日本ロジテム 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

日本ロジテム 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所スタンダード市場に上場する日本ロジテムは、貨物自動車運送事業、倉庫における荷役や流通加工を行うセンター事業、不動産賃貸等のアセット事業を中核とする総合物流企業です。直近の業績は、新規輸送案件の獲得や倉庫稼働率の改善により、売上高、各利益ともに前年度を上回る増収増益を達成しています。


※本記事は、日本ロジテム株式会社の有価証券報告書(第110期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月30日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 日本ロジテムってどんな会社?


国内外のネットワークを活かした総合物流サービスを提供し、顧客のサプライチェーンを支える企業です。

(1) 会社概要


同社は1944年に大崎運送として設立され、貨物自動車運送事業を開始しました。1962年には倉庫業への進出を果たし、事業領域を拡大しています。1989年に現在の日本ロジテムへと商号を変更し、1994年に日本証券業協会へ株式を店頭登録(現在のスタンダード市場)しました。その後はベトナム、タイ、中国などアジア地域へ積極的に進出し、国際的な物流ネットワークを構築しています。

同社グループの従業員数は連結で3,718名、単体で922名です。大株主の筆頭株主は事業会社である日清製粉で、第2位および第3位は同社代表取締役社長ならびにその親族から株式の信託を受託している法人です。

氏名 持株比率
日清製粉 20.77%
一般社団法人富士桜の会 17.96%
有限会社ジェイエフ企画 12.11%

(2) 経営陣


同社の役員は男性13名、女性1名の計14名で構成され、女性役員比率は7.0%です。代表取締役社長は中西伸次郎氏が務めており、取締役における社外取締役の比率は10.0%です。

氏名 役職 主な経歴
中西伸次郎 代表取締役社長 2012年同社入社。総合企画部長、営業本部副本部長、管理本部長などを経て、2026年より現職。
中西弘毅 代表取締役会長 1982年大崎運送入社。取締役、常務、専務を経て1999年代表取締役社長。2026年より現職。
飯野毅 常務取締役常務執行役員(品質管理本部長) 2011年日清製粉入社。同社関東営業部部長、フレッシュ・フード・サービス代表取締役社長を経て、2019年より現職。
佐々木利昌 常務取締役常務執行役員(営業本部長) 1988年大崎運送入社。第三営業部長、執行役員営業本部長などを経て、2024年より現職。
上田毅 取締役上席執行役員(CSR本部長) 1984年大崎運送入社。総務部長、管理部長、総合企画部長などを経て、2024年より現職。
萩尾太 取締役上席執行役員(総合企画本部長兼管理本部副本部長) 2021年商工組合中央金庫常務執行役員。2023年同社上席執行役員を経て、2024年より現職。
都築守美 取締役上席執行役員(国際本部長兼国際事業部長) 1994年同社入社。執行役員、上席執行役員を経て、2024年より現職。千日股份有限公司会長等を兼務。
廣田康夫 取締役上席執行役員(営業本部副本部長) 1984年大崎運送入社。第四営業部長、執行役員営業本部副本部長を経て、2024年より現職。阪神ロジテム会長を兼務。
小山内雅紀 取締役上席執行役員(管理本部長) 2007年同社入社。執行役員、上席執行役員営業本部副本部長を経て、2024年より現職。


社外取締役は、田子敏也(日清製粉常務取締役業務本部長)です。

2. 事業内容


同社グループは、貨物自動車運送事業、センター事業、アセット事業およびその他事業を展開しています。

貨物自動車運送事業


顧客の委託を受け、自社および協力会社のトラック等を使用して貨物の運送サービスを提供しています。国内での輸送ネットワークに加え、ベトナムなどの海外においても強固な輸送体制を構築し、多様な物流ニーズに対応しています。

顧客から貨物の輸送料金を受け取る収益モデルです。運営は主に同社および子会社の阪神ロジテム、ロジテムトランスポート、海外ではロジテムベトナムコーポレーションなどが行っています。

センター事業


顧客から寄託を受けた貨物の倉庫における入出庫などの荷役業務を提供しています。また、自社や顧客の倉庫・配送センター内において、組み立て、裁断、梱包などの流通加工や、受注代行・在庫管理といった事務代行サービスも展開しています。

顧客から荷役料や流通加工・事務代行手数料を受け取る収益モデルです。運営は主に同社および阪神ロジテム、海外では千日股份有限公司やロジテムベトナムコーポレーションなどが行っています。

アセット事業


顧客から寄託を受けた貨物に対し、倉庫における安全な保管サービスを提供しています。さらに、倉庫や配送センターなど物流不動産の賃貸借およびその仲介業務を手がけ、効率的な物流拠点の運用を支援しています。

顧客から貨物の保管料や物流施設の不動産賃貸料を受け取る収益モデルです。運営は主に同社および阪神ロジテム、ロジテムインターナショナル、海外では千日股份有限公司などが行っています。

その他事業


引越移転、施工関連、輸出入貨物取扱、通関、港湾運送、労働者派遣など、主要3事業に付随する多様なサービスを提供しています。また、海外の一部拠点では旅客自動車運送事業や物品販売業、総合リース業も展開しています。

各サービスの利用料や販売代金を受け取る収益モデルです。運営は同社およびロジテムエージェンシー、ロジテムエンジニアリング、海外ではロジテムベトナムノースサービスや千日股份有限公司などが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5年間の業績は、安定的な成長を続けています。売上高は継続して増加傾向にあり、特に直近の期では新規案件の獲得や料金改定の浸透が寄与し、大幅な増収を達成しました。経常利益も堅調に推移しており、収益性の改善に伴って利益率も上昇傾向にあります。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 581億円 625億円 630億円 660億円 713億円
経常利益 10億円 10億円 10億円 12億円 15億円
利益率(%) 1.8% 1.6% 1.6% 1.8% 2.1%
当期利益(親会社所有者帰属) 6億円 5億円 5億円 5億円 7億円

(2) 損益計算書


売上高の増加に伴い、売上総利益および営業利益ともに順調に拡大しています。人件費などの原価上昇圧力があるものの、料金改定等による収益改善策が奏功し、売上総利益率や営業利益率は前期を上回る水準を維持しています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 660億円 713億円
売上総利益 48億円 51億円
売上総利益率(%) 7.3% 7.1%
営業利益 12億円 14億円
営業利益率(%) 1.8% 2.0%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が6億円(構成比15%)、支払手数料が6億円(同15%)を占めています。

(3) セグメント収益


主力の貨物自動車運送事業とアセット事業は、新規案件の獲得や稼働率の改善により増収増益を達成しました。一方、センター事業は業務受託が好調で大幅な増収となったものの、人件費単価の上昇や新設拠点の立ち上げ費用の影響で減益となっています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期) 利益(2025年3月期) 利益(2026年3月期) 利益率
貨物自動車運送事業 260億円 269億円 20億円 20億円 7.3%
センター事業 157億円 180億円 10億円 9億円 4.8%
アセット事業 175億円 197億円 9億円 13億円 6.7%
その他事業 68億円 67億円 10億円 9億円 13.6%
連結(合計) 660億円 713億円 12億円 14億円 2.0%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社のキャッシュ・フローは、営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業である「健全型」のパターンを示しています。企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は4.3%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も32.2%で市場平均を下回っています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 25億円 59億円
投資CF -13億円 -40億円
財務CF -9億円 -10億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「物流の未来を見つめ、物流に関わるすべての事業の創造に挑戦します」「お客様の期待に応えて信頼を築き、豊かな社会の創造に貢献します」「社員の創意を活かし、仕事の喜びと心ゆたかな生活の創造を目指します」の3つを基本理念としています。品質の高い物流サービスを提供し、社会の発展に貢献することを目指しています。

(2) 企業文化


同社は、コンプライアンス最優先の企業文化の醸成を重視しています。安全・品質の追求を基盤とし、多様な人材が活躍できる柔軟な職場環境の整備に努めています。また、理念に根ざした「ロジテムらしさ」を発揮し、心理的安全性を高める対話の場を設けるなど、エンゲージメントが高く一体感のある組織づくりを推進しています。

(3) 経営計画・目標


同社は、資本効率を測る指標として「ROE」を経営目標に採用しています。2026年度を初年度とする3ヶ年の中期経営計画「中期経営計画2028」では、持続的な成長と企業価値の向上を図り、資本コストを上回る収益性の確保を目指しています。

* ROE:8%以上(2028年度目標)

(4) 成長戦略と重点施策


同社は、「適切な利益を安定確保できる収益構造の確立」「外部環境変化への対応」「コンプライアンス遵守・ガバナンスの強化」を重点課題としています。国内では物流DXの活用による高効率な現場づくりや、需要に応じた拠点網の最適化、3PL事業の提案力強化を推進します。海外では、ベトナムを中心に多様な事業展開を強みとし、アジア地域の物流ネットワーク拡充を図る戦略です。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は、「人財」の力を最大化することが競争力の源泉であると考え、「人財方針」を策定しています。学ぶ機会の提供、中長期的なキャリア形成の支援、多様な意見の尊重、柔軟な人事制度の整備を柱としています。特に、3PLの提案力やDX・ITリテラシーといった専門スキルを持つ人材の確保・育成を最優先課題として掲げています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 43.0歳 14.1年 5,377,389円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 -
男性育児休業取得率 41.7%
男女賃金差異(全労働者) 62.0%
男女賃金差異(正規雇用) 77.6%
男女賃金差異(パート・有期) 90.8%


※同社および連結子会社は公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。

また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、障がい者雇用率(2.27%)、採用人数に占める女性比率(21.8%)、外国籍社員の採用数(6名)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 特定得意先との営業契約への依存


同社グループは、営業収益に占める割合が10%を超える大口得意先グループが存在します。品質の高い物流サービスを提供し信頼関係の維持に努めていますが、予期せぬ事象によって契約が解消された場合、同社の業績等に多大な影響を及ぼす可能性があります。

(2) 法的規制や法改正への対応


貨物自動車運送事業や倉庫業の許認可をはじめ、安全や環境に関する法的規制を受けています。法改正や新法制定により対応費用が増加する懸念があるほか、万が一法令違反が発生した場合には事業停止等の行政処分を受け、業績や財政状態に影響を及ぼすリスクがあります。

(3) 人材の確保と育成


労働集約型事業の比重が高いため、質の高い人材の確保や人員配置が重要課題です。少子高齢化による人手不足が加速する中、採用活動や環境整備を進めていますが、人材の確保・育成が計画通りに進まない場合や採用コストが急増した場合、事業運営に影響を及ぼす可能性があります。

(4) 外部委託先の確保と費用上昇


貨物運送の一部や物流センターの倉庫内作業を外部の協力会社に委託しています。協力会社との連携強化に努めていますが、物流業界の労働力不足や時季的な需給逼迫により委託費が上昇した場合、費用増加分を価格転嫁できず、同社の経営成績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。