遠州トラック 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

遠州トラック 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

同社は東京証券取引所スタンダード市場に上場し、一般貨物自動車運送や倉庫事業などの総合物流事業を展開しています。直近の決算では、インターネット通販向け輸送の伸長や新倉庫の寄与により、営業収益は前期比3.6%増、経常利益は23.7%増と増収増益を達成しました。


※本記事は、遠州トラック株式会社 の有価証券報告書(第60期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月18日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 遠州トラックってどんな会社?


同社は、静岡県を中心に関東・関西を結ぶ物流ネットワークを構築し、輸送・倉庫・荷役を一貫して提供する総合物流企業です。

(1) 会社概要


1965年に設立され貨物自動車運送事業を開始し、1979年には倉庫事業へ進出しました。1995年に株式を店頭登録し、2006年には住友倉庫の連結子会社となりました。その後、2022年の市場区分見直しに伴い東京証券取引所スタンダード市場へ移行し、事業基盤の強化を図っています。

連結従業員数は1,363名、単体では1,094名です。筆頭株主は親会社の住友倉庫で、発行済株式の約6割を保有しています。第2位は取締役会長の澤田邦彦氏、第3位は従業員持株会となっており、親会社との連携を保ちつつ経営が行われています。

氏名 持株比率
住友倉庫 60.61%
澤田邦彦 2.94%
遠州トラック従業員持株会 2.34%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性1名、計9名で構成され、女性役員比率は11.1%です。代表取締役社長は金原秀樹氏が務めています。社外取締役比率は22.2%です。

氏名 役職 主な経歴
澤田 邦彦 取締役会長(代表取締役) 1981年入社。社長、社長執行役員営業本部長などを歴任し、2023年6月より現職。
金原 秀樹 取締役社長(代表取締役)社長執行役員営業本部長 1991年入社。取締役営業本部長、常務執行役員などを経て、2023年6月より現職。
久保田 健 取締役常務執行役員管理本部長兼経営企画部長 住友倉庫入社後、青島住倉国際物流有限公司総経理などを経て、2020年6月より現職。


社外取締役は、斉藤薫(元遠州鉄道代表取締役社長)、山本正幸(まどか法律事務所代表弁護士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「物流事業」および「その他」事業を展開しています。

(1) 物流事業


一般貨物自動車運送事業、貨物運送取扱事業、倉庫事業を行っており、企業間物流やEC物流を支えています。顧客企業の物流ニーズに対し、輸送、保管、荷役、流通加工などを包括的に提供します。

運送サービスの対価としての運賃や、倉庫での保管料・荷役料などが主な収益源です。運営は主に同社が行うほか、藤友物流サービス、遠州トラック関西、小笠運送などの連結子会社も各地域や機能に応じて事業を展開しています。

(2) その他


不動産事業等として、保有する土地・建物の賃貸や売買、太陽光発電による売電事業を行っています。物流事業を補完しつつ、資産の有効活用を図っています。

賃貸用不動産からの賃料収入や、太陽光発電による売電収入が収益源となります。運営は主に同社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近の業績において、売上高は400億円台後半で堅調に推移し、増加傾向にあります。経常利益などの利益面では、2024年3月期に一時的な減少が見られましたが、2025年3月期には回復し、増益に転じています。全体として事業規模は拡大基調を維持しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 395億円 428億円 448億円 469億円 486億円
経常利益 32億円 33億円 32億円 27億円 33億円
利益率(%) 8.1% 7.7% 7.2% 5.7% 6.8%
当期利益(親会社所有者帰属) 23億円 23億円 23億円 20億円 24億円

(2) 損益計算書


売上高の増加に伴い、売上総利益および営業利益ともに増加しています。特に営業利益率は改善傾向にあり、収益性が向上しています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 469億円 486億円
売上総利益 38億円 45億円
売上総利益率(%) 8.1% 9.2%
営業利益 26億円 32億円
営業利益率(%) 5.6% 6.7%


販売費及び一般管理費のうち、給料手当及び福利費が7億円(構成比55%)、租税公課が1億円(同9%)を占めています。

(3) セグメント収益


物流事業は、EC向け輸送の伸長や新倉庫の稼働、適正な価格転嫁の推進により増収増益となりました。一方、その他事業は減収減益となりました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
物流事業 467億円 485億円 35億円 42億円 8.7%
その他 2億円 1億円 1億円 1億円 51.4%
調整額 - - -10億円 -10億円 -
連結(合計) 469億円 486億円 26億円 32億円 6.7%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社は営業活動で得た資金で借入金の返済を行いつつ、投資も手元資金の範囲内で実施している「健全型」です。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 28億円 48億円
投資CF -55億円 -7億円
財務CF 31億円 -25億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は10.7%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は57.9%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は、人的資本である従業員の「幸せ」を第一義に考えた経営を行うことをミッションに掲げています。物流インフラの提供を使命とする全従業員がいきいきと働ける環境を作り、顧客満足度の高い価値提供と、CO2削減による地球環境への貢献を目指しています。

(2) 企業文化


ミッション・ビジョンの実現に向け、従業員一人ひとりが「正直、誠実、高潔」であることを判断・行動の基準とするバリューを定めています。安全を最優先とし、顧客起点での品質向上、プロフェッショナルとしての生産性向上、多様な価値観の尊重を組織文化として定着させています。

(3) 経営計画・目標


2026年3月期を最終年度とする中期経営計画において、以下の数値目標を掲げています。

* 営業収益:522億円
* 営業利益:37億円
* ROE(自己資本利益率):8%以上
* 配当性向:30%以上

(4) 成長戦略と重点施策


中継輸送プラットフォームの拡充による2024年問題(乗務員不足)の解決、EC物流の拡大、共同配送網の強化を推進しています。また、DXによる業務効率化や自動配車システムの展開、環境負荷低減に向けた大型車両の電動化など、持続可能な物流サービスの構築に注力しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


従業員の「幸せ」を第一義とし、エンゲージメント向上を重視しています。階層別研修や安全技術研修による人材育成、女性の活躍推進、定年後再雇用の年齢上限撤廃など、多様な人材が長期的に活躍できる環境整備を進めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 44.3歳 8.8年 5,366,684円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 -
男性育児休業取得率 71.4%
男女賃金差異(全労働者) 53.6%
男女賃金差異(正規) 68.8%
男女賃金差異(非正規) 63.2%


※管理職に占める女性労働者の割合について、同社は公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。

また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、労働者に占める女性労働者の採用割合(正社員)(33%)、従業員エンゲージメント(87.3%)、研修の一人当たり受講時間の増加率(9.6%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 取引集中によるリスク


インターネット通販関連の取引増加により、特定の取引先への売上依存度が約30%を占めています。主要取引先との契約変更や解消があった場合、業績に影響が及ぶ可能性があります。

(2) 燃料費変動のリスク


原油価格の高騰により軽油価格が上昇した場合、運送原価が増加します。エコドライブ等で削減に努めていますが、コスト増を運賃に転嫁できない場合、利益を圧迫する可能性があります。

(3) 金利変動のリスク


車両更新や倉庫新設等の設備投資資金を主に外部借入で調達しています。変動金利での借入については、金利上昇により支払利息が増加し、業績に影響を与える可能性があります。

(4) 労働力不足と2024年問題


物流業界における乗務員不足や労働時間規制の強化(2024年問題)への対応が必要です。労働力の確保が困難になった場合、物流サービスの安定供給や事業拡大に支障をきたす恐れがあります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。