※本記事は、遠州トラック株式会社の有価証券報告書(第61期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月17日提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準はJapan GAAPです。
1. 遠州トラックってどんな会社?
同社グループは、貨物自動車運送事業や倉庫事業などの総合物流事業を中心に展開する企業です。
■(1) 会社概要
1965年に設立され、貨物自動車運送事業を開始しました。1979年に倉庫事業、1982年に運送取扱業務を開始し、事業を拡大しました。2004年にジャスダック証券取引所に上場し、2006年には住友倉庫が親会社となりました。2018年には中継物流拠点「コネクトエリア浜松」を開設しています。
現在の従業員数は連結で1,378名、単体で1,122名体制です。筆頭株主は事業会社で親会社の住友倉庫で、第2位は創業家等の個人株主である澤田邦彦氏、第3位は同社の従業員持株会となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 住友倉庫 | 60.58% |
| 澤田邦彦 | 2.94% |
| 遠州トラック従業員持株会 | 2.39% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性8名、女性1名の計9名で構成され、女性役員比率は11.1%です。代表取締役社長は金原秀樹氏が務めています。社外取締役の比率は40%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 澤田 邦彦 | 取締役会長(代表取締役) | 1981年3月同社入社。2001年6月同社代表取締役社長、2007年6月同社代表取締役社長兼社長執行役員などを経て、2023年6月より現職。 |
| 金原 秀樹 | 取締役社長(代表取締役)社長執行役員営業本部長 | 1991年12月同社入社。2004年6月同社取締役、2015年6月同社取締役兼常務執行役員営業本部長などを経て、2023年6月より現職。 |
| 久保田 健 | 取締役常務執行役員管理本部長兼経営企画部長 | 1985年4月住友倉庫入社。2015年6月同社常務執行役員管理本部長兼経営企画部長。2018年6月同社取締役兼常務執行役員管理本部長兼経営企画部長を経て、2020年6月より現職。 |
社外取締役は、斉藤薫(元遠州鉄道社長)、山本正幸(まどか法律事務所代表弁護士)です。
2. 事業内容
同社グループは、「物流事業」および「その他」事業を展開しています。
■(1) 物流事業
一般貨物自動車運送事業、貨物運送取扱事業による貨物運送、及び倉庫事業による荷物の保管・管理や物流加工を提供しています。多種多様な業種の企業や、インターネット通販事業者などを主な顧客としています。
顧客から受け取る運送収入や倉庫収入、荷役料などが主な収益源です。運営は同社のほか、子会社である藤友物流サービス、遠州トラック関西、小笠運送が行っています。
■(2) その他
報告セグメントに含まれない事業として、不動産事業等や太陽光発電による売電事業を提供しています。
土地建物の賃貸・売買等による不動産収入や、売電による収益が主な収益源です。運営は主に同社が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、経常利益は30億円前後で推移しており、底堅い収益力を維持しています。当期純利益についても安定して推移しており、堅調な業績を保っていることが伺えます。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上収益 | - | - | - | - | - |
| 経常利益 | 33億円 | 32億円 | 27億円 | 33億円 | 31億円 |
| 利益率(%) | - | - | - | - | - |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 20億円 | 20億円 | 17億円 | 20億円 | 20億円 |
■(2) 損益計算書
営業利益は前期の32億円から当期は31億円とわずかに減少しています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | - | - |
| 売上総利益 | - | - |
| 売上総利益率(%) | - | - |
| 営業利益 | 32億円 | 31億円 |
| 営業利益率(%) | - | - |
■(3) セグメント収益
主力の物流事業は、一般貨物の取扱拡大等により増収となりました。その他事業についても収益が増加しており、全社的な売上成長に貢献しています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) |
|---|---|---|
| 物流事業 | 485億円 | 498億円 |
| その他 | 1億円 | 2億円 |
| 連結(合計) | 486億円 | 499億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
当期のキャッシュ・フローは、営業活動によるキャッシュ・フローがプラス、投資活動と財務活動によるキャッシュ・フローがマイナスとなっています。これは営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う「健全型」の優良企業であることを示しています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 48億円 | 27億円 |
| 投資CF | -7億円 | -25億円 |
| 財務CF | -25億円 | -21億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は9.4%、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は62.2%で、いずれも市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は、ミッション(使命)、ビジョン(経営目標)及びバリュー(従業員行動指針)から構成される経営理念を定めています。人的資本である従業員の「幸せ」を第一義に考え、物流インフラの提供を使命とした全ての従業員が幸せになるよう最善を尽くすことをミッションとしています。また、お客様起点に立って物流サービスのあり方を問い続け、価値を提供することを目指しています。
■(2) 企業文化
行動指針に沿って、「バリュー」(従業員の判断・行動の基準となる共通の価値観)を共有し行動することを組織文化として定着させています。安全を最優先に考えた働きやすい職場づくりや、お客様起点での物流サービスの品質向上を重視しています。また、当事者意識をもってプロフェッショナルに仕事に取り組み、多様な価値観を認めて課題に挑戦して成長し続ける姿勢を大切にしています。
■(3) 経営計画・目標
2026年度を初年度とする5年間の中期経営計画を策定しています。この期間中に330億円の事業投資を行い、新しい物流サービスに挑戦し事業領域を拡大することを目指しています。
* 営業収益:610億円
* 営業利益:40億円
* 事業投資額(期間累計):330億円
* ROE(自己資本利益率):8%以上
* 配当性向:30%以上
■(4) 成長戦略と重点施策
乗務員不足が懸念されるなか、適正な価格転嫁と労働力確保に向けた賃上げを行い、安定供給に努めます。また、中継輸送(e-change)プラットフォームを活かした輸送ネットワークや共同配送網の拡充、調達物流の進化を推進します。さらに、基幹システムの再構築や自動搬送ロボットの導入によるDX推進、車両の電動化による環境負荷低減、健康経営の推進を通じた人的資本への投資にも注力します。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
事業の価値を創出する最大の源泉は「人(従業員)」であると捉え、人的資本への投資を経営の重要課題と位置付けています。健康経営を推進し、多様な人材が長く活躍できる柔軟な働き方の導入や年間休日数の増加などにより、エンゲージメントの向上を図っています。また、事業拡大に向けた人材基盤の強化として、長時間労働の是正やプロフェッショナル人材の育成に取り組んでいます。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 44.3歳 | 9.0年 | 5,550,124円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 2.7% |
| 男性育児休業取得率 | 127.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 66.2% |
| 男女賃金差異(正規雇用労働者) | 77.2% |
| 男女賃金差異(パート・有期労働者) | 69.8% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性労働者の採用割合(正社員)(25%)、エンゲージメントスコアが3以上の従業員割合(87.2%)、研修受講総時間の増加率(33.2%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 特定取引先への依存
インターネット通販に関連する取引の増加により、特定の取引先との取引が営業収益の20%以上を占めています。同社グループは物流サービスの拡充により取扱業務を拡大しリスク回避に努めていますが、主要な取引先との契約内容が変更あるいは解消された場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 燃料費変動によるコスト増
原油価格等の高騰により軽油価格が上昇した場合、燃料油脂費等の運送原価が増加します。燃油サーチャージの収受や集中購買、エコドライブの推進等により費用の削減に努めていますが、これら費用の増加分を運賃に転嫁できない場合、同社グループの業績が影響を受ける可能性があります。
■(3) 金利変動と資金調達コスト
車輌の更新や倉庫施設等の新設のために継続的な設備投資を行っており、必要な設備資金は主として外部借入により調達しています。主に固定金利で借入を行っていますが、変動金利で調達している資金については金利変動の影響を受けるほか、将来の資金調達コストが影響を受ける可能性があります。



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