%)、役員報酬が約0.9億円(同14%)を占めています。売上原価では、人件費、商品仕入費、下払費が主な内訳となっています。

(3) セグメント収益

主力である国内輸送事業は増収となりましたが、国際物流事業やエネルギー事業は減収となりました。特にエネルギー事業の減収幅が大きくなっています。一方、タンク洗浄事業は微増収でした。全体としては微増収での着地となっています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期)
国内輸送事業 36億円 39億円
国際物流事業 6.4億円 6.1億円
ドラム缶・ペール缶事業 24億円 24億円
エネルギー事業 13億円 11億円
タンク洗浄事業 5.0億円 5.1億円
連結(合計) 84億円 84億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標

営業活動によるキャッシュ・フローがプラスで、投資活動および財務活動によるキャッシュ・フローがマイナスであるため、本業で稼いだ資金で借入金の返済や投資を行っている「健全型」と言えます。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 4.7億円 3.9億円
投資CF -1.2億円 -0.9億円
財務CF -5.1億円 -3.6億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は2.4%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は51.7%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略

同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念

同社グループは、「私たちの使命」「私たちの目指す姿」「私たちの行動基準」からなる企業理念を制定しています。事業の方向を柔軟に決定する羅針盤とし、一人ひとりが働き甲斐を感じ、自ら参加したくなる組織を目指して『いい会社にしよう』を合言葉に次の100年に向かって前進することを基本方針としています。

(2) 企業文化

同社は、行動基準として「安全、誠実、正確」を掲げています。これをもとにコンプライアンスに則った輸送体制を築き、無事故・無災害を目指すなど、物流企業としての社会的責任と公共的使命を重視する文化があります。

(3) 経営計画・目標

「事業価値の向上」「サステナビリティへの取り組み」「人的資本の充実」をテーマとした第2次中期経営計画(2023年度~2025年度)を策定しています。最終年度の数値目標として、以下を掲げています。
* 営業利益:3.0億円
* ROE:5.1%
* CO2排出削減:2021年度比12.1%削減

(4) 成長戦略と重点施策

デジタル化推進による業務効率化、グループ金融による資金効率化、キャッシュ・フロー範囲内での設備投資を軸に事業価値向上を図ります。国内輸送では適正運賃確保と新規顧客開拓、国際物流では高付加価値サービスの提供を目指します。また、サステナビリティ対応として燃費向上や3R(リデュース・リユース・リサイクル)を推進します。

5. 働く環境

同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針

「人的資本の充実」を掲げ、従業員が「いい会社」と思える職場づくりに取り組んでいます。女性ドライバーを含めた人材確保と育成環境の改善、労働環境の整備を進めています。また、多様性と受容性を推進し、従業員満足度の向上を目指しています。安全教育やコンプライアンス重視の姿勢も徹底しています。

(2) 給与水準・報酬設計

同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均とほぼ同じ水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 50.5歳 13.7年 5,880,179円


※平均年間給与は、賞与及び時間外賃金を含んでおります。

(3) 人的資本開示

同社は従業員規模が300人以下のため、有報には本稿の記載がありません。

また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、従業員満足度スコア(4.34/満点7)、女性比率(事務職:19%)などです。

6. 事業等のリスク

事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 法規制による影響

主要事業である国内輸送事業において、大気汚染に関わる環境規制が強化されることにより、車両代替のための設備投資やコストが増加し、収益を圧迫する可能性があります。

(2) 気候条件の影響

暖冬による石油類の輸送量減少や、冷夏による空冷用ガスの輸送量減少など、気候条件の変動が国内輸送事業、国際物流事業、エネルギー事業の損益に影響を与える可能性があります。

(3) 素材価格の影響

鉄鋼や原油などの素材価格高騰は、ドラム缶販売量の減少や車両燃料費の増加を招き、国内輸送事業やドラム缶・ペール缶事業の損益変動要因となります。

(4) 海外の需要動向の影響

海外の需要動向が得意先の販売量や仕入量に影響を与え、結果として国際物流事業の損益変動要因となる可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。