※本記事は、東部ネットワーク株式会社の有価証券報告書(第113期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 東部ネットワークってどんな会社?
貨物自動車の運送を中核に、不動産賃貸や自動車整備なども手がける総合物流企業です。
■(1) 会社概要
1943年に横浜東部運送として設立し、事業を開始しました。1959年には百貨店商品の宅配事業に参入し、1992年に現在の東部ネットワークへ商号変更しています。2004年にジャスダック証券取引所へ株式を上場しました。近年は、2022年から2024年にかけて東北三光、魚津運輸、テーエス運輸を相次いで子会社化し、産業用ガス等の特殊貨物輸送分野への参入と事業拡大を推進しています。
現在の従業員数はグループ全体で378名、単体で259名体制となっています。筆頭株主は個人の氏で、第2位は総合物流企業である丸全昭和運輸、第3位も同じく物流企業のアサガミが名を連ねています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 中村 亘宏 | 25.11% |
| 丸全昭和運輸 | 7.80% |
| アサガミ | 5.69% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性7名、女性2名の計9名で構成され、女性役員比率は22.2%です。代表取締役社長兼社長執行役員は若山良孝氏が務めており、役員全体のうち約44.4%が社外取締役となっています。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 若山 良孝 | 代表取締役社長兼社長執行役員 | 1994年同社入社。営業部統括部長、第一営業部門担当部長などを経て、2016年6月より現職。 |
| 三澤 秀幸 | 代表取締役専務兼専務執行役員 | 1989年同社入社。経理部長、管理本部長兼経営企画室長などを経て、2015年6月より現職。 |
| 阿部 悟志 | 常務取締役兼常務執行役員営業本部長 | 富士コカ・コーラボトリング等を経て2021年同社入社。東日本営業部長等を歴任し、2024年10月より現職。 |
| 渡邉 一樹 | 取締役兼執行役員コーポレートプランニング室長 | 日本勧業角丸証券等を経て2022年同社入社。経営企画戦略室長等を歴任し、2023年10月より現職。 |
| 飯島 利英 | 取締役(常勤監査等委員) | 2008年同社入社。経理部課長、営業部課長、業務部部長を経て、2023年6月より現職。 |
社外取締役は、岩渕恵理(プロアクト法律事務所入所)、坪井孝文(元みずほファクター取締役常務執行役員)、田村伸子(創価大学法科大学院教授)、大塚聡(元セイビ執行役員)です。
2. 事業内容
同社グループは、「貨物自動車運送事業」「不動産賃貸事業」および「その他事業」を展開しています。
■貨物自動車運送事業
飲料製品やセメント、水素等の産業用ガスを運ぶトラック輸送サービスを提供しています。また、物流倉庫内での商品の入出庫や保管管理を行う3PL事業も展開しており、多様な顧客ニーズに対応する総合的な物流ネットワークを構築しています。
収益は、貨物の輸送料金や、物流センターにおける荷役・保管料として顧客から受け取ります。事業の運営は東部ネットワークに加え、子会社の東北三光、魚津運輸、テーエス運輸がそれぞれの強みを活かして連携して行っています。
■不動産賃貸事業
神奈川県などを中心に、自社で保有する賃貸オフィスビルや物流センター等の各種賃貸商業施設を提供しています。保有不動産の有効活用を通じて、総合物流企業としての事業基盤を安定させる重要な役割を担っています。
収益は、施設のテナント企業から受け取る不動産賃貸収入(賃料)によって構成されています。本セグメントの事業運営は、東部ネットワーク単体で行っています。
■その他事業
石油製品やセメント、車両等の販売、および各種リース販売を行う商品販売事業を展開しています。さらに、軽自動車から大型トラック・特殊車両まで対応可能な民間車検場を備え、車両修理や整備を提供する自動車整備事業も手がけています。
収益は、商品の販売代金や車両のリース料、自動車整備のサービス代金として顧客から受け取ります。運営は主に東部ネットワークが行い、一部の商品販売については東北三光が担当しています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
過去4期間の業績を見ると、売上高は99億円から104億円規模で推移しており、安定した事業基盤を維持しています。直近の期では運送オーダーの減少等によりわずかに減収となったものの、収益構造の改革が進展したことで経常利益は大幅な増益に転じています。
| 項目 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 99億円 | 103億円 | 104億円 | 101億円 |
| 経常利益 | 5億円 | 4億円 | 3億円 | 4億円 |
| 利益率(%) | 4.9% | 3.9% | 2.4% | 3.7% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 4億円 | 1億円 | 1億円 | 3億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は微減したものの、売上原価の減少により売上総利益が増加し、売上総利益率は10.1%から12.4%へ改善しました。これに伴い営業利益率も1.8%から2.7%へと向上しており、本業の稼ぐ力が高まっていることがわかります。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 104億円 | 101億円 |
| 売上総利益 | 10億円 | 13億円 |
| 売上総利益率(%) | 10.1% | 12.4% |
| 営業利益 | 2億円 | 3億円 |
| 営業利益率(%) | 1.8% | 2.7% |
販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が2億円(構成比22%)、支払手数料が2億円(同16%)を占めています。また、売上原価のうち、傭車料が33億円(構成比45%)、施設使用料が9億円(同12%)を占めています。
■(3) セグメント収益
主力の貨物自動車運送事業は、顧客の物流合理化等で減収となりましたが、収益構造の改善により大幅な増益を達成しました。不動産賃貸事業は高い稼働率を維持し安定的に推移しており、全社の利益を強力に下支えしています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益(2026年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 貨物自動車運送事業 | 95億円 | 92億円 | 2億円 | 3億円 | 3.8% |
| 不動産賃貸事業 | 6億円 | 7億円 | 4億円 | 4億円 | 63.0% |
| その他事業 | 3億円 | 3億円 | 1億円 | 1億円 | 31.4% |
| 連結(合計) | 104億円 | 101億円 | 2億円 | 3億円 | 2.7% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業のパターンです。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 7億円 | 8億円 |
| 投資CF | -6億円 | -7億円 |
| 財務CF | -3億円 | -3億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は1.5%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は82.7%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「物流を通じて社会の発展に貢献し、今とは異なるものになるために挑戦し続け、ステークホルダーから信頼される企業を目指す」ことを経営理念に掲げています。社会インフラとしての使命を果たしながら、持続的な成長を実現することを目指しています。
■(2) 企業文化
「挑戦・信頼・環境」を経営方針の3本柱とし、多様化するニーズへの挑戦と安全第一のサービス提供を重視しています。また、クリーンエネルギーの普及に貢献するなど、サステナビリティとCSRを重視した経営を推進する文化が根付いています。
■(3) 経営計画・目標
同社は業績の継続的拡大により企業価値を高め、適正な利益の確保と効率性の高い経営を目指しています。持続的に発展していくための客観的な経営指標として、以下の数値を掲げています。
* 自己資本利益率(ROE) 8.0%
■(4) 成長戦略と重点施策
中期経営計画「トライ 2034」に基づき、「グループ経営の進化」と「コア事業の深化」を推進します。次世代エネルギー(水素等)輸送を見据え、参入障壁の高い産業用ガス輸送へのシフトを加速させるほか、3PL事業の拡大やDXの推進、環境配慮型経営の実行に注力していきます。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「ヒトを活かしヒトを育てる」という基本方針のもと、優秀な人材が定着・成長できる「人材成長定着企業」を目指した人的資本経営を推進しています。特殊輸送技能指導員制度等による専門技能の継承、DX人材の育成、労働環境の抜本的改善に注力しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 53.9歳 | 12.9年 | 5,130,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 3.0% |
| 男性育児休業取得率 | 100.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 72.2% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 76.7% |
| 男女賃金差異(パート・有期) | 84.9% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、高圧ガス移動監視者資格保有者数(114名)、取締役のうち女性の占める割合(22.2%)、CO2排出量スコープ2前年比削減目標(1%削減)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 特定の取引先への依存リスク
同社グループは主要取引先と良好な関係を維持していますが、一部特定の取引先に対する売上依存度が高くなっています。取引先業界のシェア変動や、相手先の都合等によって取引量が減少した場合、グループ全体の業績に重要な影響を及ぼす可能性があります。
■(2) M&A・資本提携に伴う不確実性
既存事業とのシナジー効果が期待できる事業へのM&Aや資本提携を推進しています。実施に際しては事前の投資分析や精査を十分に行いますが、買収後に想定外の事態が生じ、事業計画が当初の想定通りに進捗しない場合、業績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
■(3) 燃料価格の高騰によるコスト上昇
貨物自動車運送事業を主体とするため、事業運営において燃料の使用が不可欠です。地政学的リスクの高まりや世界の石油情勢の変動等により、燃料価格が大幅に高騰した場合は輸送コストの急激な上昇を招き、利益を圧迫するリスクがあります。
■(4) 交通事故等の重大インシデント
大型トレーラーや特殊車両による危険物輸送業務を行っているため、万が一重大な事故が発生した場合、取引先や社会からの信用が失墜する恐れがあります。さらに多額の損害賠償請求や、営業停止等の行政処分を受けるリスクがあり、事業継続に深刻な影響を及ぼす可能性があります。



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