※本記事は、東部ネットワーク株式会社 の有価証券報告書(第112期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 東部ネットワークってどんな会社?
貨物自動車運送事業を核に、不動産賃貸や自動車整備なども手掛ける総合物流企業です。
■(1) 会社概要
1943年に横浜東部運送として設立され、1992年に現社名へ変更しました。2004年にジャスダック証券取引所へ上場し、その後も物流拠点の新設やM&Aを推進しています。近年では東北三光や魚津運輸、テーエス運輸を子会社化し、特殊貨物輸送分野を強化するなど、事業基盤の拡大を図っています。
同グループは連結従業員419名、単体298名で構成されています。筆頭株主は個人の中村亘宏氏で、第2位および第3位は物流事業を展開する丸全昭和運輸とアサガミが名を連ねています。創立80周年を超え、安定した株主基盤のもとで事業を展開しています。
■(2) 経営陣
同社の役員は男性7名、女性2名の計9名で構成され、女性役員比率は22.2%です。代表取締役社長兼社長執行役員は若山良孝氏です。社外取締役比率は44.4%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 若山 良孝 | 代表取締役社長兼社長執行役員 | 1994年同社入社。営業部統括部長、営業開発部長等を歴任し、2015年常務取締役。2016年より現職。 |
| 三澤 秀幸 | 代表取締役専務兼専務執行役員 | 1989年同社入社。経理部長、管理本部長兼経営企画室長等を歴任。2015年より現職。 |
| 阿部 悟志 | 常務取締役兼常務執行役員営業本部長 | コカ・コーライーストジャパン等を経て2021年同社入社。東北三光代表取締役社長等を務め、2024年より現職。 |
| 渡邉 一樹 | 取締役兼執行役員コーポレートプランニング室長 | 日本勧業角丸証券、みずほ銀行、NISSHA出向等を経て2022年同社入社。経営企画戦略室長を経て2023年より現職。 |
| 飯島 利英 | 取締役(常勤監査等委員) | 2008年同社入社。経理部課長、営業部課長、業務部部長等を歴任。2023年より現職。 |
社外取締役は、岩渕恵理(弁護士)、稲村久仁雄(元住友信託銀行横浜支店支店長)、坪井孝文(元みずほファクター取締役常務執行役員)、田村伸子(創価大学法科大学院教授)です。
2. 事業内容
同社グループは、「貨物自動車運送事業」、「不動産賃貸事業」および「その他」事業を展開しています。
■(1) 貨物自動車運送事業
飲料製品やセメント、産業用ガスなどのトラック輸送を主軸とし、顧客ニーズに応じた貨物保管業務や物流センター運営等の一括受託サービス(3PL)も提供しています。主な顧客にはコカ・コーラボトラーズジャパンなどが含まれます。
収益は、荷主からの運送賃や荷役・保管料などから得ています。運営は、東部ネットワークのほか、子会社の東北三光、魚津運輸、テーエス運輸が行っています。特に近年子会社化した各社は特殊貨物輸送などを担っています。
■(2) 不動産賃貸事業
神奈川県やその他の地域において、自社ビルや物流センターなどの各種賃貸商業施設を保有し、賃貸しています。
収益は、テナントからの賃貸収入です。運営は、東部ネットワークのみが行っており、安定的な収益基盤として位置付けられています。
■(3) その他事業
石油製品(燃料等)やセメント、車両等の販売、各種リース販売、および自動車整備事業を行っています。自動車整備では自社工場で民間車検や修理に対応しています。
収益は、商品の販売代金や整備サービスの対価から得ています。運営は、東部ネットワークおよび、石油製品・セメント販売については子会社の東北三光も行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近3期間の業績を見ると、売上高はM&Aなどの効果もあり増加傾向にありますが、利益面では変動が見られます。特に当期は、産業用ガス輸送の拡大など増収要因があったものの、既存輸送におけるコスト上昇などが響き、経常利益は減少しました。一方で、当期純利益は特別利益の計上などにより増加しています。
| 項目 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 99億円 | 103億円 | 104億円 |
| 経常利益 | 5億円 | 4億円 | 3億円 |
| 利益率 | 4.9% | 3.9% | 2.4% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 4億円 | 1億円 | 4億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は微増しましたが、売上原価および販売費及び一般管理費の増加により、営業利益は減少しました。特に営業利益率は低下傾向にあり、コストコントロールが課題となっています。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 103億円 | 104億円 |
| 売上総利益 | 10億円 | 10億円 |
| 売上総利益率 | 10.0% | 10.1% |
| 営業利益 | 3億円 | 2億円 |
| 営業利益率 | 3.1% | 1.8% |
販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が2.1億円(構成比24%)、その他が1.3億円(同15%)、支払手数料が1.1億円(同13%)を占めています。売上原価では、傭車料などの外注費や燃料費等の割合が高くなっています。
■(3) セグメント収益
貨物自動車運送事業は増収となったものの、コスト増により減益となりました。不動産賃貸事業は安定的に推移しています。その他事業は売上、利益ともに減少しました。全体として、主力の運送事業の収益性低下が全社の営業利益減少の主因となっています。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) | 利益(2024年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 貨物自動車運送事業 | 94億円 | 95億円 | 3億円 | 2億円 | 1.8% |
| 不動産賃貸事業 | 6億円 | 6億円 | 4億円 | 4億円 | 62.5% |
| その他事業 | 3億円 | 3億円 | 1億円 | 1億円 | 34.2% |
| 調整額 | -0億円 | -0億円 | -5億円 | -5億円 | - |
| 連結(合計) | 103億円 | 104億円 | 3億円 | 2億円 | 1.8% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
東部ネットワークのキャッシュ・フロー状況についてご説明します。
営業活動によるキャッシュ・フローは、主に税金等調整前当期純利益や減価償却費の計上により資金を得ましたが、法人税等の支払により前期と比較して減少しました。投資活動では、投資有価証券の売却による収入があったものの、有形固定資産の取得や保険積立金の積立、子会社株式の取得により資金が支出されました。財務活動では、長期借入による収入があったものの、自己株式の取得や長期借入金の返済、配当金の支払いにより資金が支出されました。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 10億円 | 7億円 |
| 投資CF | -5億円 | -6億円 |
| 財務CF | 3億円 | -3億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、物流を通じて社会の発展に貢献し、現状に留まらず変化し続けることで、ステークホルダーから信頼される企業を目指すことを経営理念として掲げています。
■(2) 企業文化
「挑戦」「信頼」「環境」の3つを経営方針として重視しています。多様化する時代の中で新分野へ挑戦し社会ニーズに応えること、安心・安全第一の物流サービスで信頼を獲得すること、そしてクリーンエネルギー普及等により持続可能な社会実現に寄与することを行動の指針としています。
■(3) 経営計画・目標
同社グループは、業績拡大と効率性の高い経営を目指し、経営目標の達成状況を判断する重要な指標として以下を設定しています。
* 自己資本利益率(ROE) 8.0%
■(4) 成長戦略と重点施策
経営基盤の安定化を図りつつ、時代に即した物流事業の拡大を目指し、積極的な投資と人材育成を行います。特に特殊貨物輸送等の参入障壁の高い分野へのシフトを加速させ、競争力強化を図ります。また、3PL事業の拡大やM&Aによる業容拡大、不動産賃貸事業の管理運営による安定収益確保にも注力します。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「ヒトを活かしヒトを育てる」方針のもと、多様性を尊重し、自律的なキャリア形成や資格取得を求めています。産業用ガス輸送等の専門スキルが必要な分野において、高圧ガス移動監視者等の資格取得環境を整備し、人材への投資を積極的に行っています。また、従業員向けインセンティブ・プランの導入等により、雇用環境の向上にも取り組んでいます。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 52.5歳 | 10.3年 | 5,145,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 3.1% |
| 男性育児休業取得率 | 100.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 70.9% |
| 男女賃金差異(正規) | 77.5% |
| 男女賃金差異(非正規) | 85.2% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、高圧ガス移動監視者資格の保有者数(135名)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 取引先との集中度について
特定の取引先への売上高依存度が20%を超えており、1社との取引関係が業績に大きく影響する構造にあります。関係は良好ですが、環境変化等による契約解消リスクに対し、複合化物流システムへの転換や新規分野(産業用ガス輸送等)への進出により、取引先の分散化を進めています。
■(2) M&A、資本提携等について
シナジー効果を期待してM&Aや資本提携を行う可能性がありますが、買収後の統合プロセスにおいて想定外の事象が生じたり、事業計画が未達となったりする場合、のれんの減損処理等により業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(3) 輸送コストの上昇について
貨物自動車運送事業を主体としているため、燃料価格の変動が業績に直結します。現在は安定供給を受けていますが、世界情勢等により燃料費が高騰した場合、輸送コストが増加し、業績に重要な影響を与える可能性があります。



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